6月の読書メーター
読んだ本の数:65
読んだページ数:9161
ナイス数:1692
雷神とリーマン四【電子限定かきおろしマンガ付】 (クロフネCOMICS くろふねピクシブシリーズ)の感想
大村は、「性的指向がゲイである」ということよりも、「ゲイであることで近代家族規範に従うことができない」ということの方に強く抑圧を感じているキャラとして描かれており、作品としての方向性はほのぼの系でありながらも、近代家族イデオロギーに対する拒否感が読み取れます。少々ひっかかるのは、「海外で代理母をお願いするって方法もある」という大村のセリフです。「子供を産むのは好きだけど育てるのは嫌い」という女性がいるのならその方法はアリとは思いますが、大抵は、経済的理由で身体を酷使することを余儀なくされているのでは…。
読了日:06月30日 著者:RENA
KAPPEI 5 (ヤングアニマルコミックス)の感想
英雄は、あまりにも帝王の風格がありすぎるゆえに、一般人の防御本能のメーターを瞬時に振りきらせてしまう男なのに、山瀬だけは全く動じないということは、山瀬の“天然ぶり”は、性格的なものというよりも、本能が壊れているということなのではないでしょうか…? 山瀬の死角で繰り広げられる勝平と英雄の顔芸が、ある意味、息がピッタリで、「この二人、お笑い芸人としてなら、いいコンビになれるのでは…」と思ってしまいました。
読了日:06月30日 著者:若杉公徳
鋼の錬金術師 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)の感想
「機械の身体を元に戻す方法を求めて二人で旅をする」というシチュエーションなので、『銀河鉄道999』の逆パターンと言えます。エルリック兄弟が機械の身体になってしまった背景は重いですが、作風はカラッと明るいです。
読了日:06月30日 著者:荒川弘
悪夢障害 (幻冬舎新書)の感想
悪夢には心身に悪い影響しかないと思っていたので、プラスとマイナスの両面があるという記述には驚きましました。うつ病のサインの可能性がある一方で、日中に受けたストレスの処理をするという癒し効果の面もあるのだそうで、メンタルヘルスの一環としての夢の研究(スピリチュアル寄りの話ではなく)の重要性がよく分かりました。悪夢を見て叫ぶ場合はパーキンソン病のサインの場合があるとのことなので、高齢者をケアする立場の人も、目を通しておいて損はない本です。
読了日:06月29日 著者:西多 昌規
曽祢まさこ短編集 王さまはネコがきらい 完全版の感想
『王さまはネコがきらい』『眠る、眠れば、眠り姫』『きゃっ♡白雪王子さま』『忘れ髪の姫君』が収録されています。あとがきによると、『王さまはネコがきらい』は、「今(あとがきが書かれたのは2000年8月)から十数年前、東京都がネコの放し飼いを禁止する条例を作ろうとして、愛猫家の猛反対にあい挫折するという事件」があったことをきっかけにして頭に浮かんだ話なのだそうで、だとしたら、微妙に時事ネタ(1980年代の)が含まれているということになります。
読了日:06月29日 著者:曽祢 まさこ
もっと知りたい リクガメのこと 幸せに暮らす 飼い方・育て方がわかる本 コツがわかる本の感想
リクガメを飼う気はないので、興味本位だけで読んだのですが、リクガメを散歩させている写真を見たら、「散歩だけならやってみたいかも…」と思いました。…とはいえ、「甲羅が迷彩になっているので見失いやすい」「カラスやネコなどに襲われないようにする」「薬剤が散布されていたり、毒素を含む野草が生えている場所は避ける」などの注意点があるので、かなり気を遣うことになりますが…。
読了日:06月29日 著者:
海にしずんだ伝説 (ゴマブックス×ナンバーナイン)の感想
『海にしずんだ伝説』『赤いわな』『12月のエルメイン』が収録されています。『海に~』は、表紙の雰囲気からてっきりムー大陸かアトランティス大陸の話かと思ったら、フランスのドアルヌネのイサ(イス)伝説がモチーフで、シェイクスピアの悲劇に近い雰囲気の物語でした。『赤いわな』は、「夫婦間の愛」と「子供への愛」が「人身売買」という犯罪に向かってしまう「罠」を描いています。『12月~』は、遺伝病の保因者への差別がテーマとなっていますが、「差別の問題」と「母と娘の問題」が一体化している構成はちょっとどうかと思いました。
読了日:06月28日 著者:曽祢まさこ
錬命術 岸大武郎SF短編集の感想
少年ジャンプで連載されていた『恐竜大紀行』の続編にあたる『大恐竜記』はとても面白かったのですが、表題作の『錬命術』と同時収録の『ジュリアの法則』はパターナリズムと男の都合丸出しのジェンダー観が酷く、山本弘系統の作家にありがちな「理系を自負している日本人男性の危うさ」がモロに出ていて不快でした。『錬命術』は「子供を諭すよりも、まずは大人の方こそ反省しなければならない」という視点が皆無ですし、『ジュリアの法則』の2話目は女子高生にオッサンの代弁をさせ、尚且つオッサンのプライドに配慮もさせているのが最低です。
読了日:06月28日 著者:岸 大武郎
悪魔の十三夜 完全版 (ゴマブックス×ナンバーナイン)の感想
吸血鬼とゾンビの中間のような存在と、「切り裂きジャック」が登場するゴシック・ホラーですが、ただ怖いだけでなく、少年と少女のほろ苦いラブストーリー、秘密を共有する三人の女たち(主人公・主人公の母親・使用人)の奇妙な連帯感、「切り裂きジャック」を支配下に置く主人公のしたたかさなども見所です。
読了日:06月28日 著者:曽祢まさこ
七日間の婚約者 (ハーレクインコミックス)の感想
「愛する女性をセフレ扱いすること」が「結婚を望ない自分にできる精一杯の誠意」ということになってしまっているクリストの歪んだ価値観がめちゃくちゃ痛いのですが、そんなクリストに対して「首を絞めてやりたい」「無慈悲すぎるわ!」「わたしは悪魔と契約してしまったの?」と思うほどショックを受けたナタリーがすぐに「いいえ彼はただはっきりさせただけよ」と納得して「折り合あいをつけることを学ばなければ」と自分に言い聞かせてしまうのは、あまりにも「男に都合のよい物分かりの良さ」で、読んでいてモヤモヤしてしまいました。
読了日:06月27日 著者:楠 桂,アン・マカリスター
シークの誘い (ハーレクインコミックス)の感想
「雪の降るロンドン」から物語がスタートし、「熱砂の国」で終わるという舞台設定はメリハリがあって良かったものの、アミールにいたと思われる政略結婚の相手がどうなったのか分からないのがモヤモヤします。アミールがリディアとの交際を三日間限定にしていた理由は「皇太子という立場だから」であり、「その立場なら政略結婚をするのが当然」とする価値観をリディアとアミールが共有していたから「三日間限定の交際」をしていたはずで、実際、テレビで「プリンスは近々結婚のために帰国」と報じられているシーンもあるのですが…。
読了日:06月27日 著者:JET,ケイト・ウォーカー
まんがグリム童話 金瓶梅 (49)の感想
巧二児の召使として周家にやってきた恵衣(二児によってつけられた新たな名前は参児)は、働きぶりは真面目ですが、春梅に対して腹に一物あるようなところがあり、何かトラブルを起こしそうな予感が…。春梅の召使の双葉には、かなりの観察力や勘の鋭さがあり、かつての西門家の中での春梅に近い存在感を帯びてきました。
読了日:06月27日 著者:竹崎真実
自然派インド料理ナタラジレシピブックの感想
十数年前、銀座に行った時、なんとなく入ったインドカレー店でランチブッフェを食べたら、お米を使った甘いデザートがとてもおいしかったのですが、この本に載っている「お米の豆乳キール」がどうやらそれっぽい感じがするので、もしかしたらその時に入ったお店はナタラジ銀座店だったのかも…と思い、公式サイトを見てみたら、銀座店は2022年3月22日に閉店したとのお知らせが…。コロナのせいなのかと思ったら、「ビルの建て替えに伴い退去」とのことで、他の店舗は営業していました。(ただし大阪梅田店は2015年に閉店しています。)
読了日:06月26日 著者:Nataraj(ナタラジ)
「死刑になりたくて、他人を殺しました」 無差別殺傷犯の論理の感想
タイトルは「ルポルタージュ」+「論説」という印象を与えるのに、やっていることは「犯罪者(またはその家族)に関わる活動をしている人(ただし第五章に出てくる学生団体は犯罪とは関係ありません)のインタビュー」で、その割には著者がンタビュアーに徹しないで自分の見解をぐいぐいねじ込んでくる構成なので、ジャーナリスティックな姿勢のなさに読んでいてモヤモヤしました。あとがきによると、著者は「サブカルチャー論」と「自分探し」の延長で犯罪者の心理に興味を持っているタイプのライターなので、それが悪い方向に出てしまっています。
読了日:06月25日 著者:インベカヲリ★
雷神とリーマン三【電子限定かきおろし付】 (クロフネCOMICS くろふねピクシブシリーズ)の感想
「勉強もスポーツもできる優秀な兄」に対する大村のコンプレックスは「悔しさ」としてはっきりと表現されていますが、「結婚して子供を作って親に孫の顔を見せてあげる親孝行ぶり」に対するコンプレックスは「表面的な笑顔」でしか表現されておらず、このシーンに、大村の「諦め」と「罪悪感」が滲み出ています。姪っ子のことは本心から可愛いと感じているので、大村はおそらくは子供好きな男なのですが、「自分の子供を誰かに産ませること」には全くこだわっておらず、ただ純粋に「身近な子供の成長」を楽しみにしていることが伺えます。
読了日:06月24日 著者:RENA
石井あゆみ短編集 (ゲッサン少年サンデーコミックス)の感想
『シローくんとつぐみちゃん』『大和と童子』『佐助君の憂鬱』『なぞの少年』(初出は2005~2007年の「少年サンデー超増刊」)『妙林寺の注くん』『悩める単細胞』(未発表作品)が収録されています。男の子のキャラのアホっぽさが、「小学館系の古き良き少年漫画」という感じ(創刊まもない頃のコロコロとか)なのですが、絵柄がサブカル系のヘタウマ(良い意味で)なので、「子供向けとも青年誌向けともいえない」という、ニッチな作風です。内容は全年齢向けですが、変に「いい話」でまとめていないので、道徳漫画的要素はゼロです。
読了日:06月24日 著者:石井 あゆみ
まんがグリム童話 金瓶梅 (48)の感想
ネグレクト状態だったせいで自分の意思というものを持ってこなかった美々が、猫を助けるために木に登るようになるまでアクティブになり、同じ動物を愛する者が相手であればコミュニケーションを取れるようになるまで成長していることに、ホッとしました。…とはいえ、母親の巧二児が、美々のことを優先して物事を考えることができないのは、相変わらずですが…。
読了日:06月24日 著者:竹崎真実
王家の紋章 3 (プリンセス・コミックス)の感想
“現代”に戻ったキャロルが、再び3000年前にタイムスリップすることになってしまったのは、アイシスが現れて「そなたを殺して死体を古代へ連れていく」と言ってキャロルの首を締めようとした拍子にキャロルを湖に落としてしまったせいなのに、アイシスの口から「今度はわたくしが古代へ引き込んだのではない」というセリフが…。21世紀のアイシス(ミイラから甦ったアイシス)と3000年前のアイシス(現役時代のアイシス)との間に明らかに解離が生じており、アイシスは自分の知らない「未知の力」が動いているのではないかと推測します。
読了日:06月24日 著者:細川智栄子あんど芙~みん
王家の紋章 2 (プリンセス・コミックス)の感想
この作品を読んでいて一番気になるのは、現代パートの「ミイラから甦ったアイシス」の意識と、古代パート(3000年前)の「現役時代のアイシス」の意識が完全にシンクロしていることです。「死後のアイシス」は、メンフィスが若くして亡くなったことを当然知っていますが、「生前のアイシス」は知らないわけで、この「記憶や経験の差」が、アイシスの中でどう整合性が取られているのか、いまいちよく分かりません。キャロルが「メンフィスは18歳くらいで死ぬ」という「本来の歴史」を忘れているように見えるのも気になりますが…。
読了日:06月23日 著者:細川智栄子あんど芙~みん
王家の紋章 1 (プリンセス・コミックス)の感想
秋田文庫版を数年前に読んでいますが、プリンセスコミックス版を読むのは約40年ぶりです。序盤はホラー要素がかなり強く、メンフィスにツタンカーメンのイメージがかなり投影されています。キャロルが3000年前のエジプトにタイムスリップしてしまう現象は、現代に甦ったアイシスによる「呪い」のせいなのですが、その「呪い」の結果、キャロルとメンフィスが出会ってしまい、本来の「姉弟ただ二人で助け合って生きた」という歴史が改変されてしまうとは、皮肉な話です。元の歴史ではアイシスはラガシュ王と結婚していないということですね…。
読了日:06月23日 著者:細川智栄子あんど芙~みん
僕たちがやりました(9) (ヤングマガジンコミックス)の感想
テレビドラマ版を観た後に原作を読んで正解だったなぁ…と感じた最終巻でした。テレビドラマ版は「罪と罰」というテーマの物語として相応しいラストで締めくくられていましたが、原作は「トビオが心の中で蓋をしていたモノ」の“真の正体”が明かされる形でラストを迎えているので、「罪と罰」というテーマを追求するのではなく、サイコホラー的な演出でオチを迎える方向性になっています。トビオの「死ねばいいだけの話だろ」というセリフの「死ねばいい」の部分は、自分に向けているだけではなく、矢羽高生に向けた本音でもある…と解釈できます。
読了日:06月22日 著者:金城宗幸,荒木光
僕たちがやりました(8) (ヤングマガジンコミックス)の感想
