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その18からの続き)


 今回ご紹介するのは、2013年8月13日の日経新聞朝刊です。

↓2013年8月13日の日経新聞朝刊38面

日経朝刊2013-8-13


「トラブル 直ちに連絡」
J-PARC事故 対応策で報告書


 茨城県東海村の加速器実験施設「J-PARC」の放射性物質漏洩事故で、施設を共同運営する高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研開発機構は12日、トラブルを通報するかどうか判断に迷う場合、直ちに責任者に連絡する対応策を盛り込んだ報告書を、原子力規制委員に提出した。さらに最終報告書をまとめる方向だが、時期は未定としている。
 報告書では、判断に迷うケースや、他の施設との情報共有が必要な事態に備え、指揮命令や連絡通報体制を明確化した。
 事故は5月23日、機器の誤作動で想定外の放射性物質は発生。研究者ら34人が1.7ミリシーベルトの内部被曝(ひばく)をした。施設の担当者は事故発生後、汚染は管理区域内にとどまり、被曝も基準値以下と考え、国などへの報告は必要ないと判断。しかし同24日、他施設からの連絡で区域外への漏洩が判明した。

日経電子版
【トラブル、直ちに連絡 J-PARC事故で報告】(2013/8/12 20:50 配信)
http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASDG1203J_S3A810C1CR8000&uah=DF_SOKUHO_0010



>他施設からの連絡で区域外への漏洩が判明した。


 ・・・あれ? これは初めて見る情報です。
 ここ3カ月の、日経新聞のJ-PARC関連の記事では、そんな情報は載っていませんでした。
 Wikipediaの「J-PARC放射性同位体漏洩事故」のページを見てみると、放射能漏れを検知したのは「東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所」のモニタリングポストだそうで、これをうけて、「原子力科学研究所」の緊急連絡先に通報されたようです。(「東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所」も「原子力科学研究所」も、日本原子力研開発機構の施設です。)  

 東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所のHPを見てみたら、環境放射線の監視のページがありました。

【 東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所HPの「境放射線の監視」のページ】
 
http://www.jaea.go.jp/04/ztokai/kankyo/kankyotop.html


 上記のページには、

 「核燃料サイクル工学研究所では再処理施設をはじめとする多くの施設で放射性物質を取り扱っております。
 これらの施設から出る排気、排水は、高性能フィルターや廃液処理設備によって放射能をほとんど除去し、さらに国や県により定められた放出基準値を下回っていることを確認して環境中へ放出しています。
 このような放射性気体及び液体廃棄物の放出管理と合わせて、放出された放射性物質が環境などへ影響をあたえていないかを確認するために、環境モニタリングを行っております。 」

 ・・・という説明文がアップされているんですけど、よく読んでみると、結構怖い内容です。


>これらの施設から出る排気、排水は、高性能フィルターや廃液処理設備によって放射能をほとんど除去し、

 ↑「ほとんど除去し」ということは、全部取り切れず、環境に漏れている放射性物質があるということです。


>このような放射性気体及び液体廃棄物の放出管理と合わせて、放出された放射性物質が

 ↑放射性気体及び液体廃棄物の「放出管理」をしているということは、要するに、管理下であれば、放射性気体と液体廃棄物は環境に漏らしていいということになっているということです。


 このブログで何度か指摘していますが、日本では、環境を汚染する物質の規制というものは、「総量」ではなく「濃度」で決定されています。つまり、薄めればどんなにたくさんの量の汚染物質でも漏らしてもいいという決まりになっているんです。
 こんなザルのような規制ですから、何か事故が起こって汚染物質が環境に漏れる事態が発生した場合、その施設の管理者は当然、「時間が経って薄まればOKなんだから、さっさと外に漏らして拡散しよう」という思考になります。(2007年の王子製紙の「ばい煙の排出基準超過、データの不適切な取り扱いの等の問題」は、まさにこの思考から発生した事件です。)

 J-PARCの管理者(日経の記事では「担当者」となっていますが、一体どういう肩書の人物なんでしょうか? 6月19日の日経の記事に書かれている「当時つくば市にいた放射線取扱主任者」と同一人物?)は、「汚染は管理区域内にとどまり、被曝も基準値以下と考え」たから、「国などへの報告は必要ないと判断」したと書かれていますが、この証言には明らかに矛盾があります。「汚染は管理区域内にとどまっていた」との認識であったのなら、それはすなわち、「管理区域内が汚染されている」という認識があったということです。・・・であるのなら、なぜ、排気ファンを回したというのでしょうか? 排気ファンを回しさえしなければ、この証言はそれなりに筋が通ったかもしれませんが、排気ファンを回していた以上、「汚染は管理区域内にとどまり、被曝も基準値以下」→「国などへの報告は必要ない」という判断は、全く筋が通っていません。

 どう考えても、J-PARCの管理者(担当者)は「基準値以下なら放射性物質は漏れても構わない」「時間が経って薄まればどんなに大量であっても放射性物質を漏らしてもOK」という日本の“お約束”を利用して、排気ファンで放射性物質を拡散する措置をとっています。放射線防護の観点で考えれば、こんな措置はありえないのですが、そもそも日本の核関連施設は放射線防護の観点なんか完全に無視しているので、原発や再処理施設は通常運転でも放射性物質をダダ漏れさせること前提で設計されていますし、放射性廃棄物はクリアランスでばらまきOKということにもなっています。

 要するに、日本の放射能関連の法律は、ダブルスタンダードだということです。福島第一原発の事故直後に、「年間20ミリシーベルトまで被曝OK」とか「食品の基準値は500ベクレル」などと政府が決定した時も、そのダブルスタンダードっぷりがネットでは随分と批判されましたが、単なる政府広報と化したマスコミは、政府の決定をそのまま公表するだけで矛盾点の指摘を全くしませんでした。
 このたびのJ-PARCの事故も、マスコミは事故を起こした側の言い分そのまま発表するだけの「広報」と化しています。ホント、どうしようもないですね


その20に続く)