東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

 一同が振り向くと、寅の足が半分だけ出て、止まっている。

梅太郎「(慌てて)いや、これはおれが言ったんじゃないよ。そういう噂だよ!噂だからウソかもしれないし、きっとウソだよ、ウソに決まってるよ!じゃあ、おれ、やりかけた仕事があるから、またあとで。さいならー!!」

  梅太郎、慌てて裏庭に逃げていく。

  調場にガクッと座り込む竜造。

つね「ホントにひどいことを言う男だよ。あ、さくらちゃん、あんなタコの言うことなんか気にしなくていいからね」

  つね、寅にも聞こえるように言い、さくらを気遣って台所に入っていく。

  寅、ゴホッゴホッと咳払いをし、なんにも聞いてなかったような顔をして、階段を降りてくる。そして、茶の間に上がり、ゴロッと横になる。

  と、そこへ・・・

  したたかに酔った平造が千鳥足で帰ってくる。

  平造、よろけながら店の中に入り、竜造と目が合う。

竜造「・・・・(プイと横を向く)」

  平造、なんとも情けない表情となり、フラフラっと茶の間に倒れ込む。そして寅の横にゴロンと転がる。

  寅、酒の匂いにムッとなり、日頃のモヤモヤに一気に火がつく。ガバッと半身を上げて、

寅 「ヤイ、おやじ!!恥ずかしくないのか、毎日毎日、昼間っから酒くらいやがって!!おいちゃんやおばちゃんにすまねえと思わねえのか!!お母ちゃんも泣いとるぞ!!」 

  黙って聞いていた平造、こらえきれずに、寅に向かって身体を起こし、

平造「生意気抜かすな!!」

  と叫んで、そばにあった煙管で寅の頭をぶん殴る。

寅 「アッ!!イテテテ・・・」

  あまりの痛さに頭を抱えて転げ回る。そして涙をためて立ち上がり、

寅 「やったな、くそおやじ!!」

  と、平造に猛然と突進していく。

平造「くそおやじとはなんだ!!くそおやじとは!!」

  あっという間に激しい取っ組み合いのケンカが始まる。

  慌てて2人を引き離そうとする竜造とつね。

  ワッと泣き出すさくら。

  2階から吉太郎が駆け下りてくる。

  裏庭からも梅太郎が駆けつける。

  竜造とつねに羽交い締めにされた寅と平造。そのにらみ合いの中で2人に応酬は続く。

寅 「お母ちゃんは泣いとるぞ!おかあちゃんは泣いとるぞ!」

平造「うるせぇ!お前のような極道息子に何がわかる!」

寅 「極道息子とは何だ、極道息子とは!おれが極道息子なら、てめぇは柴又一の極道おやじだ!」

平造「な、なんだとぉ!いっぱしの口聞きやがって!それが親に向かって言うコトバか!」

寅 「親だって!親なら親らしく、親らしいことやってみろ!」

平造「こ、このお!図にのりやがって!お、お前のような奴はもう親でもなければ子でもねえ、か、勘当だ!!」

寅 「おもしれぇ、上等だよ!てめぇのようなろくでなしの親なんかこっちで勘当してやらあ!!」

  寅、これまでとばかり憤然と茶の間から2階の部屋へ駆け上がっていく。

  吉太郎とさくら、慌てて後を追う。

  呆然と見送る竜造、つね、梅太郎。

  平造、へたり込み、うなだれる。

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