2021年02月04日


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随分と前にに夜中にぼけーっとテレビを見てると、
「ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も。」という番組がやっていて、
猫飼いの作家たちが、愛ネコに関して寄稿して、それを役者のナレーションで読み上げるという番組。
私が見たのが、ちょうど角田光代先生の「任務十八年」の回で、
愛猫を失った悲しみをただ嘆くのではなく、自分なりにその悲しみに理由をつけ、
「猫はどこからか派遣されて人間のもとに来ている。それには任期が最初から決まっていて……」
という、ユーモラスな設定を猫側からのモノローグで坦々と描かれているのだけど、
それがまあホロリと来ちゃうし、面白い設定だなーと思って取っておいたのが「MILK」という作品。
これだけは書いておかないと、あとでどこかで怒られるといけないので。
台本の冒頭には、原案として書いてあったんだけども、
チラシ、パンフと入稿のタイミングで載せ損ねてしまった。

そもそもは、昨年の縁劇フェスの際に出そうと書いたものがこれでした。
当時はてんやわんやの締め切り地獄で、アイデアは面白いし、どうしたいかもだいたい決まってるのに、それらがうまく混ざらなくてすったもんだした。

人間の男女の恋愛に猫が関わって、そこに猫の事情が絡んで来て……とか、
のちに百万回生きた猫と呼ばれる、エージェントコード223(不死身)猫が出て来る……とか、
色々考えて、没にしたり、また拾ってきたりで、もうどの道に進んでいいのかわからなくなってきて、
とりあえず先に猫たちのバカバカしい諍いを書いてしまえと、その辺りは楽しく書いて、
そこからまさに自分がいま陥ってる状況から、ここまでのお話は全部劇中劇にしてしまおうという雑な発想に飛んだ。

書いてるうちにニャスタニアはだんだんあの国みたいになってきて、
少しだけ世界観が身近になるかなと少しだけそういう要素も入れたり。
「ああ、これはそういうことを言いたいお話なんだなー」って思わせることができたらいいかなと思ったり。

そもそも前半の本題ではない部分が本題と同じだけの長さがあるのだけど、
そこをどう収拾をつけようか悩んでたときに、
いきなりブツンと切ろうと思った。
「え、そこで終わるの? 何じゃこの話?」
って感じで一回ぽかんとさせてしまえと。
クライマックスの熱量だけで何のお話なのかわからん、
なのにそれっぽい曲で涙を煽ってくるエンタメ劇にしようと。

だから鳩ちゃんには、
このくだりに中身なんてないので、自害するところまでひたすら熱量で押して。
と頭の悪いお願いをした。

稽古場で初めてあの暗転前の曲を流したときに木山さんが「めずらしい……」と言った時点で、いい選曲したなーと思った。
自分の芝居では一生使うことはないと思ってたのに、こんな雑な使い方をするとはと面白かった。

前半がエンタメ芝居っぽい要素が強いので、動きをつけて、そこを落とし込んでというのに時間がかかった。
山下さんもエンタメ芝居にあまり触れてこなかった人なので、
「もっと、朗々としゃべって! もっともっと!……でももう少し口語的に、でももっと!!」
という、セリフをどの程度立てるのかという微調整から始まった。

結局、会話劇もエンタメもやることは変わらない。
うちは会話劇だけど、声量欲しがるし、距離感がリアルな会話劇はやらない。
それでもやっぱり、エンタメはエンタメの型みたいなものが多少あると私は思うし、
あの恰好とあの世界観なので、いつもよりもわかりやすいお芝居を求めた。

個人的にはこんなのもできるんだよって、のも見せたかったり、試してみたかったり。
「ラフストーリー」みたいな、「ああはいはい、三等さんそんなのよね」というのと並べられたのは、
オムニバスとしては意味があったかなと。
確かにそんなのよねってのは好きだけど、どうしてもまんねりになるし、色々やりたい。


