いきいきシニア元気塾

自分らしく生きて生を全うしよう。その願いの実践を紹介する

愛のかたち

「君に“ありがとう”」 ~明日の日本に明るい希望が~

 暦の上では初夏。風はまだ柔らかだったが日差しの強い日の昼下がり、早坂登(通称:早さん)
は電信柱の作るわずかな日陰に寄って立っていた。その手には杖があった。

 早さんはいま80歳。小学2年生の時に太平洋戦争が始まった。やがて戦線は中国や南方方面
に広がって北上し、沖縄がアメリカ軍に占領された。広島や長崎に原子爆弾が落とされた。都市や
町は敵の空襲に見舞われた。戦争が終わってみると、辺りは焼け野原でした。人々は気を取り直し
て一生懸命に働いて世界でも指折りの国づくりをした。

 そのころ、企業戦士と もてはやされ昼も夜も頑張り通した人たちは、今はすっかり年老いてしま
った。元気な人もいるけれど、病気になって動けなくなった人もいる。老人ホームで寝たきりの人も
おれば、足腰が弱って車いすの生活をしている人もいる。亡くなった人もいる。

 早さんは膝を痛めている。変形性膝関節炎という老人にはよくある故障だ。そのために100m
も通しで歩くと痛みを覚えるので休みやすみでなければ歩けない。いま、自宅から600mばかり先
にある郵便局に手紙を投函しての帰りで、電信柱に寄りかかって休んでいるところだ。
 早さんが立っている所は、言わば十字路になっている。十字路と言っても、大きな道路が交差して
いるのではなく、一方の路地から道路を隔てた反対側の路地に入るための通路に過ぎない。

 早さんは路地を右後ろにして、道路に向かって立っていた。すると、学校からの帰りらしい小学生
が路地から出てきて早さんの右後方に立ち止まった。早さんは、彼(小学生)が道路を往き来してい
る車の途切れるのを待っているのだと思った。しかし、往来の車がいなくなっても彼は動く様子がな
い。「ちと変」と思いながら早さんはやおら動き出した。すると小学生は手を差し伸べて「どうですか」
と声をかけてきた。早さんは、不自由な自分をおもんばかってガイドを申し出たのだと分かったので、
「大丈夫よ」というと、「そうですか」と小学生は言って早さんから離れ、反対側の路地の向かった。
その背中に早さんが「ありがとう」と礼を言うと彼は「いいえ」と少し振り向いて小さい声で答えて遠ざ
かって行った。

 早さんの気持ちは爽やかだった。そして嬉しかった。こんな優しい心遣いの子がいる。そんな子たち
の育つ学校がある。日本の未来は明るい。胸がいっぱいになって空を見上げた。

 早さんは彼(小学生)の顔を知らない。忘れたのではない、見てないのだ。たぶん彼も早さんの顔を
知らないだろう、お互い後ろ姿しか見てないのだから。背丈は早さんの肩辺りでしたから小学4年生
あたりだったろうか。顔も表情も分からないけれど、その優しい心遣いは早さんの脳裏を離れることは
ない。「君よ、ありがとう」
                            (この記事は、物語風になっていますが、実際にあった話です)

嬉し恥ずかし”チャームポイント”

            嬉し恥ずかし”チャームポイント”
                                     諏訪元気塾 永田公子
 私は諏訪2丁目に住んでいます。下地さんとはブロック塀が隔てているだけのご
近所です。お話ししたりする機会はめったにありませんが、ある日のおしゃべり会で
お会いした時に、下地さんから「永田さん、何かあおぞら誌に書いてください」と言わ
れたので「だめだめ、私は書くのは大のきらいですから・・・」とお断りしました。そして
つい うっかり「書けるのは手紙くらいなものですから」と言ってしまいました。すると
すかさず、下地さんが「じゃぁ、お手紙下さい」。ということで書く羽目になってしまいま
した。
 書いた手紙は棒きれに括りつけて、塀のところに立てて置きます。すると、ご返事が
やはり棒に括られて塀沿いに立ててありました。その頂いたご返事にこうありました。
「永田さんはご自分のチャームポイントは何処だかご存知ですか?」と。はて?と思い
ながら読み進みますと「素敵な笑顔です」とあります。私は胸がキュンと鳴り、顔が火
照りました。鏡を覗くと、そこには幾星霜を越えてきた顔が笑っていました。若い頃は
別の輝きがありましたのに・・・。
 私は若い頃に東京に出てきました。生まれ育ったのは長野県の生坂村で小さな山村
です。現在では過疎化が進み2013年現在の人口は2千人、800世帯、高齢化率38%
だといいます。村を出たのは高等女学校を出てすぐでした。最初にお勤めしたのは養護
施設で、のちに保育園で働きました。定年までずーっと子供相手でしたから楽しかったし、
幸せでした。そして、今また元気塾で大勢の仲間に出会い、おしゃべり会でくつろいで
過ごすことができます。いろいろと ないわけではありませんが、私は幸せな人生を頂いて
いると思っています。

