東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

52 水元公園・池

  五月晴れの水元公園。

  池でボート遊びを楽しんでいる寅とさくらと千代。

  寅、懸命にオールを漕いている。

  その対面に座り、キャッキャとはしゃいでいるさくらと千代。

 

53 同・園内

  園内を散歩する3人。

  寅、得意そうに千代に話しかけている。

寅 「・・・そのオッサンの話ってのが、また、おもしろいんだよ」

千代「あら、どんなお話?(興味津々)」

寅 「うん、(一呼吸入れて、朗々と語りだす)・・・白く咲いたが百合の花、一度変われば2度変わり、三度変われば四度変わる。淀の川瀬の水車、誰を待つやらクルクルと・・・」

千代「まあ!」

寅 「なっ、傑作だろ!おれ、いっぺんで覚えちゃった!」

千代「それで、その後はどう続くの?」

寅 「えーとね、えーと、あ、そうだ!四角四面のトーフ屋の娘、色は白いが水臭い。四谷、赤坂、六本木、サラサラ流れる麹町!あれ、違ったかな?サラサラ流れる水道橋・・・。どうも違うな・・・。あ?うん、そうだ!サラサラ流れる御茶ノ水、粋な姐ちゃん、立ちションベンだ!」

千代「いやだ、寅ちゃん」

さくら「もう、お兄ちゃんったら・・・」

  笑い転げるさくらと千代。

千代「(笑いをこらえて)寅ちゃんて、ホントにおもしろい人ね!」

寅 「え、おもしろい・・・。そ、そう」

  大いに照れるが、満更でもない。

 

54 江戸川・土手道

  真っ赤な夕焼けに土手道が染まっている。

  寅とさくらと千代、〈背くらべ〉の歌を唄いながら帰ってくる。

   柱のキズは おととしの

    55日の 背くらべ  

    ちまき食べ食べ 兄さんが

    測ってくれた 背の丈

寅、得意な顔で、さくらと千代の前に立ち、両手で指揮をとりながら、後退りしていく。 

  昨日比べりゃ なんのその

   やっと羽織の 紐の丈

   ・・・・・

そこへ、源公、ツヨシ、サブローたちが息急き切って駆け寄ってくる。

源公「た、大変だ、大変だ、寅ちゃん!!」

寅 「(悠然と構えて)なんだよ、お前たち。きょうはな、はな垂れガキには用はねえんだよ。さ、帰れ帰れ」

  寅、迷惑そうに追い返そうとする。

ツヨシ「違うんだよ。違うんだよ!!」

  ツヨシたち、さくらと千代に見えないようにして、寅に白い封筒を渡す。

寅 「おいおい、なんだ。付け文かあ・・・。おれ、いま、間に合ってんだけどなあ・・・」

寅、千代の方を気にしながらも、満更でもない表情で中身を取り出す。

  と、そこには・・・。

  『お前は大事な妹に手を出した

   もう許せねえ

   今夜6時、矢切の渡しへ来い!

               熊男』

  と、黒々とした墨文字が踊っている。

  血相変える寅。

寅 「あのヤロー!!なめた真似しやがって!!もう勘弁ならねえ!!」

  と、叫ぶやいなや、熊男の果たし状をビリビリと破り捨て、猛然と駆け出す。

  源公、ツヨシ、サブローたちも後を追う。

  訳がわからず、呆然と見送るさくらと千代。

  路上にビリビリに裂けた果たし状が落ちている・・・。

   

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