俵万智さんのエッセイ旅の人、島の人を、
石垣島から福岡に戻ってから読みました。
島への移住の経緯に、
そうだったのね…と、あらためて心揺らされましたが、
島での暮らしとお子さんの成長、
島の人々や自然との関わり、
八重山の文化との出会いなど、
生き生きと綴られていて、ほっこりしました。
普通に考えて、やはり
島の暮らしは退屈ではないかと想像します。
お仕事のために島の外に出られる機会も時々あること、
よかったなぁ、と感じます。
それはさておき、
子育ての地として縁あって選んだ
その土地に愛情をもって関わっていらして、
さすがです。
移住後、3年を経て、一年生だったお子さんが四年生になり、
ずいぶん馴染んだ様子にほっとするとともに、
少年がたくましく成長してゆくのを、
特に言葉を記録することで示されていて、
母親の観察、また、洞察の、今後にも期待がふくらみます。
かつて高校生になった息子のことをひとに説明していた折に、
(まるで恋人の話をしているみたいよ)
と言われたことがあります。
娘は娘のかわいさがありますが、
息子はやはり自分とは異なる性ならではの、
日々の(時にわけのわからない)場面があるので、
母親としては、とても興味深いものなのですよね。
あ〜、あるある、男の子って。
と共感することもあれば、
歌人の万智さんの感性で掬い上げるシーンもあり、
とても面白く読みました。
丁寧に暮らすっていいな、と思えてきます。
著書名に関して。
居住3年では、島の人というには短いポジション、
でも、もちろん旅の人でもない立場。
転勤族の妻として、いろんな土地にご縁があった自分に照らして、
福岡の地でやっと10ヶ月なんだもの、
たくさんのご縁を頂戴したものの、
まだまだニューカマーであるなぁ、と実感。
万智さんをならい、このポジションゆえの、
謙虚さと厚かましさ両方で、徐々になじんで、
心地よく暮らしていきたいものだ…と、
しみじみしてしまいました。
この作品の中で、
ひとに迷惑をかけない子に、という子育て理念をあらため、
ひとは迷惑をかけあって生きていくものなのだから、
気持ちよくひとを助け、また助けられるひとになって欲しい、
(以上はわたくしの解釈です)
という気持ちになったことがわかります。
島への移住の経緯ももちろんあるけれども、
どこで暮らすにせよ、子育ては決して親だけでは完結しないもの。
そのことに子育てを通して気づき、人間としてさらに成長された、
その深さが愛おしく感じられました。
余計なお世話でしょうが、
家庭人となった男性は、必ずその配偶者と子どもたちによって
常に成長させられていることにも、いつか気づかれるといいなと思います。
島の人として島の人たちに育てられるように。
自戒をこめて。
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