<第七章 長い坂(一)─4>

 二日目は、饅頭を五百個売った。
 店を閉めるのは六時で、それまでに饅頭は売り切っていた。
 賄いの女が二人雇われていて、工場も店も一緒に食事になる。その女たちの監督も、瑠韋がしなければならなくなった。
 瑠韋は、献立の表を作り、材料の買物などは女たちに任せた。
 五日目になると、売る饅頭は千個になり、それも四時には売り切っていた。
「よし、箱詰を売るぞ。四個入り、八個入り、十二個入りたい。それぞれ、十個ずつにするけん」
 裏庭の倉の小豆は、いつも五噸ほど蓄えられ、古い物から使って黴が出ないように注意した。
「このまんま、しばらく商いばして、それから和菓子ばはじめようて思うとる」
「これ」
 瑠韋は、正太に箱をひとつ出した。中は罔象女(みずはのめ)の像があった。
「捨てんで、持っとったんか?」
「あたしは、こいばお守りにしとったよ」
「そうか、お守りね。瑠韋、こいば絵にして、箱に刷るちゅうのはどがんかな」
 和菓子と正太が言った時、なぜか瑠韋は罔象女を思い出したのだった。



 いつかは出てくると思っていた「罔象女の像」が、ここでやっと再登場
 この二人にとっての「罔象女の像」の意味を知っている人物って、ここでは仙吉だけってことになるのでしょうか?