2012年07月09日

第70話 「楊修の死」

こんばんは!ストーリーテラーの哲舟です。

『三国志 Three Kingdoms』、いよいよ今日で70話を迎えました。
物語の方も、佳境といいますか大詰めに入って参ります。

このドラマのはじまりは、西暦190年ごろからでしたが、
それから30年近くが経ち、今回で西暦219年を迎えたところです。

これまでの展開では、中国北部を統一した曹操が赤壁に敗れ、
それに勝った孫権が東南、劉備が西南に勢力を伸ばし・・・
諸葛亮(孔明)の思い描いた通り、天下は三分されました。

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曹操は魏を興し、孫権は呉に君臨し、劉備は蜀を得たわけですが、
まだ一応、曹操のもとに献帝が健在であり、「漢」という国は存在しています。

魏・呉・蜀の三国が、正式な「国」として鼎立するのはもう少し先ですが・・・
事実上、この三つの勢力が、覇権を争うことになります。
(画像は公式サイトのキャラクター紹介より)

ただ、曹操や劉備をはじめ、初期からの登場人物も、段々歳をとってきました。
先週は龐統(ほうとう)、魯粛(ろしゅく)、荀彧(じゅんいく)が亡くなったように
この先は、今まで活躍してきた人物たちが一人、また一人と倒れていきます。

三国志に限らず、歴史を描くには人々の「死」を避けて通ることはできません。
登場人物たちがいかに奮戦しようと、それは確実に近づいています。
これから続々と描かれる人物たちの「死にざま」、そして、
そこから垣間見える「生きざま」に、注目していただきたいと思います。

では、今回の話を追っていきましょう。

蜀と魏を結ぶ重要な土地、漢中の前線拠点・定軍山が、
劉備軍の猛攻にさらされています。

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定軍山を守るのは、曹操軍の旗揚げ以来の功臣・夏侯淵(かこうえん)です。
第25話で関羽と打ち合った夏侯惇の弟分でもあります。

夏侯淵は、曹操が馬超を討伐してから西涼の平定を任され、
つづいて韓遂(かんすい)を討伐し、異民族の侵攻を防いでいました。

曹操が、張魯を打ち破って漢中を平定した後、
夏侯淵はその守備を任され、征西将軍としてこの地に踏みとどまり、
4年もの長きにわたって守り続けていたのですが・・・
劉備が総力を挙げて攻めて来たため、支え続けることが難しくなり、
苦戦に陥ってしまったのです。

蜀を得たとはいえ、まだまだ国力の低い劉備にとって、
漢中は是が非でも押さえたい土地ですから、
全力をあげて攻め取りに出たのです。

攻撃する蜀軍の先鋒は、五虎大将軍のひとり黄忠。
黄忠の猛攻に、さしもの夏侯淵もいよいよ討死さえ覚悟する事態に。

夏侯淵は、指を噛み破り、血で記した書状で曹操に助けを求めます。
曹操は、使者には「すぐに救援する」と告げたものの援軍を出しませんでした。

司馬懿も言っていましたが、事態はすでに手遅れであり、
今から援軍を出しても戦局の好転は望めず、かえって死傷者を増やすだけです。
見捨てられた夏侯淵は、奮戦むなしく黄忠に討たれてしまいました。

夏侯淵は、曹操の従兄弟でもあり、
曹操の妻の妹を娶った義兄弟でもありますが・・・
曹操は、断腸の思いで夏侯淵を見殺しにしたのです。

劉備は、夏侯淵の首をとり、定軍山を奪った黄忠の功績をたたえ、
曹操と雌雄を決しようと、進軍を開始します。

劉備は連戦連勝、曹操は連敗続きと、かつての立場が逆転しています。
曹操は焦りと苛立ちを隠せません。

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ひとり、陣中で考え込む曹操・・・。
夕食の最中、近臣がその夜の触れ(合言葉)を尋ねに来ました。
ちょうど鶏のアバラの部分を箸に挟んでいた曹操は
なにげなく、「鶏肋」(けいろく)と口にします。

近臣は、その意味がさっぱり分からぬまま触れて回りますが・・・
それを耳にした楊修は、
鶏肋(鶏のアバラ)は、食べる部分は少ないが捨てがたい
(裏を返せば、良いダシが出るため捨てるには惜しいが、食べるに身は無い)
そう解釈し、撤退の準備を進めるよう指示を与えます。

騒ぎを聞いた曹操は怒りをあらわにし、楊修を処刑するよう命じました。
曹操は意図してその言葉を口にしたわけではないのに
勝手な解釈で士気を乱したというものです。

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ここで、第60話を思い出していただきたいのですが、
楊修は、ことごとく曹操の考えを読み、それを人々に吹聴するばかりか、
門を取り壊させたり、酥(そ)を勝手に与えてしまうということがありました。

