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サラリーマンの読書エッセイ

本を読んでふと何かを思うとき、徒然なるままに書く簡単書評とショートエッセイです。

29 5月

床下仙人/原宏一3

 
握る男』がおもしろかったので、原宏一さんの他の作品を読んでみました。
これは「新奇想小説」と名打った、奇想天外なコメディー短篇集です。
はい、おもしろいです。でも、作品の出来・不出来にばらつきがあるような・・・。


taste:★★★☆☆

床下仙人 (祥伝社文庫)
原 宏一
祥伝社
2001-01


原宏一(1999/2001)祥伝社文庫

「家の中に変な男が棲んでるのよ!」念願のマイホームに入居して早々、妻が訴えた。そんなバカな。仕事、仕事でほとんど家にいないおれにあてつけるとは! そんなある夜、洗面所で歯を磨いている男を見た。さらに、妻と子がその男と談笑している一家団欒のような光景を! 注目の異才が現代ニッポンを風刺とユーモアを交えて看破する”とんでも新奇想”小説。
(祥伝社文庫 内容紹介)

そんな表題作『床下仙人』のほか、4つの「とんでも新奇想」短編小説が収められた短篇集です。ハッカーの技術を駆使して会社にもぐり込んだニセの社員(『てんぷら社員』)。女が差別される不平等な社会を変えようとする女たちの結託(『戦争管理組合』)。社長を派遣するビジネスで会社を乗っ取る人材派遣会社(『派遣社長』)。家を追い出された後、家出少女とおかしなビジネスを始めてしまう中年サラリーマン(『シューシャイン・ギャング』)。共通する主題は、内容紹介にある通りの現代ニッポンの風刺です。

発想は突飛で、どれもおもしろいと思います。でも、中にはあまりに突飛すぎて、その突飛さだけでおもしろさを狙ったようなものもあり、僕は単純には笑えませんでした。そんな、やや疑問符を頭に浮かべながら読みたくなる小説です。僕は、ただ突飛なだけでなく内容に深みや哀しさを持つ、表題作『床下仙人』と『シューシャイン・ギャング』が好きでした。

いずれの作品にも、妻に三行半を突き付けられたり会社を放り出されたり、理不尽な策略で職を失ったりした哀しいサラリーマンが登場します。会社組織に身を委ねた男たちへの、痛烈な風刺。確かにそこには、サラリーマン人生の悲喜こもごもがありますねえ・・・。

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《ご心配、ありがとう・・・》 

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22 5月

ペテロの葬列(上・下)/宮部みゆき2

 
杉村三郎シリーズ第三作です。今回、杉村が遭遇する事件はバスジャック。
内容紹介を読んで、今度はおもしろいかも、と思って手にしました。
でも・・・。宮部さん、このシリーズはあまり得意ではないのかもしれません。


taste:★★☆☆☆

ペテロの葬列 上 (文春文庫)
宮部 みゆき
文藝春秋
2016-04-08

ペテロの葬列 下 (文春文庫)
宮部 みゆき
文藝春秋
2016-04-08


宮部みゆき(2013/2016)文春文庫

「皆さん、お静かに。動かないでください」。拳銃を持った、丁寧な口調の老人が企てたバスジャック。乗客の一人に、杉村三郎がいた。呆気なく解決したと思われたその事件は、しかし、日本社会の、そして人間の心に潜む巨大な闇への入り口にすぎなかった、連続ドラマ化もされた、『誰か』『名もなき毒』に続く杉村シリーズ第3作。
(文春文庫上巻 内容紹介)

杉村三郎ら明日ジャック試験の被害者に届いた「慰謝料」。送り主は? 老人の正体は? 謎を追う杉村が行き着いたのは、かつて膨大な被害者を生んだ、ある事件だった。待ち受けるのは読む者すべてが目を疑う驚愕の結末。人間とは、かくも不可思議なものなのか―。これぞ宮部みゆきの真骨頂。
(文春文庫下巻 内容紹介)

杉村三郎シリーズの『誰か』『名もなき毒』は、かつて読んだことがあります。いずれも、動きが少なく静かな印象で、迫力に欠けたような気がしたものでした。比較的小規模な事件をきっかけにして、背後にうごめくもっと大きな社会的な問題にまで話が及ぶ、という構成全体が、僕には大きな空回りのように感じられるのです。結果、どうにもストーリー展開が冗長になっているような印象が否めません。

この『ペテロの葬列』もそんな印象でした。一つの事件を足がかりに、その真相や背景が徐々に明らかになっていく、という展開に、僕は正直なところ退屈さを覚えました。これも二つの前作同様、動きが少なく静かです。そして、事件の背景として取り上げた問題の本質がわかりにくい。ラスト近くでの杉村三郎の離婚の顛末も、僕はこの物語の主題と、すんなりと結びつけることができませんでした。

そんなわけで、残念ながら僕にはこれ、「宮部みゆきの真骨頂」とは思えませんでした。むしろ、このところの宮部さんの真骨頂は、時代ものにあるのではないでしょうか。今年読んだ『桜ほうさら』は、心温まるすばらしい作品でした。現代ものサスペンスでも、『火車』や『理由』、そして『模倣犯』などで味わった唸るような迫力に、また期待したいと思います。