原作では、トビオたちが“公開自首”のために野音を乗っ取った時に行われていたのは、フリーセックス啓蒙イベントですが、テレビドラマ版だとエンディングテーマを歌っている DISH// のライブというメタ的な演出になっていたので、この部分に関しては、テレビドラマ版の方が断然皮肉が効いていました。ちなみに、玲夢を演じていたのは元スーパー戦隊の俳優さんで、ヤングを演じていたのは元仮面ライダーの俳優さんなので、特撮ファンにとっては、ものすごくインパクトのあるキャスティングでした。
読了日:06月22日 著者:金城宗幸,荒木光
僕たちがやりました(7) (ヤングマガジンコミックス)の感想
バラバラだったトビオ・伊佐美・マル・パイセンは、それぞれに絶望を抱えながら、「自首をする決意」で一致団結することに…。トビオは「自由が何かとかはまだよくわかんないけど」と前置きしながらも「自由が自分の幸せなんだと思う」と自分なりの結論を出しており、幸せとは何かという「哲学的な問い」と、市橋を自殺させてしまったことによる「良心の痛み」の両方と向き合う姿勢を持ち始めます。
読了日:06月22日 著者:金城宗幸,荒木光
僕たちがやりました(6) (ヤングマガジンコミックス)の感想
トビオは飛び降り自殺に失敗して「新しい俺」を始め、伊佐美は罪悪感が原因のEDを克服するために「虚言のお遍路さん」(鎮魂のためではなくチ●コのために弔問する)となり、マルは自分を「被害者の立場」だと思うことで「罪悪感を感じない自分=罪悪感に勝った強者」と自認して優越感に浸り、パイセンは「自分は親から愛されているのか」を確認したくて父親に会おうとし、前巻の飯室の言葉は四者四様に影響を及ぼします。この巻のラストの市橋の行動を知っていると、病院の屋上での「俺さぁ自信ない奴嫌いなんだよねー」という語りが切ないです。
読了日:06月21日 著者:金城宗幸,荒木光
僕たちがやりました(5) (ヤングマガジンコミックス)の感想
「爆破事件で10人殺した罪」をパイセンの父親(風俗業界の首領・輪島宗十郎)が金の力で揉み消したことで、元々の罪(傷害致死罪)に「無関係の人間に罪を着せた罪」が上乗せされたことを知ったトビオたちは、「真実は闇の中」であることをいいことに開き直ろうとしますが、何もかも知っている警察官の飯室が現れ、「幸せを感じるたびに人の命を奪ったことを思い出せ」という言葉を投げ掛けたことにより、少なくともトビオにはその言葉は呪いのように作用します。(伊佐美は気にしていないように見えますし、マルはますます増長していますが…。)
読了日:06月21日 著者:金城宗幸,荒木光
僕たちがやりました(4) (ヤングマガジンコミックス)の感想
今宵と蓮子は、気軽にセックスに応じるか応じないかでは大きな違いがありますが、困っていたり弱っていたりする人を見過ごしてはおけないところは共通しており、こういう「女性キャラの優しさ」は男性向け漫画では「母性」として描かれがちなのですが、『僕たちがやりました』では「人間として備わっている良心」として描かれています。今宵と蓮子の行動原理は「良心」であり、ヤングの行動原理は「哲学」ですが、トビオや市橋に代表される男子高校生キャラたち(と、パイセン)のこれまでの行動原理には、「良心」も「哲学」も欠落しています。
読了日:06月21日 著者:金城宗幸,荒木光
僕たちがやりました(3) (ヤングマガジンコミックス)の感想
伊佐美とマルは性欲を発散すればするほど馬鹿っぽくなっていき、トビオは性欲の発散が不発に終わるたびに賢者モードに突入しているので、この作品では「射精→賢者モード」という”お約束“は踏襲されていません。伊佐美とマルは「性欲」と「生存欲求」がストレートに結び付いているのに比べ、トビオは「恐怖心」と「生存欲求」の結び付きが強いらしく、咄嗟にアパートの二階から飛び降りるシーンに、それがよく現れています
読了日:06月20日 著者:金城宗幸,荒木光
母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記の感想
「苦労話」で終始していない体験記です。介護問題を「家庭の問題」ではなく「社会の問題」として解決しなければならない理由がよく分かる内容となっており、著者のジャーナリスティックな視点がとても活かされています。介護問題に付随するジェンダー問題に切り込む視点はないので、政治と行政が「介護=社会的な事業」と理解せずに「家族の絆」を持ち出してくる理由に女性差別があることや、「認知症が原因で生じていたコミュニケーションの齟齬」が「嫁と姑の対立=女の性根の問題」とみなされてきたことへの問題提起がないのが少々残念でした。
読了日:06月18日 著者:松浦 晋也
僕たちがやりました(2) (ヤングマガジンコミックス)の感想
ノリでやってしまった悪戯が大惨事を引き起こして死傷者を出してしまったという「予想外の結果」に対する混乱に加え、パイセンが持ち出してきた大金に対する混乱や、恋の駆け引きに対する混乱(これはトビオのみ)もあり、登場人物たちの迷走が痛々しいです。テレビドラマ版は、Mrs. GREEN APPLE と DISH// の主題歌のポップさと、役者さん達のテンションの高い演技の相乗効果で、「青春グラフィティ」的な要素が強めに出ていたのですが、原作だと「これも青春の一ページ」という感じはあまりありません。
読了日:06月17日 著者:金城宗幸,荒木光
失われゆく娯楽の図鑑の感想
表紙とタイトルの印象から、てっきり、竹馬とかケイドロとかの「子供の遊び文化」をテーマにした本かと思ったのですが、「大人目線で過去を振り返った時に刺激的と感じる娯楽」をテーマにしているので、ビニ本とかダイヤルQ2とかノーパン喫茶などのエロ方面のネタが多く含まれています。「図鑑」と銘打たれていますが、ライターの「自分語り」の部分がかなりあり、ライターの4人(久保田龍雄氏・小川隆行氏・浅羽晃氏・後藤豊氏)がそれぞれ「私」という一人称を「共有」しているように感じてしまう構成には違和感を感じてしまいます。
読了日:06月17日 著者:
とりさんが教えてくれる 誰でもわかるハワイ語の本の感想
「ハワイアンソングの歌詞を理解できるように」というコンセプトの本なので、旅行・受験・ビジネスなどを目的とした外国語の本とは違った雰囲気なのが、とても面白かったです。
読了日:06月17日 著者:鳥山親雄
僕たちがやりました(1) (ヤングマガジンコミックス)の感想
先にテレビドラマ版の方を視聴していたので、原作を読んで、テレビドラマ版の再現度の高さを確認できました。特に、今野浩喜氏(元キングオブコメディ)の演じるパイセンがあまりにも原作通りなので、「元々今野氏をモデルにしたキャラだったのでは!?」と思うほどです。違う部分として気付いた点は、ドラマ版にはサンシャイン池崎氏の「ジャスティス!」のネタがあったことと、女性教員が重要キャラとして出ていたことと、爆弾を作るシーンがあったことです。(原作だと、爆弾作りの過程は省かれていて、完成した状態で出てきます。)
読了日:06月16日 著者:金城宗幸,荒木光
女帝の手記 5巻の感想
藤原仲麻呂への愛をすっかり失ったとはいえ、殺したいと思うほどの恨みがあるわけではなく、失脚させることができれば充分だったのに、「仲麻呂派」vs「反・仲麻呂派」の戦争(恵美押勝の乱)になってしまう流れには、政治に翻弄され続ける阿倍の人生の悲劇性が特に色濃く表れていますが、討ち取られた仲麻呂の首の検分を「わたしが命令をくだした結果だから」と自ら行うシーンには、阿倍の「覚悟」が強く感じられ、阿倍が理想としていた「天皇としてのマインドセット」が、ここでようやく確立したと言えます。
読了日:06月16日 著者:里中 満智子
女帝の手記 4巻の感想
藤原仲麻呂の息がかかった大炊王が天皇の座に就いたことで、阿倍は仲麻呂から利用されていたという現実を直視せざるを得なくなり、更に、一方的に親近感を持ったり同情したりしていた井上内親王が出産したことを知って「嫉妬」と「自己憐憫」と「孤独」に打ちのめさることになり、病床に臥してしまいますが、道鏡の「言葉」によって「生きること」に前向きになります。宮子の心の病が玄昉によって回復したのも、ひょっとしたらこんな感じだったのかも…と想像しました。(描写的には、「言葉」ではなく「法力」で回復したことになっていますが。)
読了日:06月15日 著者:里中 満智子
新装版 範馬刃牙 2 (少年チャンピオン・コミックス エクストラ)の感想
刃牙はアリゾナ州立刑務所に入りたくてわざと犯罪っぽい行為をしましたが、アイアン・マイケルの場合は、好きで刑務所に入ったわけではなく、ガチで犯罪を犯したから…? 一体何をしでかしてしまったのでしょうか…。巻末に収録されている週刊少年チャンピオン連載時の「巻末目次コメント」(2006年17号~32号)に出てくる「車田先輩」とは、車田正美先生のことでしょうか?、【車田先輩、ゼヒ俺と対立を。(24号)】【車田先輩、あなたのその椅子。俺も座りたい。(30号)】
読了日:06月15日 著者:板垣恵介
ハピネス (IKKI COMICS)の感想
『嬲られ踏まれそして咲くのは激情の花』『ロリータ7号』『あくまのうた』『もしも』『ハピネス』『雲のへや』『インディゴエレジィ』『アングラ★ドール』が収録されています。『あくまのうた』と『もしも』は2人の少女の友情が描かれていますが、それ以外は男女の恋愛観の「越えられない壁」が描かれています。(ただし『インディゴエレジィ』は2人の少年の友情もテーマに含んでいます。)女側は「嬉しさ」や「幸福感」を求める傾向にあるのに対し、男側は「快・不快」を求める傾向にあり、この違いが男女の気持ちのすれ違いに繋がっています。
読了日:06月14日 著者:古屋 兎丸
女帝の手記 3巻の感想
遷都と大仏建立くらいしか自分の意思というものを強く主張してこなかった聖武天皇が退位し、ついに阿倍が天皇に即位します。皇太子時代に唯一の心許せる存在だった吉備真備が左遷されてしまったことに全く危機感を感じず、真備を左遷させた張本人である藤原仲麻呂との恋愛に現を抜かす様子には、真備によって気付かされた「自己研鑽の喜び」はすっかり失われたかのように見えますが、道鏡との哲学的な会話(「救いとは何か?」「人は何のために生まれてきたのか?」)によって、道鏡が真備に変わる「師」となることが匂わされています。
読了日:06月14日 著者:里中 満智子
ショパン 2021年 4月号 [雑誌]の感想
『JAPAN in 2021─邦人作曲家特集─』が面白かったです。インタビューが載っている作曲家は植松伸夫・井川憲次・Ken Arai・椎名豪・澁江夏奈、劇伴音楽愛好家としてインタビューに応じているのはAnimenz(ピアノソロアレンジャー/スタインウェイアーティスト)です。
読了日:06月14日 著者:ショパン編集部
女帝の手記 2巻の感想
阿倍内親王が女性の身で立太子したのは、安積親王を皇太子にしないための苦肉の策ですが、不思議なのは、なぜ阿倍内親王と安積親王を結婚させるという選択肢を検討しないのかということです。この2人の年齢差程度なら、阿倍内親王が年上であるのはさほど問題ではないと思うのですが…。安積親王が天皇に即位すれば、自動的に阿倍内親王は皇后になるわけで、外戚として藤原家は充分に権力を発揮できたはずですが、よほど「完全に藤原家の言いなりになる天皇」にこだわった結果なのか、それとも、「初の女性皇太子」の前例作りが大事だったのか…。
読了日:06月13日 著者:里中 満智子
楳図かずおこわい本 (怨念) (楳図かずお恐怖文庫 (9))の感想
『谷間のユリ』(初出は1972年「女性セブン」)、『ねむり少女』(1965年東邦出版刊)、『木の肌花よめ』(1966年「別冊少女フレンド」)、『恐怖人間』(1963年「残酷物語」)が収録されています。『谷間のユリ』と『木の肌花よめ』はルッキズムをテーマにした作品です。『ねむり少女』は、もしかしたらナルコレプシーから着想を得て描かれた作品でしょうか? 『恐怖人間』は『フランケンシュタイン』から着想を得ているのが明らかですが、ラスト2ページをどう解釈すべきか悩みます。科学への過剰な期待への揶揄でしょうか…。
読了日:06月13日 著者:楳図 かずお
世界の美しい本 (Pie × Hiroshi Unno Art)の感想
コストを惜しまずに製作された豪華本は、書物というより、もはや工芸品なんだなぁ…と感じました。一部の本は、厚みが分かるように撮影してあったり、背表紙を含めた状態で装丁が見えるように撮影してあったりして、「立体物」として本のデザインが把握できるように配慮されている点はとても良かったのですが、できればサイズのデータも記載してほしかったです。中には、相当巨大なサイズの本もあるのではないでしょうか…?
読了日:06月12日 著者:
梅のレシピ55の感想
コラムによると、南高梅を栽培している地域(主に和歌山県みなべ町と田辺町)は、年貢として収める米があまり育たなかったため、生命力の強い「やぶ梅」に注目して栽培を始めたことが、日本一の梅の里として名を馳せることになったのだそうです。スーパーでは中国産の梅を使った梅干しもたくさん売られているので、中国の梅の栽培事情も気になりました。
読了日:06月12日 著者:上村 泰子
續・ポルノグラファー プレイバック【特典付】 (onBLUE comics)の感想
序盤で『アケミちゃん』の登場人物(静雄と春子)が出てきたので、「おっ!特別出演?」…と思いきや、ガッツリとクロスオーバーしていました。明実親子と木島が一緒にいるシーンがあまりにもなじみすぎていて、この三人の生活がもっと読みたくなってしまい、久住がお邪魔虫のように感じてしまいました。(準主役なのに…。)できれば、木島が実家の家族と波長が合わない理由をきちんと掘り下げてほしかったです。一応、母親が「娘」と「息子」で子育てに差をつけたり、お金で気を引こうとしたりする人物であることが、匂わされてはいますが…。
