日本人が民族として日本に誇りや愛着を自然に抱くことを肯定する立場から、 一市民として思うところを書いてみます。

閑話休題

安倍首相 退陣

2007年09月13日

夏の高校野球も終わってしまったというのに、実はあれからもずっと余韻にどっぷりでした。地元優勝という印象の深さと、野球といえば打ってなんぼ、打てば打つほど面白い…と思っていたのが、この夏は守備の美技が冴える試合が多く、初めて守備をみて面白いと思いました。
今大会ベストゲームとされた佐賀北vs帝京戦はたまたま録画していたのですが、DVDに焼いて保存する事にしたので、繰り返し見ては楽しんでいます。

さて、そんなこんなですっかりこちらの更新から遠ざかっていたのですが、昨日、ついに安倍首相退陣のニュースが飛び込んできました。
参院選大敗の時から、遠からずそういう事態になるであろうことは予想できていたことですが、おそらくは悲壮な覚悟で持ってこの国の政治を変えようとここまでがんばってこられたのでしょう。その彼を失脚させたのはいかなる力だったのか。
もちろん、健康問題が大きなウェイトを占めていたことは確かでしょうが、健康問題を悪化させるほどの大きなストレスがあったことは疑いないことです。

安倍首相は庶民の痛みがわからない、という人もいます。
あるいはそうかもしれません。しかし、何世代分もの政治家の視点をもってしてこそ見える世界もあると思います。国が国としてその存亡を懸ける局面では、庶民の願いと国のなすべきことは食い違うこともあるでしょう。
私も庶民ですから、庶民として生活を向上させたいのはもちろんです。
しかし、一人の親として、日本をより有るべき姿に近づけて子に孫に遺してゆきたいとも切に思います。その局面でこそ、政治家の世代を超えた眼差しを活かしてほしいと思っています。

安倍首相には、今はただ全てから解放されて傷を癒してほしいと願うばかりです。いずれまた別の形で活躍する局面が訪れるかもしれません。
tamagontaさんのブログの記事に、大変うなずけるものがありましたので、リンクを貼っておきたいと思います。

たまごんたのたまご「安倍総理、本当にお疲れ様でした」


最後に、またこの夏の高校野球の覇者、佐賀北の話をとりあげて今日の散文を締めておきたいと思います。
佐賀北は、豪速球投手がいるわけでもなく、超高校級の強打者がいるわけでもありませんでした。ただひとりひとりが完璧なまでに自らの仕事を全うしたのです。そこに必要だったのは、猛暑という悪条件下でもゆるぎない集中力と、それを支える持久力、そして、それら全ての選手の力をまとめ、綿密な分析の下に結束させる百崎監督という一教育者の存在でした。
彼らがその境地に行き着くまでに、チームは何度も瓦解の危機に見舞われます。
ひたすら基礎体力作りばかりで野球らしいプレイの練習が少ないことに選手たちは不満を募らせたのです。
監督はその危機を、部員一人一人と交換日記をする(野球日誌をつけさせる)ことで互いに意思疎通をはかり、選手の不満を汲むと共に、今、苦しい練習を乗り切ることの意義を伝え続けました。
結果的に、単調で苦しい練習を乗り越えたナインは、大舞台でも揺るぎない自信と、高い守備技術と、それらを全て支えるだけの強靭な体力を武器に甲子園を制したのです。

今、私たちは地味で苦しい試練に耐え抜かねばならない局面なのかもしれません。しかし、その試練の意義を理解できなければ、甘い誘惑に流されてしまうだけなのかもしれません。
佐賀北の選手たちには監督との意思疎通を図るための日誌がありましたが、私たちと政権の間にあるノートはその役割をはたしてくれているのでしょうか。そのノートはどうも、政権の言葉にフィルターがかかっているようなのですが、私たちはそこからどうやって真実を読み取っていけばよいのでしょう。





