2014年05月

2014年05月30日

『芸術新潮』最新号は玉三郎特集!~私たちは内側から感覚として宇宙をとらえる存在~

先月リニューアルした新潮社さんの『芸術新潮』が相変わらず面白い。最新号(6月号)の特集は襲名50周年 新たなる美を求めて 坂東玉三郎」です。普段歌舞伎に縁遠い方、敷居の高さを感じる方、いらっしゃると思います。ところがどっこい、一つの世界で頂点を極めた人の言葉には分野を超えた含蓄がある。文学の世界から物事を考えることが多い私も玉三郎さんの思考には思わず唸る。この人、歌舞伎役者であり哲学者なのだ。そう、玉三郎さんはプラトンだ。
『芸術新潮』6月号
芸術新潮玉三郎
毎月25日発売(5月号=4月25日発売)
定価:1,440円(本体:1,333円)
芸術新潮さんHP↓
http://www.shinchosha.co.jp/geishin/
今年襲名50周年を迎えた坂東玉三郎さんは言わずと知れた歌舞伎界随一の女形。さらにご活躍は歌舞伎かの世界にとどまらず、他ジャンルとのコラボレーションなど、表現の可能性を広げている。今号は貴重なオフショットから始まり、人気演目の美しい写真が満載。しかし、この号が玉三郎さんの思想性に一歩踏み込んだ一冊になっている理由は文化人類学者である船曳(ふなびき)建夫さんが解説し、また、玉三郎さんの対談の相手を務めている所。話は少し変わりますが、以前小説家いとうせいこうさんの新刊をブログ内でご紹介する時に、いとうせいこうさんが16年ぶりに小説を書いた動機について触れました。それは、小説家が圧倒的な現実を前にしてビビッドな反応を示さなかったからである、と。これはポスト3.11以降の表現について小説家の態度にジレンマを感じたいとうせいこうさん独特の言い回しだと思うのですが、歌舞伎の世界では震災後の最初の正月公演、つまり新春特別公演の序幕で玉三郎さんが以下のような見事な口上を述べているのを船曳さんがご紹介くださいました。
ー私たちは内側から感覚として宇宙を捉える存在としてあるけれど、震災を一つのきっかけとして、私たちが時間という自然の中にいる束の間の存在だと気付いた。それが分かった以上、私には恐いものはありませんー
これは凄い。なかなか言えない。つまり、この言葉には表現の世界で生きる命がけの覚悟があります。そして、何とも知に溢れた言葉か。私は玉三郎さんの舞台を観ると“美しい”という感覚が錯覚を起こすことがあります。それは観客全体が遠い宇宙からプリミティブな“美しい”という暗号を受け取っているような感覚と言うべきか。私はこのような不思議な過去の経験と今号の対談を読み、玉三郎さんの表現していること、考えていることが哲学の範疇にまで及んでいると感じました。坂東玉三郎という不世出の才能をたっぷり楽しむことができる今月号の『芸術新潮』ぜひ、お手に取ってみてはいかがでしょうか。
因みに玉三郎さんが揚巻(あげまき)に扮する演目、助六曲輪初桜(すけろくくるわのはつざくら)の登場人物花川戸助六は江戸随一の伊達男。この助六が由縁になっている食べ物が助六寿司ですね。ほら、いなりずしと巻き寿司のセットの。ここまで書けばピン!とくる方もいらっしゃると思いますが、助六の愛した花魁、揚巻の名にちなんで助六寿司と江戸っ子は呼んだのです。稲荷お揚げと巻き寿司、揚げと巻き、揚巻。本日もおあとがよろしいようで。
【チーフY】 


sankei_kurashi at 18:30|PermalinkComments(0)

2014年05月29日

おまっとさん!恒例、映画の必修科目シリーズ最新刊『滝汗!サスペンス映画100』発売!

