東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

100 中学校・寅の教室

  担任の散歩先生がなにか調査表のようなものを生徒に配っている。

  ワイワイ、勝手なことを喋りながら、それを広げて見ている生徒たち。

散歩「(配り終えて)エー、君たちも来年は3年生になります。そろそろ、将来の進路について真剣に考えておかねばなりません。中学を出たら、さらに上の学校へ進んで勉学を志すのか、それとも就職して一足先に社会人になるのか、お父さんやお母さんともよーく相談して、この調査表に書き込んでくるように、いいですね!」

  寅、珍しく真剣な顔で、机の上に置いた調査表を見つめている。

  〈進路調査〉と書かれた、その調査表のUP・・・。

 

101 江戸川・土手

  秋の陽を映して、きょうも悠々と流れる江戸川。

  その土手の斜面に、学校帰りの寅が腕組みして寝転んでいる。

  眠っているのか、考えごとをしているのか、その小さな目はほとんど閉じられている。

  「寅ちゃん、寅ちゃん・・・」

  と、女性の声がする。

  寅、ハッとして目を開き、振り向くと、買い物かごを下げた節子が立っている。

寅 「アッ、お母ちゃん!!」

節子「どうしたの、そんなところで・・・」

  優しい節子の声、そして笑顔。

寅 「うん、きょう、学校で進路調査の話があったんだ。それでおれ、どうしようかなあと、考えていたところさ」

  と、寅、甘えた声で言う。

節子「そう、それだったら、寅ちゃんの好きなように、やりたいようにすればいいわ。・・・車寅次郎っていう人間はね、この世にたった1人しかいないのよ。だから、これが車寅次郎だって、胸張って言えるような人になってほしいわ。寅ちゃんはね、自分の好きなように生きなさい。自分の思い通りの道を歩きなさい。寅ちゃんには、それができると思うわ」

  優しく諭すような節子のことば。

寅 「うん、やっぱりおれ、お母ちゃんと一緒にダンゴ屋をやるよ」

節子「ダンゴ屋さん・・・。ウン、それもいいわね。きっとお父さんも喜ぶと思うわ、だけど、お母さんとは一緒にできないわ・・・」

  突然、節子の姿が暗くなり始める。

寅 「エエッ、どうしてさ!どうして一緒にできないの!!」

  寅、叫ぶ。

  と、節子の姿がスーッと消える。

寅 「アッ、お母ちゃん!!お母ちゃん!!」

  寅、必死に叫ぶ。

                      

  寅、空を掴んでバタバタともがいている。

  その背後で、子どもたちの声がする。

子どもたち「(口々に)寅ちゃん、寅ちゃん・・・」

  寅、ハッとして振り向くと、源公、ツヨシ、サブローたちが立っている。

寅 「お、お前たち!おれのお母ちゃん、知らないか!」

ツヨシ「お母ちゃん?寅ちゃんのお母ちゃんなら、夏祭りのときに亡くなったんじゃないか」

ツヨシ、不思議な顔で寅を見る。

寅 「亡くなった!・・・そうか・・・」

  寅、ようやく我に返る。

源公「ねえ、チャンバラごっこやろうよ。寅ちゃん、ここんとこ、ちっとも遊んでくれないじゃんか」

寅 「ああ、そのうちな・・・」

  寅、ガックリと肩を落として、土手の斜面を登っていく。

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