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2006年09月29日 モバイル&インターネット

ドコモが日本最大の消費者金融になる日(携帯大競争時代の到来)

書きかけの連載が沢山ありますが、今日は久々にモバイル関連のことについて書きます。

最近は「ベンチャー」「起業」関連の講演が多かったのですが、この秋は本業のモバイル関連の講演を行って行きます。
 

2006年10月20日、『WPC TOKYO 2006』にて『番号ポータビリティ時代を勝ち抜く、ケータイビジネス戦略の行方』というタイトルのパネルディスカッションをやります。(裏が今一番ホットな笠原君だよぉ。客もってかれる。ヤバイ。皆さん来てね。)



以前こう書いた。

モノやサービスの価格は、需要と供給の関係で決まる。
光ファイバーや、メタルの線は、競合会社が敷設合戦をやれば、地中や海底に何本でも線を埋めることが出来る。今まで1本だった幹線が3本になれば、供給は3倍になる。それに、技術革新が加わと、ADSLの様に容量は何倍にも膨らんでいく。

ところが、ワイヤレスはどうだろうか?
空間は一つしかない。10年前も、10年後もやっぱり空間は一つしかない。
光ファイバーを増設するような訳には行かないのだ。つまり、電波の物理的な供給総量は永久に増えないのだ。

これが、携帯電話料金が高止まりする、本質的な理由。

しかし、それはあくまでも本質論であり、実際には下記の二つの要素によって、通信料金は変動する。

1)認可行政
2)技術革新


MNPが始まり、6キャリア体制になり、MVNPが登場し、携帯電話会社の大競争時代が目の前に迫ってきた。固定通信網のビジネスが通信費用だけでは収益が出ないことを見ても解るとおり、携帯電話も大競争時代になれば、土管代(通信費)だけでは収益を確保できないようにあなる。

そこで、AUとソフトバンクは「土管は顧客を囲い込みの手段として割り切って安価に提供して、独占的地位を活用して(とか書くと怒られますね)その上のアプリケーション&コンテンツ・レイヤーで儲ける。」という戦略に傾斜しているように見える。事実、AUは、インデックスやドワンゴを差し置いて、既に日本最大のコンテンツプロバイダーに成長した可能性が高い。プラットフォーマーとコンテンツ・アグリゲーターというレイヤーリング(垂直分業的棲み分け)は既に崩壊したと言って良い。

一方でドコモは、通信の上のコンテンツやアプリケーションに活路を見いだすという垂直統合に活路を求めるのではなく、金融事業へのパラダイムシフトに活路を見いだしているように見える。

この戦略の違いは、多少なりとも違和感を感じる。

これを書き出すと脱線したまま帰って来られなくなるので、シェアと垂直統合の関係、そして垂直統合の成功条件について別の機会に書くことにする。

さて、ドコモは「DCMX」を発行して、クレジットカードのイシュアラーとなった。まずは、この背景を考えてみよう。




ドコモは「DCMX」を発行して、クレジットカードのイシュアラーとなった。この背景を考えてみよう。


携帯電話が普及してから、様々な生活習慣が変化した。例えば、携帯電話が普及してから待ちあわせはアバウトになった。「渋谷に7時ね。」という待ちあわせは、携帯電話が無かった頃にはあり得なかった。「渋谷のハチ公前、尻尾の側に7時ね。」と言っておかなければ会えなかった。学生の場合、仲の良い友達でも連絡先と言えば、携帯の電話番号とメールしかお互いに知らない。

一度、携帯電話がある生活に慣れてしまうと、もう携帯電話が無い生活は考えられない。私は学生時代、パーティ屋をやっていた頃、1回のパーティで100枚以上のパー券を売りさばいていた。携帯電話が無かった時代、どうやって友達と連絡をとってパー券を売っていたのか、今となっては不思議でしょうがない。

今の時代、一番なくしたら困るものが携帯電話であり、水道・電気と並んで止められたら一番困るものが携帯電話となった。

だから、携帯電話の通信料は、後払いで有るにも関わらず、回収率は100近いらしい。DCMXのカード利用代金は公式サイトの情報料課金と同じく、通信料とセットで請求する。

ここが胆だ。

カード利用代金を支払わなければ、カードが使えなくなるだけではなく、携帯電話が止まるのだ。どんな怖いお兄さんが回収に来るよりも、携帯電話を止められる事の方が圧力になる。




借金の返済が出来ない人は1円の金は無い訳では無い。収入より支払いが多いので、支払いに優先順位をつけ、優先順位の高い順に支払っていき、金がなくなった時点でそれ以下の優先順位の支払い先に支払えなくなる。
だから債権回収とは、支払いの優先順位を上げさせることである。

貸金業に於いては、貸し金回収率と金利がトレードオフの関係になっている。
つまり、金融カースト制度のバラモンに君臨する都銀は、優良顧客(=回収率の高い層)に安い金利で融資する。都銀のローンカードを作れない人はクレジットカード、それがダメなら消費者金融、それでもダメな人は非合法な街金というように落ちていく。回収率が順番に下がるにつれて金利が上がっていく。逆に言うと、回収率が100%ならば、低金利で融資しても採算が合うが、回収率が低い層に融資するには高金利でなければ採算に合わない。

仮に、あなたが、消費者金融会社、クレジットカード会社、携帯電話会社からそれぞれ10万円ずつ金を借りていたとします。その他に家賃の支払いが10万円あるとします。手元には10万円しかありません。さて、どこに支払いますか?