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山下さんにとっては何とも大変な役だったと思う。
「カイゼル髭なんか生やしてるイメージで、かつては鬼と呼ばれていたが今はすっかり落ち着いているけど、でも本気出したら強いんだろうなーって感じで軍人っぽく喋って」
という、小学生みたいな注文の繰り返しだった。
山下さんは山下さんで、「銀河英雄伝説の〇〇みたいなのですか?」って聞いてくるし、
私は私で銀英伝をよく知らず、山下さんの説明を聞いて、「たぶんそんな感じです」と答えたら、次の稽古で「全然違う!すごく遠くなった!誰それ?」ってなったりした。
いい加減な意思の疎通は危険だなと思った。

最終的には山下さんなりのカイゼル髭軍人が出来てきて、
山下春輝という役者の愛嬌が滲み出ていた。
しかしまあ、照明があるとはいえ、換気が効いててのこの時期に、あれだけの汗をかくのはすごいなと思った。
山下さんは夏の着ぐるみバイトやったら、自分の汗で溺れるんじゃないだろうかと思う。

もともと縁フェスの際はたねさんと山下さんのコンビで読み合わせしていて、もともと旧知の仲だったので、違和感もなかったけど、
鳩ちゃんと山下さんという組み合わせは畑違い感がすごいなと最初思った。
ドラゴンフルーツ農家と、サツマイモ農家という異色な感じで、個人的にそれだけで面白かった。



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本多さんに関しては、色々内的な事情と、こちらで勝手に察した関係で。
この一本しか出てなかったし、
「もっとはっちゃけた役がよかったのでは?」という意見もあるのだけど、
私としてはこれがちょうどいいラインかなと思っている。
はっちゃけられる部分も多少ありつつ、ちゃんとエピソードや思いを伝える部分もありつつ、
そこのバランスを取れたらなと。
まあ結果的には、本ちゃんがやることではっちゃけたイメージの方が強い役になったのだけど、
出てきた途端、何もしてないのにみんなが笑うというのは、彼女自身のそれまでのキャラと、狙ってもできない独特のアンバランスさなので、
結局どう転んでもというか、それをどこに転がすかが、活かすカギになるんだなーと思った。
台本ありきではなく、本多ありきなのだ。

4月の超人予備校はそう考えると、そんなに心配していない。
ミツルギさんなら、きっと本多真理を私以上に面白く使えると思っているので、楽しみだったりする。
ちなみに襟元の丸いのは木山さんが作ってくれて、何だかいい感じにしっくり来てるので忘れてたけど、本来はパラボラ的なエリザベスカラーか、特大ポンデリングにあるはずだった。
ただ、パラボラにしたり大きくしてしまうと、誰も本ちゃんに近づけないから芝居がおかしなことになるし、そもそも袖から出られないだろということから、あのサイズになった。



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鳩ちゃんは、彗星マジックで一緒だったので、エンタメ的な部分では何となくわかっていたし、
もっと軍人口調でいいよってくらいしか言わなかった気がする。
ただ、山下さんとの二人のパートは、猫パンチひとつから非常に注文が多くて嫌になったんじゃないかなと思う。

とにかくうちでは普段やらない段取りが多いので、芝居的要素以外で時間が大量に取られる作品だった。
でもまあ、時間がとにかく足りないというだけで、稽古自体は毎回楽しかった。
鳩ちゃんにとっては前半と打って変わって、最後の木山さんとのシーンではもっとグルーヴ感出してこうぜというニュアンス的な演出が多く大変だったと思う。

手前の段取りは時間を割けば解決する問題だけど、
最後のシーンはそうでもないのでなかなかに大変だったし、
時間を割けば解決する問題でもないから、あまり時間を割かなかった。
ニュアンスとかシンパシーとかグルーヴ感とか、そういうものは難しい。
「出して!」と言われて出せるもんでもないし。

