2012年08月08日
第92話 「木牛流馬」
こんばんは!哲舟です。
蜀の都・成都(せいと)では、諸葛亮(孔明)が
いよいよ五度目の北伐に出発するところ。
ドラマでは細かいところが省略されているのですが、これで五度目となっています。
皇帝の劉禅(りゅうぜん)が、この成都で孔明を見送るのは三度目。
劉禅は孔明が年老いたと肌身で感じ、もう二度と会えないかもしれぬ、
という思いにとらわれ、今まで以上に深い感慨をもって見送るのでした・・・。
そのころ、孔明のいない祁山(きざん)の蜀軍の陣営では、
魏延(ぎえん)が、鄭文(ていぶん)という魏の降将と会っていました。
魏延は、はじめは鄭文の投降が計略であると疑いますが、
彼が味方の秦郎(しんろう)という将軍を斬ったためにそれを信じます。
魏延は、さっそく鄭文に酒を与えて配下に加えますが、
鄭文から「司馬懿(しばい)の軍5千が北原にいる」と聞かされて
それを攻めようと考えます。
魏延にしたがう部下の馬岱(ばたい)は、孔明の帰還を待つよう進言しますが
酒で気が大きくなっている魏延は、
孔明を待っていては戦機を逃す、といって出陣してしまいます。
その後、祁山に帰着した孔明を、王平(おうへい)が出迎えます。
孔明は、楊儀(ようぎ)という副官を新たな補佐役としてともない前線に復帰しました。
その矢先、孔明は魏延が前日に鄭文の言葉を信じて出陣したことを知り、
それが即座に司馬懿の計略であることを見抜き、救援に向かいます。
はたして鄭文は司馬懿に言い含められた間者(スパイ)であり、
魏延軍2万は、たちまち魏の大軍に取り囲まれてしまいました。
逃げようとした鄭文を弓で射殺した魏延ですが、
次第に狭い谷間に追い込まれていきます。
魏延を討ち、張郃(ちょうこう)へのはなむけにせんとする司馬懿。
そこへ孔明の派遣した援軍が到来し、危機を脱しました。
さすがの魏延もみずからの浅はかさが招いた大敗にいつもの威勢なし。
孔明は司馬懿の罠にはまった魏延と馬岱に棒叩きを命じますが
王平、楊儀ら諸将のとりなしで預けおくことにします。
あと一歩で魏延らを打ち損ねた司馬懿は、
徹底した持久戦に持ち込もうと堅く門を閉ざします。
持久戦に持ち込まれては、遠征軍である蜀軍は不利は否めません。
そこで、ひたすら魏軍への挑発を繰り返させ、
なんとかおびき出そうとするのですが・・・。
司馬懿もさるもの、ちょっとやそっとの挑発では出陣しません。
蜀の軍兵がいくら口汚く罵ろうと動かぬ司馬懿。
さすがに孔明と仲の悪い魏延も、先の失敗で懲りたか大人しく根競べに徹します。
そこで孔明は、司馬懿へ書簡と贈り物を楊儀に持たせて派遣します。
孔明の書簡は、閉じ籠もって戦おうとしない
司馬懿を「婦人のようである」と、からかうものでした。
箱を開けてみると、鮮やかな女物の衣装が入っていました。
あまりの侮辱に、孫礼は怒って剣を抜き、楊儀に突きつけますが、
楊儀は顔色ひとつ変えず、平然と立ったままです。
司馬懿は肝のすわった楊儀に感心したのか、
孫礼に剣を収めさせると、なんとその服を楊儀に持たせ羽織ってしまいます。
「どうだ、似合うか?」と尋ねる司馬懿。
なぜか、本当に似合っているような気がするから不思議・・・。
孔明が服を贈って激怒するも自重する、というのが原作の展開なのですが、
服を着てみるまでの描写はさすがになく、本作のオリジナルです。
「まるで杯と蓋がぴったり合わさったようです」と、からかう楊儀。
司馬懿は楊儀に酒を与えるよう命じますが、
諸将は屈辱に顔色を変え、怒って退室してしまいました。
酒を酌み交わすと、司馬懿は孔明の様子を尋ねます。
楊儀は、孔明は気力に満ち、壮健であることを報告。
食事や睡眠の様子を尋ねると、激務に終われ片時も休まないため、
睡眠は少し足りないようだと楊儀が答えると、
司馬懿は孔明の体を気遣う言葉をかけ、楊儀を帰しました。
楊儀は司馬懿を怒らせようと振舞ったのですが、
さすがの司馬懿はその策に乗らず、まったく怒った様子も見せませんでした。
しかし、その心のうちはどうだったでしょうか・・・?
