2017/02/04

ウインターキャンプショートショート



「モーニングみそ汁」MV見てて
思いついたショートストーリーのあれこれです。








《ぽんぽん》

キャプチャ2

キャプチャ6




「えりぽん、一緒に花火やろー」

「えー?えりシャボン玉やりたい」

「えりぽんの分も花火持ってきたのにぃ」

「シャボン玉はー?」

「もー、わかった。シャボン玉持ってくるから、花火もやろ?」

「それならやるー」

「えりぽんってば、わがままなんだから」


「えりぽん、シャボン玉持って来たよー」

「ありがと。先に花火からやるっちゃん」

「え、いいの?」

「いいと。聖がやりたいやつからやったげる」

「えりぽんありがとー。じゃあ聖が火つけるね。えいっ、えいっ…あれ?」

「へたくそっ。なんでライターで火つけられんと?貸して」 

「おかしいなぁ」

「はい、ついた。はい聖」

「えっ、はやっ」

「このぐらい普通やろ」

「わぁ、きれーい」

「……聞いてないし」

「ねええりぽん、めっちゃキレイだよっ」

「そうやね」

「もう、なんでそんなクールなの?」

「別にクールじゃないけど。でも、冬の花火もいいね」

「ねー!あー、終わっちゃった…あっという間」

「えりのも終わったー。花火は本当一瞬やね。じゃ、シャボン玉やろ」

「切り替え早いなーw」



「えりぽん見て!聖めっちゃおっきいシャボン玉作れた!」

「ほんと、おっきいやん」

「夜にシャボン玉っていいね。明かりに反射してきれい」

「そうやね、キラキラしててキレイやね……でも聖の方が」

「聖の方が?なに?」

「な、なんでもないっちゃん」

「なんでもなくないでしょ!続き、なんて言おうとしたの?」

「何にも言おうとしてないっ。なんにもないと!」

「うそだー!えりぽん、聖の方がなんなの!教えなさい!」








《まーどぅー》

 キャプチャ3

キャプチャ4

キャプチャ5




「まーちゃーん!」

「なに?」

「ハルの作ったみそ汁、味見してほしいんだけど」

「え、まさが?まさでいいの?」

「いいよ、まーちゃんで」

「ほんと?」

「なんで疑うのさw」

「だって、まさ料理下手だし、味とかよくわかんないし」

「大丈夫大丈夫」

「だって」

「ハルが大丈夫って言ってるんだから、大丈夫」

「どぅーがそういうなら……」

「早くしてくれないと煮詰まっちゃうんだけど」

「そっか……じゃあ、味見するね」

「はい、お願いします」

「……」

「どう?」

「うっすい!w」

「うっそ、薄い?結構味噌入れたんだけどなぁ」

「どぅーもちょっと飲んでみて!めっちゃうっすい!」

「そんなに薄いわけ……ほんとだ、めっちゃうっすい!w」

「でしょー?」

「こりゃ薄いわw ごめんごめんw」

「まさがやるー」

「えっ、大丈夫?」

「どぅーよりはうまく作れると思う」

「……言い返せない」

「このぐらい味噌入れてもいい?」

「えっ、お玉に山盛りじゃん!さすがに入れすぎじゃね?」

「だって、味薄かったんだもん」

「それにしたって……あー!入れちゃったー……」

「いい色になったよぉ」

「確かに」

「はい、味見」

「あっ、うん……美味い」

「えっ、ほんと!?」

「まーちゃん、美味いよこれ。いい味になってる」

「まーも飲む!」

「はいどうぞ」

「んー!おいしー!」

「まーちゃん天才だな」

「そうかもしれない」

「いや、マジで。いいお嫁さんになれるんじゃない?」

「えっ、お嫁さん?」

「うん」

「そんなぁ、お嫁さんだなんてぇ」

「どぅーのために、毎朝みそ汁作ってほしいなー、なんて」

「え……どぅーに?毎朝?」

「うん。イヤ?」

「イヤ……じゃないけどぉ……」

「じゃあ決まりね」

「まさ、どぅーのお嫁さんになるの?恥ずかしいよぉ」

「ナハハッ」








めでたしめでたし。 

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sarishin at 23:49|PermalinkComments(0)モーニング編 

2017/01/04

同期(かえれな)



