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サラリーマンの読書エッセイ

本を読んでふと何かを思うとき、徒然なるままに書く簡単書評とショートエッセイです。

4 12月

天才/石原慎太郎4

石原慎太郎が田中角栄の生涯を一人称で語る、伝記的なベストセラー小説です。
石原氏が「この歳になって凄さが身にしみた」と述懐する、田中角栄。
賛否両論がある中、リーダーとしての手腕は学ぶところが多いように思います。


taste:★★★★☆

天才
石原 慎太郎
幻冬舎
2016-01-22


石原慎太郎(2016)幻冬舎

この歳になって田中角栄の凄さが身にしみた―
高等小学校卒。幼い頃から身につけた金銭感覚と類稀なる人間通を武器に、総理にまで伸し上がった男の知られざる素顔。
田中金権政治批判の急先鋒だった石原慎太郎が万感の思いを込めて描く田中角栄の生涯。
(幻冬舎単行本の帯より)

あの「ロッキード事件」が発覚した際、「よっしゃよっしゃ」とか「記憶にございません」とか、あるいは「ハチのひと刺し」なんてことばが流行したものです。それほどに国民の関心の高い事件であったことも確かながら、あの事件はまだ未解明の部分も多いと聞きます。

田中角栄氏の政治が「金権政治」であったことは間違いないと思います。その全容が明らかになるきっかけは、1974年に立花隆が文藝春秋に掲載した論文『田中角栄研究―その金脈と人脈』でした。まだ中学生だった僕はこれを読むには至りませんでしたが、そんな記事が文藝春秋に掲載されたことは知っていました。そして、田中総理は何かマズい方法でお金を手に入れているらしい、ということくらいはわかりました。僕が「汚職」とか「贈収賄」とかいうことばを覚えたのも、この事件がきっかけだったと思います。

しかしながら、日本の将来を見越した『日本列島改造論』は、それから数十年先には現実ものとなっていますし、今となっては田中角栄礼賛の著作も多数あるようです。数年前に僕が読んだ『田中角栄に今の日本を任せたい』(大下英治・角川SSC新書)もその一つでした。政治のやり方も私生活も、かなりヤクザなところを持ちながらも、目先の小さなことにこだわらず、リーダーとして強大な力を発揮した田中角栄。その、未来を見据えたリーダーシップは、将来とも語り継がれることになるのでしょう。

民衆の声に耳を傾けることも大切です。しかし一方で、政治家には自らの意思で国や地域を動かすような、そんな剛腕を振るってもらいたい時もあります。いいから黙ってついて来い・・・。あの事件の後でも、彼が地元新潟ではカクさんカクさんと言って慕われたというのも、今となってはわかるような気がします。

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《民主主義の混乱・・・》 

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20 11月

仕事に効く教養としての「世界史」/出口治明4

 
出口さんの著書は、今年『人生を面白くする本物の教養』を読みました。
「仕事に効く」の意味はさておき、歴史ってまさに「教養」だと思います。
どう活かすかは人それぞれ。「歴史のすすめ」くらいに受け止めたい本です。


taste:★★★★☆



出口治明(2014)祥伝社

先人に学べ、そして歴史を自分の武器とせよ。
人類5000年史から現代を読み解く10の視点とは。
京都大学「国際人のグローバル・リテラシー」
歴史講義も受け持ったビジネスリーダー、待望の1冊!
(祥伝社単行本の帯より)

読後感の一つとして言わせていただけば、「仕事に効く」とか「歴史を自分の武器とせよ」とかのうたい文句は、やや取ってつけたかのような言い方に映ります。確かに、先人に学ぶことは大切だと思いますし、歴史という分野を「教養」として身につけておくことは、人の知性を構成するアイテムとして、何らかのよい影響を与えることでしょう。しかし、「おわりに」の章で著者自身が言う通り、少なくともこの本を読んだからといって、歴史を学ぶことで仕事をしていくうえでの具体的なノウハウが得られるわけではありません。

一方で、著者は「はじめに」の章では、「いろいろな歴史を知っていると、人々とのコミュニケーションを取るときの最初のバーが低くなる」ことが、「仕事に効く」の意味であると言っています。これは実に小さな、具体的な一場面で「仕事に効く」ケースを言っているだけで、歴史を単に知識として活用する方法であるに過ぎません。

どうやら著者にとっても、この「仕事に効く」といううたい文句は邪魔になっているように見えます。同じく「おわりに」の章で述べられている次のようなことばが、著者の本音ではないでしょうか。

(「仕事に効く」の意味は)負け戦をニヤリと受け止められるような、骨太の知性を身につけてほしいという思いからでした。そのことはまた、多少の成功で舞い上がってしまうような幼さを捨ててほしいということでもありました。

それこそが、まさに「教養」の、そして「知性」の正体ではないかと思います。著者はこの本の内容について、「見たり聞いたり読んだりして、自分で咀嚼して腹落ちしたことをいくつかとりまとめたもので、この本の準備のために読んだ本は一冊もない」と言っています。教養や知性はそういうもの、即ち「腹落ち」だと僕は思います。歴史を学ぶ意義は、知識を蓄積することではありません。知識と知識をつなぎ合せ、「腹落ち」をたくさん経験することではないかと思います。

無論、出口さんの「腹落ち」は、僕の新しい知識として蓄積されました。しかし、この本はそれ以上に、僕にそうやって「歴史」と「教養」、そして「腹落ち」について考えさせてくれたところに、「読んでよかった」感を残してくれました。

この本のタイトルは「教養としての世界史」だけで十分だと思います。「仕事に効く」ということばがついているだけで、★一つ減点です!