読了日:06月10日 著者:丸木戸マキ
本橋兄弟 新装版 : 2 【電子版特典2Pマンガ付き】 (アクションコミックス)の感想
貴也の入院のエピソードは、貴也に対して「だれそれを心配させるな」という類いの「お説教の形をとった気遣いの強要」を誰もしていないところが、とても心に残りました。特に、智也とオーナーは、自分達の「先回りの気遣い」を貴也に決して悟らせないようにしており、おそらく作者のRENA先生は、「気遣いができる人間かどうかを評価されるプレッシャー」というものに敏感なのではないでしょうか? そして、「自分がいかに気遣いができる人間かをアピールするために他人の苦しみを利用するようなことはしたくない」という思いがあるでは…。
読了日:06月10日 著者:RENA
女帝の手記 1巻の感想
日経新聞で連載中の安部龍太郎先生の『ふりさけ見れば』(阿倍仲麻呂と吉備真備の2人が主人公の小説)で、吉備(下道)真備が阿倍内親王と会話する描写があり、「そういや『女帝の手記』ではどんな感じだったっけ?」…と気になったので、約20年ぶりに再読しました。阿倍内親王の人物像には大きな差はないのですが(ただし『女帝の手記』の方はやや反抗的なところがあります)、『女帝の手記』の真備の優し気な雰囲気は『ふりさけ見れば』の阿倍仲麻呂に近く、むしろ俗っぽい雰囲気のある玄昉の方が『ふりさけ見れば』の真備像に近いです。
読了日:06月09日 著者:里中 満智子
まんがグリム童話 金瓶梅 (47)の感想
李瓶児の魂魄が離れたことで仮死状態になっていたせいで、危うく露々の肉体は、若くして亡くなった美青年と冥婚させられるところでしたが(つまり一緒に葬られそうになった)、梨花・秋菊・潘金連のおかげで魂魄は元の肉体になんとか無事に戻ります。…ですが、男に振り回されすぎた露々は、「自分の将来は自分で決めたい」という理由で「女人として生きることをやめる」と宣言し、髪を切り、男性の装いをし始めます。呉月娘の計らいで露々は林傾香という少女(既婚者)と友達になりますが、2人のシスターフッドは次第に不穏な様相を帯びてきます。
読了日:06月09日 著者:竹崎真実
カタツムリハンドブックの感想
和名がついた日本のカタツムリ約800種類のうち、身近なもの中心に147種を掲載した、カタツムリの入門書です。図鑑として眺めるだけでも楽しいですが、コラムの内容も面白く、特に、マイマイ系の系統樹の話が興味深かったです。マイマイは右巻き同士、左巻き同士でしか交尾できないので、突然変異によって右巻きから左巻きが生まれた場合、左巻き同士で交尾をすることで元の集団と隔離が生じることになるのだそうで、つまりは、巻きの方向を決定付けるたった一つの遺伝子の突然変異で種分化が起こりうるのだそうです。
読了日:06月09日 著者:西 浩孝
純金の童話 (秋田文庫 9-16)の感想
若返りの薬の研究をしていた父親の実験によって毒の吐息を吐く人間兵器になってしまったオリーと、オリーの毒が効かない体質のイーヴと、ついうっかりイーヴが作った薬を飲んでしまい霊魂が見える体質になってしまったマリニーの3人の旅を描いた物語です。ラブロマンス要素あり、冒険活劇要素あり、オカルト要素あり、ファンタジー要素あり…と、色々詰め込んでいますが、テンポよく読み進めることができ、食べ物に例えれば、まるで「デリケートな高級洋菓子」のようです。科学のデュアルユースや身分格差などの社会問題も物語に組み込んでいます。
読了日:06月08日 著者:木原 敏江
世界で一番くわしい木材 最新版の感想
日本人が読むことを想定して、日本人によって書かれた、日本の木材活用の本なので、「世界で一番くわしい~」というタイトルは、ちょっとどうなのかと思います。著者としてクレジットされている「世界で一番くわしい木材」研究会なる組織は、巻末で「木の建築と木材活用に関心を持つ有志の集まり」と説明されており、メンバーが列挙されていますが、所属する会社の名称(例外的に、大学名が挙げられている人と、ただ「木童」とだけ書かれている人(チーム名?)がいます)しか書かれておらず、来歴が全く分かりません。
読了日:06月07日 著者:「世界で一番くわしい木材」研究会
まんがグリム童話 金瓶梅 (46)の感想
于英の実母の鮑夏魚のたちの悪さは相当なものですが、春梅がめちゃくちゃしっかりしているおかげで、夏魚の悪意を躱すことなどお手のもの…かと思いきや、夏魚の悪意の矛先が三葉に向かい、三葉は折檻死してしまうことに…。西門慶に胸キュンする三葉の様子が微笑ましかっただけに、三葉の死はショックでした…。、西門慶が春梅を気遣ってくれていることと、夏魚のペットの黒貂の抱闇が美々に懐いていることが救いです。
読了日:06月06日 著者:竹崎真実
パリピ孔明(2) (コミックDAYSコミックス)の感想
前巻では、英子が歌っているのは自作曲なのか既存曲なのか不明だったのですが、この巻の英子の「10万イイネの足しになるかわからないけど・・曲作ってみたんだ・・!」というセリフと、恥ずかしそうな表情からすると、これまで歌っていたのは全て既存曲…? だとしたら、前巻で孔明が泣いて感動していたのは、名曲補正の可能性が…。この巻で登場する河辺というラッパーが、前巻の孔明同様、英子の歌を聞いて泣いて感動していますが、これは「河辺が高校の時に聞いていた曲だから」という理由があり、明確に名曲補正と思い出補正が入っています。
読了日:06月06日 著者:四葉夕卜,小川亮
1自分のことを話そう (3語で話せる! 英語で日本を紹介しよう)の感想
「3語で話せる」というコンセプトは、英語学習の初級としてはとても良いと思うのですが、イラストと写真を併用するという構成に違和感があります。奥付によると、写真は「PIXTA」となっているので、つまりはストックフォトなのですが、いかにも「ネットで無料で読める記事に使われがちな写真」をチョイスするというセンスは、正直、どうかと思います。なぜ、イラストで統一しなかったのでしょうか…。
読了日:06月06日 著者:
ナミさまが危ない!(3) (ゴマブックス×ナンバーナイン)の感想
サスペンスの部分はそれなりの解決を見ているのですが、七尾奈美がアシスタントにシナリオを丸投げしていた件(つまりゴーストライターがいた)が不問になってしまっています。結局のところ、奈美にとって漫画は「承認欲求を満たすための手段」でしかなかく、最終的に物語は「女としての幸せの追求」でオチをつける方向性で収束しているため、「漫画家と編集者の職業倫理の問題」が矮小化してしまっています。
読了日:06月06日 著者:芥真木,ひびきゆうぞう
ナミさまが危ない!(2) (ゴマブックス×ナンバーナイン)の感想
この巻では、2人のキャラクターの過去を辿る過程で、「作画グループ」のメンバー4人(羽場よしあき先生・みなもと太郎先生・聖悠紀先生・清水勇之進氏(聖先生の電話番))、わたなべまさこ先生、永井豪先生、藤子不二雄先生(この頃はまだ「藤子・F・不二雄」「藤子 不二雄Ⓐ」名義ではありません)が登場されています。永井豪先生が設立したダイナミック・プロが、どんな形態で運営されているのかが分かり、人材の多様性や流動性が、まるで中国の春秋戦国時代の食客みたいだなぁと思いました。
読了日:06月05日 著者:芥真木,ひびきゆうぞう
ナミさまが危ない!(1) (ゴマブックス×ナンバーナイン)の感想
芥真木先生による前書きによると、この作品は「マンガ界の内幕」を描いた作品で、1981年に『女性セブン』に連載されたそうです。マンガの専門誌ではなく一般向けの女性週刊誌だからこそ業界のタブーに触れるようなストーリーにできたとのことで、「様々な意味で、おそらく二度と生み出せないであろう、記念碑的な作品です」と述べていますが、実録モノというわけではなく、内容はあくまで「サスペンスフルなフィクション」であり、実在の漫画家は登場しますが(この巻だと手塚治虫先生が登場しています)、メインキャラクターは架空です。
読了日:06月05日 著者:芥真木,ひびきゆうぞう
ヴァルダ-迷宮の貴婦人-の感想
『ヴァルダー迷宮の貴婦人ー』、『水たまりのアルテミス』、『Backstage Talk』(あとがき)が収録されています。『ヴァルダ』は、古城を舞台にした吸血鬼モノで、雰囲気的にはかなり好きな部類の作品ではあるのですが、話の発端となる遺言がどんな意図で書かれたのか分からないのが気になりました。(吸血鬼に操られて書かされたのでしょうか…?)『水たまりのアルテミス』は、今ならオーディンはパンセクシャルとして描かれるだろうなぁ…と思いました。
読了日:06月05日 著者:望月玲子
語りつぐ戦争―15人の伝言の感想
著者が出会った様々な人物の中から、写真と証言が残っている15人の男性の記録をまとめた本です。2002年の出版ですが、これより先に、女性版が出版されていると、あとがきに書かれています。(『戦争を語りつぐ・女たちの証言』『世界の旅から・わたしの出会った女性たち』) 証言集としての読みごたえだけでなく、「一期一会」を大切にすることの重要性も伝わってくる内容でした。
読了日:06月03日 著者:早乙女 勝元
TWITTERで英語をつぶやいてみる (生活人新書)の感想
2010年発行の本なので、Twitterというツールを使う上でのリスクというものをほとんど気にかけておらず、「知人にさがしてもらうためには、あたなであることが分かる名前(ユーザー名)にした方がよいでしょう」という記述には、時代を感じます。いわゆる「クソリプ」という言葉がなかった時代なので、著者が想定しているトラブルは「作文スキルの未熟さによって招く誤解」くらいしかありません。英文のレクチャー自体は参考になるのですが、「twinglishという造語を提案したのは私」というアピールに、功名心が滲み出ています。
読了日:06月03日 著者:石原真弓
ふしぎの国のバード 3巻 (ハルタコミックス)の感想
いつは些細なことでキャッキャとはしゃぐオーバーアクションなバードが、甘い菓子を口にした時だけ妙に冷静で、「新しい発見」に全く心を動かされていないのは、「実は伊藤は甘党」という設定による「ギャップ萌え」を際立たせるための演出だと思われますが、バードをキャラブレさせてまでやることじゃないですし、「クールな男が甘党」であることにそこまで意外性がありますか…? 「クールな男には甘党は不似合い」という価値観って、男性に対する偏見でしかないですし、それをギャグとして強調されても…。
読了日:06月03日 著者:佐々 大河
まんがグリム童話 金瓶梅 (45)の感想
この巻の李瓶児は、十日に一度男の精を吸い尽くしてようやく美しさを保っているという、「あと一歩でゾンビになりそうな吸血鬼」という感じで始まり、外法が解けて肉体がドロドロになり「生者とは言えず、かといって死者とも言えない」状態で終わっています。李瓶児の蘇生を望む蟲王によって肉体の残骸が壺に保管される一方で、この世を彷徨う魂は「次の居場所」を見つけており、「魂の行方」と「肉体(の残骸)の行方」のそれぞれが気になる展開となっています。
読了日:06月03日 著者:竹崎真実
まんがグリム童話 金瓶梅 (44)の感想
慈生の結婚生活のエピソードは、サスペンスフルな展開を経て、苦い後味の悲劇に終わりました。夫婦の間に確かな愛情があっただけに、「ありえたかもしれない幸せな未来」を想像せずにはいられません。李桂姐のエピソードは断捨離ブームへの皮肉、「奥方様の料理自慢会」のエピソードは大食いバラエティ番組への問題提起があるように感じられます。露々の身体を“器”にして、李瓶児が復活してしまいましたが、生き霊として憑りついているのか、死者として憑りついている(肉体は完全に滅んでいる)のか、果たしてどちらなのでしょうか…。
読了日:06月02日 著者:竹崎真実
ステキな英文フレーズ1420―各種クラフト、グリーティングカード&アルバム作り、 (ブティック・ムック No. 904)
読了日:06月02日 著者:
クラッシャージョウ REBIRTH(1) (イブニングコミックス)の感想
安彦良和先生のタッチをかなり再現できてはいるんですが、横顔の描き方に違和感がありますし、女性キャラ(=アルフィン)の特定の表情(「ふくれっ面」とか「嬉しくて上気した顔」とか)の「萌え表現」がウザいです。一コマ一コマの絵のレベルは高くても、演出の技術が未熟で、ジョウの行動原理が分からず、どういった思考で判断を下して行動しているのか(あるいは何も考えないタイプなのか)が伝わってこないですし、アルフィンがジョウに惚れているのは分かりましたがジョウとの関係性が「恋人」なのか「彼女候補」止まりなのか分かりません。
読了日:06月01日 著者:高千穂遙
まんがグリム童話 金瓶梅 (43)の感想
周家の中での春梅の立場は「第二夫人」ですが、先に周家に来て菊軒との間に一児をもうけている功二児の立場は「妾」なので、妻としての立場は「功二児より春梅の方が上」なのに、周家に来た順番でいえぱ功二児は「先輩格」にあたるので春梅からみれば功二児は「姐さん」ということになり、でも、出自は二人とも「召使い」で同格…という、なんとも微妙な関係性が、当初は気になりましたが、周家の行きすぎた家父長制による女児へのネグレクトと、功二児の「代理によるミュンヒハウゼン症候群」が露呈する展開には、「そうくるか~!」と唸りました。
読了日:06月01日 著者:竹崎真実
まんがグリム童話 金瓶梅 (42)の感想
露々は、猫の雪獅子相手に悪事を全部話してしまうあたり、悪事が大好きというわけではなく、多少なりとも自分の中の悪意というものに無意識に嫌悪感を抱いており、そのストレスが、雪獅子相手への「罪の告白」という形で現れているのでは…と感じました。
読了日:06月01日 著者:竹崎真実
読書メーター
読んだ本の数:65
読んだページ数:9161
ナイス数:1692

