先月発売のミシュランガイド東京で見事3ツ星に輝いたフレンチレストラン「カンテサンス」。星を獲得後初めてのランチに一緒に行ったのはパリ在住のお友達T君です。今日はわざわざカンテサンスのフレンチを味わいにはるばるフランスから来た,というのは少し大げさですが、ホノルルマラソンに出場するため仕事を休んでハワイに行く途中の1日だけの帰国で、どこか美味しいレストランでランチを!というリクエストにはやはりカンテサンスを選ぶしかありません。
 
 ミシュランガイド東京の熱狂さめやらぬ今の時期になぜ予約が取れたかと言うと実はミシュラン発表前にお料理教室教室の生徒さん達とランチに来たときに既に予約を済ませていたのです。その時のお店の雰囲気でこれは絶対星3ツ獲得と確信し早めに席を確保して正解でした。思った通り来年1月まで昼も夜も予約は一杯だそうです。
 
お花1お花2 今日のランチもマダム達のグループで大賑わい、ウェイティングスペースには三ツ星獲得祝いに送られた立派な胡蝶蘭が並んでいます。その中に可憐な黄色い蘭の鉢植えがひとつ。そこには「漁師 村公一」の名前が添えられていました。情熱大陸で取り上げられたカリスマ漁師の村さんからのお花です。
 村さんと岸田シェフとの暖かい心の交流が伺えました。
 
 
 まずは初来店のT君の為に白紙のメニューが差し出されました。こちらでは夜も昼もシェフのお任せコース1種類のみでテーブルによってお料理の内容が違うのです。ミシュランが書いている通り、お客様は席に座ってシェフの選んだお料理を待つばかり。それだけで最高の時間を味わえるのです!
 
 実はT君はパリの某2ツ星フレンチレストランで働く料理人。身分を明かさなかったのにサービスの人にはちゃんと見抜かれていたようです。話の内容を聞かれていたのかもしれませんけど…。いつも超辛口のT君ですが珍しく褒め言葉が出ました。久しぶりに美味しい料理を堪能したとのこと!特にお魚とお肉料理を絶賛してました。
 お肉料理は事前にお店に「出来ればジビエが食べたいのですが…」とリクエストしておいたら蝦夷鹿の背肉のローストを用意してくれました。これが凄い火の入れ具合でびっくりでした。外側の脂を含めた部分はカリッと焼き上げているのですがお肉は全体が均一のミディアムレアなのす。普通は表面から中心に向かってグラデーションに火が入るはずなのですが。昔イタリア料理店でレア状態で仕上げた蝦夷鹿のフィレ肉を食べて以来蝦夷鹿に対してあまり良いイメージのなかった私でしたかそれをすっかりくつがえす衝撃の味わいでした!以下コースの詳細です。

ニンジンのスープ アミューズは人参のスープ。間引き人参と言って名前の通り間引きして人参を栽培すると栄養素たっぷりで味が凝縮された人参が作れるのだそうです。柿のように甘いと言われているのは本当でした。スープは3層に分かれ上には泡がのっています。



山羊のチーズのババロワ ひとつ目の前菜はお馴染みの山羊のチーズのハバロワ。上にはマカデミアナッツと百合根、ゲランド産の塩と千夜一夜という名前のエクストラバージンオリーブオイルで頂きます。このオリーブオイルは日本では入手不可能だそうですがパリのプランタンで見かけた方がいるそうです。
 


ハマグリのフリット 前菜はハマグリのフリット、アーティチョーク添え。ジュシーなハマグリを包んでいる衣はビール入りでサクサクふわふわに揚がっています。上にはハマグリのジュのソースと和えた生のアーティチョークの薄切りがのせられています。ソースはほんのりとしたバターの風味です。 
 


鯛のポワレ メインのお魚料理は石垣鯛のポワレです。付け合わせはスティックブロッコリーのソテー、ソースはふきのエスプーマ。エスプーマでソースを泡状態にする事でふきの苦味がお魚の淡白な味わいを引き立てる繊細なアクセントとなっています。ソースに添えてあるのは聖護院大根。真空調理されているそうです。 野菜や果物に液体を加え真空にして調理する方法ですがこうすると野菜や果物全体の水分が抜け一緒に入れた液体が浸透するのです。大根にはソースを染み込ませているのでしょうか?微妙過ぎてわかりませんでした。
 エスプーマもこの真空調理もエルブリが提案するテクニックですが、このお料理ではそれらの新しいテクニックはあくまでも脇役で主役は絶妙な火の入れ具合で身がフワフワの石垣鯛です。


蝦夷鹿 お肉料理は蝦夷鹿のローストです。お肉全体が均一な美しいミディアムレアに仕上がっています。ソースはお肉の繊細な味わいと焼き具合を邪魔しない、かつ個性的なマスタードソース。胡桃とニンニク、エシャロット入りです。添えられたゲランド産のフルールドゥセルと荒く砕いた胡椒と共にソースとお肉を頂いて完成されるハーモニーはさすがです!付け合わせはミニチンゲン菜とジャガイモ、インカのめざめです。
 
 実はお魚とお肉料理の間に微妙な時間のインターバルがあったのです。蝦夷鹿の焼きがあまかったのでもう少し長めに寝かせたいとの説明がありました。
 ボトルで頼んだ’85のボーヌの赤がほとんどなくなってしまったので蝦夷鹿に合うグラスワインをセレクトしてもらいました。普通は重めのボルトーやちょっとワイルドな南仏ラングドック地方のフォージェールの赤などとの相性が良いらしいのですが、今回の蝦夷鹿は野生の鹿には珍しくあまりクセのない味わいとのこと、ディレクターでソムリエの吉田さんお勧めのブルゴーニュの赤、’04年のコートドゥボーヌのグラスワインを頼みましました。



シャーベットアヴァンデセールはライムのシャーベット、皮ごと使ったシャーベットの上には高知産の水晶文旦の房をほぐしたものが乗っています。触感を違えた2つの柑橘類の酸味と苦味と甘味が溶け合う爽やかなデザートです。
 最後のデサートは写真を撮るのを忘れるほどの美味しさ。栗の焼き菓子で表面はカリッと焼き上げられていますが中は栗のピュレをもっとクリーミーにした味わいです。サービスの方が目の前でクレームシャンティを乗せてくれました。

 帰り際に岸田シェフにミシュラン3ツ星獲得のお祝いのご挨拶をすると「今日のお料理はどうでした?」と真剣な問いかけ。勿論大満足でした!と答えました。お店を出て振り返ると岸田シェフとディレクターの小澤さんがいつものように私たちの姿が見えなくなるまで見送ってくれていました。3ツ星を獲っても変わらない謙虚なカンテサンスの皆さんの姿に新たな感動を覚えました。
 ミシュランが星を与えるのは料理にだけではないというのは本当なのですね。巷ではミシュランの審査に対していろいろ言われていますがさすが歴史あるガイドブック、カンテサンスに対しては見る目があると思います!
 次に予約を入れられる日はいつになるかわかりませんが今度は絶対にディナーに伺いたいです。