November 28, 2005

たゆたふ。




シーツの波間。
気だるい体を少しだけ動かしてシーツを肩まで引き上げる。

ん……。

まだ眠い。

「そろそろ起きなくていいの?」

上から声が降ってくる。

……何時…?

「……時」

なら、まだ寝る……。

「待ってるんじゃないの?」

そうだけど……。

ゆっくりと体を起こす。
目の前には見慣れた顔。
「はい」
そう言ってカップを一つ差し出された。
「ありがと」
口を付ける。
かなり甘めのカフェオレ。
長い付き合いだから何も言わなくてもこういうトコに気付いてくれる。
コイツのこういうトコが、俺好きなんだよな……。
「しっかし、お前、相変わらず体力あるよな……」
流石3股経験者(笑)。
何で、俺の方は眠くて仕方なくてへばっちゃってるのに、そんな平然とした顔してるわけ?
「……彼とは、しないの?」
しれっと突込みが返って来た。
「アイツとはこんな無茶はしねぇよ」
「愛しちゃってるんだ」
「お前と同じくらいな」
「ふぅ〜ん、俺の方が付き合い長いのに…同じくらいなんだ」
あ、やべぇ……俺、地雷踏んだ?
「良いけどね、第一婦人には愛人は敵いません」
肩を竦める。
「比べる事なんか出来ないけどな」
「うん、知ってる……」
語尾を言い澱む。
多分その後に続いたのは「俺もだから……」。
今は亡き恋人と伴侶を。
同じレールの上に乗せること何か出来ない。
伏せた瞼に影が落ちた。


「もっかい、愛深めとくか」
沈黙を破るように口を開く。
「さっき疲れてるって言ったじゃん」
「そうだけど……お前の顔見てたら、そんな気になって来た」
俺の言葉に溜息一つ。
「……良いけど…どっちが上?」
少しだけ惑う。
「………んじゃ、じゃんけんって事で」
「分った」


勝負の結果は、教えません。





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kukusyu at 23:13|PermalinkComments(2)

「永遠の幸福」



アド二スの花言葉は「永遠の幸福」


子供が生まれた。
この世界では子供の名前は神様が決める。
神様がこの子につけた名前は「アドニス」

アドニスの花の様に、柔らかく…静かに咲いて欲しい。

ま、男の子なんだけれども(苦笑)。


出産の疲れでぐったりとしているくくぅーるを見て、少しだけ罪悪感を覚える。
そりゃ、半端なく辛かったと思うから。
でも、それ以上に愛しさが込み上げる。
ありがとう。
俺にはそれしか言えない。
抱き締めて、気休めにしかならないとは思うけれど、耳元で回復呪文を詠唱する。

「ありがと……なぁ、アドニス抱っこしてやってよ。一番に抱っこするって、約束だろ?」
くくぅーるの腕の中。
白い産着に包まれた小さな命。

「ああ……俺達にそっくりだな…」

目許も髪の色も……。

アドニス。

この子が、彼にその花言葉通り永遠の幸福を齎してくれますように。

そう思いながらその小さな命を腕に抱く。
壊れてしまいそうに小さく。
儚い命。
指で白い頬に触れると、小さな手が宙を泳いだ。
触れる。
小さな指が俺の人差し指を握り返した。
その力強さに、俺はこの小さな命が精一杯に生きようとしている事を感じる。

そう沢山の時間は一緒に居られないだろう。
それでも……。

俺に出来るだけ精一杯の、思い出を作ってやろう。


決してその思い出が悲しいものにならないように……。











アドニスのもう一つの花言葉は「悲しい思い出」



付き合って初めて喧嘩をした。
些細な事だったんだけど……。
泣きそうな顔を見て、胸が痛い。

大人気なかったのは俺だ。

喧嘩なんかしてる暇ないのにな……。


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kukusyu at 18:50|PermalinkComments(0)