大村は、「性的指向がゲイである」ということよりも、「ゲイであることで近代家族規範に従うことができない」ということの方に強く抑圧を感じているキャラとして描かれており、作品としての方向性はほのぼの系でありながらも、近代家族イデオロギーに対する拒否感が読み取れます。少々ひっかかるのは、「海外で代理母をお願いするって方法もある」という大村のセリフです。「子供を産むのは好きだけど育てるのは嫌い」という女性がいるのならその方法はアリとは思いますが、大抵は、経済的理由で身体を酷使することを余儀なくされているのでは…。
読了日:06月30日 著者:RENA

英雄は、あまりにも帝王の風格がありすぎるゆえに、一般人の防御本能のメーターを瞬時に振りきらせてしまう男なのに、山瀬だけは全く動じないということは、山瀬の“天然ぶり”は、性格的なものというよりも、本能が壊れているということなのではないでしょうか…? 山瀬の死角で繰り広げられる勝平と英雄の顔芸が、ある意味、息がピッタリで、「この二人、お笑い芸人としてなら、いいコンビになれるのでは…」と思ってしまいました。
読了日:06月30日 著者:若杉公徳

「機械の身体を元に戻す方法を求めて二人で旅をする」というシチュエーションなので、『銀河鉄道999』の逆パターンと言えます。エルリック兄弟が機械の身体になってしまった背景は重いですが、作風はカラッと明るいです。
読了日:06月30日 著者:荒川弘

