更紗のタペストリー(L)

auoneblogから引っ越してきました。 主に、アート・書籍・音楽・映画などについて語ってるブログです。 もうひとつのブログ(http://sarasata.seesaa.net/)では、日経新聞の連載小説の感想を綴っています。

2012年08月

科学技術館の『アトミックステーション ジオ・ラボ』(その4)

ブログネタ
博物館の展示イベント に参加中!

その3からの続き)

 展示物の紹介は放射性廃棄物に関するものだけにするつもりでしたが、それだけだとちょっと物足りないので、ついでに原発そのものに関する展示もご紹介します。


 ↓こちらは原子炉の模型です。唯一、昔と同じコンセプトで作られている展示物です。


ジオ・ラボ7


 模型の中には水が入っていて、ボタンを押すと格子状の物(制御棒)が動いて、下の方から空気がブクブク出てきます。このブクブクは水が沸騰していることを表しているのですが、本当に沸騰しているわけではないので、原発の仕組みがよく分かっていない人は、おそらく、「なんか空気が出てきてブクブクいってるなぁ」くらいにしか思わないのではないでしょうか。

 ↓Youtubeに、古い方の模型の動く様子が分かる動画がありました。



 新しい方の模型は、模型の周辺が飾り立てられていますけど、模型そのものの構造は古い方も新しい方も変わっていません。

 古い模型の展示解説が知りたい方は、科学技術館_アトモス_展示解説.pdf←こちらの13ページと14ページをご覧下さい。

 2007年4月4日の記事でも書きましたけど、私は、この模型そのものは良くできた展示だと思っています。分かる人には、「原子力発電は熱エネルギーで蒸気を作り、タービンを回すことによって発電している」ときちんと分かりますから。

 でも、この展示を見て、放射性物質が含まれた温排水が海に捨てられていることや、原子炉内に猛烈な放射線が発生していることや、安全に処分する方法の確立されていない「使用済み核燃料」という名の高レベル放射性廃棄物が生じることを理解できる人が、いったいどれだけいるでしょうか?
  この博物館は、明らかに子供をターゲットにして作られています。この展示を見て、「原子力発電は熱エネルギーで蒸気を作り、タービンを回すことによって発電している」と理解できる子は、少数ながらいるでしょうけど、その少数の子供のうちの一体何%の子が、隠蔽されていることに気付けるでしょうか? 大人ですら何人気付けるかあやしいものです。私はたまたま原発に興味を持っていて、この博物館に初めて来た時にはある程度の予備知識がありましたけど、仮に私が全く原発に興味のない人間だったら、この模型の意味は全く分からなかったと思います。


 さて、お次はこれ。↓この黄色いモノ、一体何だと思いますか?

ジオ・ラボ8


 答えはウラン精鉱のレプリカです。ウラン鉱石を精錬すると、このように黄色の粉末となるため、イエローケーキと呼ばれています。

 ↓こちらはウラン鉱石のレプリカです。自然界ではウランはこんな状態なわけですね。

 ジオ・ラボ9

 「アトミック・ステーション ジオ・ラボ」は原発推進を目的としている展示室ですから、イケローケーキの解説には、ウランの採掘の危険性なんてもちろん書かれていません。

ジオ・ラボ8(ウランをとりだす)

 ↑ウーラくんの解説はご覧の通りです。ウランの採掘の際に作業員が被曝することや、採掘跡が汚染されることなんて、まったく書かれていません。
 日本では岡山県の人形峠でウランの採掘が行われていたことは、7月5日の記事で書きました。人形峠のウラン採掘で生じた残土の放射能汚染は、現在も問題になっています。


 イエローケーキといえば、↓こんな映画があります。残念ながら私はまだ観ていませんが、いつか観てみたいと思っています。



↑映画『イエロー・ケーキの真実~脱原発を決意したドイツから』予告



↑映画『イエロー・ケーキの真実~脱原発を決意したドイツから』ダイジェスト版


 ↑ヨアヒム・チルナー監督のインタビュー


その5に続く)

科学技術館の『アトミックステーション ジオ・ラボ』(その3)

その2からの続き)

ジオ・ラボ2

 さて、真ん中の黒いのっぺりした物(=ガラス固化体)の次にご紹介するのは、これの下に展示されている鉄琴のようなものです。

ジオ・ラボ4


 ↑ どう見ても鉄琴ですね。鉄琴とガラス固化体に何の関係があるのかといいますと…。

ジオ・ラボ4(バチ)
石琴
天然バリアの岩盤と同じ石だよ
バチを使っておとをならしてみよう

 …な、なんと!ウーラくん曰く、これは鉄琴ではなく石琴なんだそうです!
 まぁ、展示としては面白いアイデアですけど…。この石琴でちびっ子がいくら遊んでも、「放射線と熱を出しまくっているガラス固化体を封じ込めるのに相応しい素材であるかどうか」なんて分かりませんよね

 石琴の左に展示されているのは、『世界の地層処分』というタッチパネル式のモニターです。

ジオ・ラボ6

 モニターには地球儀が表示されていまして、国旗をタッチすると、世界各国の地層処分事業の進展状況の解説が表示されます。

 例えば、スウェーデンの国旗をタッチすると、↓こんな風に、スウェーデンの地層処分事業の進展状況の解説が表示されます。

ジオ・ラボ6(スウェーデン)

