2012年07月16日

第75話 「退位を迫る」

こんばんは! ストーリーテラーの哲舟です。

今週も頑張ってまいります。
いよいよ、今宵で漢王朝が幕を閉じます。

曹操の跡を継ぎ、魏王としての足場を固めていく曹丕。
司馬懿は、まず孫権に「呉王」の位を与え、
劉備の漢中王、曹丕の魏王に並ばせてやることを提案します。

天子なくして、勝手なことはできないという曹丕に対し・・・、
司馬懿は、今こそ帝位に就くよう勧めます。

その理由は、曹操には才能・威光があり、
皇帝にならずとも、世の中の人を従える実力がありましたが、
曹丕には、まだ威光も実績もまだ不足しているため、
帝位に就くことで魏という王国の家臣たちをひとつにまとめ、
名実とも天下人になるべきだというのです。

実は、皇帝の地位は曹丕自身がいちばん望んでおり、
司馬懿はその背中を押したに過ぎません。

曹丕に、帝位就任のための根回しを命じられた司馬懿でしたが、
司馬家の名声が傷つかないよう、華歆(かきん)に
その役目を負わせることにします。

075-02
司馬懿の依頼を受けた華歆は、さっそく朝議の席で
献帝に対し、退位して曹丕に帝位を譲るよう上奏します。

突然の上奏を耳にした献帝は愕然として立ちあがり、
「みな、同じ思いか」と問いかけますが、臣下たちは華歆に同調します。
もはや、誰ひとりとして献帝を擁護しようとはしません。

嘆き悲しむ献帝は漢帝国400年の重み、祖先の大業を語り聞かせます。
わかりにくいので、以下、現代語訳でこのやりとりを説明しましょう。

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献帝「おまえら。漢が滅びてもホントにいいと思ってるのか?」
華歆「そうだよ。分かんない人だな。これからは新しい世の中になるの。んだから、
    あんたみたいな無能な輩は辞めて、曹丕さんに帝位をゆずりなさい」
献帝「言っとくけどね、僕の先祖は偉いんだよ。
    むかし、悪い奴らをいーっぱい、やっつけて天下を平定したんだから。
    おまえら、今まで誰が飯くわせてやってたと思ってるんだ。
    それに、ぼくが辞めたら、天国でご先祖様に会わせる顔がないじゃないか」
華歆「はん。知ったことか。
    この図讖(としん。予言書のこと)を持って、さっさとあの世へ行けばいいだろ」
文官一同「陛下、この予言書は天の意志ですよ。したがってください」
献帝「なんだこれは。こんなものに従えるかよ」
老臣「もう400年も続いたんだから、やめましょうよ。このへんでいいんじゃない?」
献帝「いやいやいや。(涙目で)これは、ものすごく重大な問題だよ。
    ちょっと、ご先祖さまのところに行って相談してくるよ」

・・・献帝は、郊外にある宗廟(歴代皇帝の霊をまつったところ)に行き、
臣下たちの無礼を訴え、漢室の命運が尽きようとしていることを嘆きます。

075-10
そこへ、妻・曹皇后が入ってきて、献帝を慰めます。
曹皇后は曹操の娘・曹節といい、曹操が皇室の外戚になるため、
半ば無理やり献帝に嫁がせたのですが(第22話参照)、
今では互いの境遇を憐れみ、慈しむ仲の良い夫婦となっているようです。

献帝は、「曹」と名の付く人物を見るのも嫌になっているため、
皇后を突き飛ばしてしまいますが、その瞬間我に返り、助け起こします。

075-16
そこへ、曹洪と曹休が入ってきます。
献帝を連れ戻しにきた2人は、剣を差し出して脅すなど、
もはや皇帝でも何でもない扱いです。

連れ戻された献帝は、なおも抵抗しますが、
先と同じように、華歆や曹洪らが、命まで奪おうという構えで彼を追い詰めます。
献帝は、ついに曹丕に対して禅譲(位を譲ること)を決めるのです・・・。

献帝は、すっかり疲れはて、
玉璽(ぎょくじ。代々受け継がれてきた皇帝用の印鑑)を持って来させます。

それを持ってきたのは、祖弼(そひつ)という忠臣で、
「皇帝の玉璽は天子のもの。賊には渡しません」と叫び、
正義を主張しますが、曹洪が進み出て、一刀で彼を斬ってしまいました。
曹洪はそのまま献帝の喉元に剣を突き付け、脅すという手段に出ます。

