2008年05月

2008年05月22日

水平投射と、それらに分断されたもの

2005年7月9日、東京ダービー試合前に起きた灰皿事件(東京サポーターがヴェルディゴール裏に向かってチャントを歌いながら行進し、これに抗議したヴェルディサポーターに対して、東京サポーターの一人が金属製の灰皿の蓋を投げつけ、怪我を負わせた事件)は私に深いショックを残したし、それは今でも消えていない。私は行進に加わってはいなかったけど、それでも私自身の一部があの事件に含まれているように感じた。今でも時折そう思うことがある。灰皿事件について何か書くことができたら、というのはこのブログを書き始めた動機の一つであるのだが、未だにあの鉄塊が切り裂いた傷口から見えたものについて、正確に語る言葉が見つからないでいる。

そして、5月17日に埼玉スタジアムで行なわれた、浦和レッズ‐ガンバ大阪戦の試合後に起きたサポーター同士の衝突からも、灰皿事件と同質の衝撃を受けた。なかでもゲートフラッグのポール部分が人間に向かって水平に投じられる映像は、本当にショックだった。槍がその指先を離れる瞬間、彼らはそれが誰かの目や頭に当たったらどうなるか、一瞬でも考えただろうか。数人の負傷者たちが最大でも骨折程度で収まったのは、単なる幸運に過ぎない。もっとひどい事にだって成り得たのだ、本当に。Jリーグで最も運営の行き届いたスタジアムと統制の取れた観客といえば、それは埼玉スタジアムの浦和サポーターであることは間違いない。それが無念さを膨らませる。
埼スタでまで、こんなことが起きてしまうのか、と。


現場にいなかったので確かなことは分からないが(仮にその場にいたとしても、そこで得た自分の立場に沿った断片的な事実から描けるものは、あくまで「自分の視点からの」真実であって、多少の臨場感はあっても、絶対的な客観性を持つものではない)、複数の証言から、発端がガンバ側からの度重なる悪質な挑発であったことは事実であるようだ。しかし報復を行ってしまえば、どちらに非があろうと最終的な立場は変わらなくなってしまう。クラブ側は「試合前から水風船やペットボトルが投げ込まれていた」ことを把握していたのなら、なぜ早急に対応しなかったのか。警備員だけでは対処し切れなかったなら、何のために警察官が配置されているのか。最初から投擲を目的として物体をスタジアムに持ち込むような輩は、身柄を拘束されても当然ではないか。ゴール裏は「泳ぐのに安全でも適切でもない」場所ではあるが、治外法権の地ではない。法を著しく逸脱する行為があれば、司法、行政の介入を受けるのは当然である。

そもそもメインスタンドからの中継カメラの死角になる位置にわずかなアウェイ席を設け、緩衝帯を挟んですぐ浦和サポーターが陣取るレイアウトは、いずれこのような騒ぎが起きることも十分予想できたはずだ。にもかかわらず、浦和の公式「謝罪」コメントから、私は真摯な謝罪の意思を感じることができなかった。浦和運営陣には、私も遭遇した駒場での出島事件同様、このようなケースに対して関与こそせずとも、積極的に混乱を止めようとする姿勢が薄いように思われる。クラブ側はあくまでも試合のホストとして、興行主(チケットの販売者)として双方のファンが等しくゲームを楽しめるように中立的な建前を守らなくてはならないのではないか。

この事件の決着に、喧嘩両成敗の理屈を持ち込んではいけない。個々のサポーターの犯した犯罪行為については特定し得る限り追及し、当たり前だが個人個人でしっかりと償わせるべきである。しかしリーグからクラブへの制裁は、あくまで浦和を主たる対象として下されるべきだ。恣意的なチケット販売方法と席割りの帰結として当然予想できたトラブルに対し、取るべき措置を取らず騒動を拡大させてしまった主催者・浦和の責任は重い。そこに明らかな浦和ボールをガンバのスローインにしてしまった岡田主審のジャッジや、先に手を出したのはどちらか、アウェイチームが勝利の円陣を組むのは礼儀に適ったことかなどの枝葉の議論は関係ない。

Jリーグも誕生から15年を経て、いままで曖昧なまま看過されてきた部分が、段々そうはいかなくなってきた。観戦のマナー、サポーター間の仁義といった「スタジアムの非成文憲法」は、ケースの蓄積によってのみ醸成される。この騒動はそのような成長の過程における発熱のようなものとも云える。浦和には勝ち点剥奪、無観客試合など過去にない厳しい処分を下し、試合運営の重要な教訓として後世に残すべきだが、逆にこれを機に選手の審判批判を禁止しようなどと画策しているような連中には期待などできないし(審判批判を禁止するなら、審判に対するオープンな評価システムも対で設けなければならない。現状のまま審判批判だけがタブー化されていけば、状況は悪化するばかりだ)、ますます陰鬱な心持になる。

