この10月14日、以下のようなニュースが流れた。毎日新聞を引用・要約すると次の内容となる。――米ネット通販大手、アマゾン・ドット・コムが発売した電子書籍端末「キンドル」(世界100カ国で販売)の開発、マーケティング、技術設計を担当するチャリー・トリッツシュラー氏は、日本での販売に合わせて東京都内で記者会見し「どの言語にも対応することが長期ビジョンだ」と述べ、日本語書籍もダウンロードできるサービスを検討していることを明らかにした。時期は明言を避けたが「キンドルは米国での発売から2年で世界で発売した」と述べた。また「重さ289グラム。通勤電車の中でニュースや書籍を読める」と米国での販売好調の要因を説明した。―ー

 要するに、アメリカ発で、手の平サイズで読めるブックリーダーが日本でも発売されたという内容だ。今のところ、日本語には対応していないがコンテンツをかき集めてみせる、という並々ならぬ野望が伝わってくる。

「しかし、室町時代から連綿となっている本は取次会社から書店に卸す、というシステムが簡単に壊れるのでしょうか。かつて04年にソニーはリブリエという電子ブックリーダーを作ったものの、コンテンツが集まらずに失敗しています。アマゾンは取次会社では大阪屋と蜜月の関係にあり、簡単に制度を崩壊させるようなことはしないと思います」(出版社スタッフ)

 という見方があれば

「いえいえ、アマゾンにおける本の扱い高など、2割にも満たない。今後、拡大の方向性をとる可能性は高い。一説には、作家ないし版元がキンドルにコンテンツを卸すと40%で即、現金決済というのが国際的な標準です。これは、従来のシステムだと卸で35%とられた上、支払いまで6ヶ月待たないとならないのに比べて魅力的でしょう」(流通ジャーナリスト)

という意見もあり、議論は分かれるところだ。

 しかし電子書籍市場は110、220、480億円(08年度)と毎年、倍の伸びを見せている活気ある市場であること確か。大手の出版社は軒並み「紙媒体の書籍編集部」を解散し、「通信編集部」を急設している。

「アルファベットや、イタリア語は横文字だからブックリーダーが重宝されるのはわかる。しかし行間や、文字の大きさやを気にする日本人が、活字をブックリーダーで読むでしょうか」(書店員)

という声も。

 電子書籍リーダーがメインになれば「書店」「出版社」「取次会社」などはもういらない。過去の産物だ。必要なのはコンテンツプロバイダ、作家、もしくはエージェントだけとなる。ここにきてキンドルの寡占市場許すまじと、グーグルが2010年に「グーグル・エディション」という電子書籍リーダーを始めるという報道があった。

 さて、アマゾン・キンドルは古き体質の出版界をぶち壊す『黒船』となるのか。注目したい。