洋泉社の人気MOOK、映画の必修科目シリーズ最新刊がようやく26日に出版されました!タイトルはズバリ『滝汗!サスペンス映画100』です。そうかぁ、映画の必修科目シリーズも9冊目かぁ。この“映画の必修科目シリーズ”は1冊でその分野を網羅できるほどの情報量をゴリゴリッと青汁の粉末のように凝縮させた素晴しいシリーズでして。例えばSFやコメディなど、各ジャンルの年代史から薀蓄、そして関連作を100作品紹介しちゃう至れり尽くせりっぷり、もはや乳母日傘のおもてなし。えーと、何を言ってるかわかりませんが、要はこの映画の必修科目シリーズが出版されたら黙って手に取るべし、という事でして。もっと言えば、買ってから読むか悩んで欲しいレベルでして。
映画の必修科目09『滝汗!サスペンス映画100』 @洋泉社
サスペンス映画本
発行=洋泉社 5月26日出版
定価:本体1200円+税
映画秘宝さんホームページ内でご確認できます↓
http://www.eigahiho.jp/
因みにイアマまで発売された映画の必修科目シリーズは…
01『仰天カルトムービー100』
02『激辛韓流映画100』
03『異次元SF映画100』 
04『クライム・アクション100』
05『突撃!モンスター映画100』
06『腹筋崩壊!コメディ映画100』
07『冷酷!悪漢映画100』
08『狂烈ファンタジー映画』

…と続いているわけです。
このシリーズは何と言っても金子ナンペイさんの装画。表紙を観ただけでこの本がどういう本なのかよくわかる。そして、このMOOKシリーズの一番素晴らしいのが多士済々の執筆陣。映画秘宝さんの最大の強みでしょうけれど、豪華なんです。今回もてらさわホークさん、長谷川町蔵さんを筆頭に真魚八重子さんや松江哲明監督まで!
いっぱい書きたいことあるんですけど、本日は弊誌『
くらしの百科』の校了でものすごくドタバタしてしまって(T_T)
洋泉社さんゴメン!今日はここまで!
【チーフY】 


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2014年05月28日

【閑話休題】北條民雄ときどきココナッツディスク、のちドライブイン蒲生

昨日更新したいとうせいこうさんの新刊『鼻に挟み撃ち』についてたくさん反響をいただきました。とてもありがたいことです。いとうせいこうさんにご興味のある方は河出書房新社さんよりレトロ・スペクティブシリーズが刊行されていますので、こちらもご確認を。『解体屋外伝』や『ワールズ・エンド・ガーデン』など外せない作品ばかりです。
さて、なるべくブログは毎日の更新を心がけているのですが、本日は久しぶりに日記らしい日記を(笑)。
まずは先日ぶらりと入った古書店での嬉しい出会い。
houjyoutamio
東京創元社版の北條民雄全集を発見。迷わず購入。結核により24歳の若さで亡くなった北條民雄はハンセン病と戦いながら『いのちの初夜』を書き上げました。川端康成によって見いだされ、この北條民雄全集も川端康成・川端香男里によって編纂されました。文庫版?は持っていたのですが、昔、父が入院したときに「北條民雄が読みたい」と聞き、病院へ持っていった事を思い出す。
続いての嬉しい出会いはこちら。
アナログ
レコードです。アナログの。趣味でDJをしていたこともあり、私の部屋はレコードがいっぱいなのです。今回の嬉しい出会いは写真の上段に立てかけてあるレコードです。オハイオプレイヤーズの名盤『HONEY』。オハイオファンクと呼ばれたファンクバンドです。こちらの『HONEY』は1975年の発売。私の生まれる前に発売されたレコードが先日、巡り巡って私の手元に。とても嬉しい出会いです。むかしオシャレのアイコン的存在だった藤原ヒロシさんがNO1に挙げていたのがこちらの『HONEY』。因みに下に映っているローリン・ヒルの『The Miseducation of Lauryn Hil』は1998年。丁度私が大学生だったころ、誰もが聴いていた名盤。更にその下に少し写っているのはケミカル・ブラザーズの『surrender』です。
最後にご紹介するのは直近の映画試写状です。いつもご案内いただいているのですが、なかなか観に行く時間がなくて忍びないのです。しかし、好きな俳優や監督の新作案内をいただくと、とても嬉しくなります。本日は直近に公開予定がある3作品を。
ha-
監督と脚本はスパイク・ジョーンズ!ホアキン・フェニックスと我らがスカーレット・ヨハンソンのラブストーリー。いやいや、ラブストーリーっていっても、スカーレット・ヨハンソンは携帯端末のAi(人工知能)ですからね。ほら、アイフォンとかでもマイクで呼びかけると返答をくれる機能有りますでしょ?siriでしたっけ?あれです。もう一度言います。あれです(笑)。本作品で声のみの出演だたスカーレット・ヨハンソンはなんと海外の映画祭で最優秀女優賞を受賞するなど絶賛の嵐。『ドラゴンタトゥーの女』で強烈な演技を披露したルーニー・マーラも出演。はっきり言って、コレで面白くないわけがない。6月28日新宿ピカデリーはか全国ロードショー開始と試写状には書いてありますので、お確かめの上、スケジュール帳に“映画『her』ピカデリー”とご記入を。
続いてコチラの作品。
watasi
山形国際ドキュメンタリー映画祭2013に参加した作品です。映画ファンなら山形l国際ドキュメンタリー映画祭と聞けば、一筋縄ではいかない作品だとご理解されると思うのです。因みに同年の最優秀作品賞はあの『アクト・オブ・キリング』ですからね。ね?信用できますでしょ?「映画を完成させてね。できればハッピーエンドで」それが友人の最後の言葉だった―と試写状に書いてあります。もうね、この言葉だけで十分。コチラの作品はポレポレ中野にて8月に上映が予定されています。
最後の最後はこちら。
dora
芥川賞作家・伊藤たかみさん原作です。監督は75歳ながら本作品が初監督のたむらまさきさん。主演は黒川芽以さんと染谷将太君。ドライブインでろくでなしの父に育てられた姉弟がどのように社会や自らの育ちにケリをつけるのか。伊藤たかみさん原作の映画では2011年に『指輪をはめたい』が公開されましたが、うーん…個人的にはあと少し!と思ってしまった惜しい作品だったのですが。そうそう『指輪をはめたい』は主演が山田孝之さんでしたね。映画『ドライブイン蒲生』は7月にシアター・イメージフォーラムにて公開開始予定です。
さてさて、本日も長いお付き合いありがとうございました。明日以降の更新予定は奥泉光さんの新刊『東京自叙伝』、新潮社さんの『芸術新潮』最新号、洋泉社さんの人気シリーズ・映画の必修科目08『滝汗!サスペンス映画100』です。 しかし滝汗ってなんだ(笑)
【チーフY】 