November 27, 2005

去り逝く命、生まれ出る命



不安がないと言ったら嘘になる。
それでも俺は……。




明らかに挙動不審な伴侶を見たら、俺でなくとも理由を問いただしたくなると思う。
「なぁ、なんか俺に隠し事があるんじゃないか?」
「な、なんもないよ?…どうした?」
いや、お前その物言いが既に可笑しいから。
必死で誤魔化そうとするくくぅーるの目をじっと見詰る。
一瞬、言いよどんで意を決したようにくくぅーるが口を開いた。
「……あ、あの…さ……実は、俺…妊娠してるんだ」
「はぁ??」
俺は開いた口が塞がらない。
さぞかし間抜けな顔をしていた事だろうと思う。
「………」
「ごめん…勝手な事して。ククールSの負担になりたくないから…その…一応気をつけてはいたんだけど……」
申し訳なさそうにくくぅーるが頭を垂れる。
どうしてそんな事を思うのだろう。
「……」
「あの…俺は、ククールSとの子供が出来て凄く嬉しいんだ…」
抱きすくめる。
「ごめん…嬉しすぎて言葉が見つからない…」
どれだけ辛い選択だったのだろうと思う。
子供を産む事も、俺の事も。
不安で不安で仕方なかったんだと思う。
「凄く嬉しかった……でも、一人で抱え込むな」
何のための伴侶が分らないじゃないか。
抱き締めてあやす様に背中を叩いて、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
今の気持ち、不安、期待、未来と過去。
気が付いたらくくぅーるの頬を涙が伝っていた。
指先で掬って、伏せられた瞼に口付ける。

ありがとう。
この命が潰えるまで、ずっとお前を支えるよ。





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kukusyu at 17:30|PermalinkComments(0)

不変

エートと喧嘩した。

理由は勿論俺の結婚だ。
付き合いだって長いし、俺達はお互いの事を多分きっと、くくぅーるが俺の事を知っているよりも深くエートは俺の事を知ってると思う。

エートの事は好きだ。
くくぅーると同じくらい大事に思っている。
でも、俺が伴侶として選んだのは、くくぅーるだった。

正直に気持ちを伝えた。
エートだって伴侶を亡くしたばっかりで辛かったのだって知ってる。
支えてやらなければ思ったのも事実だ。
でも、落ち込んでるエートの隙に付け込むなんて事、俺には出来なかった。
素直にそう告げたら、エートが黙り込む。

「ごめんな……」

抱き締めて、一言呟いた。

でも、俺にはエートも必要で……。

俺達は今のままの関係だからきっと上手く行っていた気がする。
この関係を崩したくなかった。
きっとそう遠くない未来俺達には天寿という別れが待っている。
どっちが先かは分らないけれど。
それでも俺はエートを失う事なんて出来ない。







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kukusyu at 12:30|PermalinkComments(0)

……僕は君の腕の中で最後の恋を知る。

それは不思議な夜だった。

何時も通りくくぅーるを送り届けて、帰宅する。
玄関を開けて、真っ赤なソファーに身を投げ出した。
そのまままどろみそうになる。
ヤバイ、風呂入ってから寝なきゃ……。
重い瞼を抉じ開けてバスルームに向かおうとしたその時だった。

