ふとしたことから旅の代行屋という仕事を始めた、元アイドルタレントの丘えりか。
そこで展開される心を打つストーリーが、コミカルタッチな文章で綴られます。
笑って泣ける、すばらしい小説です。この正月休みにイッキ読みでした。


taste:★★★★★

旅屋おかえり (集英社文庫)
原田 マハ
集英社
2014-09-19


原田マハ(2012/2014)集英社文庫

あなたの旅、代行します! 売れない崖っぷちアラサータレント”おかえり”こと丘えりか。スポンサーの名前を間違えて連呼したことが原因でテレビの旅番組を打ち切られた彼女が始めたのは、人の代わりに旅をする仕事だった―。満開の桜を求めて秋田県角館へ、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へ。おかえりは行く先々で出会った人々を笑顔に変えていく。感涙必至の”旅”物語。
(集英社文庫 内容紹介)

内容紹介に「感涙必至」と書かれています。「号泣必至」でなくてよかったです。

それはさておき。原田マハ、という作家の名前は知っていましたが、僕は読んだことがありませんでした。ちょっと調べてみると、僕が20年近く前にいくつか読んだ作家、原田宗典さんの妹なんですね。そういえば、ややコミカルな作風もお兄さんに似ているような気がします。いずれも快活で読みやすく、読者を引き込む魅力を持っています。

この小説は、元単身赴任のYHさんのブログで紹介されていたものです。YHさんは絶賛。僕も読んでみることにしました。はい、心を打つすばらしい小説です。確かに感涙必至、グッと涙をこらえる場面に何度も遭遇しました。読みやすい文章でテンポもよく、久々に一気読みできる小説でした。YHさん、ありがとうございました。

人の代わりに旅を代行する仕事、「旅屋」をやることになった元アイドルタレントの丘えりか。これだけ聞けば、なんだか非現実的なお笑い小説のように響くかもしれません。実際、お笑いの要素を多分に織り交ぜた作品ではあります。しかし、おそらく著者は、「旅」というものに深い思いを持っているのでしょう。旅が大好きな丘えりかを主人公にし、彼女の目や心を通じて、旅の意味、旅が織りなす出会いのすばらしさを読者に訴えかけてくれます。

原田マハ。読んでみてよかったです。他の作品も読んでみようと思います。

僕も旅は好きです。多くが仕事での旅とはいえ、気付けば国内で足を踏み入れたことのない都道府県は、3つを残すのみとなっていました。この小説の舞台にもなっている秋田県角館にも、数年前に行きました。でもその日は大雨で散々。丘えりかのように、角館は奇跡の晴れ、なんてことにはなりませんでした・・・。

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《秋田はずぶ濡れカクノダテ・・・》 
気付けば、生まれてこの方、僕が足を踏み入れたことがない都道府県は、香川県と徳島県、それに沖縄県の3つだけになった。おそらく半分くらいは仕事とはいえ、僕は結構あちらこちらへ出かけているんだね。人生の残りを順当に生きられるならば、「全国制覇」も夢ではなくなっているのだ。

福岡県で生まれ育った僕は、小学校4年生の時まで山口県より遠くに行ったことがなかった。父親は自営業で休みは基本的になく、およそ「旅行」というものに縁の薄い家だったのだ。その後の巻き返しは、そんな幼年期の反動も手伝っているかもしれない。おかげで僕は今でも、どんなに忙しい旅になっても出張は好きである。

未踏の3つを残し、最後に制覇したのは秋田県。3年前の秋、女房と二人で紅葉の地を巡るバスツアーに参加し、十和田湖から奥入瀬渓流、そして角館に立ち寄るルートで旅をした時である。十和田湖や奥入瀬はほとんど青森県で、秋田県はかする程度だけど、ルートに角館が入っていたおかげで、しっかり秋田県を制覇することができたのだ。

ところが・・・。十和田湖や奥入瀬まではどうにかなっていたお天気が、最後の角館で大崩れ。実は僕が紅葉よりも楽しみにしていたこの地で、大雨に見舞われたのである。

それでも、せっかく来た「みちのくの小京都」を歩いてみようと、傘をさしてもずぶ濡れになりながら、そして寒さに耐えながらの武家屋敷通り。早々にあきらめて、ならばおみやげを買おうと通り端の土産物屋で秋田の地酒を物色。そこでも、店先から吹き込む雨でまたずぶ濡れ。ねえねえ、どうして地酒だけがこんな軒下で売ってるのさ・・・。店の奥でお菓子を買った女房はあきれ顔。そんなに濡れてでもお酒がほしいなんてすごい根性よねえ、だと。ふんっ、放っといてくれ!

そんなわけで、僕にとって44番目の都道府県になった秋田県、とりわけ角館のイメージワードは「ずぶ濡れ」。まあ、おかげで確かに記憶に残る旅にはなったけどね。いつかはリベンジを試みたいとは思うけど、またずぶ濡れになりそうな気がして腰が引ける。

ともあれ、残りは3つ。さすがに行きにくい場所ばかりが残ったなあ、なんて思っていた矢先、なんと2月に仕事で沖縄に行くことになったのである。未制覇は2つになることが決定したのだ。幸運だよね。今の会社に移籍していなければ、沖縄に行く用事なんてなかったよね。しかも今度は、泡盛を買っても女房に皮肉られることもないしね。

でもね・・・。僕はこの45番目の沖縄で、また「ずぶ濡れ」になりそうな気がしてならないのである。実はこの沖縄旅行、いや沖縄出張では、翌日に懇親ゴルフがセットされている。

【2018.1.6】