・鋼の錬金術師 Fullmetal Alchemist 第10話『それぞれの行く道』

人一倍人を愛し、それ以上に周りに愛された一人の男がその命を散らした今回。静かに、
そして細やかにストーリーをなぞるFAのスタイルに非常にマッチした回でした。はっきりと
ロイパート・エドパートと分かれている分、セントラルでの一連の出来事が彼らの行く道の
分岐点となっていることが解り易く描かれていましたね。
 
キーワードは“人の愚かしさと優しさ”、そして“焔”。

 

『面白そうじゃねえか! 一口乗ってやるよ――お前の青臭い理想が、この国を
 どう変えるのか、見てみたい』
byマース・ヒューズ
 
この辺りの過去描写は原作だと結構最近描かれたものですが、中途半端に描く
くらい

だったら後々がっつりやって欲しかったなあ……尺の関係上どうしても端折らなければ

ならないシーンが多いのは理解できているのですが、今回はカットされてしまった所が

やけに多かったように感じます。ブラッドレイ大総統がロイの灯ったばかりの焔を見て呟く

一言とか、一旦彼に背を向けて歩き出す二人の姿(特にこのシーンのヒューズさんが

チンピラ臭くてカッコイイんだわ・笑)とか。ただ、
 
『――何、つまらん思い出だ』byロイ・マスタング
 
一話の構成に限って言えば非常に上手いんですよね、このアバン。軽口として飛び出た

『つまらん思い出』という言葉ですが、この時点に於いては“準備期間”としてその内なる

野心を隠している状態だった訳で。皮肉にも、右腕たる親友の死が彼の焔を大きくしたん

ですよね……この顔に手をやるジェスチャーが今回のラストシーンのそれと繋がって

描かれているのがまた細かい。
 
『仕事をこっそり抜け出してきたのでな。では、さらばだ!』byキング・ブラッドレイ
 
一話の大失敗の影響が如実に現れてしまったシーンですな……大好きなシーン

だったのに、勿体無いことこの上ない。中途半端に彼の底知れなさを描いてしまった為に、

彼の好々爺然とした振る舞いにまったく説得力がないんですよね……ただ、相変わらず

この絵はシュールで好き(笑
 
『連れてって連れてって連れてけーっ♥』
 
『ぃいやったぁーっ!』byウィンリィ・ロックベル
 
理屈抜きでものごっそ可愛いな! や、そもそも可愛いという概念に理屈なんて

これっぽっちも必要ない訳ですが!(笑) 喜びのあまりクルクル回る姿もまた

愛らしいのう。
 
『ヒューズさん――本当に、お世話になりました!』byウィンリィ・ロックベル
 
そしてこの元気一杯なお辞儀も嬉しい。因みに私、ポニーテールには目がなくてね……

ポニーテールの子が野球帽被ってるのを見ると特にときめいちゃうよ?(どんなコダワリだ 

そして隣のグレイシアさんもまた美人だ……(笑
 
『セントラルに来た時は、必ず寄って行ってくれよ? 自分の家だと思ってさ。
 それと、あいつらにもよろしくな!』
byマース・ヒューズ
 
うおおおおん!(もう泣いてる!?
 
ヒューズさんは私にとっての理想のオヤジ像! こんな風なカジュアルルックを
着こなせるオヤジになりたいぜ……今だって『眼鏡掛けてると上司に見えるよね』
とか言われちゃうけどな!(えー
  
『パパ、がんばってねー!』byエリシア・ヒューズ
『いってらっしゃい!』byグレイシア・ヒューズ
 
うあああ! うああああああ!(泣) このいつも通りの別れの挨拶が、よもや永遠のもの

となるとは……クールに(でも確実に父としての、夫としての暖かさを感じさせながら)手を

振るヒューズさんがカッコイイのがまた切ない。
 
『その内、国家転覆するんじゃ――!?』byマース・ヒューズ
 
キーワードが一段と解り易くなってますなー。原作では二十巻近く掛けてようやく

エドたちが行き着いた真実にこの序盤で気付いてしまったヒューズさん、マジで

有能だったんだなあ。いつもの子煩悩なゆるーい眼差しから“反転”した、真実を

射抜くような鋭い眼光がイカスぜ。
 
『イカス刺青してるな――ぐぅっ!』byマース・ヒューズ
 
『“クソ”は……こっちの台詞だわ』byラスト
  
アクションを短めにしてペースを保ちたかったのはわかるんですが、この一連のシーンの

台詞カットはいただけない……! ラストの『デスクワーク派だと思ってたら~』は特に。

あと『一回死んじゃったじゃない』と、人造人間の不死性が初めて描かれた印象的な

シーンでもあったのに。更に、ヒューズさんが露骨に狽し過ぎなのも気になりました……

引きつった笑顔で『イカス刺青してんな、ねえちゃん』と軽口を叩く所も好きだったのに!
 