いずれにしても、司馬懿は孔明の激務ぶりを聞いて、
彼の体に相当な重圧がかかっていることを知りました。
さて、策が不発に終わった孔明ですが、
そのことよりも、またも兵糧が届かないことに苛立ちを隠せません。
孔明が「荊州が我らの手にあったなら」と愚痴をこぼすのも、無理はありません。
蜀と漢中の間には、剣閣道などの険しい山や谷が連なり、
毎回のように兵糧の運搬に苦労していました。
谷底に落ちる犠牲者、無駄になる兵糧も数多く出ています。
いっぽう、魏の陣営では総帥である司馬懿が
孔明に辱められたことを怒った将軍たちが、口々に出陣を司馬懿に志願します。
しかし、司馬懿は頑なに出陣を許さず、各軍営を堅く死守するよう命じるのです。
孔明が兵糧の補給で苦労していれば、司馬懿は将軍らの戦意をそぐのに苦労する。
戦いは、司馬懿と孔明の「根競べ」の様相を呈してきました。
そこで孔明は、昔みずから設計した「木牛」(もくぎゅう)、「流馬」(りゅうば)という
運搬道具を輸送に使うことを思いつき、製造にあたらせます。
蜀軍が兵糧の運搬に苦労していることを知った司馬懿は、
「蜀軍に粥すら食えなくしてやろう」と、糧道の近くに兵を潜ませ、
兵糧を奪う作戦に出ることにして、司馬昭と孫礼に出撃を命じます。
蜀の輸送隊は拒馬塞という、馬も通行を拒否するような
狭い山道を、新兵器である木牛・流馬に兵糧を満載して通っていました。
兵を伏せ、待ち構えていた魏軍は、
初めて目にする木牛・流馬を見て不思議がりますが、それをいっせいに襲います。
魏軍の襲来に対し、蜀軍の輸送隊は抵抗らしい抵抗もせず、
木牛・流馬と兵糧を置き捨て、慌てて退却していきました。
木牛・流馬を奪った魏軍は司馬懿にそれを献じます。
兵糧の運搬に適したその道具を見て、司馬懿は素直に感心し、
同じものを魏軍で運用するため、職工に製造を命じるのでした。
かくして、せっかく造った木牛・流馬も兵糧も魏の手に渡ってしまったわけですが、
孔明はどのように対処するのでしょうか・・・? また明日!
◆引き続き、皆さんからのご質問にお答えします。
Q.孔明の南蛮討伐は省略されたのでしょうか?孔明が西南夷の首領・孟獲を7度虜にし、七度放す見応えのある場面が多いのですが、相手に応じて臨機応変に戦略を考えた孔明の奇才ぶりが面白いのに…ちょっと残念ですね。(三国歴女さん)
A.そのようですね。83話で劉備がなくなり、84話から北伐が始まるので、かなり駆け足の展開でした。北伐だけで10話を費やしているので、省略されたのだと思います。私も個人的には南征は観たかったです。
Q.ひとつ疑問なのが関羽は命令無く戦をしたんですよね?(第73話) 劉備や孔明の耳には何の情報も入らず? (リリィさん)
A.そのあたりは、ちょっとハッキリしないんです。原作では一応、劉備の命令で樊城を攻撃したことになっていますし、正史でも劉備の漢中侵攻に連動して北上したことになっています。しかし、本作では関羽が勝手に攻めたことになっていますね。関羽は荊州太守ですから、軍を独断で動かすだけの実力と権限があったことは確かではないでしょうか。
Q.武将たちは鎧の上にマントを羽織っていて、何だかシーザーかアントニウスみたいな感じがするんですが、当時もあんなローマ風な格好をしていたんでしょうか? それともドラマ上の演出なんでしょうか?(のりのりさん)
A.本当のところは分からないです。マントは中世ヨーロッパでファッションとして流行したもので、それ以前は、ファッションというより防寒具として、ずーっと昔から使われていたようです。しかし、東洋の三国時代にあったかどうか分かりません。ドラマの演出と考えたほうが良いと思いますが、絶対なかったとも言い切れないし、マントぐらいはあったかもしれませんよね。こんな答えですみません。
Q.劉備が天下統一を果たした人だと思ってました。お恥ずかしい・・・・ 去年だったか三国志のアニメを見て、その結末にびっくり!!! 劉備・孔明・関羽・張飛・趙雲・龐統・・・・優秀な武将、軍師がいてなぜだめだったのか? (リリィさん)
A.おっしゃる通りで、三国志がまるっきりの創作小説であったなら、劉備や曹操が天下を統一して終わるでしょうね。でも現実はそう上手くいかないもの。三国志は、古代中国に実際に生きていた人々のお話。そこには成功もあれば失敗もある。いや、どちらかといえば失敗のほうが多いかもしれません。そういったリアルな歴史物語だからこそ、そこから我々も色々なことを学べます。だからこそ、不朽の名作といわれるのでしょう。
※人気投票、引きつづき実施中です。
みなさん、本当に多数の投票、ありがとうございます!
