「この後、別件があるのですが、そちらには出頭されないのですか?」
「えっ?」
「別件の過払金の裁判でクラヴィスが被告になっているのですが、そちらには支配人は出頭しないのですか?」
「・・・それは・・・はい・・・この件だけで・・・」

 某簡易裁判所の法廷。
 貸金請求の裁判に出てきたクラヴィスの支配人に対し、裁判官が別件の過払金返還請求の裁判には出頭しないのかと質問したところ、大変歯切れの悪い答えが返ってきた。
 クラヴィスは、裁判で負けても、過払金を払わないことで有名。私が担当している事件でも、すでに勝訴判決が確定しているのに回収できていない案件がかなりある。
 その一方で、貸金の回収だけはちゃっかり励んでいるのだから、けしからん会社である。
 貸金の裁判が終わって、そそくさと法廷を出ていく支配人をつかまえて、「なぜ過払金を払わないのか」と詰め寄ろうと思っていたが、次の事件が私の担当事件で、廷吏に「中村弁護士さん」と呼ばれたので、追いかけるのをあきらめた。

 最近この手の会社が増えている。
 サラリーマン支配人に文句を言う気にもならないが、経営者は未払いの過払金をどうするのか、債権者にきちんと説明すべきである。