なので、二人には「丁寧にやって」と注文したり、
「セリフの間を詰めてみよう」と言ってみたり色々やった。
とりあえず「何かしっくりこないのよねー。全然違うのよねー」ってぼんやりした注文ばかりで、
二人からしたら何がどう気にいらないのだって日々だったと思う。


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このくだりは鼻につくという人もいるだろうし、ズルいという意見ももちろんだなと思う。
ページ数の都合もあったりで、
別れはゆっくりながら、シンプルにと思って書いた。
「寂しいよ」なんて、もう直球すぎるセリフなんだけど、
それゆえに木山さんには大変なセリフとなった。
「その言い方嫌だ……」ってダメの繰り返しで、
木山さんからしたら。その言い方が嫌だって話だったと思うし、
大いに頭を抱えていた。
感情的な部分が強くなるとダメだと言われ、
それをなくすとそれはそれでダメだと言われ、とにかくトライ&エラーの繰り返しだった。

あまりに頭を抱えてるもんで、
もう一旦トライ&エラーから離れて、放り出してみたら見えてくるものもあるんじゃない?
と言ったりもしたが、
巨人の星でエースをねらってアタック№1女優である木山さんは頑として聞かない。
本当に聞かない。
休みなよって言ってるのに聞かない。
風邪ひいて熱出てるのに学校行くタイプ。
苦くないと薬じゃない。
痛くないとマッサージじゃない。
出血しないとケガじゃない。
音符が読めないなら、自分で音符を作る。
パンがないなら、魚でパンを作る。
右の肺が止まったら、左の肺を差し出す。
それが木山梨菜という女優である。

二年前の「フレンチとマニュアル」という私との二人芝居のときも、根性根性ど根性だった。
そのときも一旦休みなよという私の優しさを振り払い、見えない鬼コーチと猛特訓していた。
天六の稽古場でひとり残して帰ったのを、今でも思い出す。

それでも毎回毎回根性で何とかしてきた人なので、今回も根性で何とかしようとするという頑固職人。
それでも木山さんなりに足して削いでを繰り返して、随分とニュアンスを摺り寄せてきた。
私もこの辺りならもういいだろうと思っていた。

そこからで初日迎えて、がらりと変わった。
鳩ちゃんと二人して変わった。
観てたわけではないけど、袖中で声を聴いてたらわかる。
あれれー? 
と思いながら、
そんなんだっけ? 
と思いながら。

そこはもう良い悪いではなく、好みの問題なんだけど、
二人が舞台上で一緒になって作り上げたのだから、
そこでお互いシンパシーを感じで、それをお客さんが拾ってるなら、
この段階になってまで野暮なダメは出すまいと思っていた。

そしたらその日の夜に木山さんから、
「君の思ってるものとは違うだろうけど、鳩ちゃんと二人芝居で本当に良かったなと思う。今の私にはこれが精いっぱい」
みたいなニュアンスのLINEが来ていた。
もう少し丁寧な長文だったし、全文載せてあげたいくらいに木山さんの思いがこもった内容だったけど、
すごく怒られるのでやめておく。
ちなみにそれに私が何て返したかというと、「返信不要です」って〆てあったので何も返せなかった。
演出としては、「わ、わかっててやってただとー!?」なところだけども、
一人の大人が、そこまで思いを詰めてやってんだから、そもそも何も言えない。

ただその木山さんの判断も正解だったんじゃないかなと思う。
私がいいと思うものよりも、そのときお客さんが良いと思うものが正解だと。
ちょっと湿っぽすぎやしませんかとはやはり思うけど、
その手前全部がしっかり出来てたんだから、ここで多少ウェットになっても誰も嫌わないんじゃないかなと。

必ずしも設計図に則った完成系が舞台に乗るわけではない。
でもそれも含めて、お客さんだけでなくこちらも楽しめるのがライブの愛おしいところかなと最近は思うようになった。



