東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

36 江戸川・土手道

  寅が怒り冷めやらず肩を怒らせてやって来る。小石を蹴ったり、道端の草むらを踏みにじったり・・・。

  一緒に帰っていた同級生の一人が、それをなだめすかすようにして話しかける。

同級生「・・・で、生き残ったのは、たまたま学童疎開で横浜の家を離れていたあいつだけよ。いや、確か妹が1人いるって言ってたかな。それでしばらく、戦争孤児の収容所に入ってたらしいんだけど、最近、親戚の人が探し出してくれて・・・。ホラ、帝釈様の裏手の方に、大きな農家があるだろう。あそこに今、おじいさんやおばあさんたちと一緒に住んでるんだそうだ・・・。だからあいつは、いつか自分も海軍に入って、アメリカ兵をやっつけて、オヤジやオフクロの仇をとるんだと息巻いてるって話だよ」

寅 「・・・でもよ、そういう奴の身の上ときょうのことは別だからな。(急にまた憤怒の表情に戻り)クソッ、なめたマネしやがって!きょうの借りは必ず返してやる!」

  寅、肩を怒らせ足の動きを速める。が、まだ少し足を引きずっている。

 

37 とらや・表

  寅、〈あのヤロー!コンチクショー!〉とか、憤慨のことばをブツブツ言いながら帰ってくる。

 

38 同・店内

  寅、店の中へ入ると、周囲には目もくれず、

寅 「(叫ぶように)ああ、腹減った!」

  と、台所へ直行する。その背中に向かって、

さくらの声「(追いかけるように)お兄ちゃん!」

寅 「用事ならあとにしてくれ(とそっけない)」

さくらの声「お友だちを紹介するわ」

 

39 同・台所

  寅、食い物を探してゴソゴソやりながら、

寅 「あ、そう。おれ今忙しいんだ」

  と、そこへ〈こんにちは〉ときれいな声。

寅 「ン?」

  顔を上げ、口いっぱいにサツマイモをほお張りながら店の方へ出ていく。

  声の方を見ると、テーブルをはさんでさくらの前に1人の少女が立っている。

寅 「!!!(固まる)」

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