曹操は、表向きでは感心していましたが、内心快く思っていませんでした。
この機会に格好の理由を得て、彼を始末してしまったとも考えられます。
「出る杭は打たれる」という教訓を、楊修は我々に残してくれたといえましょう。

翌日、五界山で対峙した曹操軍と劉備軍・・・。
両軍の大将が陣頭に出て、久々に顔を合わせます。
2人が顔を合わせるのは、第20話以来、およそ20年ぶりでしょうか。

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当時、劉備は曹操のもとに保護されていた不遇の身でしたが、
今は数十万の大軍を統べる将。完全に対等な立場となりました。
これまで、常に兵力が少なく、曹操に負け続けていた劉備は、
初めて、同じ条件で曹操と勝負する機会を得たことになります。

いま曹操65歳、劉備59歳。お互い、髪にも白いものが目立っています。
それぞれの正義を主張し合い、両者は突撃を命じました。

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戦いは一進一退、長期戦となりますが・・・
諸葛亮(孔明)の指示を受けた趙雲が、曹操の本陣に奇襲をしかけたため、
面食らった曹操は、激しい頭痛を発して昏倒。

司馬懿は、各将軍に指示を与えて退却にかかります。
見事に曹操の裏をかいた劉備が大勝をおさめました。

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「わしは第二の袁紹になるのか・・・」
病を発して引きあげる曹操は、弱音を吐きます。
しかし、司馬懿はそれを否定し、
改めて孫権に荊州を攻めさせる作戦を勧めるのです・・・。

一方、漢中から完全に曹操軍を追い払い、勝利を得た劉備軍は、
勝利に湧きかえります。劉備は全軍の将兵をねぎらう宴を催しました。

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その宴の席で、法正は劉備に「漢中王」を名乗るよう勧めます。
ここ漢中の地は、400年前に劉邦が天下統一の足がかりとした場所です。
「漢中王」と名乗った劉邦が、大業を成した後に国名を「漢」と定めたのも、
この場所から起ったことを示すものでした。

すなわち、この「漢」から漢民族(中国人)という言葉が生まれ、
彼らが用いた文字は、「漢字」と呼ばれるようになったのです。
劉邦が開いた「漢」は、いったん滅亡したために「前漢」と呼ばれ、
のち劉秀によって再興され、「後漢」として生まれ変わり、
現在は劉協(献帝)が、皇帝となっているわけです。

さて、劉備は、やはり献帝の詔もなしに王位に就くことを拒みますが・・・
孔明ほか、大勢の臣下の勧めにより、漢中王となりました。
劉備は非公式とはいえ、曹操と並ぶ王位に就き、肩を並べるに至ったのです。

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ますます喜びに湧く劉備陣営でしたが・・・
「危険は喜びのさなかに忍び来る。私はそれを憂いている」
ひとり、孔明は浮かない顔で、愛弟子の馬謖にそうつぶやくのでした。

そのころ、荊州の関羽も、劉備の漢中平定の知らせを聞いて大いに喜び、
自分も手柄を立てようと、北にある樊城(はんじょう)を攻め取ろうとします。

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それを聞いた軍師の馬良(ばりょう)は、自重を促しますが、
関羽は、張飛や趙雲が漢中で功績を挙げ続けていることを意識してか
功を急ぎ、聴く耳を持ちません。

関羽は、配下の麋芳(びぼう)、傅士仁(ふしじん)の2将を先鋒に任じますが、
その夜、2人は出陣祝いの席で火事騒ぎを起こしてしまいます・・・。

なんとも頼りない人材を起用したことに、関羽の目を疑いたくなります・・・
関羽は2人を引き出させ、激しく叱責し、処刑を命じますが、
馬良のとりなしで一命は助け、降格を命じた後、
南郡と公安の守備を命じて下がらせました。

いずれも荊州の中では重要な南の拠点なので、
馬良はこれに対しても不安を口にします。
しかし、関羽は「呉の備え程度なら、あの2人で十分」として、
息子の関平と廖化を代わりの先鋒に命じ、出陣させます・・・。

関羽軍は快進撃を続け、たちまちのうちに樊城を包囲しました。

樊城は、曹仁が10万の兵で堅く守備していますが、
相手は音に聞こえし天下の豪将・関羽です。
知らせを受けた曹操は、援軍を派遣して樊城を救援させようとします。

しかし、関羽の武を恐れて誰も名乗りをあげないため、
曹操は于禁(うきん)を総大将に任命しますが、
関羽を恐れ、気乗りのしない于禁は、
「先鋒の将を1名付けて欲しい」と曹操に懇願するのでした。

