「おれは失敗作か」 及川清美・のり子のブログ

2009年9月、共同文化社より「おれは失敗作か」というノンフィクションを出した北海道岩見沢市在住の及川清美・のり子夫妻によるブログです。ここでは「おれは失敗作か」に掲載された手紙の全文や清美・のり子の作品などを紹介していきます。

2011年11月

第164回  こわれた弁慶号

19871225日金曜日

次の朝、子どもたちは寝ぼけまなこでプレゼントをみつけて大騒ぎ。のり子は時計を横目に出勤する仕度をしながら、

「母さんも一緒に見たいから、開けるのは夜まで待っててよー!」、といい残して 大急ぎで出かける。 しかし待てないのが子ども、そして清美だ! ベランダ側の部屋にまなみに指示して線路の組み立てが始まった。

そしてさぁ、赤い車輪の緑色の機関車に 単二の電池がはめ込まれスイッチオン!

 ”ピー、シュッポッポ、シュッポッポ  と白い煙を吐き、弁慶号はレールの上を円を描きながら走り出した。

 三歳になったばかりのまことが興奮してその上にかぶさるように四つん這いになって着いて回る。それを見ていたフサの放った一言、

「まこと、上に乗ってみぃ!」。 清美はとっさに

「こらー、やめろー!」、と叫んだが遅かった。弁慶号はまことの重みに耐えられず壊れて動かなくなった! 清美はいたく後悔した。

≪ こ、これは 一年早過ぎだったなぁ・・! ≫と。

 夜帰宅したのり子は汽車が走る姿を見る事は叶わなかったし写真も撮れなかった・・・残念。


 さて、じつは
二年生のまなみはもうサンタが だれであるか分かっていた。十日前裏の木村多恵の家に遊びに行った時、多恵の家の押し入れで まなみは見たのだ。赤いリボンのついた大きな箱を!

「これね、わたしのクリスマスプレゼントなんだよ」。

「ウッソー! まだサンタさんは来てないよ!」

「まなちゃん、サンタさんて おかあさんなんだよ。まなちゃんチもきっと買ってあるよ。探してみた?」

「・・・ううん、・・・」まなみはちからなく首を振った。

 だが まなみはその後も押し入れを探すことはしなかったし、両親に聞く事もなかった。

  こうして一九八七年は暮れて行った。  つづく
               次回  雪のふるさと

へっトホーンのセッティング

11月29日火曜日 晴れ 
 午前夫はさっそく末娘をこき使って?配線を手伝ってもらってますよ。 セッティング母がヘッドホーンでテレビの音をみんなといっしょに聴けるためのセッティングです。29日母も嬉しそうですね。
 すごい!バーブはもうトイレも覚え、ここの仲間にも慣れましたねぇ。
  29日 (2)リラックスモードです!  N

第163回  サンタのプレゼント

19871224日木曜日

今年もサンタが忙しくなるイブの夜が来た。二年生のまなみは 今度はどんなプレゼントがもらえるかと期待が高まる。

清美はひと月前に まことのプレゼントを探そうとCQの本の通販欄を見ていた。清美が探すのは じつは自分が小さいころ欲しかった物なのだが・・!。そこで目についたのが 初代蒸気機関車 弁慶号だ。早速注文した。

ちなみに 明治時代、初めて出来たSLに皇族が初試乗したところ、列車には はばかりなる物が作られていなかった。皇族は仕方なく自らのシルクハットの中に用を足したとか!

 そんなことがあって 急遽各列車にトイレが作られたそうな・・・!

  さて、のり子は毎年十二月になると恒例のサンタになる為に、今年も街に買い物に出た。その時に準備したのはまなみには画材セット、麻衣には離乳食用のかわいい茶碗を買いそれぞれにリボンをつけ、気づかれないように隠した。

その夜はまなみの友達木村多恵も呼んで、シチメンチョウならぬ鳥の足レックを焼き ささやかなパーティを開きみんなで楽しんだ。

さて八時を過ぎ多恵も もう引き揚げた。

「さ、起きてるとサンタが入って来られないから早く寝なさいね」、とのり子は子どもたちに就寝を促す。寝静まったころ、そっと枕元にプレゼントを置くのである。

 このありふれた幸せを二人は大切にした。  つづく
                次回  壊れた弁慶号

バーブがやって来た!