ところでJは世界標準から数段遅れているなどと日頃ご高説を垂れているライター諸氏は、この「世界標準」の乱闘事件をどう語るのだろうか。自分が当事者として参加しているときにこのような事態に遭遇すれば、状況によっては自衛行動を余儀なくされる場面もあるかもしれない。しかし、「やられたらやり返す」という復讐の論理のみがコモンセンスとして敷衍している場所が「世界」なら、そんな所に私は住みたくない。


過去に同じような事件を起こしたクラブのファンである私に偉そうな事を言う資格なんて、本当はない。かなり頑張って、この文章を書いては書き直してと繰り返している。しかしあの日同じスタジアムにいながら、あのような事件が起きたことを試合後に知ったような私だからこそ、しつこく考えて続けてしまうのかもしれないし、考える過程で遭遇したこの事件についてのログを残しておくことにも、意味よあれかしと願っている。数千万分の一の、声の一つとして。


sakuralemmon at 13:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!サッカー全般 

2008年05月07日

20080506 FC東京●0−1○名古屋グランパス

久々の飛田給は夏のような日差し。あつかったですね、天気だけは…。

いやあ、うーん…。
まぁ、いろいろと残念な試合ではありましたが、これが今の実力とも言える内容で、あまりネガティブには捉えていません。ネタとしての「首位」はおいしいですが、今の東京がそのポジションにふさわしいチームとは言えないですから。

ただ、終了後いつまでも隣の奴が「ユースケ絶対外すと思ったんだよ…。みんななんであんな奴にコールなんかしてんだよ」などとグジグジ言っていて、うざかったです。だったらお前が蹴れよ。そりゃあ、PKをインステップで思いっきり蹴ってバーに当てるなんて未熟以外の何者でもないですが、カボレが痛んでいたら祐介が蹴るしかないし、あそこで逃げたらFWじゃない。さっさとボールをセットして他の選手に譲らない姿に、いままでの祐介にはなかったものを感じました。成長したなぁ。あとは、ああいうタフな場面でも落ち着いてコースを狙って蹴ることができるよう経験を積んでいけばいい。悠長なことを言うようですが、「自分が決める」という強い気持ちがなければ、たとえ技術が高くても何にもならないですから。道は長いが、がんばれ祐介。

ピクシーグランパスはこの試合で初めて見たので偉そうな事は言えませんが、攻撃的というより、バランスの良い堅守速攻のチームという印象を受けました。3連敗を受けての修正ということなら、さらにいい。ストイコビッチは意外と優秀な監督かもしれない。強く行くところ、仕掛けないところ、メリハリのあるプレスを掛け、奪ったボールを素早く展開するサッカーに、強いポストマン、スピードと運動量のあるサイドアタッカー、高い戦術眼と技術を持った司令塔といったタレントが非常にマッチしていて、いいサッカーでした。

特に印象に残ったのは、右SBに入ったバヤリッツァ、左SHの小川、そして中盤の底からゲームメイクした中村直志。バヤリッツァは長友と羽生のスピードにもしっかり対応し、要所でタイミングのいいオーバーラップを見せた。左SHの小川が試合を通じて高いポジション取りをしていたために右サイドの守備負担は高かったと思うが、そつなくこなした。その小川は、高めの位置から前後左右に動いてボールに絡み、また徳永、佐原がボールを持った際には効果的にけん制して東京右サイドからの圧力をかなり低減させた。そして、中村直志。最近は代表に呼ばれないものの、やはりその力は代表クラス。高い戦術眼と密集に強い技術があり、決して無理はせずに状況に応じて左右にも散らし、隙あらば縦を衝く、けれん味のないシンプルな組み立てがインテリジェンスを感じさせる。キックはあくまでも正確で、かつ運動量も守備力もなかなかのもの。栗澤は中盤で非常に良く動いてボールを受け、チーム全体の連動性とポゼッションの向上に貢献していますが、欠けているのは、直志のようなゴールへ向かう意識の高さ。彼は決して無理はしないが、プレーの優先順位では常にダイレクトなプレーを上位に置いていることが伺える。クリも頑張ってはいるが、今年は勝負の年。昨年までのような「人のいいプレー」だけでは、大竹の体力が向上するまでのセットアッパーで終わってしまう。頑張れ、さらに頑張れ、クリ。

しかし、名古屋を褒めちぎる東京ブログってのも気持ち悪いですね。たまに勝ったからってアウェイでいつまでも騒いでる田舎者なんか別に褒めたくはないんですが、まぁ、今日はこんぐらいにしといたるわって感じで。浄のナイスディレイの数々を反芻しながら寝ます。おやすみなさい。

いやー、しかしなぁ…。


sakuralemmon at 08:43|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!FC東京