東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

106 帝釈天・参道

  駅に向かって足早に歩く寅。

  追いかけるさくら、竜造、つね、梅太郎。

さくら「お兄ちゃーん、お兄ちゃーん!」

  寅、振り返りつつ叫ぶ。

寅「来るな!来るんじゃない!!」

  その気迫に思わず立ち止まる竜造、つね、梅太郎。

  しかし、さくらは必死に追いすがる。

さくら「お兄ちゃーん、お兄ちゃーん!」

  やがて駅が見えてくる。

  寅、仕方なく立ち止まる。

  さくら、追いつき、必死に、

さくら「お兄ちゃん、帰ろう!」

寅 「さくら、いいか、お兄ちゃんは考えがあって、これから遠いところへ行くんだ。お前とは一緒に行けないんだよ」

さくら「うそ!お兄ちゃん、いままで考えることなんてしたことないくせに!」

寅 「ン、まあ、それ言われるとなあ、ハハハ・・・」

  しかし、さくらもいままでの家出とは違うと感じた。

さくら「遠いところって、どこ?」

寅 「さあ、それはわからない」

さくら「帰ってくる?」

寅 「ああ、帰ってくるさ」

さくら「ホント?」

寅 「ああ、ホントだ」

さくら「きっとよ!」

寅 「きっとだ」

さくら「じゃあ、指切り」

  さくら、小指を出す。

  寅、指を絡ませる。

寅 「じゃあ、元気でな・・・」

  寅、さくらの手を押しやり、駅の方へ走り出そうとする。

さくら「待って!」

寅 「なんだ、まだなにかあるのか」

  寅、振り返る。

さくら「これ持って行って」

  さくら、ポケット中から小さな布袋を取り出し、寅に渡す。

寅 「なんだ、これ?(受け取って、手のひらの上で布袋を逆さにする)」

  ジャラジャラと色とりどりのおはじきが出てくる。

寅 「おはじき?・・・」

さくら「そのおはじきはね、お母ちゃんが亡くなる前の日に買ってくれたものなの」

寅 「そうか!・・・。じゃあ、半分だけもらっとく。あとの半分はお前が大事に持っていろ」

さくら「ウン!」

  寅とさくら、おはじきを半分づつにして、それぞれのポケットにしまう。

寅 「じゃあ、これでお兄ちゃんは行くから。いいな、さくら。おいちゃんやおばちゃんたちの言うことをよく聞いて、可愛がってもらうんだぞ。吉ちゃんとも仲良くな。おやじはお前がついていれば大丈夫だ。じゃあ、あばよ!」

  寅、駅へ駆け出す。

さくら「(見送って)お兄ちゃんも身体に気いつけてね!きっとまた、帰ってくるんだよ!」

  さくらも手を振りながら駅へ走り寄っていく。

  電車の音が近づいてくる。

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