本当は『ケロロ軍曹』と『魔法にかけられて』の方の感想を先に書くつもりでいたのですが、あまりにも『ドラえもん』の出来が酷かったので、こちらを先に書くことにしました。

 『ゲド戦記』と全く同じ方向性でつまらない映画でした。

 絵柄がジブリ臭いのは『のび太の恐竜2006』からのことなので、絵柄に関してはもう慣れたのですが、演出やストーリーやキャラクターまでジブリ臭プンプンです。
 ジブリっぽくても面白ければ文句はないのですが、面白いとか面白くないとかいう問題以前に、話の意味が全く分からないんです。

 テーマが環境問題なのは予告の段階で明白になっているので、オチが「自然を大切に」になるのは子供でも予想がついていることなんです。オチが「お約束」であるのなら、そこに行き着くまでのストーリーをきちっとしないと、「自然は大切だぁ?んなこたぁ分かってるんだよ」ってことになってしまうわけですよ、あの『アース』のように。

 原作の方は、ただ単に「自然を大切に」ではなく、「なぜ自然を大切にしないといけないのか」まできちっと説明されているんです。しかも、自然を「守る」という考え方が、本当はエゴイズムであることも、遠まわしに伝わってくるんです。たった25ページ(表紙含む)しかない作品でありながら、藤子・F・不二雄先生のSF漫画に特有の、柔らかなニヒリズム(ちょっと変な表現ですが)が発揮されている傑作なんです。

 それなのに、映画版は、「なぜ自然を大切にしないといけないのか」が全く説明されていませんし、自然を破壊するエゴは強調されていても自然を「守る」ことのエゴが全く伝わってきません。

 25ページしかない原作を無理矢理長編映画に作り変えること自体にそもそもの無理があったのかもしれませんけど、それにしたって、話を引き伸ばすためにジブリのメソッドをそのまんま利用するなんて、芸がなさ過ぎます。

 何の必然性もなく出てくる飛行シーン。(道具を使わず、自力で飛んでます。)
 笑顔がこぎたねぇガキ。(既に映画を観た人なら、どのキャラか分かりますよね?)
 ツンデレなヒロイン。(しずかちゃんではありません、念のため。)
 地表を覆いつくす、わけわかんないデロデロしたモノ。
 制御不能のオーバーテクノロジー。

 個人的に一番イタいと思ったのは、SFの部分が全然ダメなことです。
 これが正真正銘のジブリ映画だったらSFっぽさなんて全く期待しないのですが、よりによって『ドラえもん』でSFの部分がダメだなんて、致命的です。

 ジブリ映画は基本的には科学文明を批判するスタンスで作られているので、SFとは相性が悪いんです。(『風の谷のナウシカ』をSFだと思っている人が多いかもしれませんが、あれは未来を舞台としたファンタジーであって、SFではありません。)
 「自然VS科学文明」という対立構図で子供向け映画を作れば当然のように「自然=善」「科学文明=悪」ということになりますが、あいにくこの映画の原作(『さよならキー坊』)はそんな単純な善悪二元論的な話ではないんです。
 おそらく、脚本を書いた人は、ジブリ的な善悪二元論を強引に『さよならキー坊』に当てはめようとしてしまったのではないでしょうか。ジブリ的な善悪二元論でいけば、科学文明の賜物であるドラえもんの便利グッズで世界を救うわけにはいかず(とはいっても、ある道具のおかげで人類は誰一人死なずに済んでいます)、結果的に愛だか奇跡だかで世界を「浄化」するというオチで話をまとめる以外に方法がなくなってしまったのではないでしょうか。
 愛や奇跡でオチをつけることを否定するつもりはないのですが、それだったら「ドラえもんワールド」を使う必要性は全くないんです。キテレツ大百科でもエスパー魔美でもパーマンでも応用可能なんですから。

 今回の映画を観て、唯一感動したのは、次回作の予告です。どうやら来年は私が大好きだった作品のリメイクをやるようです。
 どうか来年はちゃんとした内容でありますように