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サラリーマンの読書エッセイ

本を読んでふと何かを思うとき、徒然なるままに書く簡単書評とショートエッセイです。

16 12月

クラシック音楽全史 ビジネスに効く世界の教養/松田亜有子4

難しいことは抜きにして、新聞広告で見たこの本、ゆったり読んでみたくなりました。
なるほど。知っていれば、音楽をもっと楽しく聴けそうな歴史的背景を教えてくれます。
「ビジネスに効く」っていうのは取って付けたような感じもありますが・・・。


taste:★★★★☆



松田亜有子(2018)ダイヤモンド社

紀元前から21世紀の日本まで、クラシック音楽の流れがざっくりわかる!
ピタゴラスによる音階の解明や、プラトンが人材教育に音楽を必須化した理由、ベートーヴェンが起こした3つのイノベーションなど、音楽は歴史につながる。
言葉を超えた音楽こそ、世界共通のビジネスツールだ
(ダイヤモンド社単行本の帯より)

中学生の頃からぐるりと回り、僕の音楽の嗜好がクラシックに還ってきてからおよそ15年。最近は、女房とクラシックの演奏会にも出かけるようになりました。女房は3年ほど前にフルートを習い始めてから、じわりとクラシックに合流してきました。老後の共通の趣味になりそうな気もします。

確かに、こんな趣味を持つ人がその歴史や背景についてのより深い知識を持っていれば、ビジネスシーンでの会話が弾む材料にはなることでしょう。でもそれを捉えて、「ビジネスに効く世界の教養」というサブタイトルをつけてしまうのはいかがなものでしょうか。サブタイトルだけならまだしも、本文でも始めの方に「ビジネスに効く」の説明をしている部分が少しあります。もしかしたら著者は、編集者から無理にこんな誘導をさせられたのではないだろうか、という疑念さえも持ってしまいます。

僕は、この本の「はじめに」にある最後の2行、「本書をきっかけに、ひとりでも多くの皆様がクラシック音楽に興味を持ち、楽しんでいただくことができましたら、このうえない喜びです。」ということばこそが、著者が本当に言いたいことのすべてではないかと思います。このことばからは、「ビジネス」の響きは感じられませんよね。はっきり言って、「ビジネスに効く」ことを狙ってこの本を読んでしまっては興ざめです。

「帯」にある通り、この本を通して読めば、紀元前に遡るクラシック音楽の起源や歴史、偉大な作曲家たちの生活や音楽家として名をはせた様子など、クラシック音楽を取り巻く背景やその流れがざっくりとわかります。そんな知識を持って音楽を聴けば、確かに少し、聴き方も響き方も違ってくるものです。この本は難しい理屈ではなく(難しい理屈も少し書かれてはいますが・・・)、そんな「軽い教養」の感覚で読むことをお勧めしたい本だと、僕は思いました。

前述したようなほんの一部の不満を除けば、僕はこの本を十分に楽しめました。広く知識を仕入れることができたのは無論ながら、僕が最も納得したのは、「おわりに」の冒頭に著者が書いている、以下のような文です。

「聴き減りのしない音楽」―この言葉は、ドラゴンクエストシリーズの作曲家としても有名なすぎやまこういちさんが、クラシック音楽を表した言葉です。「ベートーヴェンやモーツァルトの音楽を全人類が200年以上聴いていてもまだ飽きないというのは、飽きない音楽の真髄」だと。
 この言葉を目にしたとき、これだ! と思いました。
「聴き減りしない音楽」―それが”クラシック音楽”なのです。

(ダイヤモンド社単行本初版 p.185「おわりに」)

僕もこれを読んで、「これだ!」と思いました。聴き減りしないのがクラシック音楽。多くの人に演奏されながら、何百年も人々に聴かれ続けている曲。それでこそ「classic」、一流の音楽ですなんですね。納得です。

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《生の「一流」を求めて・・・》 

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9 12月

日日是好日−「お茶」が教えてくれた15のしあわせ/森下典子5

 
ちょうど10年前、文庫が刊行された直後に読んだこの本、再び読みたくなりました。
あの時、これはまたいつか読もうと思い、単身の北海道に持ってきていたんです。
季節の移ろいとそれを五感で感じ取る歓び・・・。やっぱりこの本、名著です。


taste:★★★★★



森下典子(2002/2008)新潮文庫

お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる・・・季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。
(新潮文庫 内容紹介)

ちょうど10年前に読んだこのエッセイが映画になったと聞き、書棚から探し出して再び読みました。二十歳の時にふとしたきっかけから、近所の「武田のおばさん」にお茶を習い始めた著者、典子さん。それから24年間のできごとや、その間ずっとそばにあった「お茶」を通じて感じ取る心模様を、淡々と綴ったエッセイです。そこには、からだで感じ取る季節の移ろいや、そんな気づきに導かれるような典子さんの心の成長が描かれていて、読者にも安息を与えてくれます。そして、うまく説明できないような、そこはかとない感動を残してくれます。