悪夢には心身に悪い影響しかないと思っていたので、プラスとマイナスの両面があるという記述には驚きましました。うつ病のサインの可能性がある一方で、日中に受けたストレスの処理をするという癒し効果の面もあるのだそうで、メンタルヘルスの一環としての夢の研究(スピリチュアル寄りの話ではなく)の重要性がよく分かりました。悪夢を見て叫ぶ場合はパーキンソン病のサインの場合があるとのことなので、高齢者をケアする立場の人も、目を通しておいて損はない本です。
読了日:06月29日 著者:西多 昌規

『王さまはネコがきらい』『眠る、眠れば、眠り姫』『きゃっ♡白雪王子さま』『忘れ髪の姫君』が収録されています。あとがきによると、『王さまはネコがきらい』は、「今(あとがきが書かれたのは2000年8月)から十数年前、東京都がネコの放し飼いを禁止する条例を作ろうとして、愛猫家の猛反対にあい挫折するという事件」があったことをきっかけにして頭に浮かんだ話なのだそうで、だとしたら、微妙に時事ネタ(1980年代の)が含まれているということになります。
読了日:06月29日 著者:曽祢 まさこ

リクガメを飼う気はないので、興味本位だけで読んだのですが、リクガメを散歩させている写真を見たら、「散歩だけならやってみたいかも…」と思いました。…とはいえ、「甲羅が迷彩になっているので見失いやすい」「カラスやネコなどに襲われないようにする」「薬剤が散布されていたり、毒素を含む野草が生えている場所は避ける」などの注意点があるので、かなり気を遣うことになりますが…。
読了日:06月29日 著者:

『海にしずんだ伝説』『赤いわな』『12月のエルメイン』が収録されています。『海に~』は、表紙の雰囲気からてっきりムー大陸かアトランティス大陸の話かと思ったら、フランスのドアルヌネのイサ(イス)伝説がモチーフで、シェイクスピアの悲劇に近い雰囲気の物語でした。『赤いわな』は、「夫婦間の愛」と「子供への愛」が「人身売買」という犯罪に向かってしまう「罠」を描いています。『12月~』は、遺伝病の保因者への差別がテーマとなっていますが、「差別の問題」と「母と娘の問題」が一体化している構成はちょっとどうかと思いました。
読了日:06月28日 著者:曽祢まさこ

少年ジャンプで連載されていた『恐竜大紀行』の続編にあたる『大恐竜記』はとても面白かったのですが、表題作の『錬命術』と同時収録の『ジュリアの法則』はパターナリズムと男の都合丸出しのジェンダー観が酷く、山本弘系統の作家にありがちな「理系を自負している日本人男性の危うさ」がモロに出ていて不快でした。『錬命術』は「子供を諭すよりも、まずは大人の方こそ反省しなければならない」という視点が皆無ですし、『ジュリアの法則』の2話目は女子高生にオッサンの代弁をさせ、尚且つオッサンのプライドに配慮もさせているのが最低です。
読了日:06月28日 著者:岸 大武郎

吸血鬼とゾンビの中間のような存在と、「切り裂きジャック」が登場するゴシック・ホラーですが、ただ怖いだけでなく、少年と少女のほろ苦いラブストーリー、秘密を共有する三人の女たち(主人公・主人公の母親・使用人)の奇妙な連帯感、「切り裂きジャック」を支配下に置く主人公のしたたかさなども見所です。
読了日:06月28日 著者:曽祢まさこ

「愛する女性をセフレ扱いすること」が「結婚を望ない自分にできる精一杯の誠意」ということになってしまっているクリストの歪んだ価値観がめちゃくちゃ痛いのですが、そんなクリストに対して「首を絞めてやりたい」「無慈悲すぎるわ!」「わたしは悪魔と契約してしまったの?」と思うほどショックを受けたナタリーがすぐに「いいえ彼はただはっきりさせただけよ」と納得して「折り合あいをつけることを学ばなければ」と自分に言い聞かせてしまうのは、あまりにも「男に都合のよい物分かりの良さ」で、読んでいてモヤモヤしてしまいました。
読了日:06月27日 著者:楠 桂,アン・マカリスター

「雪の降るロンドン」から物語がスタートし、「熱砂の国」で終わるという舞台設定はメリハリがあって良かったものの、アミールにいたと思われる政略結婚の相手がどうなったのか分からないのがモヤモヤします。アミールがリディアとの交際を三日間限定にしていた理由は「皇太子という立場だから」であり、「その立場なら政略結婚をするのが当然」とする価値観をリディアとアミールが共有していたから「三日間限定の交際」をしていたはずで、実際、テレビで「プリンスは近々結婚のために帰国」と報じられているシーンもあるのですが…。
読了日:06月27日 著者:JET,ケイト・ウォーカー

巧二児の召使として周家にやってきた恵衣(二児によってつけられた新たな名前は参児)は、働きぶりは真面目ですが、春梅に対して腹に一物あるようなところがあり、何かトラブルを起こしそうな予感が…。春梅の召使の双葉には、かなりの観察力や勘の鋭さがあり、かつての西門家の中での春梅に近い存在感を帯びてきました。
読了日:06月27日 著者:竹崎真実

十数年前、銀座に行った時、なんとなく入ったインドカレー店でランチブッフェを食べたら、お米を使った甘いデザートがとてもおいしかったのですが、この本に載っている「お米の豆乳キール」がどうやらそれっぽい感じがするので、もしかしたらその時に入ったお店はナタラジ銀座店だったのかも…と思い、公式サイトを見てみたら、銀座店は2022年3月22日に閉店したとのお知らせが…。コロナのせいなのかと思ったら、「ビルの建て替えに伴い退去」とのことで、他の店舗は営業していました。(ただし大阪梅田店は2015年に閉店しています。)
読了日:06月26日 著者:Nataraj(ナタラジ)

タイトルは「ルポルタージュ」+「論説」という印象を与えるのに、やっていることは「犯罪者(またはその家族)に関わる活動をしている人(ただし第五章に出てくる学生団体は犯罪とは関係ありません)のインタビュー」で、その割には著者がンタビュアーに徹しないで自分の見解をぐいぐいねじ込んでくる構成なので、ジャーナリスティックな姿勢のなさに読んでいてモヤモヤしました。あとがきによると、著者は「サブカルチャー論」と「自分探し」の延長で犯罪者の心理に興味を持っているタイプのライターなので、それが悪い方向に出てしまっています。
読了日:06月25日 著者:インベカヲリ★