お隣の高齢な仲間たち

お隣の高齢者も大変らしい


                                        下地
恵得

 老後に取り組む世界の“今”について朝日新聞がリポートを始めた。本日(9月23日)はその第1回でフランスと韓国の、特に独居高齢者の様子を紹介している。

 フランスは65歳以上の高齢化率が17%(日本は23%)、自宅独居率は39%(日本は11%)とかなり高い。そこで国は、一般家庭が高齢者を受け入れて家族同然に暮らす「受け入れ家庭制度」を作った。ブルニさん宅は夫婦と4人のこどもがおり、3人の高齢者をうけいれている。

 韓国は高齢化率11%だが、独居率は20%。儒教文化で培われた「敬老精神」も社会の変化で希薄となり、取り残された高齢者たちが施設「共同空間」で、4,5人で共同生活をしたり、「敬老堂」に集まって1日の大半を共に過ごすなどの自助の試みが広がっている。韓国の高齢化率は50年には33%と予測されている、日本は36%に。

 

“おーい、頑張ろうね”と声をかけたくもなる。そうすると、何だかファイトが出てくるではないか。同じ苦労をしている人びとがご近所にも沢山いることを思えば。

     (統計的数値はすべて2010年現在)

いつの日か 大輪の花を咲かせよ

   いつの日か 大きな花が咲くでしょう

              下地 恵得


 Ⅰ2年4月16日に、社会福祉協議会の会議室に於いて「子育て市民の会」の最後の総会がありました。発足10年目の解散総会でした。

とても残念で惜別の思いひとしおです。いきいきシニアと同じ社協の第2次住民福祉活動計画の中から生まれたということだけによるのではありません。その存在が特徴的だからです。子育て支援には行政が力を入れていますが、効率的化を追い、マスで面倒を見るのが主流です。

 そんななか「子育て市民の会」は、お子さん一人ひとりと暖かく向き合う形の支援でした。昔の様な、家庭での“お祖母ちゃんから孫へ”という、文化の手渡しが不可能な現代にあって、同会には その働きがありました。それは「個」の確立の育つ環境です。ですから、同会の終焉は貴重な社会資源の消失なのです。一顧もなく人々は先を急ぐようなれど。



願う!蒔かれた小さな種子が、いつの日か大きく花開かんことを。


 

ほんとうの思いやりって何だろう―その1

本当の労わりとは・・・その2

                                                                    下地 恵得
<苦労して育ててくれた母> 

シナリオライターの倉本聰氏が『立ち往生のすすめ』(倫書房)の中で,実母との関わりについて書いていますが、ご紹介して共に考えてみたいと思います。

 著者は1934年の12月生まれ。それまでの尋常小学校が「国民小学校」に変わり,戦時中(小3の時)には学童(集団)疎開,戦後は学校制度が、6・3・3制となるなど、世の中が目まぐるしく変わる中で、母親に厳しく躾けられますが,高校2年の時に父親が亡くなったあと、母親がお茶の師匠をしながら生計を立て、子供らを大学まで育て上げます。

 
<今度は俺が食わしてやる>

 著者がひとかどのシナリオライターとなって、母親の稼ぎを必要としなくなったので、労多くして実入りの少ない茶道師匠などやめて楽をするように勧めたが、聞き入れないので業を煮やし母親から仕事を強制的に取り上げます。

 その辺りを著書から引用しますと、“(母親は)僕がシナリオライターとして結構仕事をし始めてから・・腎臓をこわして倒れちゃったんです。それで僕はおふくろに怒りまして、何やってんだと、一文にもならないものを、もう、あなたが育ててくれた時代は終わったんだから、もう、あなたの仕事は終わったんだから、・・・今度は俺が食わす番だから、・・・何もしないで俺のテレビでも見てろって言って、お茶を取り上げちゃったんです”


 <躁鬱症になって死んだ母>

 母親は、仕事を取り上げられてから半月も経たないうちに、躁鬱症になってしまいます。荒れに荒れるので、終に押さえて注射で眠らせた上、病院の鉄格子の部屋に閉じ込めたりされますが、6年目に死んでいきます。

 仕事を止めさせて楽をさせる、一見親孝行に見える行為が、母親にとっては残酷な仕打ちでしかなかったのです。自分の価値観を押し付けないで、本人の意思を尊重してその望みを叶えてあげる、それが見守る者に求められる「思いやり」のあり方ではないでしょうか

(以前会誌に掲載した記事を加筆してここに載せました)

 

 

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