この本の「まえがき」にそんな典子さんの思いが凝縮して記されていて、この本を一度読んだならば、二度目以降はこのまえがきを読むだけでじ〜んとくるものがあります。文庫に解説を寄せている噺家の柳家小三治さんが、やはりこの「まえがき」のすばらしさを書いていますので、その部分を引用してみます。

「すると、ある日突然、雨が生ぬるく匂い始めた。『あ、夕立が来る』と、思った。」
とここらから感動の渦が胸の奥で回り出す。そして、
「私はどしゃぶりの中にいた。雨を聴くうちに、やがて私が雨そのものになって、先生の家の庭木に降っていた。(「生きてる」って、こういうことだったのか!)ザワザワと鳥肌が立った。」
ここを読むときいつだって私は滂沱の涙が止められない。

(新潮文庫初版解説 p.249)

さて、いったいこれがどんな映画になったのだろう・・・。この映画を、昨日見に行きました。はい、エッセイを素直になぞったような、シンプルでいい映画でした。余計なお話をくっつけてドラマを作り上げるより、この方がずっといいと思いました。20歳から44歳までの典子さんを演じる黒木華さんが、地味ながら心の奥深くをうまく表現していて、ぴったりでした。これ、エッセイも映画も、何度も味わいたくなるような名作だと思います。

僕が二度目を読んで、深く感動したところがあります。この文章、10年前には軽くスルーしたのかもしれません。あれから+10歳の年を重ねたからこそ、その下りに感動を覚えるようになったのかもしれません。

どれ一つ見ても、そこに季節があり、その日のテーマと調和がある。それが、お茶のもてなしだった。
けれど先生は、それを口にしない。(中略)気づいてみて初めて、いつ気づくか知れない私たちのために、先生が毎週、どれほど心を尽くして季節のもてなしを準備してくれていたのかを知った。(中略)
私なら、演出した仕掛けをすべて言いたくなるだろう。けれど、言葉で言ってしまっては、伝わらないものがある。
先生は、私たちの内面が成長して、自分で気づき、発見するようになるのを、根気よくじっと待っているのだった。

(新潮文庫初版 p.226)

もてなしのために尽くした心は、言葉で言ってしまってはむしろ伝わらない・・・。今回僕は、こんな心を大切にしたいと思いました。自然に、にじみ出るような心こそが、相手に伝わるものだと思いました。

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《合理性からの脱却・・・》 

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2 12月

キラキラ共和国/小川糸5

 
『ツバキ文具店』の続編です。やっぱり、文庫になるのを待ちきれませんでした。
ミツローさんと結婚した鳩子さんの、ささやかながら幸せな日々が描かれます。
ほのぼのとした空気に包まれるような作風に、すっかりハマりました。


taste:★★★★★

キラキラ共和国
小川 糸
幻冬舎
2017-10-25


小川糸(2017)幻冬舎

大切な人との思い出は、いつもあなたに寄り添って、今日の、そして明日の力になってくれる。
そんな思い出が、あなたにもきっとある。
忘れてしまった、”かけがえのない記憶”を思い出させてくれる一冊です。
(幻冬舎単行本の帯より)

前作『ツバキ文具店』のラストで、ミツローさんとの結婚を決意した鳩子さん。住居はまだ、結婚前に住んでいた場所のままで離ればなれながら、結婚後の温かい生活のスタート地点から、この続編が始まります。ミツローさんの実家の家族や、事件で亡くなった前妻の美雪さんの記憶も登場し、家族や血縁とのつながり、そして「かけがえのない記憶」に寄せる思いを多く描いた、ますます心温まるお話に仕上がっています。

前作を読み終えた時、続編が昨年、既に出版されていることを知りました。文庫になるまでにはまだ少なくとも1〜2年はかかりそうです。どうしても続きが読みたくなり、やっぱりがまんできずに単行本を手に入れました。はい、少々高くても(1,400円ですが・・・)読んでよかったです。

代書屋としての仕事は、前作ほど多くは描かれません。それでも、何度か現れる鳩子さんの手書きの手紙に、心を洗われるような気持ちになります。ラスト近くに出てくる、亡き美雪さんへ宛てた手紙は、「圧巻」とも言えるすばらしさでした。思わず涙が溢れました。

鳩子さんが、先代から引き継いだ大事な万年筆を掃除する場面が出てきます。そうか、万年筆って、こうやって掃除すれば長く使えるのか。ふと、郷愁めいたものを覚えました。僕にも、思い出が詰まった万年筆があります。久しぶりに使ってみようか、という気になりました。そうなんです、万年筆って、日常的に使わないとすぐにインクが固まってしまうんですよね・・・。

