更紗のタペストリー(L)

auoneblogから引っ越してきました。 主に、アート・書籍・音楽・映画などについて語ってるブログです。 もうひとつのブログ(http://sarasata.seesaa.net/)では、日経新聞の連載小説の感想を綴っています。

2013年03月

『東海村「臨界」事故』(編著:槌田敦+JCO臨界事故調査市民の会)

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 JCO臨界事故について知りたくて、『東海村「臨界」事故』(編著:槌田敦+JCO臨界事故調査市民の会)という本を読んでいたら、ヨウ素被曝についての記述があったのですが、「ヨウ素で被曝するのは甲状腺だけ」という先入観を覆す内容だったので、その部分を詳しくご紹介します。

 【表6】を見てください。人間が呼吸をすることにより体内に吸い込まれた後、この短半減期のヨウ素群により身体がどのような被曝状態になるのかをまとめました。
 まず、呼吸によってこれらヨウ素群は鼻腔に付着します。これにより脳が放射線でやられるので頭痛がします。次に気管支に付着して隣の食道を攻撃するので吐き気をもよおします。その次に肺に入り隣の胃がやられ食欲減退をおこし、ご飯が食べられないということになります。さらに血液に溶けて身体全体にまわると全身が被曝することによって、ぐったりと疲れてしまいます。
 そして血液に溶けた各種のヨウ素は体内をぐるぐる回り、最後に甲状腺に入り甲状腺障害を起こします。ですから、「ヨウ素なら甲状腺」というのは間違っています。最終的に甲状腺にいくのであって、原子力事故の直後では、本質的な被曝として脳、食道、肺、胃そして全身の被曝症状となるのです。この症状のあった人はヨウ素群による被曝者として将来を監視しなければなりません。 

(『東海村「臨界」事故』52~53ページ)


『東海村「臨界」事故』表6



  福島第一原発の事故でマスコミや学者が取り上げたヨウ素は「ヨウ素131」のみでしたが、核分裂によって生じる放射性ヨウ素はヨウ素131だけではありません。よって、上記では「ヨウ素群」「各種のヨウ素」と書かれています。 それでは、ヨウ素131以外にはどんなヨウ素があるのかといいますと…。


 【表4】を見て下さい。核分裂反応が終了した1分後で言いますと、1番多いのは半減期4分のヨウ素137などの放射能です。表ではまとめて「その他」としました。1時間後ではヨウ素134、1日後だとヨウ素133が最大です。これらが、空気中をただよい、呼吸により体内に取り込まれるのです。
 短半減期のヨウ素群の呼吸による被曝は、1日後のヨウ素131の被曝に比べて1分後だと1万9千倍、1時間後だと440倍、1日後では23倍の量の被曝をすることになります。これらの事故直後の被曝者たちは、開けっ放しのJCOの排気孔から流れてきた放射性ヨウ素群で内部被曝したのです。ところが、原子力技術者や医者たちは、事故直後ではこの揮発性の短半減期のヨウ素群による被曝がもっとも怖いということを考えたこともなかったのです。 

(『東海村「臨界」事故』49ページ)

『東海村「臨界」事故』表4

 【表4】の下に参考として書かれている小出裕章氏の「JCO事故における被曝と放射能問題」は、PDFファイルでネットにアップされています。興味のある方はご覧になってみて下さい。

原子力安全問題ゼミ
 『JCO事故における被曝と放射能汚染問題』
京都大学 原子炉実験所 小出 裕章
〔1999年11月1日(月)、4日改訂〕
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No76/kid1101R.pdf


 原発事故直後は「ヨウ素131は半減期が8日と短いから、被曝量が少ない。よって、被曝のリスクは大したことない」との言説を多く見かけましたが、その一方、「半減期が短ければ短いほど放射線を一気に放出するため、被曝量は多くなる。よって、被曝のリスクは大きい」との言説も少数派ながらありました。(ただし、後者の言説は、「プルトニウムは半減期が二万年ととんでもなく長いから、被曝のリスクは小さい」という言説とのセットであることが多かった印象ですが。)

