東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

107 柴又駅

  電車がホームに入ってくる。

  そして停まる。ドアが開く。

  勤め帰りの客たちがはじき出されてくる。

  そこへ寅が駆け込んでくる。

  電車に乗る。同時にドアが閉まる。

  発車の笛が鳴る。ゆっくりと動き出す。

  「お兄ちゃーん!!」とさくらの声。

  窓にくしゃくしゃの顔を寄せる寅。

  改札口で大粒の涙を流し、手を振っているさくら。

  次第に加速し、ホームを離れていく電車。

  その向こうに、燃えるような紅い大きな夕陽。

  「お兄ちゃーん、きっとまた帰ってくるんだよぉー!!」

  さくらの声が、その夕陽の中に溶けていく・・・。

 

108 とらや・裏庭

  穏やかな秋の日がとらやの裏庭に落ちている。

 

109 同・茶の間

  テーブルを囲んで、平造、竜造、つね、それに御前様と散歩先生が深刻な顔  

  を並べている。

竜造「あれからもう10日になる。やっぱり警察に届けたほうが・・・」

つね「だけど・・・。いまは日本中が浮浪者であふれてるって言うからねえ。どこまで警察がとりあってくれるか・・・」

御前様「ウーン、困ったもんだなあ・・・」

散歩「学校の方でも一応打つべき手は打っておいたんですが・・・」

平造「(力なく)私は、もう寅のことはあきらめました。今度のことはすべて私の不徳から起きたことで・・・。だから、寅のことは、もう寅の好きなようにさせてやろうと思います。(一同を見渡して)なあい、あいつのことだから、どっかでピンピンしてると思いますよ」

  平造、最後は自分に言い聞かせるように言う。

  そこへ、裏庭から梅太郎が顔を出す。

梅太郎「寅さんから便りが来たんだって!」

竜造「そうなんだよ。けさ、散歩先生のところへ届いたと言って、持ってきてくださったんだよ」

梅太郎「で、寅さんは今どこにいるんだい!」

竜造「それがあいつ、居場所を書いてねえんだよ」

  竜造、テーブルの上のハガキをポーンと梅太郎の方へ放る。

  ハガキが畳の上に落ちる。

  梅太郎、取り上げて目を落とす。

  そのハガキのアップ。

  そこには金釘流のへたくそな寅の字が走っている。

  その文字に寅の声が重なる。

寅の声「拝啓、皆様にはその後お変わりなくお過ごしのことと存じます・・・」

  やがて、寅のハガキに次のシーンがだぶってくる。

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