2021年02月04日


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随分と前にに夜中にぼけーっとテレビを見てると、
「ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も。」という番組がやっていて、
猫飼いの作家たちが、愛ネコに関して寄稿して、それを役者のナレーションで読み上げるという番組。
私が見たのが、ちょうど角田光代先生の「任務十八年」の回で、
愛猫を失った悲しみをただ嘆くのではなく、自分なりにその悲しみに理由をつけ、
「猫はどこからか派遣されて人間のもとに来ている。それには任期が最初から決まっていて……」
という、ユーモラスな設定を猫側からのモノローグで坦々と描かれているのだけど、
それがまあホロリと来ちゃうし、面白い設定だなーと思って取っておいたのが「MILK」という作品。
これだけは書いておかないと、あとでどこかで怒られるといけないので。
台本の冒頭には、原案として書いてあったんだけども、
チラシ、パンフと入稿のタイミングで載せ損ねてしまった。

そもそもは、昨年の縁劇フェスの際に出そうと書いたものがこれでした。
当時はてんやわんやの締め切り地獄で、アイデアは面白いし、どうしたいかもだいたい決まってるのに、それらがうまく混ざらなくてすったもんだした。

人間の男女の恋愛に猫が関わって、そこに猫の事情が絡んで来て……とか、
のちに百万回生きた猫と呼ばれる、エージェントコード223(不死身)猫が出て来る……とか、
色々考えて、没にしたり、また拾ってきたりで、もうどの道に進んでいいのかわからなくなってきて、
とりあえず先に猫たちのバカバカしい諍いを書いてしまえと、その辺りは楽しく書いて、
そこからまさに自分がいま陥ってる状況から、ここまでのお話は全部劇中劇にしてしまおうという雑な発想に飛んだ。

書いてるうちにニャスタニアはだんだんあの国みたいになってきて、
少しだけ世界観が身近になるかなと少しだけそういう要素も入れたり。
「ああ、これはそういうことを言いたいお話なんだなー」って思わせることができたらいいかなと思ったり。

そもそも前半の本題ではない部分が本題と同じだけの長さがあるのだけど、
そこをどう収拾をつけようか悩んでたときに、
いきなりブツンと切ろうと思った。
「え、そこで終わるの? 何じゃこの話?」
って感じで一回ぽかんとさせてしまえと。
クライマックスの熱量だけで何のお話なのかわからん、
なのにそれっぽい曲で涙を煽ってくるエンタメ劇にしようと。

だから鳩ちゃんには、
このくだりに中身なんてないので、自害するところまでひたすら熱量で押して。
と頭の悪いお願いをした。

稽古場で初めてあの暗転前の曲を流したときに木山さんが「めずらしい……」と言った時点で、いい選曲したなーと思った。
自分の芝居では一生使うことはないと思ってたのに、こんな雑な使い方をするとはと面白かった。

前半がエンタメ芝居っぽい要素が強いので、動きをつけて、そこを落とし込んでというのに時間がかかった。
山下さんもエンタメ芝居にあまり触れてこなかった人なので、
「もっと、朗々としゃべって! もっともっと!……でももう少し口語的に、でももっと!!」
という、セリフをどの程度立てるのかという微調整から始まった。

結局、会話劇もエンタメもやることは変わらない。
うちは会話劇だけど、声量欲しがるし、距離感がリアルな会話劇はやらない。
それでもやっぱり、エンタメはエンタメの型みたいなものが多少あると私は思うし、
あの恰好とあの世界観なので、いつもよりもわかりやすいお芝居を求めた。

個人的にはこんなのもできるんだよって、のも見せたかったり、試してみたかったり。
「ラフストーリー」みたいな、「ああはいはい、三等さんそんなのよね」というのと並べられたのは、
オムニバスとしては意味があったかなと。
確かにそんなのよねってのは好きだけど、どうしてもまんねりになるし、色々やりたい。


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山下さんにとっては何とも大変な役だったと思う。
「カイゼル髭なんか生やしてるイメージで、かつては鬼と呼ばれていたが今はすっかり落ち着いているけど、でも本気出したら強いんだろうなーって感じで軍人っぽく喋って」
という、小学生みたいな注文の繰り返しだった。
山下さんは山下さんで、「銀河英雄伝説の〇〇みたいなのですか?」って聞いてくるし、
私は私で銀英伝をよく知らず、山下さんの説明を聞いて、「たぶんそんな感じです」と答えたら、次の稽古で「全然違う!すごく遠くなった!誰それ?」ってなったりした。
いい加減な意思の疎通は危険だなと思った。

