東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

55 同・別の土手道

  を、突っ走る寅。

  後を追う源公、ツヨシ、サブローたち。

  陽は西に大きく傾いている。

  やがて・・・。

  矢切の渡しが見えてくる。

 

56 矢切の渡し

  土手の斜面を勢いよく駆け下りる寅。

  後に、源公、ツヨシ、サブローたち。

  すでに夕闇が迫り、渡し場に人影はない。

寅 「(大声で叫ぶ)やい、熊男!出てこい!!」

熊男の声「おーい、こっちだ、こっちだ!」

  見ると、渡し場の対岸に熊男が立っている。

寅 「あのヤロー、よし、舟を出せ!」

  寅、渡し船に飛び移る。

  源公、ツヨシ、サブローたちが続く。

  源公、舫い綱をほどく。

  ツヨシ、サブローが二人がかりで棹を操る。

  舟が岸から離れる。

  舳先に片足をのせ、腕組みをして対岸を睨み続ける寅。

  舟がゆっくりと対岸に近づいていく。

 

57 同・対岸

  舟が着く。

  寅、勢いよく飛び降りる。

  続いて降りる源公、ツヨシ、サブローたち。

  熊男、仁王立ちして、それを迎える。

  風が出てくる。

熊男「よく来たな、寅・・・。しかし子分まで連れてくるとは、案外、お前も見かけ倒しだな(不敵に笑う)」

寅 「なにッ!!」

  寅、真っ赤な顔で激昂して、

寅 「(源公たちに)お前たち、指一本手助けすんじゃねえぞ!(熊男に)やい、熊!きょうこそ落とし前つけてやる。覚悟しろ!!」

  と、叫んで熊男に突進していく。

  寅の手が熊男の身体に触れようとした瞬間、またしても熊男の足払いが見事に決まる。

  ドテッとヒックリ返る寅。

寅 「やりやがったな!!」

  こんどは寅がすばやい動きで熊男の足にタックル。

  不意をつかれて、熊男も後ろにドタッとすっ転ぶ。

  それからはもう、一匹の寅と一匹の熊である。

夕闇がいつしま月明かりに変わり、やがて星が瞬く・・・。

寅と熊男が肩で大きく息をつき始めた頃、川向うから大きな叫び声が届く。

さくらの声「お兄ちゃーん!!」

千代の声「お兄ちゃーん!!」

吉太郎の声「寅ちゃーん、ケンカはやめろー!!」

  さくら、千代、吉太郎たちである。

  しかし、妹たちの出現にかえって元気を取り戻した寅と熊。再び激突する。

  が、妹たちの叫び声が泣き声に転じると、寅と熊の激しい闘志も萎えてくる。

  寅、組み合ったまま、ボソッとつぶやく。

寅 「おい・・・。おれは妹の泣き声がなんとも苦手でな・・・」

熊男「・・・おれもだ」

寅 「よし、きょうの勝負はここまでだ」

熊男「(うなずいて)いいだろう・・・」

  2人、さすがに疲れたといった顔で身体を離す。

寅 「しかし、お前もしぶといやつだな」

  寅、感心したように言う。

熊男「お前も少しは根性があるようだな」

  熊、ニヤリと笑って言う。

  寅と熊の闘いは終わった。

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