「勉強もスポーツもできる優秀な兄」に対する大村のコンプレックスは「悔しさ」としてはっきりと表現されていますが、「結婚して子供を作って親に孫の顔を見せてあげる親孝行ぶり」に対するコンプレックスは「表面的な笑顔」でしか表現されておらず、このシーンに、大村の「諦め」と「罪悪感」が滲み出ています。姪っ子のことは本心から可愛いと感じているので、大村はおそらくは子供好きな男なのですが、「自分の子供を誰かに産ませること」には全くこだわっておらず、ただ純粋に「身近な子供の成長」を楽しみにしていることが伺えます。
読了日:06月24日 著者:RENA

『シローくんとつぐみちゃん』『大和と童子』『佐助君の憂鬱』『なぞの少年』(初出は2005~2007年の「少年サンデー超増刊」)『妙林寺の注くん』『悩める単細胞』(未発表作品)が収録されています。男の子のキャラのアホっぽさが、「小学館系の古き良き少年漫画」という感じ(創刊まもない頃のコロコロとか)なのですが、絵柄がサブカル系のヘタウマ(良い意味で)なので、「子供向けとも青年誌向けともいえない」という、ニッチな作風です。内容は全年齢向けですが、変に「いい話」でまとめていないので、道徳漫画的要素はゼロです。
読了日:06月24日 著者:石井 あゆみ

ネグレクト状態だったせいで自分の意思というものを持ってこなかった美々が、猫を助けるために木に登るようになるまでアクティブになり、同じ動物を愛する者が相手であればコミュニケーションを取れるようになるまで成長していることに、ホッとしました。…とはいえ、母親の巧二児が、美々のことを優先して物事を考えることができないのは、相変わらずですが…。
読了日:06月24日 著者:竹崎真実

“現代”に戻ったキャロルが、再び3000年前にタイムスリップすることになってしまったのは、アイシスが現れて「そなたを殺して死体を古代へ連れていく」と言ってキャロルの首を締めようとした拍子にキャロルを湖に落としてしまったせいなのに、アイシスの口から「今度はわたくしが古代へ引き込んだのではない」というセリフが…。21世紀のアイシス(ミイラから甦ったアイシス)と3000年前のアイシス(現役時代のアイシス)との間に明らかに解離が生じており、アイシスは自分の知らない「未知の力」が動いているのではないかと推測します。
読了日:06月24日 著者:細川智栄子あんど芙~みん

この作品を読んでいて一番気になるのは、現代パートの「ミイラから甦ったアイシス」の意識と、古代パート(3000年前)の「現役時代のアイシス」の意識が完全にシンクロしていることです。「死後のアイシス」は、メンフィスが若くして亡くなったことを当然知っていますが、「生前のアイシス」は知らないわけで、この「記憶や経験の差」が、アイシスの中でどう整合性が取られているのか、いまいちよく分かりません。キャロルが「メンフィスは18歳くらいで死ぬ」という「本来の歴史」を忘れているように見えるのも気になりますが…。
読了日:06月23日 著者:細川智栄子あんど芙~みん

秋田文庫版を数年前に読んでいますが、プリンセスコミックス版を読むのは約40年ぶりです。序盤はホラー要素がかなり強く、メンフィスにツタンカーメンのイメージがかなり投影されています。キャロルが3000年前のエジプトにタイムスリップしてしまう現象は、現代に甦ったアイシスによる「呪い」のせいなのですが、その「呪い」の結果、キャロルとメンフィスが出会ってしまい、本来の「姉弟ただ二人で助け合って生きた」という歴史が改変されてしまうとは、皮肉な話です。元の歴史ではアイシスはラガシュ王と結婚していないということですね…。
読了日:06月23日 著者:細川智栄子あんど芙~みん

テレビドラマ版を観た後に原作を読んで正解だったなぁ…と感じた最終巻でした。テレビドラマ版は「罪と罰」というテーマの物語として相応しいラストで締めくくられていましたが、原作は「トビオが心の中で蓋をしていたモノ」の“真の正体”が明かされる形でラストを迎えているので、「罪と罰」というテーマを追求するのではなく、サイコホラー的な演出でオチを迎える方向性になっています。トビオの「死ねばいいだけの話だろ」というセリフの「死ねばいい」の部分は、自分に向けているだけではなく、矢羽高生に向けた本音でもある…と解釈できます。
読了日:06月22日 著者:金城宗幸,荒木光

原作では、トビオたちが“公開自首”のために野音を乗っ取った時に行われていたのは、フリーセックス啓蒙イベントですが、テレビドラマ版だとエンディングテーマを歌っている DISH// のライブというメタ的な演出になっていたので、この部分に関しては、テレビドラマ版の方が断然皮肉が効いていました。ちなみに、玲夢を演じていたのは元スーパー戦隊の俳優さんで、ヤングを演じていたのは元仮面ライダーの俳優さんなので、特撮ファンにとっては、ものすごくインパクトのあるキャスティングでした。
読了日:06月22日 著者:金城宗幸,荒木光

バラバラだったトビオ・伊佐美・マル・パイセンは、それぞれに絶望を抱えながら、「自首をする決意」で一致団結することに…。トビオは「自由が何かとかはまだよくわかんないけど」と前置きしながらも「自由が自分の幸せなんだと思う」と自分なりの結論を出しており、幸せとは何かという「哲学的な問い」と、市橋を自殺させてしまったことによる「良心の痛み」の両方と向き合う姿勢を持ち始めます。
読了日:06月22日 著者:金城宗幸,荒木光

トビオは飛び降り自殺に失敗して「新しい俺」を始め、伊佐美は罪悪感が原因のEDを克服するために「虚言のお遍路さん」(鎮魂のためではなくチ●コのために弔問する)となり、マルは自分を「被害者の立場」だと思うことで「罪悪感を感じない自分=罪悪感に勝った強者」と自認して優越感に浸り、パイセンは「自分は親から愛されているのか」を確認したくて父親に会おうとし、前巻の飯室の言葉は四者四様に影響を及ぼします。この巻のラストの市橋の行動を知っていると、病院の屋上での「俺さぁ自信ない奴嫌いなんだよねー」という語りが切ないです。
読了日:06月21日 著者:金城宗幸,荒木光

「爆破事件で10人殺した罪」をパイセンの父親(風俗業界の首領・輪島宗十郎)が金の力で揉み消したことで、元々の罪(傷害致死罪)に「無関係の人間に罪を着せた罪」が上乗せされたことを知ったトビオたちは、「真実は闇の中」であることをいいことに開き直ろうとしますが、何もかも知っている警察官の飯室が現れ、「幸せを感じるたびに人の命を奪ったことを思い出せ」という言葉を投げ掛けたことにより、少なくともトビオにはその言葉は呪いのように作用します。(伊佐美は気にしていないように見えますし、マルはますます増長していますが…。)
読了日:06月21日 著者:金城宗幸,荒木光

今宵と蓮子は、気軽にセックスに応じるか応じないかでは大きな違いがありますが、困っていたり弱っていたりする人を見過ごしてはおけないところは共通しており、こういう「女性キャラの優しさ」は男性向け漫画では「母性」として描かれがちなのですが、『僕たちがやりました』では「人間として備わっている良心」として描かれています。今宵と蓮子の行動原理は「良心」であり、ヤングの行動原理は「哲学」ですが、トビオや市橋に代表される男子高校生キャラたち(と、パイセン)のこれまでの行動原理には、「良心」も「哲学」も欠落しています。
読了日:06月21日 著者:金城宗幸,荒木光

伊佐美とマルは性欲を発散すればするほど馬鹿っぽくなっていき、トビオは性欲の発散が不発に終わるたびに賢者モードに突入しているので、この作品では「射精→賢者モード」という”お約束“は踏襲されていません。伊佐美とマルは「性欲」と「生存欲求」がストレートに結び付いているのに比べ、トビオは「恐怖心」と「生存欲求」の結び付きが強いらしく、咄嗟にアパートの二階から飛び降りるシーンに、それがよく現れています
読了日:06月20日 著者:金城宗幸,荒木光

「苦労話」で終始していない体験記です。介護問題を「家庭の問題」ではなく「社会の問題」として解決しなければならない理由がよく分かる内容となっており、著者のジャーナリスティックな視点がとても活かされています。介護問題に付随するジェンダー問題に切り込む視点はないので、政治と行政が「介護=社会的な事業」と理解せずに「家族の絆」を持ち出してくる理由に女性差別があることや、「認知症が原因で生じていたコミュニケーションの齟齬」が「嫁と姑の対立=女の性根の問題」とみなされてきたことへの問題提起がないのが少々残念でした。
読了日:06月18日 著者:松浦 晋也

ノリでやってしまった悪戯が大惨事を引き起こして死傷者を出してしまったという「予想外の結果」に対する混乱に加え、パイセンが持ち出してきた大金に対する混乱や、恋の駆け引きに対する混乱(これはトビオのみ)もあり、登場人物たちの迷走が痛々しいです。テレビドラマ版は、Mrs. GREEN APPLE と DISH// の主題歌のポップさと、役者さん達のテンションの高い演技の相乗効果で、「青春グラフィティ」的な要素が強めに出ていたのですが、原作だと「これも青春の一ページ」という感じはあまりありません。
読了日:06月17日 著者:金城宗幸,荒木光

表紙とタイトルの印象から、てっきり、竹馬とかケイドロとかの「子供の遊び文化」をテーマにした本かと思ったのですが、「大人目線で過去を振り返った時に刺激的と感じる娯楽」をテーマにしているので、ビニ本とかダイヤルQ2とかノーパン喫茶などのエロ方面のネタが多く含まれています。「図鑑」と銘打たれていますが、ライターの「自分語り」の部分がかなりあり、ライターの4人(久保田龍雄氏・小川隆行氏・浅羽晃氏・後藤豊氏)がそれぞれ「私」という一人称を「共有」しているように感じてしまう構成には違和感を感じてしまいます。
読了日:06月17日 著者:

