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その1からの続き)


 それでは、『ポスト・チェルノブイリを生きるために―暮しと原発』(藤田祐幸/著)という本の中から、核燃料輸送問題に関する記述を紹介していきたいと思います。
 
 机の引き出しを整理していたら、何年か前に付きい合いで加入した「損害保険」の定款が出てきた。そこには、まるで読まれることを拒否するように小さな青い活字がびっしりならんでいる。なにげなくぱらぱら繰ってみると『保険金を支払わない場合』といった条項が目に止まった。『当会社は次の事由に起因する事故による損害については、保険金を支払いません』とあって四つの場合が示してある。その(1)は被保険者の故意による場合であり、(2)地震、噴火または津波、(3)戦争とつづき、最後に(4)核燃料物質とある。
 詳しく条文をあげてみると『核燃料物質(使用済燃料を含みます)もしくは核燃料物質によって汚染された物(原子核生成物を含みます)の放射性、爆発性その他の有害な特性またはこれらの特性による事故』となっている。ついでにいくつかの会社の損害保険の定款を調べてみたが、どの会社でも同じ条文を使用していることが分かった。

  『ポスト・チェルノブイリを生きるために―暮しと原発』179ページより


 損害保険の定款に核燃料物質の記述があることを知ったのは、この本が最初でした。
 いったん原子力災害が起きてしまったら、その補償額はあまりにも巨額になってしまうので(・・・というか、どんなにお金をかけても補償なんかできっこないわけですけど)、保険などかけようがない、という指摘は以前からされています。それに対する原発推進者側の言い分は、「原発事故は起こらない」でした。

 原発そのものの事故の確率は、「シビアアクシデント」と呼ばれるレベルのものは、だいたい20年に一度の割合で起こっています。(スリーマイルの事故は1979年、チェルノブイリは1986年、福島第一原発の事故は2011年。)
 20年に一度というのは、相当な高い確率です。こんなに高い確率なのに「原発事故は起こらない」もへったくれもありません。原発ですら事故を防ぎ切れていないというのに、これが核燃料輸送の車の事故だったら・・・? いくら運転を気をつけたとしても、自爆覚悟のテロリストがトラックで突っ込んで来たらどうしようもありませんし、輸送車が自然災害に巻き込まれる可能性だってあります。輸送車が事故を起こした場合の放射能汚染の範囲は、原発事故よりは少ないでしょうけど、周辺住民の被曝は避けられませんし、いったん放射能汚染されてしまった土壌は完全な除染など不可能です。
 それに、核燃料の輸送は、地上だけではありません。海上での輸送もあります。海上輸送の場合は、船舶の衝突事故も考えなければならないのです。

 原発推進側が言うように本当に「事故は起こらない」「放射能汚染なんて大したことない」のであれば、保険会社が上記のような定款なんて作るはずがないんです。原発事故のリスク、核燃料輸送のリスクが分かっているからこそ、上記のような定款を作っているわけです。
 原発推進を擁護する人達には、子供の健康を心配するお母さん罵るヒマがあったら、保険会社に文句を言って、定款の内容を変えさせるくらいのことをしていただきたいです。定款の内容は、まさに、原発を擁護する人達が言うところの「不安を煽る内容」に他ならないのですから。


その3に続く)


ポスト・チェルノブイリを生きるために―暮しと原発 [単行本]