2006年06月26日 起業と経営のコラム
ASP型で儲ける方法
先週、とある会社のASP(Aplication Service Provider)ビジネスに関する相談を受けていた。
良い機会なので、自戒の念を込めて、ASPビジネスについて書く。
ASPのビジネスにおける富の分布は、黄金律を振り切って1対9ぐらいでは無いかと思う。つまり、自然法則以上に儲かっていないサービスが多いのではないだろうか?
ASP型のサービスを検討しておられる方々は、この記事を読んだ上で、もう一度検討してもらいたい。
今更だが、自由競争、市場の原理が有効に働いている市場に於いては、商品の価格は需要と供給の関係で決まる。
ここまでは、誰でも知っている。
ところが、ビジネスのタイプによって、供給過多になった場合の価格下落の速度が違うという点には、中々気が付いていない。
競争が激しくなると、商品の価格は低下し始める。アダムスミスは、見えざる神の手によって、需要曲線と供給曲線が交わる点に価格は収斂すると言った。
スミス君、それは間違えてるよ。経済学部中退の私に言われたくないだろうけど。(笑
私の経験的観測で言うなら、「商品の価格は下落は、原価を割り込む直前で止まる。」が正しい。商品価格が原価に近づくと限界効用が働き始め、やがて下げ止まる。
だから、原価率、もう少し正確にいうと減価償却費を除いた変動費率、によって価格の下げ止まる位置が異なるのだ。
(難しい話はここまでです。)
例えば、街のマッサージ屋の平均価格は時間6000円。お店がマッサージ師に支払う賃金が3000円だと仮定する。マッサージ屋がどれだけ乱立しても、価格を3000円以下に下げることはない。3000円以下に下げるぐらいなら店を閉じる。
一方で、航空会社はどうだろう?
飛行機を1機飛ばすためには、機体の減価償却費や燃料費などの様々な原価が掛かる。が、500人乗りの飛行機を一度飛ばすとなると、500人満席状態で飛ばそうが、10人だけ乗せて飛ばそうが、コストはほとんど変わらない。1人単位で掛かってくる変動費がほとんど無いのだ。
だから、「空席を空けて飛ばすぐらいなら、格安でもいいから席を埋めてしまおう。」という考えになりやすい。そして、飛行機のチケットの価格はどんどん下がってしまい、航空会社の経営は青息吐息だ。
ASPというビジネスモデルはどうだろうか?
ある側面で見ると航空会社によく似ている。
一度システムを作ってしまえば、1社でも100社でも1000社でも、掛かるコストは変わらない。
「空席を空けて飛ばすぐらいなら、、、、」と同じ発想に皆陥る。
だから、際限なく価格は下落していく。
そして、個人向けのサービスは、ほとんどが無料になってしまった。
法人向けサービスも、瞬く間に価格下落していく。
では、ASPサービスは儲からないのか?
ASP型ビジネスが持つ問題点は航空会社のビジネスと類似しているが、一方でASPには、航空機のビジネスに無い利点がある。
それは、事実上キャパシティに上限が無いことだ。(しっかりとした負荷分散技術があることが前提になるが)
それに対してASPは、客が増えればサーバーを増設すればよい。今どき、サーバー代金など開発費に比べれば、タダみたいなもんだ。
そして、一度損益分岐点を超えれば、変動費が無いだけに売上=粗利。売れば売るほど利益率が上がる。もしも、価格が高値安定し、順調に集客(販売)できるなら、こんな良いビジネスモデルはない。
ところが、実際には、前述したとおり儲かっているASPは少ない。
最大の理由は、最初から価格設定が安すぎること。
既に格安航空券の乱売状態に陥っている。
別の言い方をすると、営業・マーケティングコストを甘く見てるか、自社の営業力を過信している。
月額1万円のASPを売るのに、営業マンが3回訪問して成約していたら、永久に赤字だ。初めから計算が合ってない。個人と違って法人に衝動買いは無い。どれだけ価格を安くしても、それなりの営業コストは掛かる。それを考慮に入れた価格設定にしておかなければ、売れば売るほど赤字が拡がる商売になる。
という訳で、儲かるASPは次の2つのパターンしかない。
儲かるASPとは、次の何れかのタイプだ。
1)低価格のASPをマーケティングコストを掛けずに数を売る。
2)マーケティングコストがかかるが、高価格で売れるASP
実はどちらも、そんな簡単なことはない。個別に検討してみたい。
1)低価格のASPをマーケティングコストを掛けずに数を売る。
低価格のASPが、ほとんどの場合、構造的に赤字であることは前述した。
●他の製品・サービスであらかじめ顧客基盤、営業網がある
ASPサービスを単品で一から販売しようとすると、それに掛かるマーケティングコストを全額その粗利の中から拠出しなければならない。
しかし、他の製品・サービスで既にマーケティングコストを掛けていて、顧客基盤と営業体制が有る場合はどうだろうか?
