東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

95 題経寺・鐘楼(夕方)

  夕暮れを告げる鐘がゴーンと鳴る。

  巣へ帰るカラスがカァーと鳴いて飛び去る。

 

96 とらや・茶の間(夜)

  寅・吉太郎、さくら、竜造、つね、梅太郎が夕餉の食卓を囲んで、平造の帰りを待っている。

梅太郎「おそいね、平造さん・・・」

つね「晩ごはん冷めちゃったね」

竜造「(子どもたちに)こういうこと、ときどきあるのかい?」

吉太郎「めったにないんですが・・・」

さくら「でも、お母ちゃんが亡くなってからはときどき・・・。ね(と、寅を見る)」

寅 「・・・(頷く)」

  ウーンと一同、それぞれに思案顔。

  

97 とある飲み屋(夜)

  10人も入ればいっぱいになる小さな飲み屋。

  そのカウンターで平造が酔いつぶれている。

  店の親父が苦り切った顔で見ている。

  平造の他に客はいない。

  そこへ若いアメリカ兵を連れた女が賑やかしく入ってくる。

  黄色にピンクの水玉を配した派手なワンピース。顔中白粉をぬり、真っ赤な口紅をひいて若々しく見せているが、よく見ると、40に近い顔である。

女 「おじさん、ビールある!」

  と言いながら、アメリカ兵となれなれしく腕を組み、カウンターのイスに座る。何気なく平造の方へ目を向ける。

  と・・・、一瞬目が止まり、そして息を呑む。

女 「へ、平さんじゃない!ねえ、あんた、平造さんでしょ!」

  平造、うるさそうに目を開ける。

女 「やっぱり平さんだ!平造さんだ!!」

  平造、酔った目で女を見てギョッとする。

平造「お、お前は・・・、お菊!!」

お菊「元気だった、あんたあ・・・」

  懐かしさに思わずにじり寄る。その顔はまぎれもなく、15年前、柴又から姿を消した寅の実母、お菊である。

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