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カーテンコールに関しては、特に考えてなかったけども、
初めての全体通しした帰りに、有元さんが、
「MILKの最後は少し落ち込んじゃう」って言ってて、
そうだなー、これがラストの一本になるわけだしなーと考えた。

そこから色々ハッピーな感じになるようにしようかと考えてみたけども、
何だかどれもしっくり来ずで、
結局お話の最後は変わらないけど、
カーテンコールだけは一人と一匹が元気よく揃うような感じにしようと、
「以上、こんな感じのお芝居でしたー!ちゃんちゃん」
って感じになればなと。

台本を書き終わって、稽古の段階になって自分なりに思ったのは、
この最後のくだりは自分が悲しみに飲まれてしまわないように壊れてしまわないように、
作家の目いっぱいの自分の都合のいい幻想かなと思ったりした。
何より角田先生は、そう思うことで愛猫との別れを受け入れたんじゃないかなと私は思う。

購入するか、ディスカスでレンタルするかくらいしかないのですが、
角田先生の「任務十八年」を見ていただければ嬉しいなと思います。
角田先生のエピソードだけなら、インタビューとか混みで30分程度。
これ見てから、MILKという順番は最悪だし、やめてほしいけども逆ならいい。

ネコメンタリー 猫も、杓子も。 [DVD]

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以上、
これで振り返りもおしまい。
三等フランソワーズとしては今後の予定は白紙。
今後どうするかも白紙。
一旦休憩と思っています。
とりあえず私自身がもう少し作品作りを勉強しないとなと思う2020年でした。
もう今までのやり方では書けないし、色々枯渇してる。
ないものを何とかやりくりして出してる感じ。

なのでそう考えるとこの地獄のような公演も区切りとしては意味があったなと思うし、
流行り病も含めて、周辺の色々なこともそういう時期だと告げてるのかなとぼんやり思います。

震えるほどにしんどかったけど、楽しかった。
そんな公演でした。

以下写真。
MILKは動くから写真の数が多い……。
パラパラ漫画的にお楽しみください。
(撮影 松田ミネタカ)


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2021年01月31日


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地獄にも色んなタイプがあって、
耐え忍ぶ地獄はキツいけど、精神さえ持てば何とかなる。
一番ツラいのは先の見えない地獄だ。

人間、どんな形だろうとその先に答えが待ってるから進めるのだ。
だから台本作業は、これが本当に形になるのか心許ないまま進むし、
これだーって見つけることもあれば、心許ないままゴールまで辿り着いて膝を折ることもある。
しかし台本さえ書けてしまえば、その先にはもうそれほどの地獄はない。
ましてや、「これは面白いゾ」ってなったところから、再び地獄を歩むことなんてない。
そう思っていた。
あの日までは……(回顧)。

二人芝居の本はすぐに書ける。
ブルーハーツがとりあえず完本して、軽い気持ちで取り掛かったラフストーリー。
これが後々々々……まで苦しむことになる。
ビジュアル的にも非常にわかり易くて申し訳ないのだけども、
フレンチとマニュアルみたいなものを書こうと思った。安直に。
またマイブーム的に、何かこうたくさんびゃーっと喋るものを書こうと思った。
書きあがったときは面白いと思った。
読み合わせでもまだ面白いと思った。
でもそれ以降の稽古でたねさんも私も全然セリフが入らない。
そりゃセリフみたいなもの、努力と根性でどうとでもなる問題なのだが、
それにしたってそれほどにこれほどにだった。

暗記したものを思い出し、正解を言い合うような稽古が続いた。
ってかもう、稽古ですらなかった。
糖分摂取しては、その作業を繰り返し、口から脳髄吐きそうにはなるくらい頑張るが、何の達成感もない。
もちろん演出どころではなかった。