11月28日月曜日 晴れ
 10痔過ぎに無事着きました! すんごく元気ですよー!(笑) パーブ夫はこの笑顔! 他の先輩犬たちと挨拶を交わし、さ、おとなしく寝てくれるかな? 残っていた他の仔犬たちも全部もらわれて行ったそうですよ。めでたし!(喜)  N

第162回  クリスマスカード

1987115日木曜日

十月に入ってから

≪ 今年のカードは天使だ ≫ と清美はきめた。思えば八年前長女のまなみの天使の時はアルミ箔で輪をこしらえ 可哀そうだが背中にガムテープで止めた。
 だが、今回は頭の上の輪をどうするか、どうすれば光の輪になるか試行錯誤を繰り返し清美は毎日とても悩んだ。

 のり子も絵柄を絵コンテで起こし清美と詰めて行く。 その結果出来あがったのがこれだ。87年生後五か月の麻衣が夜空を舞う天使になった!

 そしてもう一パターンは貧しい二人の子どもがロウソクを持って祈る姿。87・クリスマスじつはこの絵は後で暗すぎると不評を買ったみたいなのだが・・・

―――八七年の清美のメッセージ―――

 幼い姉弟の祈り、小さなことば。『神様・・』。ここにはあの華やかな衣装もきらびやかな食卓もない。そのかわりにその手の中には、闇を照らす小さなひかり、燃え尽きることのない希望というローソクがしっかりと握られている。その瞳にはキリストの誕生を祝って鐘を打ち鳴らし、歌う天使達の姿が映っているのだろうか・・・     


  こうして清美とのり子は何かを
しつっこく追求し、どこかで大きく妥協しながら一つ一つ作品を作り上げて行くのだった。  つづく
        次回  サンタのプレゼント

来客バンザイ!

11月27日日曜日 雨
 冷たい雨ですねぇ。なんだか寂しくなりますね。 でも今日は来客が三人もありました。 本を買って下さりありがとうございました。 元気を頂きましたねぇ。夫も嬉しい悲鳴でしたよ!
 夫は今もあのタイプライターを打つ夢を見るそうです。思えばそれは毎日でした。タイプに向かわなかった日はなかったのです。あとは頭の中の文章と左の手指の早さの勝負なのだそうです。
 「あの頃があったから今があるんだなぁ・・」 夫は遠くに目をやりながら満足気です。  

 さて明日はいよいよ家に仔犬のバーブがやって来ます。下の娘が仕事を終えて栃木から連れて来ます。到着は夜10痔を過ぎるでしょう。
 無事辿りつきますように!  N

第161回  ガレージとビデオカメラ

1987104日日曜日 晴れ

 清美の家の玄関前のスロープは、六年前 廃材で肩屋根の小さな物置を建てた時ベニヤ板で仮に作ったものである。どれも今度の冬を耐えるのは無理と思われ、清美はあれこれと考えあぐんでいた。

 八月の終わりの事である。のり子の職場の男性職員瀬戸がその話を聞いて 知り合いの鉄工所に格安でのスロープ作りの口利きをしてくれた。のり子は気付かなかったが ホームの道路向いにその鉄工場はあったのだ。

早速瀬戸は玄関前を測量して行き二週間ほど後に立派な鉄製のスロープが仕上がった。

その幅はベニヤの1.5倍ある。そして片側には頑丈な手すりが着きサビ止めのレンガ色の塗装が施されていた。

「おお、もうたわむ事もないなぁ」と清美。九月十五日その真新しい立派なスロープの上で 秋祭りの晴れ着を着たまなみとヤエ、そして家族で記念の写真をパチリ。

 次に物置の代わりのガレージだ。清美はその時に担当のホームヘルパー石塚に相談した。すると早速

「今ね、石黒ホーマックでガレージの安売りが開かれているみたいよ」との情報を得た。

次の休みの日のり子と二人で見に行った。そして格安なガレージを手に入れた。配送日が十月四日なのでそれまでに近所に住む加藤(ゲンコツおじさん)に物置の解体を依頼、加藤は

「よし、引き受けたる!」と快く受けてくれた。

 その頃生後四か月の麻衣の目ざましい発達を記録しようと、清美はビデオカメラを購入し
た。サイズはVHSのテープがそのまま入る大型タイプであった。そして十月四日の朝、タイミング良く布団の上での麻衣の寝返りの瞬間をのり子はバッチリ捉える事が出来たのだ。

