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 最近は最初から突っ込み目的で本を読むことなどほとんど無かったのですが、図書館で偶然、↓この本を見つけてしまい、思わず借りてしまいました。

 
魂の旋律-佐村河内守
古賀 淳也
NHK出版
2013-10-25




 ゴーストライターが作曲してしていたことが発覚した今となっては、“架空のキャラクターの設定資料集”のようになってしまった本ですが、発売当時は「ドキュメンタリー」という扱いだった本です。(正確に言えば、NHKで放送されたドキュメンタリーを書籍化したものです。著者の古賀淳也氏は、その番組のディレクターです。)

 「この本もゴーストライターが書いたのでは…」などと考えながら読みましたが、文章が下手でプロのライターが書いたとは思えず、そういう意味ではディレクターの古賀淳也氏が本当に書いた可能性が高いです。(プロのライターがわざと素人っぽく書いた可能性もありますが、だとしたらそのライターは相当「できる人」です。)

 仮に佐村河内氏が本物の作曲家で、取材にやらせがなかったとしても、ドキュメンタリーとしてこの本は問題がありすぎます。

①佐村河内氏が被爆二世であることや「交響曲第1番“HIROSHIMA”」を引き合いに出し、佐村河内氏が反核であることはかなりはっきり描写されているのに、原発事故に対する“怒り”が全く描写されていないわけですから、東電や政府への批判を“自粛”していることは明らかです。
 権力や企業の顔色をうかがって“自粛”するなど、ドキュメンタリーを制作する姿勢としてありえません。

②佐村河内氏は「障害者であることを売りにしたくない」とか「同情されたくない」とか思っている(ことになっている設定な)のに、交流する相手は「津波で家族を失った人」や「障害を抱えている子供」です。
 敢えて「同情を誘う要素のある人」を選んでいるとしか思えません。
 その上、子供から「悲しかった」とか「お母さんを愛していた」という言葉を引き出すための“誘導”のあざといこと…。
 子供の口からそういう言葉を引き出さないと作れない音楽というのは一体何なんでしょうか。

③「ゲーム音楽とロックはクラシックより下」という古賀氏の価値観が文章から滲んでいるのがとても不快です。
 二つのゲームの作曲に携わったくらいで「ゲーム音楽の世界で頂点を極めるも…」(24p)は言い過ぎです。


 この本をゴーストライター騒動の資料として図書館が保管しておく意義は充分にありますが、10年・20年経って、事件を知らない小学生や中学生がたまたま何かの拍子でこの本に出会って内容を全て信じ込んでしまい、読書感想文の題材にしてしまう可能性はゼロではないことを考えると、微妙な気持ちになってしまいます…。
 まぁ、その頃は閉架書庫行きになっていて、そうそう目につかなくなっているとは思いますが…。