そして稽古4回目くらいで、これは台本がダメだと認めた。
辻褄が合わないところと、無駄な長セリフをカットして、きれいにしようと思った。
きれいにしたら、8割違う話になってしまった。
あれだけ「いいねー、これいいねー」って思ってたラストも、「マッハで死ね!」と思った。
もちろんそんななので、ここまでの4回の稽古はほぼ無駄になった。
天六の終電ギリギリまで脳味噌干上がるまでやった稽古も無駄になった。

ただドラマは生まれたので、随分と面白くなった。
でも相変わらずセリフは覚えにくかった。
受けて返すのセリフは覚えやすいが、
長ゼリフと、自分発信で始まるセリフが多いと、ものすごく覚えにくい。
リズムがつかめない。
会話のテンポにセリフが追い付かない。
それでもたねさんと何とかかんとか形にしていった。

途中、たねさんも私も全然乗れてなくて、喉が締まってる感じがして、
セリフが忙しくなる理由について、これまた青い恋人たちのときに言っていたあの人の、
ってかジンさんの言葉を思い出して20分くらい語ってた。

当時、ジンさんがあまりに台本通りにセリフを言ってくれるので、
「そんな一言一句台本通りでなくていいですよ。言いにくいセリフもあるでしょうし」
と言ったら、
「一言一句、これと決めておかないといざセリフを言うときに迷いが出てロレロレになるから」
と言っていた。
そんな話をたねさんと二人でさすがだねー。
としてた。
しかし我々はジンさんではないので、そのあとも我流でニュアンスで覚えたセリフを繰り返し、唸っていた。
ジンさんのエピソードを引っ張り出したが、まったく起死回生の良い話にならなかった。

水をかけるシーンを練習したのは、年も明けて随分と終盤になってからだった。
稽古写真を撮りに残ってくれてた木山さん監修の元、三人で水の量はこれくらいがベストだとか、
大事なのはグラスと顔面の距離だとか、勢いでやらないだとか、
いい大人が真剣に水を掛け合っては唸っていた。

無理も通せば道理になる。
猪木だって踏み出せばそれが道になるって言ってた。
だから、我々は雑草を踏み固め、飛び出す枝を折り、獣道を作ることに成功した。
演出らしいこともようやくできた。

どの作品も新作は常にそうだけど、とりわけこの作品は
もうこれが受け入れられるか受け入れられないかわからなかった。
通し稽古のときも、身内ウケすらビミョーだった。
稽古見学に来た南出さんに至っては、もう人の心を失くしたゴディバだった。

心の中では、たねさんごめんと思ってた。
死ぬときは私も一緒だからごめんと思ってた。
この人何でこんな前向きなんだろう頭の分泌物マジおかしいんじゃないの?って思ってた。
たねさんでなければ、途中で心折れてたかも知れなかった。
本当に毎度毎度遅くまで稽古してた。
一回通すごとに糖分補給タイムを設けてたので、お菓子もよく食べた。

そして迎えた本番初日。
……は、ただひたすらにやってきたことを実行して終わった。
まったく余裕なかった。

二日目の昼公演。
……で、ちょっとしたトラブルが起こった。
そのときに、完璧は捨てて完走を目指そうとテンポを落とし、セリフを丁寧に扱うようにした。
するとお客さんのリアクションが変わった。
「プロフェッショナル」の番組だったら、ここでポーンと音が鳴って黒バックにナレーション入る。
私もたねさんも、そこでようやくこの台本の演じ方がわかった気がした。
というか、自分の書いたセリフを信じてみようと思った。
そこからテンポだけでセリフを押すのをやめ、丁寧に会話することに努めた。
そうすると、どこで会話を切り返すのか、どこでハンカチを握るのか、目を逸らすのか、
次に何をしたらいいのか、そこに当てはまるちょうどいいものが、くっきりわかるようになった。
今まで漠然と百以上もの工程があると思っていたものが、本当に大事なのは十ほどの工程で、
あとは都度セッションしていけばいいのだと。