この小説できっかけとなった事件はバスジャック。今日はそこから派生して、バスツアーの思い出話を書いてみたくなりました・・・。

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《好きです、バスツアー。・・・》 

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15 5月

七つの会議/池井戸潤5

 
ずっと気になっていたのに、なぜか先送りにしてきた池井戸潤のビジネスものです。
八話から構成される連作で、商社に巣食う悪の体質が徐々に明らかにされます。
多くの切り口から会社を見つめる構成で、迫力倍増。手に汗握る傑作です。


taste:★★★★★

七つの会議 (集英社文庫)
池井戸 潤
集英社
2016-02-19


池井戸潤(2012/2016)集英社文庫

きっかけはパワハラだった! トップセールスマンのエリート課長を社内委員会に訴えたのは、歳上の部下だった。そして役員会が下した不可解な人事。いったい二人の間に何があったのか。今、会社で何が起きているのか。事態の収拾を命じられた原島は、親会社と取引先を巻き込んだ大掛かりな会社の秘密に迫る。ありふれた中堅メーカーを舞台に繰り広げられる迫真の物語。傑作クライム・ノベル。
(集英社文庫 内容紹介)

なぜ『七つの会議』なのか、題名の意味を理解しかねていますが・・・。

池井戸潤らしい、会社組織の不正の実態に迫る「クライム・ノベル」です。それは一つの不可解なパワハラ事件に端を発し、一人の女子社員の不倫と退職の顛末、策略で身を持たせる「社内政治家」と呼ばれた窓際社員の行動など、関係する人物の周辺を洗い出す形で進展します。ストレートに事実を追うだけでなく、人物や背景を別の側面からも描くことで、事件そのものが浮き彫りになるような感覚。それがこの小説の迫真性を倍増させています。

題材は、池井戸潤の小説としてはよくある、会社に巣食う不正の温床。これまでにも、クレーム隠しや大会社によるあくどい下請けいじめなど、会社組織に絡む「危機」は、数多く池井戸さんのテーマにされてきました。これらは決して小説の中だけでなく、このところ現実にも明らかにされています。T社の粉飾決算。A社の手抜き工事。M社のデータ改ざん・・・。いずれも社内的な範囲にとどまらない、顧客を無視した大組織の体質そのものの問題です。

組織は大きくなればなるほど、こんな問題を抱えやすくなるのも事実です。サラリーマンの先輩たる僕らは、これから会社を背負う純真な若者たちが組織の力学に潰されないよう、きちんとした仕事のやり方を伝えていかなくてはなりません・・・。

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《完璧な学生の話・・・》 

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1 5月

回天の門(上・下)/藤沢周平3

 
僕があまり得意とはしない幕末もので、清河八郎という人を描いた作品です。
尊王攘夷を訴え、諸国に外国人排斥と倒幕を志して、同志を集める八郎。
江戸時代末期、維新の火付け役となった人のようです。知りませんでした。


taste:★★★☆☆

回天の門 上 (文春文庫)
藤沢 周平
文藝春秋
2016-03-10

回天の門 下 (文春文庫)
藤沢 周平
文藝春秋
2016-03-10


藤沢周平(1979/2016)文春文庫

おれは遊蕩児だ。後継ぎにはなれぬ― 庄内領清川村の素封家の長男として生まれた斎藤元司は、自我をおし立て貫き通す、ど不敵な性格であった。孤独と閉塞感から逃れ、広い世界を見て学問をおさめたいと、十八歳で出奔して江戸へ出たが・・・。山師・策士と呼ばれ、今なお悪評と誤解のなかにある清河八郎の波乱に満ちた生涯。
(文春文庫上巻 内容紹介)

何度も郷里に引き戻されながら、江戸で学問と剣術を極めていく元司。二十五歳で清河八郎と改名、自ら塾を開くも、やがて学問の世界を離れ虎尾の会を結成、尊王攘夷の急先鋒となっていく。しかし倒幕の機いまだ熟さず、早すぎた志士として凶刃に倒れる― 悲劇の孤士の生涯をあますところなく描いた傑作長編。
(文春文庫下巻 内容紹介)

ペリーの黒船が来航し、開国へと動き始めた江戸幕府。西郷隆盛や坂本龍馬、そして新撰組など、幕末の著名な志士たちが登場する直前の時代が舞台です。造り酒屋の後継となる立場を捨て、郷里を離れて学問に身を投じた斎藤元司、後の清河八郎。尊王攘夷に心を染め、全国から同志を集めて倒幕を志しますが・・・。

三百年近くにも及んだ徳川幕府の安泰の世も、19世紀の中ごろから諸外国の帝国主義に翻弄され始めました。この、いわゆる幕末の時代には、今後の日本のとるべき姿勢に関して様々な世論があったことでしょう。それまでの鎖国政策に何らかの改革を迫られた時、弱体化した幕府には国情を統率する力はなかったんですね。

もはや幕府に国の未来を任せておくわけにはいかない―。維新を実現させた著名な志士たちを多く輩出したのは、いわゆる「薩長土肥」がよく知られます。そんな「雄藩」でなくても、この時代、日本中の若者たちが、改革に向けて熱い血をたぎらせたことでしょう。庄内の片田舎から起った清河八郎もその一人でした。決して広く名の知れた人ではなく、無論僕も知らなかったこの清河八郎の勇気と愛に、心を打たれる作品でした。

この清河八郎は、秋田県庄内市にある「清河神社」に主祭神として祀られているそうです。郷里では、彼は幕末に活躍したヒーローなのでしょう。この小説を読むと、それも納得できます。

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《「薩長土肥」その後・・・》 

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かつては単身7年間
解消してから3年半で
再び転勤、また単身
柴犬むすめと暫しの別れ
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