最終的には山下さんなりのカイゼル髭軍人が出来てきて、
山下春輝という役者の愛嬌が滲み出ていた。
しかしまあ、照明があるとはいえ、換気が効いててのこの時期に、あれだけの汗をかくのはすごいなと思った。
山下さんは夏の着ぐるみバイトやったら、自分の汗で溺れるんじゃないだろうかと思う。

もともと縁フェスの際はたねさんと山下さんのコンビで読み合わせしていて、もともと旧知の仲だったので、違和感もなかったけど、
鳩ちゃんと山下さんという組み合わせは畑違い感がすごいなと最初思った。
ドラゴンフルーツ農家と、サツマイモ農家という異色な感じで、個人的にそれだけで面白かった。



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本多さんに関しては、色々内的な事情と、こちらで勝手に察した関係で。
この一本しか出てなかったし、
「もっとはっちゃけた役がよかったのでは?」という意見もあるのだけど、
私としてはこれがちょうどいいラインかなと思っている。
はっちゃけられる部分も多少ありつつ、ちゃんとエピソードや思いを伝える部分もありつつ、
そこのバランスを取れたらなと。
まあ結果的には、本ちゃんがやることではっちゃけたイメージの方が強い役になったのだけど、
出てきた途端、何もしてないのにみんなが笑うというのは、彼女自身のそれまでのキャラと、狙ってもできない独特のアンバランスさなので、
結局どう転んでもというか、それをどこに転がすかが、活かすカギになるんだなーと思った。
台本ありきではなく、本多ありきなのだ。

4月の超人予備校はそう考えると、そんなに心配していない。
ミツルギさんなら、きっと本多真理を私以上に面白く使えると思っているので、楽しみだったりする。
ちなみに襟元の丸いのは木山さんが作ってくれて、何だかいい感じにしっくり来てるので忘れてたけど、本来はパラボラ的なエリザベスカラーか、特大ポンデリングにあるはずだった。
ただ、パラボラにしたり大きくしてしまうと、誰も本ちゃんに近づけないから芝居がおかしなことになるし、そもそも袖から出られないだろということから、あのサイズになった。



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鳩ちゃんは、彗星マジックで一緒だったので、エンタメ的な部分では何となくわかっていたし、
もっと軍人口調でいいよってくらいしか言わなかった気がする。
ただ、山下さんとの二人のパートは、猫パンチひとつから非常に注文が多くて嫌になったんじゃないかなと思う。

とにかくうちでは普段やらない段取りが多いので、芝居的要素以外で時間が大量に取られる作品だった。
でもまあ、時間がとにかく足りないというだけで、稽古自体は毎回楽しかった。
鳩ちゃんにとっては前半と打って変わって、最後の木山さんとのシーンではもっとグルーヴ感出してこうぜというニュアンス的な演出が多く大変だったと思う。

手前の段取りは時間を割けば解決する問題だけど、
最後のシーンはそうでもないのでなかなかに大変だったし、
時間を割けば解決する問題でもないから、あまり時間を割かなかった。
ニュアンスとかシンパシーとかグルーヴ感とか、そういうものは難しい。
「出して!」と言われて出せるもんでもないし。

なので、二人には「丁寧にやって」と注文したり、
「セリフの間を詰めてみよう」と言ってみたり色々やった。
とりあえず「何かしっくりこないのよねー。全然違うのよねー」ってぼんやりした注文ばかりで、
二人からしたら何がどう気にいらないのだって日々だったと思う。


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このくだりは鼻につくという人もいるだろうし、ズルいという意見ももちろんだなと思う。
ページ数の都合もあったりで、
別れはゆっくりながら、シンプルにと思って書いた。
「寂しいよ」なんて、もう直球すぎるセリフなんだけど、
それゆえに木山さんには大変なセリフとなった。
「その言い方嫌だ……」ってダメの繰り返しで、
木山さんからしたら。その言い方が嫌だって話だったと思うし、
大いに頭を抱えていた。
感情的な部分が強くなるとダメだと言われ、
それをなくすとそれはそれでダメだと言われ、とにかくトライ&エラーの繰り返しだった。

あまりに頭を抱えてるもんで、
もう一旦トライ&エラーから離れて、放り出してみたら見えてくるものもあるんじゃない?
と言ったりもしたが、
巨人の星でエースをねらってアタック№1女優である木山さんは頑として聞かない。
本当に聞かない。
休みなよって言ってるのに聞かない。
風邪ひいて熱出てるのに学校行くタイプ。
苦くないと薬じゃない。
痛くないとマッサージじゃない。
出血しないとケガじゃない。
音符が読めないなら、自分で音符を作る。
パンがないなら、魚でパンを作る。
右の肺が止まったら、左の肺を差し出す。
それが木山梨菜という女優である。

