人類とカビの歴史 闘いと共生と (朝日選書)(浜田信夫)を読みました。

カビといえばゴキブリやダニとともに暮らしの中の嫌われ者の代表格です。この本の著者、浜田信夫先生は長年大阪市立環境科学研究所に勤務して市民の相談に応じたり、洗濯機やエアコン、住宅のカビに関する話題を提供してきた方です。特に洗濯機やエアコンのカビに関しては先駆的研究を積み重ねていた。そんな先生が一般向けに面白い本を著してくださいました。

まず食品に生えるカビ。子供の頃のカビの思い出といえば、まず餅です。特に鏡餅。黒や青や赤いカビが生えていた。それをたらいに水を張って沈め、みずもちと称していました。今ならそんな餅を食べませんが、昔はカビを削って食べていました。この本でも餅のカビ対策としてみずもちのことが紹介されています。平成の鏡餅は真空パックなのでかびませんから、遠い過去の昔話ですけどね。

カビのなかにはカビ毒を産生して健康を害するものがある。カビの種類は多いけど、カビ毒を産しえするのはコウジカビ、アオカビ、アカカビの3属に限るんだそうです。これを読んで驚きました。コウジカビって酒や味噌醤油の醸造に使っているじゃん。アオカビチーズは大丈夫なの?カマンベールの白いカビもアオカビ属だとのことだけど(汗)。

アフラトキシンというのが最強の毒らしい。やっぱりコウジカビの仲間が産生するんだそうだ。

洗濯機のカビは面白かったです。昔の2槽式のころはカビなんか生えなかった。でも今は全自動の時代です。洗濯槽と脱水層が2重構造となって内部が乾燥しない。カビは水分がないと生きていけないそうです。いつも湿っている全自動洗濯機はカビにとって住みよい場所らしい。洗濯機のカビは洗剤の表面活性剤を栄養分として生きていけるとのこと。したがって野外にいる野生のカビとは全然異なる特殊な種類らしい。

夏、エアコンで冷房するとエアコン内部に結露が生ずる。これがカビの発生母地になるとのこと。ススカビというカビは一見ほこりなのですが、そのぼさぼさとしたものが全部カビの菌糸なのです。ヤバ過ぎです。

現代の家屋は高気密高断熱住宅です。私の根拠なき印象では、気密性が高いので昔の家屋よりカビが生えやすいに違いないと思い込んでいました。でも換気システムが作動してさえいれば昔の家よりカビはずっと少ないそうです。壁に結露は生じないし屋根からの雨漏れのない、地面からの湿気も侵入しない工夫がされているからです。たしかに以前住んでいた古い借家はカビだらけだった。家具の背後の壁面は色鮮やかな世界地図状態。滅多に使わない部屋の畳はうっすら白くなる…(汗)。さっそく今住んでいる家中を点検する。我が家はカビにとって住みよい場所じゃないみたいです。

高層住宅の上階は乾燥している。この本を読む限りにおいては余程のことがない限りカビの心配はないみたいです。浜田信夫先生は、そもそも現在人はカビを心配し過ぎていることを指摘しています。住宅環境はずっと改善しているし、昔のようにかびた餅やパンを平気で食べる人もいなくなった。たしかに洗濯機やエアアンの件はあるし、時に中毒やがんを起こすこともあるし、アレルギーの原因になるかもしれないけど、人類はずっとカビと仲良く(?)暮らしてきた訳ですからね。一応この本でカビ発生予防法をチェックしておけば大丈夫です。

そこで一句、

彼を知り己を知れば百戦殆からず (孫子)