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コメント一覧
ところで、鉄兜や剣、弓があんなに立派なのですから、人力車みたいな木牛・流馬なんか前から有りそうですが・・・。
それにしても孔明さん、万能の賢者ですね。 この人の言うこと全部に従っていれば、蜀はもっと簡単に戦に勝って一国志になっていたかも。
絶対似合わない司馬懿の女人衣装が、なんか不思議なほどピッタリなのは何故?
ロンドンオリンピックとともに三国志のフィナーレは近い。
このドラマでは兵糧のことが度々出てくるので、当時の戦の様子がリアリティをもってイメージでき、とても興味深いです。戦場においていかに重要なことだったか、それがよく分かります。
それだけに荊州を失ったことが、まさに今ボディブローのようにこたえて、あともう一歩のところで攻めあぐねる孔明の無念さが本当に切ないです。
三国志の物語は、努力を重ねても事がなかなか思うようにいかず、無念の思いを抱え道半ばで死んでいった人々の悲哀に満ちています。
今、このドラマで描かれた色んな人の最期が思い出されます。曹操、劉備、関羽、張飛、周瑜、魯粛、献帝、曹丕、荀彧、陳宮、田豊、王允、孫堅、孫策・・・。
そしてもうすぐ孔明の死・・・。
見るのがとてもつらいけど最後まで見届けます。
(それに比べて、司馬懿は、若いときから年老いた感じだったので、変わらず。。)
劉備と、ともに戦っていた頃が、懐かしい。
このオフィシャルブログを遡り、何度も読み返す日々。。
諸葛亮の命も後わずかと思うといたたまれないです。
そんな中で、劉禅が想像以上に成長して来ている姿に、あの世で劉備も趙雲も、ほほえましく見守っているのでは。。。と、
想像して楽しんでいます。
投票枠増やして頂いたので、もう少し深めていきます。
投票に 間に合うかしら?と 毎日気を揉みながら あらすじをよみかえしていますが、感動ばかり!
選べません!
今日の「劉禅」の涙は 溢れんばかりで、ここで 引き止めなくては!
と、伝えられたら良かったのですが!
おっとり「劉禅」が 好きですよ!
「孔明」亡きあとを思うと 痛々しい!
「司馬い」を侮辱する手段!
「女みたい!」とは この時代にすでに意識されていたんですね!
「司馬い」さん!
着物が 似合っていましたよ!
おかげで王允も荀彧も両方投票できました。ではいきます
キャラを3つに絞るのは余りに酷でしたので(爆)。95話もあるのに1話たりともダレた部分が無いドラマは滅多に無いので
視聴者だけでなくスタッフ&キャストの皆さんは、このドラマの製作に参加できた事を誇りに思っていいと思います。
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ベストエピ6
1.第3話 「曹操、善人を誤殺す」
董卓討伐の為に十八鎮諸侯に加えて曹操、そして劉備3兄弟が一同に集まるシーンはただただ圧巻
2.第27話 「官渡の戦い」
初代興隆運(曹操)と衰退運一代目(袁紹)が相見えるシーンを見て、
桶狭間の戦いの信長vs今川義元とオーバーラップする印象を受けたのは私だけではないはず。
勝負というのは時として宿命が兵力のハンデを大きく越える事を痛感したエピなので一票
3.第33話 「三顧の礼」
カリスマ孔明初登場の回なので
4.第37話 「儒者たちとの舌戦」
使用語彙や話のレベルの難易度が極めて高すぎる位高いのに加えて気が遠くなるようなセリフの量・・・。呉の文官役の人達と特に孔明を演じた役者さんは凄い!
