「流域地図」の作り方: 川から地球を考える (ちくまプリマー新書)」(岸由二)を読みました.

通常の地図は県や市町村といった行政区分で作成されています.それに対して著者の岸由二先生は流域地図というモノを提唱しています.

陸地には山や平野,川があります.山の源流から流れ出した川は支流を合わせて谷や扇状地,平野を形成して海に注ぎます.その際に川は行政区分を幾つも超えることはありますが,尾根筋が形成する分水界を越すことはありません.したがって川の流域に注目して陸地を分ける地図,流域地図を作ることができるのです.

流域地図の特徴や利点について本書はいくつも取り上げています.例えば自然保護や生物多様性保全についてです.その一例として,岸由二先生が取り組んできた三浦半島の小網代流域を取り上げています.

小網代は,源流から河口まで歩いても1時間程度の小さな川だそうですが,幸いなことにバブル期の観光開発から免れて原生林や湿地など豊かな自然が残されているそうです.それに川と森を行き来するアカテガニというこの流域を代表する生物が生息しているのだそうです.

現在小網代は民間有志団体だけではなく,行政と企業も含めて流域全体の生物多様性保全に取り組み,自然を求める人々が訪れることができるように整備されているようです.

昨今気候変動に伴って豪雨と洪水が頻繁に発生しています.治水防災にも行政区分で分断した政策ではなく,流域全体の取り組みが必要です.上流域で森林が減少して保水力が低下すれば下流の平野部では洪水が発生しやすくなるからです.

こういった流域全体で物事を考える流域思考がますます重要になってきているようです.