「ハワイアンソングの歌詞を理解できるように」というコンセプトの本なので、旅行・受験・ビジネスなどを目的とした外国語の本とは違った雰囲気なのが、とても面白かったです。
読了日:06月17日 著者:鳥山親雄

先にテレビドラマ版の方を視聴していたので、原作を読んで、テレビドラマ版の再現度の高さを確認できました。特に、今野浩喜氏(元キングオブコメディ)の演じるパイセンがあまりにも原作通りなので、「元々今野氏をモデルにしたキャラだったのでは!?」と思うほどです。違う部分として気付いた点は、ドラマ版にはサンシャイン池崎氏の「ジャスティス!」のネタがあったことと、女性教員が重要キャラとして出ていたことと、爆弾を作るシーンがあったことです。(原作だと、爆弾作りの過程は省かれていて、完成した状態で出てきます。)
読了日:06月16日 著者:金城宗幸,荒木光

藤原仲麻呂への愛をすっかり失ったとはいえ、殺したいと思うほどの恨みがあるわけではなく、失脚させることができれば充分だったのに、「仲麻呂派」vs「反・仲麻呂派」の戦争(恵美押勝の乱)になってしまう流れには、政治に翻弄され続ける阿倍の人生の悲劇性が特に色濃く表れていますが、討ち取られた仲麻呂の首の検分を「わたしが命令をくだした結果だから」と自ら行うシーンには、阿倍の「覚悟」が強く感じられ、阿倍が理想としていた「天皇としてのマインドセット」が、ここでようやく確立したと言えます。
読了日:06月16日 著者:里中 満智子

藤原仲麻呂の息がかかった大炊王が天皇の座に就いたことで、阿倍は仲麻呂から利用されていたという現実を直視せざるを得なくなり、更に、一方的に親近感を持ったり同情したりしていた井上内親王が出産したことを知って「嫉妬」と「自己憐憫」と「孤独」に打ちのめさることになり、病床に臥してしまいますが、道鏡の「言葉」によって「生きること」に前向きになります。宮子の心の病が玄昉によって回復したのも、ひょっとしたらこんな感じだったのかも…と想像しました。(描写的には、「言葉」ではなく「法力」で回復したことになっていますが。)
読了日:06月15日 著者:里中 満智子

刃牙はアリゾナ州立刑務所に入りたくてわざと犯罪っぽい行為をしましたが、アイアン・マイケルの場合は、好きで刑務所に入ったわけではなく、ガチで犯罪を犯したから…? 一体何をしでかしてしまったのでしょうか…。巻末に収録されている週刊少年チャンピオン連載時の「巻末目次コメント」(2006年17号~32号)に出てくる「車田先輩」とは、車田正美先生のことでしょうか?、【車田先輩、ゼヒ俺と対立を。(24号)】【車田先輩、あなたのその椅子。俺も座りたい。(30号)】
読了日:06月15日 著者:板垣恵介

『嬲られ踏まれそして咲くのは激情の花』『ロリータ7号』『あくまのうた』『もしも』『ハピネス』『雲のへや』『インディゴエレジィ』『アングラ★ドール』が収録されています。『あくまのうた』と『もしも』は2人の少女の友情が描かれていますが、それ以外は男女の恋愛観の「越えられない壁」が描かれています。(ただし『インディゴエレジィ』は2人の少年の友情もテーマに含んでいます。)女側は「嬉しさ」や「幸福感」を求める傾向にあるのに対し、男側は「快・不快」を求める傾向にあり、この違いが男女の気持ちのすれ違いに繋がっています。
読了日:06月14日 著者:古屋 兎丸

遷都と大仏建立くらいしか自分の意思というものを強く主張してこなかった聖武天皇が退位し、ついに阿倍が天皇に即位します。皇太子時代に唯一の心許せる存在だった吉備真備が左遷されてしまったことに全く危機感を感じず、真備を左遷させた張本人である藤原仲麻呂との恋愛に現を抜かす様子には、真備によって気付かされた「自己研鑽の喜び」はすっかり失われたかのように見えますが、道鏡との哲学的な会話(「救いとは何か?」「人は何のために生まれてきたのか?」)によって、道鏡が真備に変わる「師」となることが匂わされています。
読了日:06月14日 著者:里中 満智子
![ショパン 2021年 4月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51+SDk8IccL._SL75_.jpg)
『JAPAN in 2021─邦人作曲家特集─』が面白かったです。インタビューが載っている作曲家は植松伸夫・井川憲次・Ken Arai・椎名豪・澁江夏奈、劇伴音楽愛好家としてインタビューに応じているのはAnimenz(ピアノソロアレンジャー/スタインウェイアーティスト)です。
読了日:06月14日 著者:ショパン編集部

阿倍内親王が女性の身で立太子したのは、安積親王を皇太子にしないための苦肉の策ですが、不思議なのは、なぜ阿倍内親王と安積親王を結婚させるという選択肢を検討しないのかということです。この2人の年齢差程度なら、阿倍内親王が年上であるのはさほど問題ではないと思うのですが…。安積親王が天皇に即位すれば、自動的に阿倍内親王は皇后になるわけで、外戚として藤原家は充分に権力を発揮できたはずですが、よほど「完全に藤原家の言いなりになる天皇」にこだわった結果なのか、それとも、「初の女性皇太子」の前例作りが大事だったのか…。
読了日:06月13日 著者:里中 満智子

『谷間のユリ』(初出は1972年「女性セブン」)、『ねむり少女』(1965年東邦出版刊)、『木の肌花よめ』(1966年「別冊少女フレンド」)、『恐怖人間』(1963年「残酷物語」)が収録されています。『谷間のユリ』と『木の肌花よめ』はルッキズムをテーマにした作品です。『ねむり少女』は、もしかしたらナルコレプシーから着想を得て描かれた作品でしょうか? 『恐怖人間』は『フランケンシュタイン』から着想を得ているのが明らかですが、ラスト2ページをどう解釈すべきか悩みます。科学への過剰な期待への揶揄でしょうか…。
読了日:06月13日 著者:楳図 かずお

コストを惜しまずに製作された豪華本は、書物というより、もはや工芸品なんだなぁ…と感じました。一部の本は、厚みが分かるように撮影してあったり、背表紙を含めた状態で装丁が見えるように撮影してあったりして、「立体物」として本のデザインが把握できるように配慮されている点はとても良かったのですが、できればサイズのデータも記載してほしかったです。中には、相当巨大なサイズの本もあるのではないでしょうか…?
読了日:06月12日 著者:

コラムによると、南高梅を栽培している地域(主に和歌山県みなべ町と田辺町)は、年貢として収める米があまり育たなかったため、生命力の強い「やぶ梅」に注目して栽培を始めたことが、日本一の梅の里として名を馳せることになったのだそうです。スーパーでは中国産の梅を使った梅干しもたくさん売られているので、中国の梅の栽培事情も気になりました。
読了日:06月12日 著者:上村 泰子

序盤で『アケミちゃん』の登場人物(静雄と春子)が出てきたので、「おっ!特別出演?」…と思いきや、ガッツリとクロスオーバーしていました。明実親子と木島が一緒にいるシーンがあまりにもなじみすぎていて、この三人の生活がもっと読みたくなってしまい、久住がお邪魔虫のように感じてしまいました。(準主役なのに…。)できれば、木島が実家の家族と波長が合わない理由をきちんと掘り下げてほしかったです。一応、母親が「娘」と「息子」で子育てに差をつけたり、お金で気を引こうとしたりする人物であることが、匂わされてはいますが…。
読了日:06月10日 著者:丸木戸マキ

貴也の入院のエピソードは、貴也に対して「だれそれを心配させるな」という類いの「お説教の形をとった気遣いの強要」を誰もしていないところが、とても心に残りました。特に、智也とオーナーは、自分達の「先回りの気遣い」を貴也に決して悟らせないようにしており、おそらく作者のRENA先生は、「気遣いができる人間かどうかを評価されるプレッシャー」というものに敏感なのではないでしょうか? そして、「自分がいかに気遣いができる人間かをアピールするために他人の苦しみを利用するようなことはしたくない」という思いがあるでは…。
読了日:06月10日 著者:RENA

日経新聞で連載中の安部龍太郎先生の『ふりさけ見れば』(阿倍仲麻呂と吉備真備の2人が主人公の小説)で、吉備(下道)真備が阿倍内親王と会話する描写があり、「そういや『女帝の手記』ではどんな感じだったっけ?」…と気になったので、約20年ぶりに再読しました。阿倍内親王の人物像には大きな差はないのですが(ただし『女帝の手記』の方はやや反抗的なところがあります)、『女帝の手記』の真備の優し気な雰囲気は『ふりさけ見れば』の阿倍仲麻呂に近く、むしろ俗っぽい雰囲気のある玄昉の方が『ふりさけ見れば』の真備像に近いです。
読了日:06月09日 著者:里中 満智子

李瓶児の魂魄が離れたことで仮死状態になっていたせいで、危うく露々の肉体は、若くして亡くなった美青年と冥婚させられるところでしたが(つまり一緒に葬られそうになった)、梨花・秋菊・潘金連のおかげで魂魄は元の肉体になんとか無事に戻ります。…ですが、男に振り回されすぎた露々は、「自分の将来は自分で決めたい」という理由で「女人として生きることをやめる」と宣言し、髪を切り、男性の装いをし始めます。呉月娘の計らいで露々は林傾香という少女(既婚者)と友達になりますが、2人のシスターフッドは次第に不穏な様相を帯びてきます。
読了日:06月09日 著者:竹崎真実

和名がついた日本のカタツムリ約800種類のうち、身近なもの中心に147種を掲載した、カタツムリの入門書です。図鑑として眺めるだけでも楽しいですが、コラムの内容も面白く、特に、マイマイ系の系統樹の話が興味深かったです。マイマイは右巻き同士、左巻き同士でしか交尾できないので、突然変異によって右巻きから左巻きが生まれた場合、左巻き同士で交尾をすることで元の集団と隔離が生じることになるのだそうで、つまりは、巻きの方向を決定付けるたった一つの遺伝子の突然変異で種分化が起こりうるのだそうです。
読了日:06月09日 著者:西 浩孝