sankei_kurashi at 11:49|PermalinkComments(0)

2014年05月27日

聖橋へ“いとうせいこう”さんに会いに行く。新刊『鼻に挟み撃ち』を読んで

実は、読者の方からいとうせいこうさんの新刊『鼻に挟み撃ち』について、何故書かないのか?という問い合わせをいただいておりまして。昨年度のマイベストワンである『想像ラジオ』(第149回芥川賞候補、野間文芸新人賞受賞)をベタ褒めしているのに、第150回芥川賞候補に挙がった『鼻に挟み撃ち』については確かに書いていない。当然ながら『鼻に挟み撃ち』はリアルタイムで読んでいるわけです。でもね、恥を忍んでいいますが、ワタシこの小説がなかなか読み解けなかったのです。
『鼻に挟み撃ち』
鼻に挟み撃ち
集英社より定価1200円(本体)+税
5月2日発売
集英社さんの作品紹介はコチラ↓
http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=978-4-08-771555-2&mode=1
【内容紹介(集英社さんより)】
御茶ノ水駅で、マスク男が奇妙な演説を始める。それをじっと聴いているひとりの男。ふたりにはそれぞれ理由があった。第150回芥川賞候補作となった表題作と、斜め上を行く不思議な3つの短編を収録。

さてさて、前作『想像ラジオ』が16年ぶりの小説復帰作になり、かつ第149回芥川賞の候補作になるなど、最近最も意欲的な作家のひとりであるいとうせいこうさん。最近の多作ぶりは本人いわく「16年間便秘だった男の気持ち」とのことですが、そりゃぁさぞかしご苦労のうえの難産であっただろうと思います。いとうさんは16年ぶりに小説を書いた動機として“現実を前にして作家からビビッドな反応がなかった”と言うようなことを『すばる』6月号内でお話ししています。うろ覚えなので少しいとうさんの言い回しが違うかもしれませんが、これ、私も同意見でして。 圧倒的な現実(=東日本大震災)が起き、一番言葉で勝負しなければならない作家が口をつぐんでいた(ように見える)状況への愁(うれ)いを吐露しています。『想像ラジオ』内でくどいほどに“想像せよ”と語りかけてくるのは当然ながらメタ的な構造でもあり、小説を通じて小説家に“想像せよ”と、圧倒的な現実を前にしても言葉を持て、“
想像せよ!”と奮い立たせているわけです。私は昨年読んだ小説の中で『想像ラジオ』がぶっちぎりの1位なのですが、その由縁が前述したように文学界へのメタ構造、もっといえば唯一文學界への疑問を提起した作品であったからです。
前置きが長くなりましたが、そんないとうさんが矢継ぎ早に作品を発表しており、前回の第149回に続き第150回芥川賞の候補にノミネートされたのが本日ご紹介する『鼻に挟み撃ち』です。
物語は聖橋のたもとに立つ“わたし”の独白から始まります。それがやがて演説の様相を濃くし、漫談の様な語り口とロシア文学の巨人であるニコライ・ゴーゴリの『外套』や『鼻』について、あるいは後藤明生(=『挟み撃ち』の著者)について、やがて渡辺直己さんや奥泉光さんを筆頭に実名が挙がってきたところで、読者はようやくこの聖橋の上でアジテーションをする“わたし”が“いとうせいこう”であることを知るわけです。本作品はこのように虚から実への転換がとても心地良い。これは純文学的な、いや、これは久しぶりに味わう私小説ですよ。よいですか皆さん!と読者=聴衆の構造も『想像ラジオ』の手法に近しいのですが、もっともいとうせいこうさんは日本語ラップ(ヒップホップ音楽)の先駆者ですので、いとうせいこうさんにしか出来ない表現方法でもあるわけです。