『ロス少尉――じゃ、ねェな。誰だァ、あんた?』byマース・ヒューズ
 
うおおおお、カッケエエエエ! ヒューズ中佐の“切れ者”というイメージを如実に

表現したカットですな。獣のような眼と笑みがすげえ。いつもながら超一流の

藤原啓治さんの演技が更なる凄みを足してますねえ。
 
『ああ? そうだっけ? うっかりしてたよ――これでいっかな?』byエンヴィー
 
ロス少尉の新CVに違和感を感じていた方も多いようですが、今回、このシーンの為に

起用したんじゃないかって思えてしまうくらい冷徹な声が自然と出ていましたな……! 

いちいち美女の顔を醜悪な笑みで崩すエンヴィーのいやらしいこと。
 
『おいおい、勘弁してくれよ……家で女房子供が待ってるんだ。ここで
 死ぬ訳にはいかねえんだよ
――っ!?』

 
『いーぃ演出だろう?』byエンヴィー
 
『……ッ……クソッタレぇッ!byマース・ヒューズ
 
今から考えてみれば、ヒューズさんのような人間はエンヴィーにとって最大の嫉妬の

対象だったのでしょうね……たった一人の他人を愛していたが故に受けた一発の銃弾で、

簡単に死に至る人間。けれど、死した後も何人もの心の中にずっとずっと居続けた、強くて

優しい一人の夫にして、父にして、友人にして――人間。
 
『ママ……どうしてパパうめられちゃうの?』 
 
『そんなことしたら、パパ、おしごとできなくなっちゃうよ……』
 
『エリシア……っ』
 
『パパ、おしごといっぱいあるっていってたもん!』
 
『いやだよぉ!』
 
『うめないでよぅ……パパぁ!!byエリシア・ヒューズ
 
うああああん! うわああああああああん!(ずびずび
 
一作目でもここでボッロボロに泣かされた記憶がありますが、今期もまたトドメはエリシアちゃん

でした……何気に、アームストロング少佐が堪え切れなくなってしまう所も結構な追い討ち

なんですよね(泣) と、憤怒に手を震わす大総統の後ろに見覚えのある顔がいてびっくり(えー 

あの人、『あれ』に喰われちゃった人じゃなかったっけ……
 
『いや――雨だよ』byロイ・マスタング
 
『――そうですね。戻りましょう。ここは、冷えます』byリザ・ホークアイ
 
個人的に、序盤屈指の名シーン。『いかんな、雨が降ってきた』と呟く時点から微妙に

声が震えていて、『いや――雨だよ』の場面では本当に静かに泣いていることが

ダイレクトに伝わってくるのが凄すぎる。前々から何度も思ってますが、三木眞一郎……

間違いなく声優界の“宝”の一人ですなあ。と、演出面でも地味ーに展開するFAの
スタイルが今回は合っていた感じ。ホークアイ中尉の呟きとこのカットが妙にしっくり

来ました。ただ、次のシーンにあまりに早く繋がってしまったので余韻に浸れなかった

のが残念……EDを挟んでCパートに繋げれば丁度良い按配になったと思うのですが。
 
『公私混同とは、あなたらしくないですね』
『公も私もあるものか……大総統の地位を貰うのも、ヒューズの仇を討つのも、
 全て私一個人の意志だ』

 
『上層部に喰らいつくぞ! 付いて来るか?』byロイ・マスタング
 
『何を今更』byリザ・ホークアイ
 
この“一個人の意志”が他者のそれと組み合って、大きな力となるのが“鋼の錬金術師”の

特徴の一つ。真っ赤な夕陽が彼の中に燃え上がる焔のイメージそのままですねー。くしゃくしゃと

髪を弄る動きが妙に細かかったのは、序盤のそれとの対比構造故でしょうか、単にサービス

なんでしょうか(笑) しかし、『公私混同』というこの中尉の言葉が後々あんな形で顕現する

とは……改めて荒川先生の構成力の高さに驚かされますなあ。 

 


対照的過ぎるラストカットがまた切ないのう……エドパートに関しては少し淡白だった印象が

否めませんが。それは第一作におけるこのエピソードの涙腺破壊効果がもうイジメのレベル

だったからそう思うだけかもしれません(苦笑) 駅での“見送り”とか、特別仕様EDとかもう

とにかく泣かすことに特化してましたからね……
 
第一作ではここで『来週をお楽しみに!』だったからね! あれだけ鬱にした後でどう楽しみに

しろというんだ!(汗) とまあ云年ぶりの突っ込みをこなした後で恐縮ですが、暫くドラマに

特化したエピソードだっただけに、来週はエンターテイメントとして気楽に楽しめそうですなー。
 
……でも家弓さん、そのイントネーションだと『軌跡』に聞こえるよ?(えー