 「半減期が短ければ短いほど放射線を一気に放出する」のであれば、半減期8日のヨウ素131に比べて、半減期が数時間のヨウ素の方が被曝量ははるかに大きくなります。原子力災害の発生した場所にいる作業員や、付近の住民は、ヨウ素131からの被曝だけでなく、「半減期数時間のヨウ素も含めたトータルでの被曝」に注意しなければならないわけです。

(ちなみに、ヨウ素の中には半減期がものすごく長いものもあり、テルル129(半減期69.6分)が壊変したことにとって生じるヨウ素129は半減期が1570万年です。〔参考→原子力資料情報室〕)

 しかし、JCO臨界事故で放出された短半減期のヨウ素群のそれぞれのベクレルがどのくらいであったのかは、ネットで検索してみても、ほとんど出てきません。かろうじて出てくるのが、先程の『JCO事故における被曝と放射能汚染問題』の6ページに記載されている「表3 土とヨモギについてのよう素検出データ」と、ATOMICAというサイトの中の『JCOウラン加工工場臨界被ばく事故の概要 (04-10-02-03)』のページからリンクが張られている「表4 JCO臨界事故における核種分析結果(総括表)」です。前者の表にはヨウ素131とヨウ素133、後者の表にはヨウ素131とヨウ素133とヨウ素135のベクレル数が書かれています。

 後者の表には出展として『原子力安全委員会ウラン加工工場臨界事故調査委員会:ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告(1999年12月24日)』と書かれているので、ググってみたら、原子力規制委員会のホームページの中に、その報告書がアップされていました。報告書の中「Ⅱ.事故の全体像」という項目に、各種分析結果の表が載っています。
 …が!ひじょーに見辛いです。ATOMICAの方に載っている表の方が、断然見易いです。


『ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告』
(平成11年12月24日 原子力安全委員会 ウラン加工工場臨界事故調査委員会)
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/sonota/uran/siryo11.htm
 →「Ⅱ.事故の全体像」http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/sonota/uran/siryo112a.htm


 『JCO事故における被曝と放射能汚染問題』を見てみると、臨界事故当時、公表されたのはストロンチウム91 やセシウム138などの 希ガスの崩壊生成物だけであり、ヨウ素を含めた希ガス以外の放射性核種は公表されていなかったことが分かります。
 
 臨界事故発生直後から、放射性希ガスが環境に漏洩したことは、モニタリングポストのデータを見れば、一目瞭然であった。また、希ガスの崩壊生成物であるSr-91 やCs-138 などが各種の試料から検出されたことも早くから公表されて、それを裏付けた。放射性核種のうち、希ガスに次いで環境に放出されやすい核種はよう素であり、人体への影響も大きい。当然、よう素に対するモニタリングは、事故直後から精力的に行われたはずだと私は考えた。ところが、事故発生後、1日たっても、2日たっても、よう素を含め、希ガス以外の放射性核種がどのように環境に漏洩したかについては、まったく情報が出てこなかった。東海村は、「原子力が地場産業」と言うように、日本原子力研究所(原研)、核燃料サイクル開発機構(核燃機構)をはじめ多数の原子力関連施設が立地し、事故が発生して以降、多数の専門家が事故への対応に当たったし、放射性物質による環境への影響も調べたはずであった。それでもなお汚染についての情報がないということは、汚染そのものが生じなかったということかもしれないと私自身が思いかけた。それでも、よう素が全く漏洩しないでいてくれるとは思えなかったし、ちょうど10 月2 日の夜になって、荻野晃也さんが現地に行ってくれることになり、
彼が採取してくれる試料を私が放射能測定することにした。彼が3 日午前中にサンプリングした試料は直ちに宅急便で実験所に送られ、それを受け取った4 日午前から私はGe 半導体検出器によるγ線スペクトロメトリによって放射能測定を始めた。始めたとたんに、CRT のスペクトル上にI-131,I-133 のピークが現れた。昼過ぎまでに概略を把握した私は、放射性よう素による環境汚染データをマスコミに公表し、あわせて科学技術庁に厖大に蓄積しているはずの関連データを公開させるように依頼した。マスコミからの問い合わせに対する科技庁の回答は、「放射性物質のデータはとりまとめ中で、いつ公表するかは分からない」というものであったという。

『JCO事故における被曝と放射能汚染問題』4~5ページ)