5.第40話 「草船で矢を借りる」
このドラマで「因果応報」を痛感し一番勉強になったエピです。赤壁対戦の準備過程で濡れ衣を着せられ斬首にされた蔡瑁ですが、それまでに地元荊州で行った悪行を考えると凄く納得。藁を積んだ船を使った集矢のシーンも勿論Good!
6.第93話「上方谷の火、消える」
いくら天下を取る運命が待っていたとしても火あぶり寸前の絶体絶命の目に遭うのは可哀想。終盤に相応しいスリリングなストーリーでした。
ベストキャラTop6
1.諸葛孔明
登場前半分では華やかでカリスマ性を伴う天才異才ぶり思う存分見せ、そして役者の陸毅さんが、演じていく上で難しいパートといっていた後半では孤独に追い込まれて運も落ち何もかも一人で戦っていかなければならない悲壮感、でも天才ぶりは色褪せてない、この何役を失速せず集中して演じきった事に脱帽。高希希監督が現在撮影している映画「三国荊州」でも彼の華麗な演技が見られるそうなので今から楽しみです。
2.曹操
このドラマでは残虐さばかりを強調せず、人情溢れる一面も思う存分描いてくれたので
3.王允
中の役者さんがとても気品溢れさせながら悪党董卓の暴挙にひたすら耐えながらも
極めて強かに、そして狡猾さを出して演じて好演したのがポイント
本国でも非常に評判が良かったのもうなずけます
4.荀彧
この荀彧という軍師は硬派な雰囲気の魏において、ズバ抜けた才能を余す事なく
発揮しながらもソフトで観る者を癒してくれ非常に大好きなキャラです
自ら命を絶つシーンは泣かされました
5.曹仁
狡猾ながらも凄く華があったので一票
6.張遼
史実では仲良しの関羽同様に協調性に欠ける人だったようですが
関羽に投降を呼びかけるシーンは人情がありました
名ゼリフ色々ありましたがこれわたし的には…曹操がジュンイクを誉めた『ジュンイクの言葉は美酒と同じ…人を酔わせる…』に次ぐベスト2です(笑)
司馬イ…心とは裏腹に涼しい顔でした。
私ならあそこで堪忍袋切れたなぁ…(笑)
参軍と言っていましたが、これはかつて馬謖と同じ官位でしょうか?
参軍が何をする立場かはよく分からないですが、街亭に参軍の馬謖を派遣したという事はこの時でいう楊儀を派遣したという事と言えるのかな・・・
と思うと何故武将を送らなかったんだろうと感じると同時に諸葛亮は本当に馬謖に期待してたんだろうなと思いました
過去の話を引っ張り出してすみません笑
関羽は役者さんの雰囲気も含めて好きなキャラクターだったので、最後の軽率な出陣(手柄を立てたいために勝手に・・・)・敗北はショックでした。
劉備がボロボロになって死んだのも(荊州を任せたのは劉備なんですけど・・・・)、今、孔明が苦労しているのも関羽のせいだ!って、ほとんど嫌いになっていました。少し気分が晴れました。
ごめんね、関羽!!
でも、ナメてたよね、敵を・・・
思いますに(一度使いたかった!)、劉備や曹操が元気な頃と比べ人材の質が下がっているような・・・・。
孔明や司馬じぃの足をひっぱりまくり!!
ここのところイライラしてテンション下がってました。
劉備や曹操と共に戦っていた人達VSその息子達の下で戦う人達・・・・なんか差がある!
最近見ていて、孔明が一人孤独に戦いを続ける意味がわからなくなりました。もちろん劉備の恩義に報い遺志を継いで・・・・というのは分かりますが。
日々、痛々しい姿を見て、「それでも戦って行くんだ~」と応援する納得感(?)がない・・・
う、うまく表現できない~。
孔明が劉禅に「自分が生きているうちに・・・・」と
話していたとき、ふと思ったのですが、仮に勝利したとして、後に誰が治めていけるんだろう・・・・
と。広~い国土を。
短命に終わるんでしょうね。
やっぱり劉備とともにいてほしかったなぁ・・・・
92話と関係のない話をダラダラとすみません。
ずっとコメント書きたかったのですが夏バテ気味で気力が・・・・
感情に流されてはいけませんね・・・・
司馬懿の忍耐は見事です☆
それにしても・・・
戦のさなかに
木牛流馬を300作らせるのに
可愛い牛のお顔までのっけちゃって、
職人や兵が、
「牛の角もリアルにつくろっ」って
なんか・・・すごいですね