恐怖と不安ばかりだったのに、そこからは毎回毎回楽しかった。
日曜の夜には、「あー、あと十回はしたいなー」と思いながら、ひたすらに楽しんでいた。
思えば、昨年の火ゲキで落語したときも扇子を忘れて楽屋に取りに戻って、舞台にあがったらそこからはリラックスして挑めた。
うまくやろうというのは当然の心理なのだけど、それをリラックスして演じられること、
まずは芝居を楽しめるところを探るのが大切なことだと、何だか演劇初心者みたいなところに辿り着いた。
もしくは一周回って大きくなって帰ってきたのかも知れない。
ベテランの職人ほど初心の大切さを知るみたいなみたいにそういうことにしておこう。

だいたいそもそも概ね演劇なんてものは……、
とわかっていたつもりだったけど、こんな根本から覆されることがまだあるのだなと、
あー役者面白いのかもなと、久しぶりに思えた。
台本的な良し悪しは別にしても、自分で書いたものでありながら、勉強させてもらった。

何より一番は、たねさんにかわいそうな思いをさせなくてよかったと思った。
小屋入りしてからもブルーとMILKばかり気にしていたので、放置して悪いなーと思ってたし、
他チームが楽しそうにしてるのに、30分を二人で苦痛の時間ばかりだったら、何のために出演したのかわからない。
本当によかった。
たねさんとだから開くことができた扉だったし、
私が今後役者を続けていくとしたら、大きな分岐点。

結果があったから言えるけど感謝しかない。
感謝しかないと言えてよかったと本当にほっとしてる。
楽しかった!

以下、写真。
(撮影 松田ミネタカ)
ミネタカさんも、こんな動きのない芝居30分も何撮るんだよ……と思っただろうけど、
写真見ると、色々アイデアがあったり、色んな表情を押さえてくれていたりで、感謝!マジラブ!!

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2021年01月30日


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初演が2006年だから、15年前の作品。
私がまだ26歳のピチピチボーイズだったころ。
何の苦労も、何の狙いもなく書いたのは覚えてる。
何となく書き始めて、後付けで決めたラストに前半を合わせて作った。
ブルーハーツの作り方を思うと大して成長してないのが伺える。

そこから、小さなネタの加筆はあるけど、ほとんど改訂していない。
タイトルも変えようと何度か思ったけど、結局変えてない。
「三等さんではあまり見ない作品」という評価はその通りなのだ。
三等さんのころに書いたものではないし、狙って書いたものでもないので、
私の中でもずっと異色のままな気がする。

15年前から数えたら4回目。
三等さんになってからで、今回で3回目。
15年前のときは木山さんが植田さん役だった。

それから、
2016年にかわいい山本誠子版を、私が植田さん、木山さんが母親役で再演。
2017年にややボーイッシュなAGATA版を、以下同文で再再演。
そこから三年半空いての今回。
そんな細かいことはどうでもいいと思われるだろうが、
あくまで私とわかる人だけの回顧録と備忘録なので、許して欲しい。




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有元さんは小技多いし、本当に器用だし、セリフ噛まない。
もう、ロボ。
0.5秒くらいの隙間に絶妙なニュアンスの芝居を挟みこんでくるので、
よく噴き出したし、採用したネタも多かった。
佇まいがすでに面白い。
こちらも伝統的なデフォルトとは違う母親だったけど、
変に強制しなくてよかったと思った。
ラストのくだりは、もっともっと静かに深く長くな演出となったのも、
それだけ絵が持つなと思ったからで、作ってて楽しかった。
私は台本がどうとかは二の次で、ライブでやる以上できあがった作品が一番かわいいので、
ブルーハーツ然り、そこにダイレクトに使えるものをすぐに納品してくれる人は大好きだ。
有元さんのことを、心の中で高級吉野家と呼んでいる。


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響さんのポジションは私のポジションだし、
「えー出たいー!」って気持ちはあった。
基本、さっちゃんは出たい。
母親役でもいいから出たいのだ。
響さんがハマるのはわかっていたけど、出たかったのだ。

