東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

58 題経寺・山門前

  青空に湧く白い大きな入道雲。

  カーッと照りつける陽射し。

  降るような蝉の声。

  夏である・・・。

  山門の前を、日傘をさし、買い物かごをさげた節子とさくらが通りかかる。

  そこに御前様が出てくる。

午前様「やあ、節子さん、もうすっかり夏だねえ」

節子「はい、午前様もお変わりなく・・・」

午前様「うん、とらやの皆さんもお変わりないかな」

節子「おかげさまで・・・」

午前様「今年は神明会のお祭りも復活するそうだね」

節子「はい、子どもたちもすっかり楽しみにしているようで・・・。ね、さくら」

さくら「(ニコニコと頷く)・・・」

午前様「うん、やっぱり世の中、平和でなくちゃいけないね」

節子「ほんと、そうですね。じゃあ・・・」

  節子、軽く会釈して、さくらと一緒に歩き始める。

御前様「ン、節子さん、あんた、ちょっと顔色がすぐれないようだが・・・」

節子「(振り返り)あ、いえ、そんなことは・・・。きっと暑さのせいだと思いますわ」

御前様「そうか、そうだといいが・・・。いや、身体だけは大切にせんといかんよ。さくらちゃんもね」

節子「ハイ、ありがとうございます」

  節子、さくら、もう一度会釈して、参道の方へと向かう。

  その後姿を心配そうに見送る御前様。

 

59 帝釈天・参道

  夏空の下を威勢のいい掛け声とともに、祭礼の山車が参道をやってくる。

  山車の上で、みごとなバチさばきで太鼓を打ち鳴らしているのは、あの極道志願のあんちゃんたちである。

  その山車の下で、喜々として手振りよろしく、バチさばきの真似をしながらついていく寅。

  その後ろに、源公、ツヨシ、サブローたち。

  吉太郎やさくら、熊男と千代の姿も見える。

  往来は祭り一色の賑わいである。

 

60 題経寺・境内(夜)

  祭りの夜らしく、境内には晴れやかな顔をした家族連れの参詣客が続いている。

  その一角・・・。

  安置した山車のそばで、極道志願のあんちゃんたちがコップ酒を傾けながらくつろいでいる。

  寅、汗だくになりながら、ウチワで一生懸命あんちゃんたちに風を送っている。高揚した気分で、昼間の興奮がまだおさまっていない。

  そこへ吉太郎が駆け込んでくる。

吉太郎「大変だ大変だ!!寅ちゃん!!母さんが、母さんが!!」

寅 「ヨオー、吉ちゃん、どうした?」

吉太郎「母さんの様子がおかしいんだ!変なんだよ!」

寅 「変って?」

吉太郎「母さんが台所で倒れて・・・」

寅 「なに!!」

  寅、吉太郎のコトバが終わらないうちに、ウチワを放り投げ、
  脱兎のごとく駆け出し、題経寺を飛び出していく。

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