東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

83 同・茶の間

  一同、ゾロゾロと茶の間に上がる。

竜造「ところで、義姉さんの姿が見えないけど、買い物かなにかかい?」

  平造、途端に暗い顔になり、

平造「ああ、節子か・・・」

  寅、吉太郎、さくら、うつむいてしまう。

平造「一月ばかり前にな、ポックリ逝っちゃてな・・・」

竜造「逝っちゃった!!」

平造「急性の心不全でな。戦争では生き延びたってのに・・・」

竜造「(ガックリと肩を落とし)そう、心臓で・・・。しかし信じられないなあ。わしが兵隊に行くときはあんなに元気だったのに・・・」

  一同、座敷の奥に仏壇に目を向ける。

  真新しい節子の遺影が静かに微笑みかけている。

  平造、その遺影から目をそらし、自分自身に力をつけるように、

平造「竜造が帰ってきたんで、節子もきっと喜んでるだろう。きょうはひとつ、パーッとやろう。(竜造に)お前たちの歓迎会だ。節子もそれを望んでるよ」

竜造「うん、義姉さんの供養にもなるし」

平造「よし、寅、ちょっと酒買ってこい。それから魚もな!」

寅 「あいよ!(と、調子に乗って)さくら、カネをくれ」

さくら「そんなお金、うちにはない!」

  さくら、ハッキリした声で言う。

  その横で、吉太郎も困った顔をしている。

梅太郎「あ、酒なら上等なやつが何本かありますよ、お兄さん!」

つね「食べ物も缶詰やら何やらリュックにたくさん入ってます。そうそう(と、寅たちに)あんたたちにもおみやげがあったんだ」

竜造「そうだそうだ、そのリュックの中のものな、ドーンとここに広げちゃいなよ!」

  茶の間の片隅におかれていたリュックや風呂敷包みに、一同の手が伸びる。

 

84 同・裏庭(夕方)

  雨はすっかりあがっている。

  散り残ったコスモスの花が、いくらか元気を取り戻している。

  そこに美しい夕陽があたっている。

  茶の間から聞こえてくる賑やかな声。

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