 
 スウェーデンの場合は処分場はエストハンマル自治体フォルスマルクに選定されていますが、他の国の処分場はフィンランド以外は「候補」の段階か「未定」かのどちらかです。日本はもちろん「未定」です。
 
 処分場に興味のある方には、「諸外国での高レベル放射性廃棄物処分(wiki)」(http://www2.rwmc.or.jp/wiki.php)がおすすめです。経済産業省の委託により、(公財)原子力環境整備促進・資金管理センターが運用しているページです。



 石琴の右に展示されているのは、『地層ダイバー』というゲームです。


ジオ・ラボ5

 すぐ近くにある『世界の地層処分』という展示がタッチパネル式だったので、てっきりこのゲームもタッチパネルで動かすのかと思い、画面をあっちこっち押したのですが全然動かず、「おかしいなぁ~」と思いつつよく見てみたら、ゲームはコントローラーで操作するシステムでした

ジオ・ラボ5(コントローラー)

 コントローラーには「ELECOM」と書かれています。大阪のコンピュータ 周辺機器メーカーさんですね。

 ↓科学技術館HP内の『地層ダイバー』の解説
地層ダイバー
地層処分事業が確立された未来の仮想空間を舞台に、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の埋設の達人を目指してミッションに挑戦するパソコンゲームです。

 「地層処分事業が確立された未来の仮想空間を舞台に…」ということは、つまりは、現在は地層処分事業が確立されていないということを示してるのですが、それに気付くちびっ子は果たしてどれくらいいるのでしょうか?
 この『地層ダイバー』は、科学技術館の中でも典型的な子供騙しの展示です。

・現在は地層処分が確立されていないから、未来の架空の話をでっち上げる。
・高レベル放射性廃棄物の問題を「ゲーム」として展示して、「現実味のない問題」として認識させる。


 「その1」でも書きましたけど、子供騙しの展示に子供が騙されてしまうのは仕方がないことですが、大人が騙されてしまうのはただの勉強不足です。大人は、科学技術館の展示を見て、隠蔽されている事や印象操作されいる事に気付いて下さい。


その4に続く)

科学技術館の『アトミックステーション ジオ・ラボ』(その2)

ブログネタ
博物館の展示イベント に参加中!
その1からの続き)


 「アトミックステーション ジオ・ラボ」の全ての展示を紹介すると長すぎるので、私が一番酷い内容だと思った放射性廃棄物に関する展示をご紹介します。


ジオ・ラボ2

 まず、真ん中の黒いのっぺりした物についてご説明します。

ジオ・ラボ3

 ↑これは何かと言うと、「ガラス固化体」の展示です。

 ↓「アトミック・ステーション ジオ・ラボ」のマスコットキャラクター「uoora(ウーラ)くん」による解説の数々。

ジオ・ラボ3(ガラス固化体)


ガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)
ガラスは変化しにくいものだから、放射性物質がしっかりとじこめられるんだ。


ジオ・ラボ3(あとかたづけ)


あとかたづけをちゃんとしなくちゃね

ガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)

使用済みの燃料から、再利用できるウランとプルトニウムを回収すると、放射線をたくさん出す廃液が残ります。この廃液をガラスと混ぜて固めたものをガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)といいます。これを人間の生活環境からへだてるための、もっとも確実な方法が地層処分です。

ジオ・ラボ3(地下に処分するんだね)


地下に処分するんだね

多重バリアシステム

ガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)は、地下300m以上の深くて安定した岩盤の中に、しかも性質のちがう素材で何重にもつつんで埋められます。地中の岩盤による天然のバリアと人工のバリアの組み合わせで、放射性物質を長い間しっかりと閉じこめることができると考えられています。


 ↑ガラス固化体からは放射線と熱が出まくりなのに、ウーラくんはその件は完全スルーです。
 
 経済産業省資源エネルギー庁の「高レベル放射性廃棄物のホームページ」(http://www.enecho.meti.go.jp/rw/)の中にある「高レベル放射性廃棄物と地層処分」のコーナー(http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/qa/syo/syo03.html)には、製造直後のガラス固化体は1500Sv/hの放射線(20秒で100%の人間が死亡するレベル)を出しており、発熱量が2300W(1リットルの水が2~3分でお湯になる発熱量)あることが書かれています。

 私が「その1」の記事で書いた、放射性廃棄物に関する展示の「事実の隠蔽」と「印象操作」とは、このことです。製造直後のガラス固化体からは「人が死ぬレベルの放射線」と「2~3分で水が沸騰するレベルの熱」が出ているのにそれを書かないのは「事実の隠蔽」に他なりませんし、ガラス固化技術やガラス固化体自体があたかも「安全」であるかのような解説はどう考えても「印象操作」です。
 
 製造直後のガラス固化体からは猛烈な放射線と熱が発生しているということを考えれば、ガラス固化の作業の過程にはとてつもない危険が伴っていることが容易に想像できます。そして、ガラス固化の過程において、新たな放射性廃棄物が生まれることも…。こんなこと、小学生にだってたやすく想像できます。
 小学生にだってたやすく想像できることだからこそ、科学技術館は、ガラス固化体から猛烈な放射線と熱が発生していることを隠しているのです。これを子供騙しと言わずになんと言うのでしょうか。

 ウーラくんは「オーバーパック」「緩衝材」「岩盤」の解説もしているのですが、長くなるので省きます。



その3に続く)
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