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そのころ、後宮では曹皇后が、曹丕と口論となり、
持っていた短刀で曹丕を刺そうとしますが、
曹丕は服の下に鎧を着ていたために無事でした。

献帝は玉璽を差し出し、禅譲の詔を出しましたが、
曹丕は、その文面が気に入らないと言って、
もう一度発布し直すよう求めました。
形式的には、「辞退」したということになります。

「この文面は悲哀に満ち、まるで私が剣を突き付けて
 禅譲を迫っているようではないか」

曹丕の言葉に、「だって、そうじゃないか」と返したあなた、正解です。

献帝は、詔を突き返しにきた華歆に、
「では、今度はそなたが書いてくれぬか」と頼みますが、
「はなはだ、恐れ多い」と返します。
「お前がいうか・・・」という目で睨む献帝。

結局、献帝みずからが筆をとることになりました。
本来は口述筆記という形で、臣下に書かせるもので、
皇帝が自分で書状を記すなど、あり得ぬことですが・・・。

かくして、朝議の席で献帝がそれを読み上げ、
正式に、魏王への禅譲の式が行われることになりました。

しかし、曹丕はこれを辞退して退去していきました。
二度目の辞退です。

「魏王はまたも受けようとしないではないか。もう手だてがない」

嘆く献帝に対し、華歆が言いました。
すなわち、「禅譲は三辞三譲」という故事です。
古来から、形式として、禅譲は世間体を慮って、三度目にして
ようやく受けるのが礼儀だというのです。三辞とありますが、実際には二辞ですね。

曹丕はそれを実践しているわけですが、
献帝は、あまりの屈辱にもう魂が抜けたような顔になってしまいました。

後宮に戻った献帝は、憤りのあまり自害を図ろうとしますが、
すでに生きる屍と化している自分の身を悟り、思いとどまりました。

そこへ司馬懿が訪ねてきて、献帝の前で跪きます。
「君臣の道を、まだ覚えているものがいるとはな・・・」
しかし、司馬懿はすぐに姿勢を崩します。その真意は・・・?


【このひとに注目!】
075-23
◆華歆(かきん) 157年~231年
司馬懿の頼みを受けてのこととはいえ、献帝に対して無礼な態度をとりつづけ、執拗に禅譲を強要する魏の文官。原作小説『三国志演義』でも同様の役割で、、曹操が献帝の前の皇后である伏皇后を廃そうとしたとき、華歆が兵を率いて宮中に入り、隠れていた伏皇后を引きずり出すという暴挙を行うなど、冷酷なる悪人として描かれている。
しかし、『正史』では上記のような悪行は見当たらず、純潔で徳性を備えた者として評価されている。官吏が休日に繁華街で遊んでいても、華歆は門を閉ざし家から出なかった。議論では、決して相手を傷つけるような言動は取らず、清貧に甘んじ、俸禄や恩賞は一族の者に分け与え、家には貯えがなかったという。『正史』と『演義』で描写にギャップがある人物は何人かいるが、その典型例。『正史』では、あまりに非の打ちどころがないため、かえって演義のほうが実像を伝えているのかも・・・と疑いたくなるほどだ。

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第71話~第75話 

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コメント一覧

1. Posted by yamaneko5646   2012年07月16日 20:37
こんばんは=!

「献帝」は 子供時代から、ずっと怯えて生きて来られましたが、追い詰められて なお「漢室」を守らねばならないと思われるところが お気の毒です。

「禅譲」を拒むべきだった!
殺されても いいじゃないですか!
もともと 生きていたとはいえないんですから!

と、言うようなことは 考えられない状況なんですよね!

「劉備」が 助けに来てくれたらいいのに!と、視聴者は 思います。


「曹ヒ」も「司馬イ」もNO!
「曹操」が 懐かしい!!
2. Posted by まんてんまま   2012年07月16日 21:16
なーるほど。「図讖」とは、何のことか、わからなかったのですが。そのようなものが、あったのですね。

それから、哲舟さんはじめ皆様に教えていただいた、公式ハンドブックが昨日届きました。

近所の本屋さんの倉庫に在庫していた最後の本だったそうです。(もちろん、定価でした。バンザーイ!)地図も付いているので、各国の位置関係もよくわかります。ありがとうございました。

 