ピンポーン。
チャイムが鳴る。
こんな遅い時間に誰だ?
チェーンを外して、ドアを開ける(警戒心を持て俺・笑)
目の前に居たのは、さっき別れたばかりのくくぅーる。
しかもその格好……。
「な…くくぅーる??」
真っ白なウエディングドレス姿。
吃驚して二の句が告げないで居る俺を捲くし立てる様にくくぅーるは続ける。
「ククールS、俺と結婚して!!俺、アンタが好き…いや、愛してるから!アンタの最期、きっちり見送りたいんだ!」
必死だった。
まだ少しだけ幼さの残る顔が少しだけ潤んでいるのが分かったから。
ゆっくりと頭を撫でる。
「俺で良いのか」
「あぁ」
「後悔しないんだな……」
俺に残された時間が後僅かだとしても。
「しない」
「分った……」
くくぅーるのドレスと同じ色の手袋を外して、右手に嵌められたシルバーのリングを左手の薬指に嵌め直す。
それから自分の両手を差し出す。
同じようにして欲しいという意思を込めて。
ぎこちない動作でくくぅーるは俺と同じようにすると、肩の力が抜けたのかへなへなとその場に崩れ落ちた。
目線を合わせるべく俺も玄関先にしゃがみ込む。
「結婚しよう。一緒に居られる時間はそう長くないかもしれないけれど、沢山思い出を作ろう」
手を伸ばして抱き締める。
戸惑いがちに伸ばされた腕が俺の背中を掴むのをとても愛おしく思った。


「って言うかさ……ここまでその格好で来たのか?」
「……」
無言で頷く。
ちょっと想像してみる。
「く…ふはははは…」
やばい、笑えて来た……。
「何だよ……」
「いや、だってお前…その格好で、ここまでって……」
一体何人の人に見られたかは知らないが、必死の形相でウエディングドレスの攻って結構…いや、これ以上はやめておこう…。
「宜しく、くくぅーる……それともハニーって呼ばれたい?」
俺の言葉に火を吹いたように真っ赤になったくくぅーるに口付けを一つ落とした。








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kukusyu at 10:00|PermalinkComments(0)

November 26, 2005

明日もし……、


ハロウィンアイテムをこのまま処分するには忍びなくて全部纏めてくくぅーるに贈る。
そんなに深い意味は無かった。
このアイテムだって頂き物だし……。
でも、折角だしこのまま一つくらい残しておいても罰は当たらないんじゃないかってそう思って。

もう一つ。
この前ペットの所為で部屋狭いって言ってたからな……。
俺の住んでる城だけど、もう直ぐ要らなくなるし、荷物と一緒に紙切れを一枚。
以前、約束してて人に贈ったことがあるけれど、また贈る事になるとは思わなかったな。


「ハロウィン限定アイテムは後世に残したかったので贈らせてくれ。
後城なんだけど……ペットの所為で部屋が狭いって言ってたから、贈るよ。
俺の住んでた城で悪いけどな……。
気に入らなかったら誰かに譲るか捨てるか戻すかしてくれて構わないから。」

羊皮紙に走り書いて、ガムテープで封をする。
住所を記入して送り出した。

ぱんぱんッ。
手を叩いて、部屋の中を見渡す。
大分片付いたかな。

何時でも旅立てるように少しずつだけどここを整理しておかないと……。
次はどんな住人が住むんだろう。

そんな事を思いながらベランダの方を見る。

随分と高い所に来たな。
最初の頃は怖くてベランダにも出れなかったっけ……。
って言うか今も出れないけどな……。
懐かしいな。
随分と困らせたっけ……。


そんな事を思いながら瞳を伏せる。

ピンポーン。

ドアのベルが鳴る。
あぁ〜、はいはい今行きますよ〜〜、ってな。

受け取ったのは小さな小箱。

包みを解いて蓋を開ける。
中身は「ゴールドのリング」

贈り主はくくぅーる。
え?って言うか良いのかよ……。
アイツ、まだこの世界で揃えるもんいっぱいあるのにこんな所で無駄遣いして……。
かさッ。
白い小さな紙が覗く。
メッセージカード。
添えられた文字がアイツらしくてちょっと笑った。

「ククールSとこういう風になれただけでも、俺は十分幸せだから…あんたが逝くまでは傍にいさせてよ。」


ふと、思ってカードの裏を返した。

「本音を言えば、プロポーズしたい…けどささすがに俺そこまでまだ甲斐性ないし…重荷になりたくないってことで、指輪だけ贈らせて?迷惑なら勿論、売り払ってくれて構わないし。」


