東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

女生徒「先生、きょうは新憲法が施行される日でしょう」

華子「そうですね、去年の113日に公布された日本国憲法が、いよいよきょうから施行されることになります。ですからきょうはとっても記念すべき日なのです・・・」

  寅、全然関心なく、椅子に座る。

華子「こんどの新しい憲法には、国民主権、基本的人権の保障、あるいは思想、良心の自由などといった、旧憲法にはない、素晴らしい条文が編まれています。なかでも、特に皆さんの心に刻み込んでいただきたいのは、第9条です・・・」

  皆、シーンとして聞いている。

華子「ではその部分を読んでみたいと思います。(印刷物を手に取り)第9条、日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する・・・」

  生徒一同、厳粛な表情で聞いている。

  その顔、顔、顔・・・。

  寅はわかったようなわからないような・・・。

  華子先生の熱い声が続く。

華子「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない・・・」

  第9条を読み終えて、一息つく華子先生。うっすらと額に汗が浮かんでいる。

華子「(再び、力を込めて)つまり、日本はもう戦争をしない、そのための軍隊はいっさい持たない。こう、世界に向かって宣言したわけです。皆さんの中にも、今度の戦争でご家族の方やご親戚の方を亡くされた人がいると思います。先生は、先生も・・・(声が小さくなり)・・・大事な人を失くしました。(少し涙声になり)こんな悲しみはもうたくさんです!(気を取り直して)だから、この第9条が永遠に守られていってほしいと思います」

  静まり返った教室。

  窓の外に葉桜。 

  その向こうに体育の授業を続けている生徒たち。

 

31 そして、爽やかな5月の青空

 

32 21組教室

  最後列に座っていた男生徒がもそっと立ち上がる。

新学期に転校してきた熊男である。名前の通り、熊のような顔つきとがっしりした体格。しかしどこか神経質そうなところが見える。

熊男「先生、軍隊はいっさい持たないと言ったけど、じゃあ、どっかの国が日本を攻めてきたときはどうするんだ?」

華子「エッ、そ、それは・・・」

  華子先生、突然、虚を突かれた感じでとっさにことばが出てこない。

  と、寅が急に大声を出し、熊男に言う。

寅 「バカだなあ、お前.、そういうときはよ、日本人全員一列に並んで、ケツまくって、一斉に屁をこくのよ!びっくりするぜえ、敵さん!」

  ドット湧く教室。

  華子先生も苦笑い。

  

33 同・廊下

  その騒ぎに、何ごとかと首をかしげる通りがかりの用務員のおじさん。

 

34 同・教室

  華子先生、手を叩いて教室を静める。

華子「(威儀を正して)ですから、皆さん。これからはそういうことのないように、世界中の人と仲良くしていくことが大事だと思います。そして二度と戦争が起こらないように、みなさん自身が一生懸命勉強して、世界の平和に貢献する人になっていただきたいと思います。・・・では、きょうの授業に入りましょう」

  教科書をひろげる華子先生。

  それに習って、生徒たちも教科書をひろげ始める。

  寅、〈おれ、ウケた〉とばかり、まだ得意そうに周りの生徒たちにアピールしている。

  その寅をジッと睨みつけている熊男。

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