 外では三人の業者によりガレージの組み立てが始まった。子どもたちは外の冷たい風に負けずはしゃいでいる。のり子も外に出て三脚を立て、買ったばかりのビデオカメラで時間ごとにガレージ設置を撮影、完成までをしっかり録画した。夕方みんなでそれを再生して確かめた。すると清美がこんな提案をした。

「ちょっと巻き戻したり早回しして見てよ」。 すると完成したはずのガレージがなんと みるみる壊されて行くではないか!
 こうして清美たちは初めてのビデオ録画をけっこう楽しんだ。

 そしてこのガレージが後に大きな働きをする事になるとはこの時の二人は気付いていなかった。  つづく 
            次回  クリスマスカード

持ち帰りナンカレー

11月26日土曜日 晴れ
 うーーん、今朝生ごみ出すの忘れちゃったー! これからはこんな事が多くなったりして・・ トホホ!(笑)
 今日は休日の娘とダイエーショッピング、超軽ーい雪はね用長靴と格安な帽子をゲット。見立ててくれる人がいると(嬉) 
 帰りにインドカレーの店の持ち帰りを三人前、車の中はいい香り!においって大事ですよねぇ!
 「旨い!」 夫も喜び、でーす!  N

第160回  息子と初遠出

198797日 月曜日

 まことは夏に遊んだ遊園地の楽しさが忘れられない。ことある毎に

「まことねぇ、グリンランドに行きたいなぁー」と訴える。清美はもうそろそろ二人だけの遠出もいいだろうと思い、

「よし、まこと、明日保育園を休んで父さんと行ってみるか!」と言った。

「うん、行く!」。

 月曜日の朝、お天気は晴れだ。九時半に家を出発しさくらばでお昼に食べるアンパンを買った。二人は連れ立ってグリンランドを目指した。 

 まだ二歳と七カ月のまことは歩く道々『疲れた』と時々座り込む。清美は路の端の草の上にまことを座らせる。

「まこと、聞いてみたい事あるんだ。あのな、麻衣が産まれただろう。まことは麻衣に母さんを取られたみたいで嫌じゃないかなぁ。寂しいんじゃないか?」。するとこんな答えが返って来た。 

「いいの、麻衣は小さいんだから」と。

 二人は十一時前には遊園地に着いた。 平日月曜日とあって観客は清美とまことの二人っきりだ。 受付けに並ぼうとすると脇からお姉さんが出て来て、まこと、そして電動に乗った清美を交互に見ながらこう言った。

「お子さんとあなただけですか?」

「はい」

「そうですか、それなら障害者割引ですので全て只ですよ。さあどうぞ」との有難いお言葉!

 中に入り まことはまずは入口を入るとすぐ目に着くメリーゴーランドに乗りたいという。直ぐに係員に乗せてもらい何回もなんかいも回った。それからも『料金はいいですから』と言われて色々な遊具を一人占めで乗り放題、まことは目が回るほど遊ばせてもらった。

 そんな時まことは急に表情を曇らせこう言った。

「父さんも一緒に乗れればいいのにねぇ・・」。
 一時半ころお腹も空いたのでベンチのある場所に行き二人は買って行ったアンパンをかじった。 


 ところがいつの間にか空は雲行きが怪しくなって、遠くの方でビカッと光った。まことは叫んだ。

「あ、"イナズマリ"だ!」と。

「まこと、雨になるかも知れないから早く帰ろうな」。なごりを惜しみつつ二人は来た道を帰る事にした。

この日二人はかろうじて雨に当たらず家に帰り着き、時計は三時を回っていた。

外はけっこう寒いのだが 心は暖かい男同志の旅の一日であった。

次の日保育園のお絵かきの時間にまことが描いた絵がある。清美とまことが後ろ向きに並んでいる。向こうの空にはイナズマが光っていた。  つづく
       次回  ガレージとビデオカメラ

今日は快調!

11月25日金曜日 晴れ
 二日前から夫は下痢に悩まされておりましたが 今日は落ち着いて、口述も少し はかどりましたよ。 熱も辛いですが下痢も結構来ますねぇ(笑)  N
プロフィール

かかし

夫及川清美。妻のり子。1971年に岩見沢市内の福祉施設で出会い、7年間の交際を経て1978年に結婚。1男2女を育てる。現在、岩見沢近郊で、のり子の母、そして4匹の愛犬とたくさんのオーディオに囲まれて暮らす。2009年9月、共同文化社より二人の生い立ちと結婚のドキュメンタリー「おれは失敗作か」を出版。

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