2021年01月31日


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地獄にも色んなタイプがあって、
耐え忍ぶ地獄はキツいけど、精神さえ持てば何とかなる。
一番ツラいのは先の見えない地獄だ。

人間、どんな形だろうとその先に答えが待ってるから進めるのだ。
だから台本作業は、これが本当に形になるのか心許ないまま進むし、
これだーって見つけることもあれば、心許ないままゴールまで辿り着いて膝を折ることもある。
しかし台本さえ書けてしまえば、その先にはもうそれほどの地獄はない。
ましてや、「これは面白いゾ」ってなったところから、再び地獄を歩むことなんてない。
そう思っていた。
あの日までは……(回顧)。

二人芝居の本はすぐに書ける。
ブルーハーツがとりあえず完本して、軽い気持ちで取り掛かったラフストーリー。
これが後々々々……まで苦しむことになる。
ビジュアル的にも非常にわかり易くて申し訳ないのだけども、
フレンチとマニュアルみたいなものを書こうと思った。安直に。
またマイブーム的に、何かこうたくさんびゃーっと喋るものを書こうと思った。
書きあがったときは面白いと思った。
読み合わせでもまだ面白いと思った。
でもそれ以降の稽古でたねさんも私も全然セリフが入らない。
そりゃセリフみたいなもの、努力と根性でどうとでもなる問題なのだが、
それにしたってそれほどにこれほどにだった。

暗記したものを思い出し、正解を言い合うような稽古が続いた。
ってかもう、稽古ですらなかった。
糖分摂取しては、その作業を繰り返し、口から脳髄吐きそうにはなるくらい頑張るが、何の達成感もない。
もちろん演出どころではなかった。

そして稽古4回目くらいで、これは台本がダメだと認めた。
辻褄が合わないところと、無駄な長セリフをカットして、きれいにしようと思った。
きれいにしたら、8割違う話になってしまった。
あれだけ「いいねー、これいいねー」って思ってたラストも、「マッハで死ね!」と思った。
もちろんそんななので、ここまでの4回の稽古はほぼ無駄になった。
天六の終電ギリギリまで脳味噌干上がるまでやった稽古も無駄になった。

ただドラマは生まれたので、随分と面白くなった。
でも相変わらずセリフは覚えにくかった。
受けて返すのセリフは覚えやすいが、
長ゼリフと、自分発信で始まるセリフが多いと、ものすごく覚えにくい。
リズムがつかめない。
会話のテンポにセリフが追い付かない。
それでもたねさんと何とかかんとか形にしていった。

途中、たねさんも私も全然乗れてなくて、喉が締まってる感じがして、
セリフが忙しくなる理由について、これまた青い恋人たちのときに言っていたあの人の、
ってかジンさんの言葉を思い出して20分くらい語ってた。

当時、ジンさんがあまりに台本通りにセリフを言ってくれるので、
「そんな一言一句台本通りでなくていいですよ。言いにくいセリフもあるでしょうし」
と言ったら、
「一言一句、これと決めておかないといざセリフを言うときに迷いが出てロレロレになるから」
と言っていた。
そんな話をたねさんと二人でさすがだねー。
としてた。
しかし我々はジンさんではないので、そのあとも我流でニュアンスで覚えたセリフを繰り返し、唸っていた。
ジンさんのエピソードを引っ張り出したが、まったく起死回生の良い話にならなかった。

水をかけるシーンを練習したのは、年も明けて随分と終盤になってからだった。
稽古写真を撮りに残ってくれてた木山さん監修の元、三人で水の量はこれくらいがベストだとか、
大事なのはグラスと顔面の距離だとか、勢いでやらないだとか、
いい大人が真剣に水を掛け合っては唸っていた。

無理も通せば道理になる。
猪木だって踏み出せばそれが道になるって言ってた。
だから、我々は雑草を踏み固め、飛び出す枝を折り、獣道を作ることに成功した。
演出らしいこともようやくできた。

どの作品も新作は常にそうだけど、とりわけこの作品は
もうこれが受け入れられるか受け入れられないかわからなかった。
通し稽古のときも、身内ウケすらビミョーだった。
稽古見学に来た南出さんに至っては、もう人の心を失くしたゴディバだった。

心の中では、たねさんごめんと思ってた。
死ぬときは私も一緒だからごめんと思ってた。
この人何でこんな前向きなんだろう頭の分泌物マジおかしいんじゃないの?って思ってた。
たねさんでなければ、途中で心折れてたかも知れなかった。
本当に毎度毎度遅くまで稽古してた。
一回通すごとに糖分補給タイムを設けてたので、お菓子もよく食べた。

そして迎えた本番初日。
……は、ただひたすらにやってきたことを実行して終わった。
まったく余裕なかった。

二日目の昼公演。
……で、ちょっとしたトラブルが起こった。
そのときに、完璧は捨てて完走を目指そうとテンポを落とし、セリフを丁寧に扱うようにした。
するとお客さんのリアクションが変わった。
「プロフェッショナル」の番組だったら、ここでポーンと音が鳴って黒バックにナレーション入る。
私もたねさんも、そこでようやくこの台本の演じ方がわかった気がした。
というか、自分の書いたセリフを信じてみようと思った。
そこからテンポだけでセリフを押すのをやめ、丁寧に会話することに努めた。
そうすると、どこで会話を切り返すのか、どこでハンカチを握るのか、目を逸らすのか、
次に何をしたらいいのか、そこに当てはまるちょうどいいものが、くっきりわかるようになった。
今まで漠然と百以上もの工程があると思っていたものが、本当に大事なのは十ほどの工程で、
あとは都度セッションしていけばいいのだと。

恐怖と不安ばかりだったのに、そこからは毎回毎回楽しかった。
日曜の夜には、「あー、あと十回はしたいなー」と思いながら、ひたすらに楽しんでいた。
思えば、昨年の火ゲキで落語したときも扇子を忘れて楽屋に取りに戻って、舞台にあがったらそこからはリラックスして挑めた。
うまくやろうというのは当然の心理なのだけど、それをリラックスして演じられること、
まずは芝居を楽しめるところを探るのが大切なことだと、何だか演劇初心者みたいなところに辿り着いた。
もしくは一周回って大きくなって帰ってきたのかも知れない。
ベテランの職人ほど初心の大切さを知るみたいなみたいにそういうことにしておこう。

だいたいそもそも概ね演劇なんてものは……、
とわかっていたつもりだったけど、こんな根本から覆されることがまだあるのだなと、
あー役者面白いのかもなと、久しぶりに思えた。
台本的な良し悪しは別にしても、自分で書いたものでありながら、勉強させてもらった。

何より一番は、たねさんにかわいそうな思いをさせなくてよかったと思った。
小屋入りしてからもブルーとMILKばかり気にしていたので、放置して悪いなーと思ってたし、
他チームが楽しそうにしてるのに、30分を二人で苦痛の時間ばかりだったら、何のために出演したのかわからない。
本当によかった。
たねさんとだから開くことができた扉だったし、
私が今後役者を続けていくとしたら、大きな分岐点。

結果があったから言えるけど感謝しかない。
感謝しかないと言えてよかったと本当にほっとしてる。
楽しかった!

以下、写真。
(撮影 松田ミネタカ)
ミネタカさんも、こんな動きのない芝居30分も何撮るんだよ……と思っただろうけど、
写真見ると、色々アイデアがあったり、色んな表情を押さえてくれていたりで、感謝!マジラブ!!

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