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《でもやっぱり、歴史は知識の蓄積から。・・・》 

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13 11月

紫匂う/葉室麟4

 
平凡に、淡々と暮らす夫婦。寡黙な夫の心の奥底には、妻への深い愛が・・・。
いざというとき、妻を信じて果敢に行動する夫・蔵太に心を打たれます。
葉室さんらしい、日本人の心模様を描いた傑作です。


taste:★★★★☆

紫匂う (講談社文庫)
葉室 麟
講談社
2016-10-14


葉室麟(2014/2016)講談社文庫

寡黙で実直な夫・蔵太と共に平穏に暮らす澪の前に、一度だけ契りをかわした幼馴染みの笙平が現れた。藩内抗争に巻き込まれ咎を受け逃亡した笙平を匿う澪に、朴念仁であるはずの夫は意外な優しさを見せる。武士の妻が持つべき義と交錯する想いに、二人の男の狭間でもがく澪。日本人の心性を問う傑作時代小説。
(講談社文庫 内容紹介)

過去に一度だけ、笙平と契りをかわした澪。当然、二人は夫婦となる心づもりであったにも関わらず、笙平は突然、自らの将来が開けそうな婿入り話を受け入れます。後に、それは藩内の抗争を有利に進めるための謀りごとであることが明らかになります。それに気付いた笙平は、無実の咎を受け逃亡する身に・・・。

そんな笙平を匿う、幼馴染みの澪。それに気付いているにも関わらず、朴訥として微動だにしない澪の夫・蔵太。そして、澪の命も危ない危機的な状況に陥った時、過去だけでなく足下での澪の不倫さえも疑われるにも関わらず、ひたすら妻を信じて夫の蔵太は果敢に動きます。

普段は素ぶりさえも見せず、心の底で妻への深い愛を持つ蔵太。義を信じて戦う姿がかっこいいです。一方で、澪の幼馴染みの笙平。藩内にはびこる悪と戦い、正義を貫くいい男・・・だと思っていたのに、物語が進むにつれ、優柔不断だったりスケベだったりで、徐々にこいつはたいした男ではない、という映りが目立ち始めます。う〜ん・・・。せっかくですので、笙平も蔵太と同様、いい男のままでいてほしかったです。

その点だけ、僕は個人的には★一つ減点。それ以外は、蔵太の心意気と夫婦の愛に心を打たれる、傑作と言えるいいお話でした。熟年の夫婦って、普段は口に出さずとも、お互いに心から信頼できる関係を築きたいものですねえ・・・。

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《すてきですか? 熟年夫婦・・・》 

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30 10月

約束の海/山崎豊子5

 
自衛隊に関連した小説として、元単身赴任のYHさんにご紹介いただきました。
山崎さんの遺作で、残念ながら未完ながら、思いは十分に伝わってきます。
自衛隊についての日本の認識は、実に複雑・・・。未完成でも心に響く作品です。


taste:★★★★★

約束の海 (新潮文庫)
山崎 豊子
新潮社
2016-07-28


山崎豊子(2014/2016)新潮文庫

海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と釣り船が衝突、多数の犠牲者が出る惨事に。マスコミの批判、遺族対応、海難審判・・・・・・若き乗組員・花巻朔太郎二尉は過酷な試練に直面する。真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉を父に持つ花巻。時代に翻弄され、抗う父子百年の物語が幕を開ける。平和とは、戦争とは。構想三十年、国民作家が遺した最後の傑作長篇小説。
(新潮文庫 内容紹介)

物語の発端となる潜水艦の衝突は、今から30年近く前に実際にあった、漁船と自衛隊の潜水艦の衝突事故がモデルになっています。あの事故では、自衛隊側がかなりのバッシングを受けていたように記憶しています。当時も今も、この日本にあって、様々な捉え方や考え方で議論される自衛隊。今にして思えば、あの時マスコミが果たしてどれくらい真実を伝えていたのか、疑問を持つべきだったのかもしれません。

そんな海難事故を皮切りとして、「くにしお」の乗組員である主人公・花巻朔太郎の試練、そしてその父親である元海軍少尉・花巻和成の苦悩へと、物語は広がります。残念ながら、この未完成の小説は父親の過去にまでは到達しませんが、この「第一部」の終り近くに登場する父親の姿に、自らの苦悩と自衛隊員としての息子に寄せる想いを、少しだけ読み取ることができます。そのあたりは、巻末の「山崎プロジェクト編集室」による「『約束の海』その後―」で垣間見ることができるのみ。返す返す、この作品が未完となってしまったことが残念です。

そんなこの小説において、朔太郎が心を寄せるフルート奏者、小沢頼子の存在が輝きを添えます。厳しい現実に直面する朔太郎の心の支えとなり、あるいは心を迷わせる源ともなる頼子。強い心と美しい容姿を持った彼女は、この先、朔太郎と結婚するのだろうか・・・。残念ながら、その結末もわかりません。しかし一方で、結果的にそんなミステリアスなところが、この小説に深みを加えているようにも思えます。はい、未完成でも、十分に読ませる小説でした。

フルート・・・。最近、女房もフルートを始めました。これ、オーケストラにあっては地味な楽器ながら、なかなか心に響くものがあるんです。女性の奏者が多い中、これを男性が、しかも初老の紳士がやるのも、またシブくてかっこいいものなんです・・・。

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《フルートおじさんの魅力・・・》 

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かつては単身7年間
解消してから3年半で
再び転勤、また単身
柴犬むすめと暫しの別れ
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