昔なら、クレジットカード会社だったでしょう。なぜなら、クレジットカードを持てなくなるから。しかし、今はほとんどの人が携帯電話会社と答えるのではないでしょうか?なぜなら、クレジットカードが無くても生活できるが、携帯電話がなければ生活できないから。

今まで、消費者金融は、与信ノウハウが最大のノウハウとされてきた。無担保で金を貸す、返済できるかどうかを判断することが重要でかつ一番難しい。そして、その次が回収。

現在、貸金業制度等に関する小委員会などで、上限金利の引き下げ、総量規制などが議論されている。もし、これらの制度が実現すれば、ゲームのルールが変わるはずだ。

 



現在、貸金業制度等に関する小委員会などで、上限金利の引き下げ、総量規制などが議論されている。もし、これらの制度が実現すれば、ゲームのルールが変わるはずだ。

総量規制とは、一人の消費者が複数の金融業者から借りられる金額の合計額をを年収の3分の1に制限するという制度だ。また金融業者1社当たりの貸出上限額を50万円に制限するということも議論されているので、この二つの制度を足し合わせると、一人の消費者に貸すことが出来る金融業者は3社ということになる。

今まで、消費者金融とは、与信ノウハウと回収ノウハウをこそが利益率を左右する重要なファクターだった。ところが法律が改正され、信用情報が一元的にDB管理されると、DBにアクセスする権利さえ獲得すれば、それ以上の与信ノウハウなど必要なくなる。

これからの消費者金融業界のゲームのルールでは、「企業イメージ」と「借り易さ」のみを競うことになる。今までも消費者金融業界では、「与信ノウハウ」と「回収ノウハウ」が参入障壁となり、それをクリアした企業の中で、上位数社は、「企業イメージ」と「借り易さ」を競ってきた。この両方の要素を兼ね備えることは難しいので、銀行は消費者金融業者を買収して系列化してきた。

ところでクレジットカード会社が消費者金融とは別の業界として存在する。クレジットカード会社の収益のかなり大きな比率をキャッシングが占めている。クレジットカードのキャッシングと消費者金融の融資は何が違うのだろうか?
今までは、呼び方と金利が違っていた。しかし、法律改正によって上限金利が下がると、クレジットカード会社のキャッシングと消費者金融の融資はほとんど変わらなくなる。つまり実態は変わらなくなる。ドコモは既にクレジットカードのイシュアラーだ。

消費者金融業界は、利便性や心理障壁の低減の為、自動契約機の普及に努めてきた。もちろん、これは消費者の「借り易さ」を追求したからだ。しかし、ケータイで申し込み〜審査〜契約まで出来て、入出金もFeliCa連動で出来るようになれば、これほどの「借り易さ」は無いだろう。

後これに、ケータイ通信キャリア間で、通信料の滞納者などのブラック情報の交換機構が加われば、与信、回収もより強力になる。

ドコモが日本最大の消費者金融になる日は、利益貢献度の観点で見ると通信事業は融資事業の為のCRMと与信の手段でしかなくなるかもしれない。

な〜んてね ^^;


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KLab(株) 代表取締役社長

19歳で株式会社リョーマを起業して以来、数々のベンチャーを起業。地獄と天国を経験し、それでもベンチャー起業と経営にこだわり続けます。


趣味:音楽(オールジャンル)、酒(飲み過ぎ)、ゴルフ(下手くそ)、サーフィン(過去形)、旅行、
出没地:六本木、西麻布、麻布十番、豊洲、沖縄

真田が登場する本

Director'sMagazine
巻頭特集では未公開の幼少期や学生時代の半生記が描かれています。


TechnoTokyo

IT系のベンチャーの受付や応接室でよく見かけるTECHNO TOKYOカレンダーの書籍版。巻頭のカラー特集では、GMOの熊さん、インデックスの小川さんなどと共に、KLab(株)、真田も掲載されています。


モテカフェMesseage
Tokyo FMの人気番組「モテカフェ」が本になりました。ゲストとして登場した13人のベンチャー社長が"モテる"秘訣を語っています。
六本木ヒルズ
真田哲弥が、三木谷浩史、藤田晋(敬称略)などとともに、10人の21世紀勝ち組企業家の1人として紹介されています。
勝ち組と言われても、今は、再び挑戦者なんですけど。。。

本表紙_あのバカ
真田哲弥の学生起業家時代からサイバードの公開直前までが描かれています。
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