子供だと思ってたんだけどな……。
右手の薬指に嵌める。
サイズぴったり…何時の間に調べたんだろう……そう思って、あ、サイズ同じか……なんて事に気付く。

子供だと……そう思ってたんだけどな……。

答えを出そう。
俺に残された時間はそう長くはないから。
右手の指のリングに一つ口付けを落として。



答えを。






この命が尽きることがなければ、
結婚しようか……。

シルバーのリングを沿えて。


俺が出した答えはこれだった。
この一言に全てを託す。




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kukusyu at 23:59|PermalinkComments(0)

多分きっと。



今日、迎えが来なくても、もう口にすることはないかもしれない。


俺と一緒に居てくれて本当にありがとう。


正直に言うな。

占いで出た、運命の人は……。

エート、お前だったよ……。

お前に励まされて、支えられて、俺は今日まで生きて来る事が出来た。

ありがとう。

君に逢えて、俺は幸せでした。

だからもう少しだけ、エートの時間を俺に下さい。


運命何て信じる柄じゃねぇけど……。
ある意味本当に、
エートは俺の運命の人、だったのかもな……。








kukusyu at 22:20|PermalinkComments(0)

泣かない。


あの人の為にしか泣かないとそう決めたのに。
どうしてこう……。
ありがとう。

俺、お前達と恋人になれて本当に良かった……。


本当にありがとう……。

最期のその瞬間迄、2人の事を想うから。


俺の事、宜しくな♪続きを読む

kukusyu at 19:00|PermalinkComments(0)

渇望



誰かの為に泣ける人が羨ましかった。

俺は、あの人の為にしか、
あの人を想う事でしか泣けないから……。


誰かの為に、泣ける人が羨ましかった……。








でも、少しで良いから気付いて。

俺の涙さえも、全て、
貴方のものだと言う事に。


届かないと分っているから―――――。









kukusyu at 05:16|PermalinkComments(0)

最後の最後に、

恋の天使が舞い降りた(笑)。


相手は0歳児……。
誰から見ても何処から見ても犯罪的……。
迷ったよ。
でも、俺には彼の告白を断る事は出来なかったんだ。


そいつは酷く懐かしい感じがした。
何故だかは分らないけれど、差し出された手を俺には拒む事なんて出来なかった。


それに、少しだけ似てたんだ……。
駄目だ、まだ引きずってるのかな俺……。


初めてのデートはカジノ。
ツいてなかったけど、俺達はそれなりに楽しんだ。
今度は勝とうな!そう言って頭を撫でる。


次に連れ出されたのはラパンハウス。
無邪気にキラーパンサーに餌をやる姿を見てまだ子供なんだってそう思って少しだけ笑ったらちょっとだけ不機嫌になる。
その姿が、不意にあの日の光景に重なった。

やだな、忘れたつもりだったのに……。

初めてのデートは此処だった。
同じように餌をやって、2人で笑い合って。

気付かず涙が零れた。
それが彼の手の甲に落ちる。
「どうかした?」
「いや」
その指が頬に触れる。
「じゃぁ、何で泣いてるんだよ……」
親指が瞼をなぞって、
「年を取ると涙脆くなるんだよ」
言い終わる前に唇を塞がれた。
「……俺じゃ、駄目?」
自分と同じアイスブルーの瞳が真っ直ぐに俺を見詰る。
「アンタが誰の事を想ってるのかは知らない」
「……」
「でも、俺を見ながら他の誰かを想うのは嫌だ」
当然だ。
「真っ直ぐに俺を見て」
強い視線。
「代わりなんかじゃない。お前を選んだのは俺の意思だ」
他の誰でもない。
「俺は、お前を…お前だから選んだんだよ」
今度は俺の方から口付ける。
誰かの代わりじゃなく、くくぅーるだから……。


デートは盛り上がり、愛が深まりました










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kukusyu at 04:00|PermalinkComments(0)