ソラゴト at 16:12 |  Comments(8) TB(0) clip!閑話休題 
球児たちの熱い夏

2007年08月17日

すっかり更新が滞っています。
ちょっと個人的にばたばたしてたのと、気分的に集中できなかったのと…いや、早い話がまとまった文章を書く気力がわかなかったというのが正直なところです。書きたい題材はたくさんあるし、実際かきかけているのですが、書きながら調べたり、もう一度考え直したり、何度も逡巡しつつ文章を練るのでどうにも進みません…

もっとも、このブログではこうして調べたり、考えたり、学んだりする事の方が私にとっては主眼なのですが、一方で、それを習慣化するためのブログでもあります。できるだけコンスタントな更新を心がけたいのですが、根がおおざっぱな私には、それが一番難しい課題です…

ところで、最近、意欲減退中の私にとって一服の清涼剤が高校野球です。毎年夏になると高校野球にいやされてます。
最近の若い子は…なんていいますが、昨年も今年も、名勝負目白押しです。
というわけで、今回は閑話休題、高校野球について熱く語らせてください(むしろ懇願…)。



昨年、私の印象に残る最も劇的な場面は、決勝戦の再試合、そのラストシーンです。息詰まる熱戦の末、最初の決勝戦は15回まで戦っても決着がつかず、再度仕切り直されたその試合。早稲田実業は斉藤くんが勝ち上がるにつれて熱い注目を集めるようになり、一方の駒大苫小牧では豪腕投手として開幕前から話題の田中くんが、三年連続の全国制覇を目指して上りつめてくる。
その二人の激突の最終章、再試合の9回表。4-1で早稲田実業が3点リードしていたのを、9回表で駒大苫小牧が2点を返して僅か一点差としたものの、その後2アウトをとられ、ラストバッターとしてバッターボックスに立ったのは、駒大苫小牧のエース、田中くんでした。ピッチャー斉藤くんとバッター田中くんの投手同士の対決で、田中くんは三振に倒れ、その瞬間、駒大苫小牧の三年連続全国制覇の夢が潰えて早稲田実業の優勝が決まったのです。
こんな劇的な巡り合わせが本当にあるんだなとしみじみ感じた試合でした。このまま映画にでもなりそうです。

そして、今年もまた延長15回で決着つかず、再試合となった試合が飛び出しました。大会7日目、三重の宇治山田商業と佐賀の佐賀北との試合です。昨年の決勝再試合と比べると、物語性、劇的要素には欠けていたかもしれませんが、不思議な事に、回が進むにつれて、選手たちはますます研ぎすまされ、五感を超えたところで次に為すべきことが初めからわかっているかのように軽やかに動くようになっていく…そういうところは昨年と共通しています。
酷暑のマウンド、8回から膠着して動かない試合、たったワンプレーで全てが決まる緊張感、長時間研ぎすまされた集中力と、それを支える持久力。


―― 神が降りてきた。


…などというと逆に滑稽に聞こえるかもしれませんが、そんな事さえ考えてしまうほどの空気が、甲子園全体を包んでいました。


二年続けて、こういう名勝負を見る事ができるというのも嬉しいものです。
また、こういう修羅場に踏んばる若者の精神力を垣間見て、頼もしく思いました。

無心に仲間達と切磋琢磨し、ライバルたちとしのぎを削り、長い長い青春の日々を凝縮して試合の中に結実させる高校野球。特に夏の大会は、名乗りを上げた野球部全てがトーナメントに組み込まれ、地方大会、全国大会を経て頂点に立つチームがきまるわけで、その意味で何か魔術的な(蟲毒にも似た)儀式のようですらあります。また、その過程で神の手に託されたとしか思えないような試合が頻発するというのも、また感慨深いものです。

いっそ、高校野球も相撲みたいに日本の神様に奉納してみたら、神様たちも喜ぶのではないかな〜、と思ってしまうほどです(半分本気)。
無心で、純粋で、伸びやかな高校球児達のエネルギーには、神聖さすら感じます。
いや、仰々しく奉納しなくても、きっと、神様たちは甲子園に見に来ているに違い有りません。
そうとしか思えないような場面を、私たちは現に何度も目の当たりにしているのですから。





ソラゴト at 21:08 |  Comments(2) TB(0) clip!閑話休題