予想外だったのが、ベテランなのにサービス精神旺盛な響さんが、
このただ振り回される被害者ポジションに至っては遊ぼうとしなかった。
っていうか、このポジションを演じる上で、声質も見た目も立ち回りも予想以上にハマっていた。
何だかんだ言って私は男なので、悔しかった。
このされるがままのポジションができる人を欲してるので、
私の中で響さんの新しい部分を見つけた気がした。
でも出たかった。


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彗星マジックの「詩と再生」を観に行ったときに、
これが鳩川七海かー、すげーなーと思って、
呼んでみたいねーと、木山さんとなんばでインドカレー食べながら話してたのが、「さっちゃん」だった。
なので、鳩ちゃんを呼んだそもそもはこちらだった。
そして、いざ稽古が始まったら私の思い通りの鳩川七海にはならなかった!
も、もっとデフォルトなぞっておくれよーと思った(笑)
なので、最初はどこまでこちらのプランを強制するか迷った。
でも、だんだんこれはこれでありだなと思い始め、
二回目の稽古で、私の枠の中に留めるのは間違いかもしれない。
もっと客観的に見ないといけないぞと思いなおした。

私が語るのも何だけど、
鳩川七海という女優は一秒間のコマ数が多いという表現がしっくりくるなーと思う。
だから芝居が繊細に見えるし、そこに彼女のアイデアが込められてたりと、情報量が違う。
それが見てて「何か違う!」と思わせるところだと私は思ってる。
わかり易く例えると、「エヴァンゲリオン」と「ヱヴァンゲリヲン」くらいに情報量が違う。
この芝居に関しては、全体のバランスと見せ所の関係で、小屋入りしてから少し減らしてもらったけど、
まあこの歳でそれだけ出来て、周りの評価もちゃんと付いてきて……嫌になる(笑)
「また呼んでください」なんて言わず、早く私なんぞの手が届かないところに行きやがりなさいと思う。

あーあと、「そこんとこ『郷です!』って感じで言ってほしい」って注文が通じなかったときは、
もう本当に時代は流れてるんだねって悲しく思った。


少し鳩川語りが長くなったけど、どこかで語りたいと思ってたのと、
まだ私の手が届くうちに、鳩ちゃんの内申点をあげておいて、どこかで何かがあれしたらいいなと思う(笑)



すでに書いたが、
鳩ちゃんありきで決まってたこの作品。
当初は私と木山さんとの三人を考えていたけども、
色々な裏方事情で悩んでるときに、
木山さんからの、「だったら客演の三人でやってもらえば? お客さんも喜ぶしいいじゃない」
との意見で、それもそうだなその通りだなそれ正解だなとなった。
想像しただけでぴったりだった。
木山さんはすでに三回この作品をやってるので、少し飽きてた感があるけども、私は何度も言うけど出たかったので少し迷った。

この台本に関しては、最初にLINEで流してから三人とも前のめりのコメントくれて、
他の台本配ったときは無反応だったのにと、少し寂しくなったのをよく覚えている。
みんな正直だ!!
本当に序盤から不安なく、稽古回数も5~6回くらいで仕上げたというか、ただ固めただけの作品で、
全く手がかからず楽ちんだった。

ただ、本番初日の客席のリアクションの少なさに負けて、
二日目から一部デフォルトな芝居を鳩ちゃんに強いたところが悔やまれる。
三人の中では何の問題もなく、誰も何も気にしてなかったので、やらせてあげるべきだった。

でも、ずっと楽しかったし、役者の持ってるものを活かすというのはどういうことなのか、
少し演出として勉強させてもらった気がする作品となった。


以下、写真。
(撮影 松田ミネタカ)
テーブルトークなので、
どうしても動きは少ないけど、観てくれた人にお話しの流れを楽しんでもらえたらと思います。

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