志水辰夫(2001/2003)新潮文庫

この週末、今年もまた故郷のお祭りを見に帰郷しました。
今、母親が暮らすのは姉の嫁ぎ先です。僕が生まれ育ったあの家はどうなったかな・・・。

きのうの空

【2003.6.26】

かつてのあの家は、あの付近は、今はどうなっているだろうか。生まれてから13歳前まで、これまで僕が最も長く住んだ家である。

今思えば、たいへんなボロ家だった。当時からすでに腐りかけていた板の外壁、部屋の壁のきたない落書き(おそらく殆どが姉の作品)、コンクリートむき出しの狭い風呂場と石炭の風呂釜…など、思い出すだけで眉をひそめたくなるような気がする。中一の春に転居が決まった時に飛び上がって喜んだ記憶があるところを見ると、おそらく当時から僕はあの家に嫌悪感を抱いていたに違いない。姉も当時の話を殆どしないところを見ると、おそらく同じ思いだったのだろう。

「里の秋」を読むと、ふとあの家を思い出し、今の姿を見てみたいような、また見てあの頃を思い出すのが怖いような、不思議な感覚。誰か、あの付近をビデオで撮影してきてはくれないだろうか。でも、あの家はもうないだろうな・・・。