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《万年筆にときめく・・・》 

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18 11月

わが心のジェニファー/浅田次郎5

久々の浅田次郎は、書店で単行本を見て読みたいと思っていた小説です。
アメリカ人の目を通じて、日本の文化や伝統、心を伝えるいいお話です。
ラストの釧路湿原の場面は、じ〜んと涙が滲みます。不足なしです。


taste:★★★★★



浅田次郎(2015/2018)小学館文庫

日本びいきの恋人ジェニファーから、結婚を承諾する条件として日本への一人旅を命じられたアメリカ人青年ラリー。ニューヨーク育ちの彼は、退役海軍少将の祖父に厳しく育てられた。太平洋戦争を闘った祖父の口癖は「日本人は油断のならない奴ら」。日本に着いたとたん、成田空港で温水洗浄便座の洗礼を受ける。京都では神秘の宿に感銘し、日本女性のふたつの顔を知る・・・。異国の地で独特の行動様式に戸惑いながら列島を旅するラリー。やがて思いもよらぬ自分の秘密を知ることに・・・。圧倒的読み応えと感動。浅田文学の新たな到達地点!
(小学館文庫 内容紹介)

はい、圧倒的な読み応えと感動です。日本びいきの女性と、その彼女との結婚を望む素直で純粋な青年、という設定もすがすがしい印象で、また物語の端々で笑いも呼びます。浅田次郎さん独特の作風ですね。飽きることもなく最後までサクサクと、一気に読める小説です。

そして、最後に明らかになるラリー自身の秘密。そこに至るまでの経緯も、フィクションたる小説にありがちなわざとらしさを感じさせません。行き着いた先は北海道の釧路。そこで出会った人とのふれ合いにも、何かが起きそうな気配が漂います。これから起きそうな、何かパッと大きな展開を予感させ、ラスト近くはスリルさえ覚えます。いい作品でした。

実は僕は、釧路が好きです。しかし、北海道の東の端近くにあるこの街は、なかなか簡単には行ける土地ではありません。一度行ったきりで、もう行くことはないだろうなあ、とも思いましたが、ところが意外にも、ここ1〜2年は釧路に縁があるんです・・・。

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《好きです、釧路。・・・》 

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11 11月

経営参謀/稲田将人5

先日読んだ『戦略参謀』の続編で、同じく企業小説の形をしたケーススタディです。
大手紳士服チェーンを退職した高山昇は、今度は婦人服大手の再生を手掛けます。
「見える化」と「PDCA」がより深く議論されます。これも前作以上にいい小説でした。


taste:★★★★★



稲田将人(2014/2018)日経ビジネス人文庫

紳士服チェーン「しきがわ」の経営改革を成功させた高山昇は、婦人服大手「グローバルモード」に転職。同社社長からメインブランドの立て直しを依頼させる。ユニークな販促案、精度の高いマーケティング調査、新業態の立ち上げと、次々と結果を残していくが、その先には思わぬ「落とし穴」が待っていた―。大好評の「戦略参謀」続編を大幅加筆し、文庫化。
(日経ビジネス人文庫 内容紹介)

前作『戦略参謀』と同じ、500ページと少しの厚さの文庫で1,000円(税別)です。ちょっと高い気もしますが、内容は1,000円払って余りあるものだと思います。書店でこの続編が文庫化されているのを目にして、迷わず購入しました。

続編でまず取り上げられているのは、「市場とのかい離」です。市場を細かく、定量的に分析し、実態を見えるようにして把握。そして、売り方が市場の求めにミートしていない部分を是正します。店に入りたくなる理由、客層別の来店頻度、そして購買動機や購買行動。こんな市場の「プロファイリング」は、前作ではあまり議論されなかったアイテムで、続編ではそこを重点的に掘り下げています。そしてやはり、そのような経営戦略の中で貫かれる手法が、「見える化」と「PDCA」です。前作と合せて、企業経営の全体観がより具体的に見えてきます。

取り上げられた事例はいわゆる「B to C」(Business to Customer)ですが、僕の会社のような「B to B」(Business to Business)での業態でも、経営戦略の考え方自体は同じでしょう。技術企画、経営企画といった企画部門で仕事をする人はもちろんのこと、仕事に少しでも「戦略」を必要とする人に、大いに役立ち考えさせてくれる本です。邪魔をする人や、成果を横取りすることを企てる人が現れる、「小説」独特の演出にやや胡散臭さを感じながらも、実際にそのような確執は、多かれ少なかれどんな企業にも存在するのかもしれない、とも思えました。

さて、実のところ、僕の会社の今年度の業績はピリッとしないところがあり、今、今年から来年にかけての戦略に頭を悩ませているところです。そんな時、社員の元気や明るさを維持し、モチベーションを失わないようにすることも大切ですよね。仕事に直接関係なくても、社内に明るい話題を育てていくことは、重要な経営戦略の一つだと思うのです・・・。

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《キミこそが経営資源・・・》 

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かつては単身7年間
解消してから3年半で
再び転勤、また単身
柴犬むすめと暫しの別れ
これぞ日本のサラリーマン

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