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サラリーマンの読書エッセイ

本を読んでふと何かを思うとき、徒然なるままに書く簡単書評とショートエッセイです。

26 6月

阪急電車/有川浩5

 
どこの書店でも長く平積みなのが気になっていたこの小説、ようやく読みました。
もっと早く読めばよかったです。人の心を見事に描写した、すばらしいお話です。
文庫になってからもう6年。早くに映画にもなっていたようです。


taste:★★★★★

阪急電車 (幻冬舎文庫)
有川 浩
幻冬舎
2010-08-05


有川浩(2008/2010)幻冬舎文庫

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった・・・。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車― 人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。
(幻冬舎文庫 内容紹介)

この小説の内容や魅力をコンパクトにまとめた、実にいい内容紹介だと思います。出会いあり。別れあり。人間関係での疲れもあり。そんな、悲喜こもごもの人生の断面に、たまたま電車で居合わせた人々との心の通い合い。ほっこり、胸キュン・・・。まさにそんな表現がぴったりの、心温まる小説です。内容紹介には「長篇小説」とありますが、僕はこれ、連作短篇小説だと思います。

たまたま居合わせた人との間で、コミュニケーションは簡単には発生しないものです。多くの場合、できれば他人のことには構わないで過ごした方が楽なものでしょう・・・。そんな殺伐とした空気に、この小説は温かさの一石を投じます。阪急今津線の、西宮北口〜宝塚、わずか8駅の間で互いに感じ取り、そして触れあう心と心。そこには他人と触れ合う「やさしさ」があり、また他人と触れ合う「勇気」があります。

そう、他人と触れ合うには「勇気」も必要だと思います。そんな心の障壁を乗り越え、人の喜びや辛さと自分の心が共鳴できた時、人はそれを「やさしさ」と呼ぶのかもしれません・・・。そんなことを考えさせてくれる、すばらしい小説でした。既に映画にもなっていて、『阪急電車 片道15分の奇跡』として2011年に公開されたそうです。テレビでやってくれたら、はい、これは絶対に観たいです。

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《勇気とやさしさの顛末・・・》 

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19 6月

ひとり飲む、京都/太田和彦4

 
本業はデザイナーという著者が、京都での飲み歩きをエッセイにした作品です。
京都には、歴史ある居酒屋や喫茶店、そしてうどん屋がたくさんあるようです。
夏と冬、それぞれ一週間ずつ滞在してののんびり紀行。やってみたいです・・・。


taste:★★★★☆

ひとり飲む、京都 (新潮文庫)
太田 和彦
新潮社
2016-03-27


太田和彦(2011/2016)新潮文庫

至福のとき、この店に私が座っていることは誰も知らない―。日常の慌ただしさから身をかわし、京都に降り立つ。ホテルの居心地を整えたら逗留の始まりだ。朝は珈琲、昼はうどんや定食。そして夜はきりりとした居酒屋で旬の肴に舌鼓を打つ。日本酒と人情にほろ酔いになった頃、味わいあるバーに足を向ける。夏と冬、1週間ずつの都暮らし。男女ともに楽しめる達人流・美酒滞在記。
(新潮文庫 内容紹介)

こんなの、いいですね〜。仕事に埋没した20代。家族と共に人生を築いてきた30代から40代。そして50代も中盤にさしかかった今、こんな余裕のある楽しみ方に、ふとした憧れを感じます。多かれ少なかれ、人はこれくらいの年齢になると、目に見える具体的なものを求めることなく、自分の好きなことを楽しみながらゆっくりと流れる時を味わう、そんな至福のひと時を求めるようになるのかもしれません。

たまたま足を運んだ書店で平積みになっていました。内容紹介を見て、何も考えることなく自然に手が伸びました。こんなの、やってみたい―。仕事ではまだまだ現役の僕は、なかなかそんな時間が取れないことはわかっていますし、家族との時間が優先されるのも当然です。

もう少し年齢を重ねて、時間的にも精神的にももう少し余裕ができたら、こんなゆったりとした旅をしてみるのもいいかもしれません。僕だったら、京都じゃなくて奈良かな。いや、温泉があった方がいいから、やっぱり北海道かな。去年の夏に一泊した釧路は、炉端焼きの風情がよかったな、なんて。

今は長旅は叶いません。だからこそ、僕は今の単身生活をそれなりに潤いのあるものにしようと、あれこれ試みます。ひとりで飲みに行くことはあまりしません。むしろ、部屋でひとりでゆっくりと、おいしいお酒を飲むのが楽しみです。週末には時々、見様見まねで料理をしてみます。うまくできた時には、ますますお酒がおいしく飲めます。