 科学技術庁(現在は文部科学省)、もしくは原子力安全委員会(現在は原子力規制委員会)が、1999年12月24日以前に放射性物質のデータを公表したのかどうかは、ちょっと分からないのですが、おそらく、公表していない可能性が大ではないかと思います。
 ヨウ素135よりも半減期の短いヨウ素132(半減期2時間)やヨウ素134(半減期1時間)などに関しては、「生成されていない」のか「生成されていてもごくわずかの量だったから検出できなかった」のか「ヨウ素群の計測を開始した時には無くなっていた」のか、定かではありません。素人考えですが、「生成されていない」というのはちょっと考えにくいと思うので、「生成されていてもごくわずかの量」で、かつ、「ヨウ素群の計測を開始した時には無くなっていた」のではないかと思います。(違っていたらすみません。)


 
 『東海村「臨界」事故』という書籍のテーマ自体は、「JCO臨界事故における動燃と科学技術庁の責任の追及」なので、放出された放射性物質の種類や量は本筋ではありません。
 ですが、「原子力災害により放出されるヨウ素といえばヨウ素131」「放射性ヨウ素で被曝するのは甲状腺のみ」との思い込みがあると、原発事故による被曝リスクを過小評価することに繋がるのではないかと思い、ヨウ素について長々と書かせて頂きました。

  『東海村「臨界」事故』を読んで衝撃的だったのは、ヨウ素に関する詳しい記述だけでなく、「バケツの使用は臨界事故とは何の関係もない」ということです。これは、小出氏の『JCO事故における被曝と放射能汚染問題』でも指摘されています。


ステンレス製のバケツを使ったことが悪いかのようにもいわれたが、作業員が現場での工夫を凝らして作業することは褒められこそすれ、非難されるいわれはない。その上、バケツの使用は工場のマニュアルとして認められていた。そのマニュアルが悪いとの批判もあるが、扱っていたものが粉体や揮発性の溶液ではないから、バケツを使うこと自体も褒められることではないとしても著しく悪いことでもない。

『JCO事故における被曝と放射能汚染問題』11ページ)

 
 事故発生当時、やたらに「バケツでの作業」がマスコミによって強調されたのは、臨界事故の責任があたかも作業員にあるように印象操作するためです。すなわち、動燃と科学技術庁を免責するために、「バケツでの作業」が強調されたのです。臨界事故が発生した経緯を丁寧に追っていけば、事故の責任の所在が動燃と科学技術庁にあるのは明白であることが、『東海村「臨界」事故』の中で詳しく述べられています。裁判では作業員に全ての責任をなすりつけた判決になっているのは、裁判所もグルとなって核燃料サイクルを推し進めているということに他なりません。

 事故発生当時、マスコミは、被曝による健康被害は作業員の方たちのみしか報道しませんでしたが、『東海村「臨界」事故』では、近隣住民の健康被害についても詳しく記述しています。
 また、東海高校の教員による事故発生直後の記録や、生徒による証言も掲載さており、JCO臨界事故を知る上での貴重な資料となっています。




東海村「臨界」事故―国内最大の原子力事故・その責任は核燃機構だ

東海村「臨界」事故―国内最大の原子力事故・その責任は核燃機構だ

科学技術館『アトモス』について(その8)

その7からの続き)


アトモスシアター(表)


アトモスシアター
銀色の大きな玉の開いた口から出てきたのは…

インストラクターのおねえさんといっしょに体験する放射線と原子のおもしろ実験室。3つのテーマが決められた時間に始まるのであらかじめチェックしておいてね。
1.放射線を探してみよう 2.原子からのメッセージ 3.魔法の国の不思議な光

1.放射線を探してみよう
放射線をはかる測定器(そくていき)で、その場の放射線をはかってみるとどうなるかな? ボールを使ったシューティングゲームで放射線の種類を実験してみよう。

2.原子からのメッセージ
黒い箱に大きなドライヤーのようなものが出てきたぞ。ドライヤーのようなものには、つぶつぶがついているよ。ここから何かを出しているのかな? 箱の中を見ることができるかな?

3.魔法の国の不思議な光
見た目は同じなのに、箱の中に入れると模様(もよう)が光る玉と光らない玉がある。インストラクターのおねえさんは箱に入れるまえに光る玉と光らない玉を見分けることができるのはどうしてだろう?

