日時 2017年7月30日(日)14:00~
会場 武蔵野市民会館大ホール
曲目
- ロッシーニ : 歌劇『セビリアの理髪師』序曲
- シベリウス : ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
- ドヴォルザーク : 交響曲第8番 ト長調
アンコール
- J.S.バッハ : 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番よりルール
- ドヴォルザーク : スラブ舞曲第1集より 第8番
指揮 広井 隆
ヴァイオリン独奏 印田 千裕
武蔵野市民文化会館は、JR中央線三鷹駅北口から文化会館通り(通称「かたらいの道」)を歩いて15分ほどのところにある。ホールの前に大きなヒマラヤ杉が威風堂々たる姿をさらしていて、その前を五日市街道が走っている。五日市街道と文化会館通りの交差する一角に、庚申塚が丁寧に祀られている。
武蔵野市民文化会館
ヒマラヤ杉
庚申塚
ガリマティアス・ムジクムという楽団名は、モーツァルトの作品『音楽のおしゃべり』(K.32 Galimathias Musicum)から取ったとのこと。東京学芸大学出身者を中心に1980年設立され、現在のメンバーは見たところ50~60代中心だろうか。出演者紹介を見ると、女性39人中、「○○子」のつく名前が17名である――ってどういう統計よ(灸)。
第1回から指揮している広井隆はオケの常任指揮者的存在であろう。
客席の最後尾である2階席後方に座ったが、演奏始まってすぐ気づいたのは「響きがいい!」。ヒマラヤ杉のせいとは思えぬが、良いホールである。客席も傾斜があり、舞台がよく見える。
『セビリアの理髪師』はとても楽しい心はやる曲。コンサートの最初に持ってくるのにぴったりである。
シベリウスのヴァイオリン協奏曲。美しく柔和で滋味深い。やはり、シベリウスは日本人の感性に合う作曲家だと思う。派手でなく、お仕着せがましいところもなく、父性的(=キリスト教的)でない。自然描写にすぐれた人ではあるが、この協奏曲では「北欧のラフマニノフ」とでも言いたいような、優美かつメランコリックな調べが人間的である。
ドヴォルザーク交響曲8番もまた、テレビ朝日の長寿名番組『世界の車窓から』を思い出させるとっつきやすい曲である。それもそのはず、ドヴォルザークは鉄っちゃんだったらしい。「機関車が手に入るなら、私のすべての曲を捨ててもかまわない」と言ったとか。
もう親近感100%
アントニン・ドヴォルザークの伝記を読んだことはないのだが、曲だけの印象から「とても純粋で誠実で廉潔な人」というイメージが湧く。ブラームスやチャイコフスキーやマーラーの「のたうつような苦渋」と較べると、なんとも明るく牧歌的。といって「浅い」のかと言えば、そんなことはない。『遠き山に日は落ちて』で知られる交響曲第9番『新世界より』第2楽章なんか、よく聴くと非常に深くて荘厳である。もっとも大衆的な人気曲『ユーモレスク』も、明るく軽やかな曲想の中に諦念に近い哀感が滲んでいる。
この交響曲8番も、どこまでも広がる平和な田園風景やダイナミックな峡谷風景の中に、天上的な導きを感じとる。
霊格の高い人だったのだろうか。
この交響曲8番も、どこまでも広がる平和な田園風景やダイナミックな峡谷風景の中に、天上的な導きを感じとる。
霊格の高い人だったのだろうか。
アントン
帰りは、三鷹駅前の喫茶店で一服する。
三鷹駅は昔から、南口(三鷹市側)は発展しているが、北口(武蔵野市側)は野暮ったくて開発から取り残されたイメージがあった。
久しぶりに歩いてみたら、立場が逆転したかと思うほどの刷新ぶり。おしゃれな大人の文化都市といった装いにびっくりした。