もし、その顧客基盤に対して、追加コスト無しに新たなASPサービスが売れるなら、見方によっては、マーケティングコスト無しで販売できたことになり、売上=利益 という図式が出来上がる。
この図式なら、販売価格がどれだけ安くても、利益を確保することが出来る。
しかし、他の製品・サービスで既にマーケティングコストを掛けていて、顧客基盤と営業体制が有る場合はどうだろうか?
もし、その顧客基盤に対して、追加コスト無しに新たなASPサービスが売れるなら、見方によっては、マーケティングコスト無しで販売できたことになり、売上=利益 という図式が出来上がる。
この図式なら、販売価格がどれだけ安くても、利益を確保することが出来る。
●WEBのみの販売
WEBで24時間365日、無人で商品説明からサンプル利用、申し込み、決済までを行い、人手を介さない。これなら営業コストはゼロだ。もちろん、宣伝広告費というマーケティングコストは掛かるが、それにしても、人に掛かるコストと比べれば、遙かに安くなるはずだ。
ロジスティックを伴う一般的なeコマースが販管費の爆発よってなかなか営業利益を出せない現状と比較すると、ASPのビジネスモデルの素晴らしさが際だつ。
ところが、その素晴らしい状態は、WEBで集客できる場合に限られる。多くのeコマースが体験しているとおり、実際にはサイトを立ち上げたからと言って自動的に客が訪れる訳ではない。元々ポータルをやっているなどネット上での顧客基盤をもっているか、無料版を配布して人気を博するなど仕掛けがなければ、WEBだけで黒字化できるほどの集客は難しい。
また、WEBだけで商品説明を完結しようとすると、相当にシンプルでわかり易いサービス内容でなければならない。
ロジスティックを伴う一般的なeコマースが販管費の爆発よってなかなか営業利益を出せない現状と比較すると、ASPのビジネスモデルの素晴らしさが際だつ。
ところが、その素晴らしい状態は、WEBで集客できる場合に限られる。多くのeコマースが体験しているとおり、実際にはサイトを立ち上げたからと言って自動的に客が訪れる訳ではない。元々ポータルをやっているなどネット上での顧客基盤をもっているか、無料版を配布して人気を博するなど仕掛けがなければ、WEBだけで黒字化できるほどの集客は難しい。
2)マーケティングコストがかかるが、高価格で売れるASP
KLabが開発した高速メール配信システムは、提携先からASPの形でも提供しているが、年間契約で2〜3百万円の価格設定になっている。何万、何十万人という単位の会員、顧客を持っている企業しか対象にならないが、そういう企業からはニーズがあり、導入企業には価格に見合った効果が期待できる。
そして、市場に同等の性能・機能の製品が無いため、価格を下げる必要がない。
高度で特殊な技術を用いているので同等の性能の製品が登場する可能性は低い。価格を維持することが出来るはずだ。
他にも、SFAやCRMなどにこのタイプの製品が多い。高価格なASPは、高価格を支払える規模の会社が顧客対象になることが多い。
高価格なASPが成立するためには、以下の条件を複数満たしている必要がある。
●高度or特殊な技術orノウハウを用いるなど参入障壁が高い。
●会社または製品、サービスの知名度、ブランド、信頼度が高い。
●ASPとして単にシステムを利用するだけではなく、それを活用したコンサルティングなど付加価値が付随している。
●価格決定権を握れるだけのシェアをもっている。
●高付加価値な営業体制がある。
そして、市場に同等の性能・機能の製品が無いため、価格を下げる必要がない。
高度で特殊な技術を用いているので同等の性能の製品が登場する可能性は低い。価格を維持することが出来るはずだ。
高価格なASPが成立するためには、以下の条件を複数満たしている必要がある。
●会社または製品、サービスの知名度、ブランド、信頼度が高い。
●ASPとして単にシステムを利用するだけではなく、それを活用したコンサルティングなど付加価値が付随している。
●価格決定権を握れるだけのシェアをもっている。
●高付加価値な営業体制がある。
まとめ
1)低価格のASPをマーケティングコストを掛けずに数を売る。
2)マーケティングコストがかかるが、高価格で売れるASP。
どちらの条件も、起業するときに条件を満たすことは難しい。既に営業している会社でも、上記の条件を満たす会社は少ないはずだ。
上記の条件を満たすことが出来ない会社がASPのビジネスをやる場合は、単体でやらず、上記の条件を満たす会社と組んで事業化すべきだ。
逆に、どちらかの条件を満たしている会社は、是非ASPのサービスをやるべきだ。
そして、やるなら、損益分岐点を超えるまでの期間を辛目に設定して、赤字期間を耐え抜く覚悟と資金を用意した上で取り組むことだと思う。
損益分岐点を超えるまで我慢すれば、夢の高利益体質が待っている。
2)マーケティングコストがかかるが、高価格で売れるASP。
上記の条件を満たすことが出来ない会社がASPのビジネスをやる場合は、単体でやらず、上記の条件を満たす会社と組んで事業化すべきだ。
損益分岐点を超えるまで我慢すれば、夢の高利益体質が待っている。






