だが、記者たちのトップ屋魂は少しも揺るがない。週刊現代の連載記事で名誉を傷つけられたとして、全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)元特別顧問の松崎明さん(73)が、講談社と執筆したジャーナリストの西岡研介さんに1億1000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が10月26日、東京地裁であった。 山田俊雄裁判長は「原告がJR東日本で発生した列車妨害などに関与した可能性があるという記事は、真実と認められない」と述べ、550万円の支払いを命じた。 問題となったのは、「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」との題で、2006年7月~07年1月に24回連載された記事。「書いたのは、神戸新聞社―噂の真相―週刊文春―週刊現代と渡り歩いた「最後のトップ屋」西岡研介氏だ。『噂の真相』では「則定衛東京高等検察庁検事長のスキャンダル」「森喜朗内閣総理大臣の買春検挙歴報道」などをスクープした。同雑誌が休刊すると週刊文春の専属記者となり、その後、週刊現代に転ずる。「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」(週刊現代)で2007年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞。2008年、『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)で第30回講談社ノンフィクション賞受賞。「蛇のようなしつこい取材で有名です。どんな小さな事実も逃さない。噂の真相編集部に右翼が責めてきて岡留編集長が刺されたときに、いち早く記者として各新聞社に電話、現場を撮影したのが西岡氏です」(週刊誌記者)
JRとの長い戦いは、週刊文春の記者時代に「JRの記事を書いたら、キヨスクに置いてもらえなかった」という遺恨から始まる。しかもこのJRの一連の裁判では、100件を超える訴訟を引き受けた。それでも、満身創痍でJRにはびこる「左派の黒い資金」と戦い続ける西岡記者の「矜持」には拍手を送りたい。