
シリーズの3回目はBBS事件をご紹介しようと思います。 法学部の学生さんの教科書にも出てくるこちらも有名な事件です。
昭和60年代のお話しです。 ドイツのホイールメーカーBBSの日本における商標権を保有する某企業(Aとします)はBBSホイールを並行輸入している某並行輸入業者(Bとします)を訴えました。
Aが保有するBBSの商標権をBが侵害しているとして、ホイールの輸入差止めと損害賠償を求めたのです。
ですが、昭和63年に下された判決で、このBの行為は真正品(偽造品ではなく、本家本元のBBSが製造、販売するホイール)を扱っている限り、商標権の侵害には該当しない、としてAの
要求は却下されたのです。
※補足: 仮にホイールが偽造品であった場合は当然に商標権の侵害になります。
つまり、それまで正規輸入業者が並行輸入を差し止めるための古典的な手法であった商標侵害の主張が通用しなくなったのです。
ここでのポイントとして「消 尽論」があげられます。
B社がドイツでBBSホイールを調達した時点ですでに本家本元であるBBS社が保有する商標権は消尽したので、そのホイールを並行輸入してもAの商標を侵害することにはならないのです。 つまり、仮にAのクレームが認められた場合、BBS社とAの両者が商標権の対価を得ることになってしまい、消尽論ではこのように重複して知財権の対価を
得てはいけない、とされているのです。
ということで結論に入ります。
今回と前回の事例からも明らかなように、今の日本では並行輸入にはなにひとつ違法性はありません。
それどころか、並行輸入を認めることは国際貿易を促進し、日本での自由競争をうながし、消費者の利益を拡大し、結果として産業の発展につながるものである、という立場を当局は明確に示しているのです。
それでも管理人は正規輸入にこだわります。
次回、最終回では並行輸入について個人的な意見を述べてみたいと思います。
※本件は一般的に「BBS」事件として取り上げられてることが多いのでBBSの名称はそのまま使用しました。
その一方、関係する企業名については公開資料では伏せられていることが多いので、本稿でも同様に伏せることにしました。 画像はネットで無作為に検索したものを引用しており、本題とは関係がありません。