東京都福生市にあるカフェバーさんペンの輪にまつわる話「さんペンの輪物語」と シナリオ「男はつらいよ」番外編『少年・寅次郎ものがたり』 さんペンの輪マスターshinが綴ります

110 蒸気機関車

  山あいの村を黒鉛をあげて突き進む蒸気機関車。

  寅の声が続く。

寅の声「わたくしはいま、さる高名なお方の元に弟子入りし、日夜たゆまぬ研鑽と修行の日々を送っております。先生との約束は果たせなかったけど、いつか皆様に喜んでいただけるような立派な人間になって、故郷、柴又に帰ってきます。その日まで、どうかお元気で!皆様のご健康とご多幸を旅の空より祈っております。車寅次郎」

  ボーッ、ボーッとうなるような汽笛を鳴らし、さらに黒煙をあげて山の中に消えていく蒸気機関車・・・。

 

111 ある地方都市

  たとえば東北地方。

  うっすらと初雪をかぶった山並みが見える小さな田舎町。

  ここでは刈り入れもすんで、秋祭りの真っ最中である。

  神社へつづく道を晴れ着で着飾った親子連れの一家がゾロゾロ歩いている。道筋にはいくつも屋台が並んでいる。

  その一角で・・・。

  「天に軌道のある如く、人それぞれに運命というものがあります。もし、そこのお父さん!」

  と叫んで、大きな天眼鏡を構えているのは、ご存知、寅が浅草で出会ったあの香具師のオッサンである。

  そして、その隣り・・・。

  ここにも古本の山をずらりと並べ、威勢のいい掛け声をあげている1人の若い香具師がいる。

  その顔は、まぎれもなく四角い顔の寅である。

  「白く咲いたが百合の花、一度変われば二度変わり、三度変われば四度変わる。淀の川瀬の水車、誰を待つやらクルクルと・・・」

  まるで水を得た魚のように、生き生きとしたその顔。そして冴え渡る口上。

  まさしく後年のフーテンの寅を彷彿とさせる。

  祭りばやしの遥か向こうに、美しい山並み。

  その上に、雲ひとつない晩秋の空が広がっている。

  テーマ音楽、しだいに高まり、エンドマーク浮かぶ。

 

                               

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