若返りの薬の研究をしていた父親の実験によって毒の吐息を吐く人間兵器になってしまったオリーと、オリーの毒が効かない体質のイーヴと、ついうっかりイーヴが作った薬を飲んでしまい霊魂が見える体質になってしまったマリニーの3人の旅を描いた物語です。ラブロマンス要素あり、冒険活劇要素あり、オカルト要素あり、ファンタジー要素あり…と、色々詰め込んでいますが、テンポよく読み進めることができ、食べ物に例えれば、まるで「デリケートな高級洋菓子」のようです。科学のデュアルユースや身分格差などの社会問題も物語に組み込んでいます。
読了日:06月08日 著者:木原 敏江

日本人が読むことを想定して、日本人によって書かれた、日本の木材活用の本なので、「世界で一番くわしい~」というタイトルは、ちょっとどうなのかと思います。著者としてクレジットされている「世界で一番くわしい木材」研究会なる組織は、巻末で「木の建築と木材活用に関心を持つ有志の集まり」と説明されており、メンバーが列挙されていますが、所属する会社の名称(例外的に、大学名が挙げられている人と、ただ「木童」とだけ書かれている人(チーム名?)がいます)しか書かれておらず、来歴が全く分かりません。
読了日:06月07日 著者:「世界で一番くわしい木材」研究会

于英の実母の鮑夏魚のたちの悪さは相当なものですが、春梅がめちゃくちゃしっかりしているおかげで、夏魚の悪意を躱すことなどお手のもの…かと思いきや、夏魚の悪意の矛先が三葉に向かい、三葉は折檻死してしまうことに…。西門慶に胸キュンする三葉の様子が微笑ましかっただけに、三葉の死はショックでした…。、西門慶が春梅を気遣ってくれていることと、夏魚のペットの黒貂の抱闇が美々に懐いていることが救いです。
読了日:06月06日 著者:竹崎真実

前巻では、英子が歌っているのは自作曲なのか既存曲なのか不明だったのですが、この巻の英子の「10万イイネの足しになるかわからないけど・・曲作ってみたんだ・・!」というセリフと、恥ずかしそうな表情からすると、これまで歌っていたのは全て既存曲…? だとしたら、前巻で孔明が泣いて感動していたのは、名曲補正の可能性が…。この巻で登場する河辺というラッパーが、前巻の孔明同様、英子の歌を聞いて泣いて感動していますが、これは「河辺が高校の時に聞いていた曲だから」という理由があり、明確に名曲補正と思い出補正が入っています。
読了日:06月06日 著者:四葉夕卜,小川亮

「3語で話せる」というコンセプトは、英語学習の初級としてはとても良いと思うのですが、イラストと写真を併用するという構成に違和感があります。奥付によると、写真は「PIXTA」となっているので、つまりはストックフォトなのですが、いかにも「ネットで無料で読める記事に使われがちな写真」をチョイスするというセンスは、正直、どうかと思います。なぜ、イラストで統一しなかったのでしょうか…。
読了日:06月06日 著者:

サスペンスの部分はそれなりの解決を見ているのですが、七尾奈美がアシスタントにシナリオを丸投げしていた件(つまりゴーストライターがいた)が不問になってしまっています。結局のところ、奈美にとって漫画は「承認欲求を満たすための手段」でしかなかく、最終的に物語は「女としての幸せの追求」でオチをつける方向性で収束しているため、「漫画家と編集者の職業倫理の問題」が矮小化してしまっています。
読了日:06月06日 著者:芥真木,ひびきゆうぞう

この巻では、2人のキャラクターの過去を辿る過程で、「作画グループ」のメンバー4人(羽場よしあき先生・みなもと太郎先生・聖悠紀先生・清水勇之進氏(聖先生の電話番))、わたなべまさこ先生、永井豪先生、藤子不二雄先生(この頃はまだ「藤子・F・不二雄」「藤子 不二雄Ⓐ」名義ではありません)が登場されています。永井豪先生が設立したダイナミック・プロが、どんな形態で運営されているのかが分かり、人材の多様性や流動性が、まるで中国の春秋戦国時代の食客みたいだなぁと思いました。
読了日:06月05日 著者:芥真木,ひびきゆうぞう

芥真木先生による前書きによると、この作品は「マンガ界の内幕」を描いた作品で、1981年に『女性セブン』に連載されたそうです。マンガの専門誌ではなく一般向けの女性週刊誌だからこそ業界のタブーに触れるようなストーリーにできたとのことで、「様々な意味で、おそらく二度と生み出せないであろう、記念碑的な作品です」と述べていますが、実録モノというわけではなく、内容はあくまで「サスペンスフルなフィクション」であり、実在の漫画家は登場しますが(この巻だと手塚治虫先生が登場しています)、メインキャラクターは架空です。
読了日:06月05日 著者:芥真木,ひびきゆうぞう

『ヴァルダー迷宮の貴婦人ー』、『水たまりのアルテミス』、『Backstage Talk』(あとがき)が収録されています。『ヴァルダ』は、古城を舞台にした吸血鬼モノで、雰囲気的にはかなり好きな部類の作品ではあるのですが、話の発端となる遺言がどんな意図で書かれたのか分からないのが気になりました。(吸血鬼に操られて書かされたのでしょうか…?)『水たまりのアルテミス』は、今ならオーディンはパンセクシャルとして描かれるだろうなぁ…と思いました。
読了日:06月05日 著者:望月玲子

著者が出会った様々な人物の中から、写真と証言が残っている15人の男性の記録をまとめた本です。2002年の出版ですが、これより先に、女性版が出版されていると、あとがきに書かれています。(『戦争を語りつぐ・女たちの証言』『世界の旅から・わたしの出会った女性たち』) 証言集としての読みごたえだけでなく、「一期一会」を大切にすることの重要性も伝わってくる内容でした。
読了日:06月03日 著者:早乙女 勝元

2010年発行の本なので、Twitterというツールを使う上でのリスクというものをほとんど気にかけておらず、「知人にさがしてもらうためには、あたなであることが分かる名前(ユーザー名)にした方がよいでしょう」という記述には、時代を感じます。いわゆる「クソリプ」という言葉がなかった時代なので、著者が想定しているトラブルは「作文スキルの未熟さによって招く誤解」くらいしかありません。英文のレクチャー自体は参考になるのですが、「twinglishという造語を提案したのは私」というアピールに、功名心が滲み出ています。
読了日:06月03日 著者:石原真弓

いつは些細なことでキャッキャとはしゃぐオーバーアクションなバードが、甘い菓子を口にした時だけ妙に冷静で、「新しい発見」に全く心を動かされていないのは、「実は伊藤は甘党」という設定による「ギャップ萌え」を際立たせるための演出だと思われますが、バードをキャラブレさせてまでやることじゃないですし、「クールな男が甘党」であることにそこまで意外性がありますか…? 「クールな男には甘党は不似合い」という価値観って、男性に対する偏見でしかないですし、それをギャグとして強調されても…。
読了日:06月03日 著者:佐々 大河

この巻の李瓶児は、十日に一度男の精を吸い尽くしてようやく美しさを保っているという、「あと一歩でゾンビになりそうな吸血鬼」という感じで始まり、外法が解けて肉体がドロドロになり「生者とは言えず、かといって死者とも言えない」状態で終わっています。李瓶児の蘇生を望む蟲王によって肉体の残骸が壺に保管される一方で、この世を彷徨う魂は「次の居場所」を見つけており、「魂の行方」と「肉体(の残骸)の行方」のそれぞれが気になる展開となっています。
読了日:06月03日 著者:竹崎真実

慈生の結婚生活のエピソードは、サスペンスフルな展開を経て、苦い後味の悲劇に終わりました。夫婦の間に確かな愛情があっただけに、「ありえたかもしれない幸せな未来」を想像せずにはいられません。李桂姐のエピソードは断捨離ブームへの皮肉、「奥方様の料理自慢会」のエピソードは大食いバラエティ番組への問題提起があるように感じられます。露々の身体を“器”にして、李瓶児が復活してしまいましたが、生き霊として憑りついているのか、死者として憑りついている(肉体は完全に滅んでいる)のか、果たしてどちらなのでしょうか…。
読了日:06月02日 著者:竹崎真実

読了日:06月02日 著者:

安彦良和先生のタッチをかなり再現できてはいるんですが、横顔の描き方に違和感がありますし、女性キャラ(=アルフィン)の特定の表情(「ふくれっ面」とか「嬉しくて上気した顔」とか)の「萌え表現」がウザいです。一コマ一コマの絵のレベルは高くても、演出の技術が未熟で、ジョウの行動原理が分からず、どういった思考で判断を下して行動しているのか(あるいは何も考えないタイプなのか)が伝わってこないですし、アルフィンがジョウに惚れているのは分かりましたがジョウとの関係性が「恋人」なのか「彼女候補」止まりなのか分かりません。
読了日:06月01日 著者:高千穂遙

周家の中での春梅の立場は「第二夫人」ですが、先に周家に来て菊軒との間に一児をもうけている功二児の立場は「妾」なので、妻としての立場は「功二児より春梅の方が上」なのに、周家に来た順番でいえぱ功二児は「先輩格」にあたるので春梅からみれば功二児は「姐さん」ということになり、でも、出自は二人とも「召使い」で同格…という、なんとも微妙な関係性が、当初は気になりましたが、周家の行きすぎた家父長制による女児へのネグレクトと、功二児の「代理によるミュンヒハウゼン症候群」が露呈する展開には、「そうくるか~!」と唸りました。
読了日:06月01日 著者:竹崎真実

露々は、猫の雪獅子相手に悪事を全部話してしまうあたり、悪事が大好きというわけではなく、多少なりとも自分の中の悪意というものに無意識に嫌悪感を抱いており、そのストレスが、雪獅子相手への「罪の告白」という形で現れているのでは…と感じました。
読了日:06月01日 著者:竹崎真実
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