これから先の人生、あらゆる意味で余裕を持ちたいものです。飲み歩きや食べ歩きに限らず、中高年にそんな「ゆとり」を提案してくれるエッセイでした。

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《ひとり飲む、少しだけ・・・》 

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29 5月

床下仙人/原宏一3

 
握る男』がおもしろかったので、原宏一さんの他の作品を読んでみました。
これは「新奇想小説」と名打った、奇想天外なコメディー短篇集です。
はい、おもしろいです。でも、作品の出来・不出来にばらつきがあるような・・・。


taste:★★★☆☆

床下仙人 (祥伝社文庫)
原 宏一
祥伝社
2001-01


原宏一(1999/2001)祥伝社文庫

「家の中に変な男が棲んでるのよ!」念願のマイホームに入居して早々、妻が訴えた。そんなバカな。仕事、仕事でほとんど家にいないおれにあてつけるとは! そんなある夜、洗面所で歯を磨いている男を見た。さらに、妻と子がその男と談笑している一家団欒のような光景を! 注目の異才が現代ニッポンを風刺とユーモアを交えて看破する”とんでも新奇想”小説。
(祥伝社文庫 内容紹介)

そんな表題作『床下仙人』のほか、4つの「とんでも新奇想」短編小説が収められた短篇集です。ハッカーの技術を駆使して会社にもぐり込んだニセの社員(『てんぷら社員』)。女が差別される不平等な社会を変えようとする女たちの結託(『戦争管理組合』)。社長を派遣するビジネスで会社を乗っ取る人材派遣会社(『派遣社長』)。家を追い出された後、家出少女とおかしなビジネスを始めてしまう中年サラリーマン(『シューシャイン・ギャング』)。共通する主題は、内容紹介にある通りの現代ニッポンの風刺です。

発想は突飛で、どれもおもしろいと思います。でも、中にはあまりに突飛すぎて、その突飛さだけでおもしろさを狙ったようなものもあり、僕は単純には笑えませんでした。そんな、やや疑問符を頭に浮かべながら読みたくなる小説です。僕は、ただ突飛なだけでなく内容に深みや哀しさを持つ、表題作『床下仙人』と『シューシャイン・ギャング』が好きでした。

いずれの作品にも、妻に三行半を突き付けられたり会社を放り出されたり、理不尽な策略で職を失ったりした哀しいサラリーマンが登場します。会社組織に身を委ねた男たちへの、痛烈な風刺。確かにそこには、サラリーマン人生の悲喜こもごもがありますねえ・・・。

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《ご心配、ありがとう・・・》 

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22 5月

ペテロの葬列(上・下)/宮部みゆき2

 
杉村三郎シリーズ第三作です。今回、杉村が遭遇する事件はバスジャック。
内容紹介を読んで、今度はおもしろいかも、と思って手にしました。
でも・・・。宮部さん、このシリーズはあまり得意ではないのかもしれません。


taste:★★☆☆☆

ペテロの葬列 上 (文春文庫)
宮部 みゆき
文藝春秋
2016-04-08

ペテロの葬列 下 (文春文庫)
宮部 みゆき
文藝春秋
2016-04-08


宮部みゆき(2013/2016)文春文庫

「皆さん、お静かに。動かないでください」。拳銃を持った、丁寧な口調の老人が企てたバスジャック。乗客の一人に、杉村三郎がいた。呆気なく解決したと思われたその事件は、しかし、日本社会の、そして人間の心に潜む巨大な闇への入り口にすぎなかった、連続ドラマ化もされた、『誰か』『名もなき毒』に続く杉村シリーズ第3作。
(文春文庫上巻 内容紹介)

杉村三郎ら明日ジャック試験の被害者に届いた「慰謝料」。送り主は? 老人の正体は? 謎を追う杉村が行き着いたのは、かつて膨大な被害者を生んだ、ある事件だった。待ち受けるのは読む者すべてが目を疑う驚愕の結末。人間とは、かくも不可思議なものなのか―。これぞ宮部みゆきの真骨頂。
(文春文庫下巻 内容紹介)

杉村三郎シリーズの『誰か』『名もなき毒』は、かつて読んだことがあります。いずれも、動きが少なく静かな印象で、迫力に欠けたような気がしたものでした。比較的小規模な事件をきっかけにして、背後にうごめくもっと大きな社会的な問題にまで話が及ぶ、という構成全体が、僕には大きな空回りのように感じられるのです。結果、どうにもストーリー展開が冗長になっているような印象が否めません。

この『ペテロの葬列』もそんな印象でした。一つの事件を足がかりに、その真相や背景が徐々に明らかになっていく、という展開に、僕は正直なところ退屈さを覚えました。これも二つの前作同様、動きが少なく静かです。そして、事件の背景として取り上げた問題の本質がわかりにくい。ラスト近くでの杉村三郎の離婚の顛末も、僕はこの物語の主題と、すんなりと結びつけることができませんでした。

そんなわけで、残念ながら僕にはこれ、「宮部みゆきの真骨頂」とは思えませんでした。むしろ、このところの宮部さんの真骨頂は、時代ものにあるのではないでしょうか。今年読んだ『桜ほうさら』は、心温まるすばらしい作品でした。現代ものサスペンスでも、『火車』や『理由』、そして『模倣犯』などで味わった唸るような迫力に、また期待したいと思います。

この小説できっかけとなった事件はバスジャック。今日はそこから派生して、バスツアーの思い出話を書いてみたくなりました・・・。

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《好きです、バスツアー。・・・》 

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かつては単身7年間
解消してから3年半で
再び転勤、また単身
柴犬むすめと暫しの別れ
これぞ日本のサラリーマン

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