2007年スペイン・メキシコ映画。

 美しくも切なく、恐ろしいダークファンタジー。
 この手のものは好きである。
 が、なかなか傑作にお目にかかれない。
 思いつくものをあげても、キャサリン・ロス主演の『レガシー』(1978)、ニコール・キッドマン主演の『アザーズ』(2001)くらいしか出てこない。
 どうしてもホラー(スプラッタ)に傾いてしまうか、主人公と霊との対決がメインになってしまうために最後にはアクション化してしまう。美しさと切なさが犠牲になるのである。

 日本でこの手のものが撮れるのは、大林宣彦くらいだろう。
 『異人たちとの夏』は見るも無惨な出来(評価D+)であったが、怪談しかなかったそれまでの日本のホラー映画とは一線を画した『HOUSE ハウス』(1977)や、テレビ用に作られた『麗猫伝説』(1983)は、まさに「美しくも切なく、恐ろしい」作品であった。前者は、南田洋子、池上季実子、大場久美子など女性ばかりの出演陣のきらびやかさと、恐怖とコミカルなタッチの混ぜ具合が絶妙であった。後者は、日本映画史上随一の美貌を誇りながら化け猫女優として名を残さざるをえなかった入江たか子とその娘・入江若葉の親子共演が見物であった・・・。

 これらの映画の共通点は、この世では報われなかった愛や願いを死んで霊となっても抱き続ける女性の情念、である。その情念が強すぎると、貞子やお岩さんのような「うらめしや~」のおっかない悪霊になってしまい、「美しさと切なさ」が吹き飛んでしまう。
 あくまでも恨みや復讐ではなく、純粋な愛によって魂が生き続けることがポイントである。
 その時、観る者は恐怖の対象であるはずの霊に共感を抱き、彼女たちの視点から「この世」と「男達」の非道を見つめ、霊のために涙するのである。
 この映画でも、深まる謎と襲い来る恐怖と募りゆくサスペンスの果てに、思いがけぬ感動の結末が待っている。その落差の衝撃が、涙腺を緩ませ、ホラー映画ではあり得ないような、どこか爽やかな、しみじみとした印象が長く引き続くのである。
 

 ところで、日本で有名な女の霊と言えば、『源氏物語』の六条御息所であるが、彼女は不当に扱われすぎていると思う。
 恨みがましい、おっかない女の代表格の様に、能でも源氏解釈でもレッテル貼りされている。それは、明らかに世の男の見方に合わせて、浮気をする男達の都合の良い見方にそって解釈されているのだ。

 だれか六条御息所をいい加減解放してあげてくれないものだろうか。
 「男の為に生きる女」という物語からー。



評価: B+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」 
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!