東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

102 題経寺・境内

  寅、悄然としてやって来る。

  本堂前で手を合わせているお菊。お参りが終わり、小走りに山門に向う。

  と、お菊と寅、すれ違う。

その瞬間、お菊、寅だと気づく。

お菊「!!!!」

  寅、悄然としたまま歩きすぎる。

お菊「(その背に)あ、あの、・・・(ことばが出ない)」

  寅、振り返り、怪訝な顔でお菊を見る。

お菊「・・・ごめんなさい。人違いでした」

  寅、頷き、歩き去る。

お菊「(見送り)寅次郎・・・」

  お菊、涙が溢れ出す。

 

103 とらや・店内

  竜造が調場で新聞に目を落としている。

  つねとさくら、台所で夕餉の支度。

  店内に客はいない。

  そこへ吉太郎が学校から帰ってくる。

吉太郎「ただいまあ」

竜造「ああ、お帰り」

  つね、台所から声をかける。

つね「吉ちゃんかい。おやつ作っといたよ」

吉太郎「ウン、宿題があるから、あとで食べるよ」

  と言って、2階に上がっていく。

竜造「感心だねえ・・・」

  そこへ寅が帰ってくる。

寅 「ただいま・・・(元気がない)」

竜造「ああ、お帰り。おやつ、あるってさ」

寅 「ウン、あとで食べる・・・」 

  と言って、2階に上がっていく。

竜造「ほう、寅も勉強かい。槍が降ってこなきゃいいけどな」

  と、そこへ、裏庭から梅太郎が血相変えて駆け込んでくる。

梅太郎「大変だ、大変だ、大変だあ!!」

竜太郎「(のんびりと)どうした、やっぱり空から槍が降ってきたか」

梅太郎「なにバカなことを・・・」

竜造「じゃあ、どうしたというんだい?」

梅太郎「そ、そのー、寅ちゃんには確か実の母親てえ人がいたんだよな」

竜造「ああ、いたよ。それがどうした」

梅太郎「その母親がな、柴又に帰ってきてるんだってさ!」

竜造「なにっ、お菊さんが!!」

  竜造、ガバッと立ち上がる。

梅太郎「いや、さっき大工さんから聞いたんだけどね。それで、そのー・・・、お菊さんという人と平造さんが、近頃ちょくちょく会ってるっちゅう話なんだよ。平造さん、ここんとこ毎日出かけてたろ。きっとまたヨリをもどしたんじゃなかろうか」

竜造「バ、バカな!!」

  竜造、青筋立てて震えている。

つね「ちょいと、あんた!!」

  と、台所から慌てて顔を出し、〈もう喋るな!〉と目配せする。

  台所でさくらが固まっている。

  と、そのとき・・・。

  2階に続く階段の方でゴトッと音がする。

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