そこへ名乗りをあげたのは、龐徳(ほうとく)という将軍でした。
彼は、かつて馬超の配下として活躍していましたが、
曹操に敗れた馬超が漢中の張魯のもとへ逃げたときに
一緒に従いましたが、その後に袂を分かち、曹操に仕えていました。

ドラマでは描かれていませんが、原作では張魯の将として出陣したときに、
曹操軍の許褚(きょちょ)や夏侯淵と互角に戦ったこともある武勇の持ち主です。

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しかし、于禁は彼が元・馬超の配下なので、
現在劉備軍にいる馬超に内通するのではないかと疑い、
曹操もためらいを見せますが、
頭を地面に何度も打ち付け、血を滲ませるほどの気概を見せたため、
曹操も意を決し、彼を樊城救援の先鋒に正式に任命したのです・・・。


※読者・視聴者のみなさんへ。いつも温かいコメントありがとうございます!
また、多数の「拍手」にも励まされています。
「拍手」の欄から頂戴するメッセージは受信専用でして、
公開や返信に対応することができませんが、ありがたく読ませて頂いています。

※皆さんにお願いしたいのですが、コメントやメッセージを投稿される際は
必ずお名前(ハンドルネーム)を書いていただきたく思います。
(中には「名無し」や「通りすがり」という方も多いためです)
袖振り合うも多生の縁。「名無し」では、あまりに寂しすぎると思いませんか?

※また、疑問に思ったことは、ヤッターさんやコバカズさんのように、
まずは検索サイトや小説などで、どんどん調べてみると良いと思います。
このドラマにはオリジナル要素も多いので、初心者の方には
原作との違いを知ることが難しいかもしれませんが、
三国志の情報は、意外と世の中にたくさん転がっていますので、
新たな発見があるかもしれませんよ!

あと1ヶ月あまり、全力で綴って参ります。御質問にも、時間のあるときに
出来る限り答えていきたいと思いますので、よろしくお願いします!

sangokushi_tv at 17:55コメント(5)トラックバック(0) 
第66話~第70話 

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コメント一覧

1. Posted by ぽん酢   2012年07月09日 21:30
こんばんは!はじめまして!(^o^)
私は吉川三国志のファンですが、ドラマもすごく面白いですね!
哲舟さんも書いておられたように、段々と初期から登場している武将たちも年をとってきて、なんだか寂しいような気もします(´・ω・`)
また、原作で今後の展開を知っているので、ちょっとみるの嫌になってきたり(笑)
孔明先生も何だか浮かない顔をされてますし…
でも、最後まで見届けます!(^▽^)
ブログも大変分かりやすく、毎回楽しみにしていますので、更新頑張ってください!
2. Posted by ずぅ   2012年07月09日 21:41
勝って奢る劉備の姿を見るのも
ある意味、新鮮です。

負けはじめた曹操からにじみ出る人間味も
いいですね。。。

まもなく英雄たちが、続けて死んでいくのを見るのは
つらいなぁ・・・・
3. Posted by もも   2012年07月09日 22:45
曹操、頭痛辛そうです。
竹簡でおでこ叩いてましたし(笑)『孫権が今や最も恐ろしい敵は劉備…』の司馬イ の発言に文句も言えず益々顔を歪めてました。

馬良の“白眉”…見逃すとこでした(笑)
4. Posted by yamaneko5646   2012年07月10日 02:19
こんばんは=!

ブログの文面から 身が引き締まるような 緊張が伝わり、初心者は引退すべきかなあ?

と、迷いながらドラマ、ブログ、ドラマ、そしてブログに!

そう「これから続々と描かれる人物たちの 死に様!そして、そこから垣間見る 生き様!に注目」
と、印象的な表現に も少し 粘るかな?


20話の 「曹操」は快活に「劉備」は用心深く、酒を煮て 天下を論じた二人の 変貌!

「曹操」が 怖れるようになり、その心中は いかばかりか?

疲労 不安 恐怖に包まれた 「曹操」が 痛ましい!

死んだ「魯粛」の 作戦はこれから輝き始めるようですね!

天下の英雄とは誰ぞ!
ラスト テーマの意味が解りました!

5. Posted by え〜っちゃん   2014年04月11日 12:15
5 うっかり、すっかり録画予約を忘れて、がっかりしてました。
でも、このサイトを見つけてラッキーでした。
おまけに背景やら、解説までしてくれてるので、三国志初心者にとってはとても嬉しいものです。
ありがとうございます^_^

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