東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

51 熊男の家

  母屋と納屋に分かれた、いかにも農家といった感じの古い造りの家。

  寅、垣根の戸を開けて、中へ入っていく。

  と、突然、足元からニワトリが23羽飛び上がる。 

  寅、ビックリして飛び上がる。

寅 「なんだ、ニワトリか!おどかすなよ、まったく!!」

  母屋の方へ近づくと、おじいさんが1人、玄関先に腰かけてタバコをふかしている。

寅 「ヨッ、じいちゃん、熊いるか?(と、声をかける)」

じいちゃん「熊あー?熊はいねえなあ、わしんとこには・・・。牛はいるけどよ・・・」

  のんびりとした声が返ってくる。

寅 「違う違う!その熊じゃなくて、熊男だよ、く・ま・お!!」

じいちゃん「(意味が通って)ああ、あんた、熊男の友だちかい・・・。熊男なら、たしかさっき学校から帰ってきてたな。(奥に向かって叫ぶ)おーい、熊あーッ!」

  熊男、縁側から顔を出す。

熊男「なんだよ、じいちゃん」

寅 「ヨッ(と、声をかける)」

熊男「アッ、お前!」

寅 「へへへへ・・・。(ふざけて)ダンゴ屋の寅とはっします!」

熊男「何か用か」

寅「何か用かとは、冷てえ奴だなあ。(気を取り直し)あのよ、今度の日曜日、遠足に行かないかなあ・・・」

熊男「遠足??・・・アホか、お前は!そんなことでおれを誘いに来たのか!!」

寅 「ああ、千代ちゃんも行くんだぜ」

熊男「なにッ、千代!・・・お前、千代を知ってるのか!?」

寅 「ああ、おれの妹と仲良しでなあ。それで2人で決めたらしいんだけどよ。おれにも来いって言うんだよ」

熊男「・・・(怒りがこみ上げてくる)」

寅 「(気づかず、ペラペラと)おれだって、小学生の女の子と遠足へなんか行きたかねえよ。だけど、頼むから一緒に来てくれって言うんだよ。おれ、弱っちゃってさ・・・。で、せめてお前だけでも一緒に行ってくれれば、なんとかカッコつくんじゃねえかと、こう思ったわけよ

熊男「ジョーダン抜かせ!!お前、何考えてんだ!!頭、イカれてんじゃねえか!!」

寅 「(瞬間的に)な、なんだと、コノヤロー!!(と、こぶしを振り上げるが、ぐっとがまんする)」

熊男「(キッパリと)いいか、この際はっきりと言っとくが、妹に、千代に指1本でも触れてみろ!タダじゃおかねえからな!!」

寅 「ああ、そうかい。人がせっかく誘いに来てあげたと言うのに、そういう態度なら、もう頼まねえよ、あばよ!!」

  寅、憤然と踵を返す。

  と、そのとき、戸を開けて千代が帰ってくる。

千代「あら、寅ちゃん、こんにちは」

寅 「やあ、千代ちゃん」

  寅、満面に笑みを浮かべて微笑み返す。

千代「なにか御用だったの?」

寅 「うん、いあや、あの・・・、熊男にね、ちょっと宿題をおしえてもらいにきたんだよ。いやあ、あいつ頭がいいなあ・・・。さすがヨコハマ育ちだよ!(熊男の方を振り返り)熊男くん、どうもありがとう。じゃあまた、あした学校で・・・」

  寅、生真面目な態度で熊男の家を出ていく。

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