二年前の「フレンチとマニュアル」という私との二人芝居のときも、根性根性ど根性だった。
そのときも一旦休みなよという私の優しさを振り払い、見えない鬼コーチと猛特訓していた。
天六の稽古場でひとり残して帰ったのを、今でも思い出す。

それでも毎回毎回根性で何とかしてきた人なので、今回も根性で何とかしようとするという頑固職人。
それでも木山さんなりに足して削いでを繰り返して、随分とニュアンスを摺り寄せてきた。
私もこの辺りならもういいだろうと思っていた。

そこからで初日迎えて、がらりと変わった。
鳩ちゃんと二人して変わった。
観てたわけではないけど、袖中で声を聴いてたらわかる。
あれれー? 
と思いながら、
そんなんだっけ? 
と思いながら。

そこはもう良い悪いではなく、好みの問題なんだけど、
二人が舞台上で一緒になって作り上げたのだから、
そこでお互いシンパシーを感じで、それをお客さんが拾ってるなら、
この段階になってまで野暮なダメは出すまいと思っていた。

そしたらその日の夜に木山さんから、
「君の思ってるものとは違うだろうけど、鳩ちゃんと二人芝居で本当に良かったなと思う。今の私にはこれが精いっぱい」
みたいなニュアンスのLINEが来ていた。
もう少し丁寧な長文だったし、全文載せてあげたいくらいに木山さんの思いがこもった内容だったけど、
すごく怒られるのでやめておく。
ちなみにそれに私が何て返したかというと、「返信不要です」って〆てあったので何も返せなかった。
演出としては、「わ、わかっててやってただとー!?」なところだけども、
一人の大人が、そこまで思いを詰めてやってんだから、そもそも何も言えない。

ただその木山さんの判断も正解だったんじゃないかなと思う。
私がいいと思うものよりも、そのときお客さんが良いと思うものが正解だと。
ちょっと湿っぽすぎやしませんかとはやはり思うけど、
その手前全部がしっかり出来てたんだから、ここで多少ウェットになっても誰も嫌わないんじゃないかなと。

必ずしも設計図に則った完成系が舞台に乗るわけではない。
でもそれも含めて、お客さんだけでなくこちらも楽しめるのがライブの愛おしいところかなと最近は思うようになった。



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カーテンコールに関しては、特に考えてなかったけども、
初めての全体通しした帰りに、有元さんが、
「MILKの最後は少し落ち込んじゃう」って言ってて、
そうだなー、これがラストの一本になるわけだしなーと考えた。

そこから色々ハッピーな感じになるようにしようかと考えてみたけども、
何だかどれもしっくり来ずで、
結局お話の最後は変わらないけど、
カーテンコールだけは一人と一匹が元気よく揃うような感じにしようと、
「以上、こんな感じのお芝居でしたー!ちゃんちゃん」
って感じになればなと。

台本を書き終わって、稽古の段階になって自分なりに思ったのは、
この最後のくだりは自分が悲しみに飲まれてしまわないように壊れてしまわないように、
作家の目いっぱいの自分の都合のいい幻想かなと思ったりした。
何より角田先生は、そう思うことで愛猫との別れを受け入れたんじゃないかなと私は思う。

購入するか、ディスカスでレンタルするかくらいしかないのですが、
角田先生の「任務十八年」を見ていただければ嬉しいなと思います。
角田先生のエピソードだけなら、インタビューとか混みで30分程度。
これ見てから、MILKという順番は最悪だし、やめてほしいけども逆ならいい。

ネコメンタリー 猫も、杓子も。 [DVD]

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以上、
これで振り返りもおしまい。
三等フランソワーズとしては今後の予定は白紙。
今後どうするかも白紙。
一旦休憩と思っています。
とりあえず私自身がもう少し作品作りを勉強しないとなと思う2020年でした。
もう今までのやり方では書けないし、色々枯渇してる。
ないものを何とかやりくりして出してる感じ。

なのでそう考えるとこの地獄のような公演も区切りとしては意味があったなと思うし、
流行り病も含めて、周辺の色々なこともそういう時期だと告げてるのかなとぼんやり思います。

震えるほどにしんどかったけど、楽しかった。
そんな公演でした。

以下写真。
MILKは動くから写真の数が多い……。
パラパラ漫画的にお楽しみください。
(撮影 松田ミネタカ)


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