ちいさな桃源郷 - 山の雑誌アルプ傑作選 (中公文庫) [文庫]」(池内紀編)を読みました。

むかしアルプという名前の山の雑誌がありました。この本によると、串田孫一らが1958年に創刊し、1983年に終刊したそうです。そういえば本屋で何度もアルプを見かけたことがありました。でも地味だし、文字ばかりだし、全然読んだことがありませんでした(汗)。

アルプは、例えば登山ルートとか幕営の初歩とか、山スキー入門とか遭難防止対策とか、そういう特集や記事は載せず、随筆みたいなものばかり掲載する文芸雑誌だったみたいです。その25年間に出版されたアルプのなかから編者の池田紀さんが選んだ33篇のエッセイを編んだのがこの本です。

その執筆者は、串田孫一のほかに、畦地梅太郎、上田哲農、尾崎喜八、辻まこと、西丸震哉、深田久弥など錚々たる面々で、今の時代、こんな感じに山のエッセイを書く文人を集めることは不可能のような気もします。

本書のタイトルの桃源郷ですが、もちろん現代の日本にそんなものはなくなって久しいような気がします。でもこの本に登場する思い出の山里の旅や山行は、まさに桃源郷のような世界です。でも高度経済成長と農山村の衰退、開発ブームがすべてを過去のものにしてしまいました。したがって「ちいさな桃源郷」はちょっと懐古趣味的ですが、タイムマシンに乗った気分でした。