ポイント
光には目に見える光と目に見えない光の2種類があるんだね。目に見えるか見えないかは、光の波の長さつまり波長(はちょう)の長さで決まるんだ。目に見えない光のなかまにはいろいろな種類があるよ。 

アトモスシアター(裏)


光の仲間

 このイラストは光の仲間たちを表していて、アトモスシアターでも同じようなイラストを使っているよ。光はその波長の違いによっていろいろな種類があるんだね。波長の長いX線やガンマ線などは放射線といわれる仲間なんだ。
 放射線には波の仲間(電磁波)以外にも、つぶ(粒子)状のものもあり、自然界では宇宙からとんでくるもの(宇宙線)もあるんだよ、これらはアトモス展示室の「スパークチェンバー」と「きりばこ」で観察(かんさつ)できるよ。

 上記の説明文を見ただけと、「アトモスシアター」という展示は実験がメインのような印象を受けると思いますが、私が覚えているのはショートフィルムの上映の方だけで、実験は全く覚えていません。
 2007年4月4日の記事に書いた通り、このショートフィルムでは、「ちゃんと管理さえすれば、原子力は安全だね」というナレーションが流れていました。折しも、私が娘2人を連れて科学技術館に行った2007年という年は、東電によるデータの改ざんが発覚したり(2月1日)、志賀原原発の臨界事故が8年経ってやっと公表されたり(3月15日)、中越沖地震の影響で柏崎刈羽原発で放射能漏れが起きたり(7月16日)した年です。


・nikkei PB net
「東電、原発の装置故障を隠ぺい、77年からデータ改ざん続ける」(2007年2月1日) http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz07q1/524352/

・失敗知識データベース
「志賀原発、臨界事故発覚」
http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CZ0200701.html

・NHK エコチャンネル
「隠された臨界事故 ~志賀原発で何が起きたか~ (1)」(2007年3月23日 放送
 http://cgi4.nhk.or.jp/eco-channel/jp/movie/play.cgi?movie=j_local_20070323_0948
「隠された臨界事故 ~志賀原発で何が起きたか~ (2)」(2007年3月23日 放送
http://cgi4.nhk.or.jp/eco-channel/jp/movie/play.cgi?movie=j_local_20070323_0948b

・東京電力HP
「柏崎刈羽原子力発電所6号機の放射性物質の漏えいについて」(平成19年7月16日)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07071604-j.html

・耐震偽造と報道責任
「中越沖地震 原発事故 原子力資料室」
http://tobeajornalist.blog71.fc2.com/?mode=m&no=153


 私が娘2人を連れて科学技術館に行ったのは4月4日の少し前なので(多分、4月1日頃)、柏崎刈羽原発の放射能漏れはまだ起こっていませんが、志賀原発の臨界事故発覚のニュースがかなり大きく報道されていた時期ですし、東電のデータ改ざんも、もちろん記憶に新しかったです。
 科学技術館に行く直前に読んだ日経の朝刊にも、放射能漏れに関する記事が載っていましたし(具体的な内容は忘れましたが、タイミング的に、志賀原発の臨界事故発覚に関連する記事だったと思います)、「原発の放射能漏れ事故のニュースが流れているこの時期に、よくもまぁ、“放射能は安全に管理されている”という印象を刷り込むショートフィルムを流していられるよなぁ」と、当時の私はものすごく呆れました。

 今思えば、あの時のインストラクターのおねえさんは、ものすごく必死に「この展示を見て!」とアピールしていました。科学技術館には早い時間に行ったため、「アトモスシアター」が展示されているフロアには私と娘2人の計3人しかいませんでした。うちの娘は「アトモスシアター」には全然興味を示していなかったので、「他の展示を見ますから…」と一度は断ったのですが、「ちょうど今上映が始まる時間ですから!せっかくですから是非見て下さい!」と、かなり強く勧誘してきました。
 もしかしたら、志賀原発の臨界事故発覚直後で、原発の安全性に疑問を持つ人が増えた時期だったため、上の人(科学技術館の運営者とかスポンサー)に「原発の安全性を刷り込むために、積極的にショートフィルムを見せろ!」という指示でも受けていたのかもしれませんね…。


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