3. Posted by あ・ちゃん   2012年07月16日 21:36
この連休に、いろんな回を繰り返し見て感慨に浸っています。ホントに感謝です! あと20回くらいになっちゃうなんてイヤだ~っ
 このドラマで、曹丕という人物に新たな興味を持ちました!(俳優のせいもありましょうか・・・上手く表現できませんが、独特のクセが何か尾を引くんです・・・・)ドラマでは曹植と比べられて詩はマイナスイメージですが、確か文才は豊かだった人物のはず。226年に亡くなったのが残念すぎる・・どのように描かれるんだろう・・・・ 次回からも楽しみにしています!
4. Posted by ■   2012年07月16日 22:25
詔を書いた者がひき立てられていくとき
陛下が何も言わなかったのは、もう自分が何
を言っても無力であると諦めきってしまってい
たからですね。

かわいそうな陛下・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
5. Posted by くらら   2012年07月17日 14:12
玉璽が気になります。ちんが押したのはウサギ、曹丕が舐めるように見ていたのがカメに見えたのですが…。(違ったらごめんなさい)
あの動物がかたどってあるのは何かの意味があるのでしょうか?『カメ=長寿』とか?
龍とかゴージャスで壮大な動物ならデザインとしても映えるしピンとくるんですけど…。
すいません気になってしまいました

ちん…哀れですね曹操娘の皇后の存在で少し救われました。愛しあって結婚したわけではなく、前皇后を目の前で殺されてすぐに言われた結婚…皇后もさぞかし気まづい事だったでしょうね。それでも長く一緒にいてお互いを思い会える仲になれたのは人の情と言うものはすてた物やないなと思いました。前皇后の立場になったらビミョーですがそんな女心も込みでイロイロ思いながら見ています
後少しなんて淋しいですね

yamanekoさん…途中リタイア考えてらっしゃいましたが、最後まで見てくださいねうちは5才の子も頑張ってついて来て関羽の死に涙してましたよ~保育園でも誰とも分かち合う事の出来ない感動を歯痒さと共に噛み締めております…。
6. Posted by まさ   2012年07月17日 15:17
献帝があまりにも哀れですね。
でも今回無理やり禅譲させた曹一族も後に司馬一族の傀儡となり、帝位を奪われている様を見ると因果応報という事かもしれないですね。
7. Posted by keiko   2012年07月17日 23:14
5  三国志は、TVではなくブルーレイを購入し、楽しんでいます。劇中の会話で、どうも解せない会話があったので、質問します。日本語字幕で観ています。

 曹丕と曹節とのやりとりの中で、曹丕は曹節を字幕では「妹よ」と書いていますが、会話では「姐姐(ジェイジェ)」と発しています。これってお姉さんの事ですよね?

 同じく、曹節は曹丕を「兄上」と字幕では書いてありましたが、発音は「弟弟(ディーディ)」と言っています。これは弟の事ですよね?

 実際は、どちらが上なのでしょう?
8. Posted by 三国歴女   2012年07月18日 01:00
3 こんばんは。
哲舟さん、ご苦労様です。
曹皇后(曹節)は曹操の次女で、曹ひ(漢字が変換されなくてすみません)の妹にあたるようです。生年は不詳で260年没です。正史三国志によると、姉の曹憲
、妹の曹華と共に献帝の後宮に入りました。皇后になったのは、曹操打倒を目論んだ外戚の伏氏の計画が露顕し、伏皇后と二人の王子が殺された後のようです。
政略結婚でしたが、
献帝を愛し、劉氏の人との自覚を忘れず、一生涯貫いた賢い、魅力的な女性ですね。
皇后運に恵まれなかった献帝にとって、最後に神様が素晴らしい夫婦の縁を授けてくださったのでしょうね。
9. Posted by yamaneko5646   2012年07月18日 07:17
くらら様と保育園児様

思いがけず 励ましていただき、感激しました。

そうなんですよ!リタイア有り!が 何度か!

何しろ 全くの初心者ですので。
でも、ようやく全体の構図が 見えてきたような気持ちになっています。

保育園児さんは、「はい!」が「御意!」に」変わってしまった ぼうや?

かわいい!
昔 保育士としましては 賢いお子さん大好きです!

yamanekoからよろしくお伝えくださいね!ありがとう!!!!!!!!!!!
10. Posted by ずぅ   2012年07月18日 23:38
哲舟さんの現代語訳、楽しいです
かきん・・・憎らしい役をよく演じていますが、画面に向かって文句をいいたくなります。
しばい・・・忠臣の態度のあとにすぐに姿勢を崩してしまって、オイオイとツッコミをいれたくなります。

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