物語はこの後、虚と実を行き来するような展開になり、ゴーゴリの『鼻』でさえも現代における失った鼻(=物事を嗅ぎ分ける臭覚) というメタファーになってくるのです。そして後半に向かっていく展開の心地良さは見事の一言。気が付くと読後の高揚感のまま私はJR御茶ノ水駅・聖橋口へ。聖橋の上で“わたし”を探しながらもう一度『鼻に挟み撃ち』を読む。ふと聖橋のたもとに目をやると、そこには確かにマスクをし、鼻を隠したいとうせいこうさんが私には見えた…のである。
5月2日に集英社さんから発売された『鼻に挟み撃ち』は最近では珍しい私小説の手法を使った様々な文学への試みが行われています。また、短編3作も秀逸なものばかり。なかでも『私が描いた人は』の登場人物、生き生きしてますよ(笑)。いとうせいこうさんの作品に触れたことがなかった方にも当然お薦めの1冊です。ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。

蛇足を二つ。なぜ舞台が聖橋なのか。これは読んで字のごとく、聖という漢字こそ耳と口は有れど、鼻をなくした字ですね。
もう一つ。この『鼻に挟み撃ち』の読み解き方を社内の平野啓一郎さんのファンに聞いてみたところ、曰く「いとうせいこうさんも最近は作家になっちゃったよね。ほら、『不思議ラジオ』以来」とナ。あのね、『不思議ラジオ』でなくて『想像ラジオ』。おあとがよろしいようで。
【チーフY】 


sankei_kurashi at 12:30|PermalinkComments(0)

2014年05月26日

いとうせいこうさん『鼻に挟み撃ち』を聖橋の上で読んでみたが…

本日はようやく皆様にいとうせいこうさんの新刊『鼻に挟み撃ち』のご案内が出来ると思って、文章も準備していたのですが…表紙がナイ。折角ご案内するのに表紙画像がないのはちょっと申し訳ない。なので明日に。実はですね、この『鼻に挟み撃ち』なのですが、結構難解だったのです。なので、思い切って作品の舞台であるJRお茶ノ水駅横の聖橋の上で読んでみたんですよ。そうすれば作者への感情移入も増すだろうと。詳しくは明日です。むふふ。
さて、 難解な小説を読むことも大切ですが、同じくらいに有意義な時間なのが畑作業。先日パプリカの黄色と赤に実がなりました。しかし…
パプ
なぜか緑色の実。皆まで言うな、言いたいことはわかる。そう、ピーマンじゃないか!と(笑)。いやいや、パプリカはこの後時間をかけてゆっくりあの情熱的な色に変化していくのだ、もしくは目を離した隙にパッと色を変えて驚かせてくれるのだ!とか勝手に考えています。そして茄子も…
nasu
提灯アンコウよろしく、恥ずかしそうにうなだれているのが茄子の実。気が付いたら随分たくさんの実がなっていました。茄子は意外な事に風に弱く、ハウス栽培する方法を採る方も多いですが、私の場合は茄子に対してはなぜかスパルタ。お前はまだやれる!お前の実力はこんなもんじゃない!とか、聊か松岡修三さん的に育てています。茄子にとってはいい迷惑なのですが。
と言う事で本日はこの後会社の歓送迎会なのでおしまいおしまい。明日は表紙画像も準備していとうせいこうさんの『鼻に挟み撃ち』をご紹介!そしてその次は奥泉光さんの『東京自叙伝』、そして新潮社さんの『芸術新潮』@坂東玉三郎特集!と続きます!乞うご期待!
【チーフY】

 

sankei_kurashi at 17:21|PermalinkComments(0)