「加賀さん」


モーニング娘。13期メンバーの発表も終わったある日。


ダンスレッスンの休憩中、
あたしの元に駆け寄ってきたのは、横山ちゃん。


「はっきりさせようと思うんです」

にこにこしながら、そんなことを言ってくる。


「はっきりって、何を?」

「同期としての接し方、です」


そう言って、またにっこりと笑う。



確かに、決めないといけないかな。


あたし達がお披露目された武道館の時も、
譜久村さんと飯窪さんにそんなこと言われた。

ハロプロ研修生としては
あたしと横山ちゃんの研修期間に差はあるけど、 
モーニング娘。としては同期だもんね。

先輩たちもさん付けをやめたりとかため口にしたりしてるし、
あたし達も事前にはっきりさせておいたほうがいいのかも。



「いいんじゃない?ため口で」

あたしは、あっさりとそう答えた。


横山ちゃんが変に気を遣うようなことになるのは嫌だし。 

ここは、一応研修生の先輩であるあたしが
歩み寄っていかないとね。



「本当!?いいの!?」 

横山ちゃんの笑顔が、ぱあっと弾けた。


……対応、早いな。



「い、いいんじゃないかな。その方がやりやすいでしょ?」

「うんっ」


横山ちゃんの勢いの良さと距離感の詰め方の速さに、
あたしはちょっとたじろいでしまう。

初めて会った時から、結構人懐っこいとは思ってたけど、
ここまでだったとは思ってなかった。



「あと、もう1個あるんだけど」

横山ちゃんが、あたしの方に1歩、2歩と歩み寄る。


「なに?」

あたしは首をかしげる。



「かえでぃー、って呼んでいい?」


お。
矢継ぎ早に、呼び方来た。


ニックネーム来たか。

そういえば、武道館でも「かえでぃー」って呼んでくれたっけ。

特にどう呼ばれたい、っていうこだわりもないし、
相手が呼びたいように呼んでくれるのが一番いい。



「横山ちゃんが呼びやすいなら、それでいいよ」

「やったぁ!」

言うが早いか、横山ちゃんがあたしに飛びついてくる。


ちょ、ちょっと待って。
何故、急に飛びついて来たの?


「いきなり『かえでぃー』とか言って、
 馴れ馴れしいよ!とかって怒られたらどうしようかと思ってぇ」

あたしのすぐそばに、嬉しそうな横山ちゃんの笑顔。


……可愛いなぁ。

あたしも、つられて笑顔になってしまう。



「じゃあ」

あたしの顔を見上げながら、横山ちゃんが言う。


「『玲奈』で」

そう言って、またにっこりと笑う。



「ん?」

「あたしのことは、『玲奈』って呼んでほしいな」

「れ、れいな……?」


……出た。呼び捨て。



武道館の時は、あたしも頑張って呼び捨てにしてみたけど。

言ってみたはいいものの、ものすごく違和感があって。


それと、なんか女の子を呼び捨てにするのってドキドキするんだよね。

仲良くなってしまえばそんなこともないんだけど、 
横山ちゃんとは、正直長く一緒にいたわけじゃないし。

玲奈ちゃん、とかでいこうと思ってたんだけど、
まさか呼び捨てを提案されるとは。



「……ダメ?」

横山ちゃんが、捨てられた子犬みたいな顔であたしを見つめる。


「いや、ダメじゃないけど……」

あたしは、とっさにこんなことを口走る。

そんな目で見つめられたら、ダメなんて言えないじゃない。



「じゃあ、『玲奈』!決まり!」

よこ……玲奈が、あたしに抱きついた腕の力を強める。



玲奈、か。



案外、悪くないかもしれない。



「ふふっ」

「なに?なんで笑ったの?」

思わず笑みをこぼしてしまったあたしに、
玲奈がつっこんでくる。


「可愛いなと思って、玲奈が」

あたしはそう答える。

なんていうか、
ひとつひとつの動きとか表情とか、全部が可愛いんだな。


「ほんと?」

そう言う玲奈の表情が、また明るくなる。


「ほんとほんと」

「かえでぃー!好きっ!」

あたしが頷くと、玲奈が跳ねながら抱きしめてくる。


さりげなく、告白されちゃったよ、あたし。





これは、もしかしたらもしかして。


すごい子が、同期になったのかもしれない。





 

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sarishin at 23:37|PermalinkComments(0)モーニング編 

2016/12/15

予行練習(あゆみずき)




「……買ってきちゃいましたね」 

「ね」 


机の上にはコンビニの袋がひとつ。

中には350mlの缶がひとつ。



ことのきっかけは
譜久村さんとのバスツアーの打ち合わせ。


せっかくあたしが成人した後のイベントだから、
何か成人っぽいことやりたいね、って話になって。

じゃあ、お酒飲んじゃう?ってアイデアが出てきたんだけど……。


「でも、お酒っておいしいんですかね?」

「わかんない。聖もまだ飲んだことないし」

「予行練習してみません?」

「えっ、今?」

「やっぱり事前に味とか知っておいた方がいいと思うんですよ」

「それはそうだけど、でも、亜佑美ちゃんまだ19歳じゃん」

「譜久村さんだけ飲めばいいじゃないですか」

「えっ!?」

「何かあっても、あたしが面倒見れますし」

「そっか…じゃあ、ちょっとだけ、飲んでみようかな…」




と、いうわけで。

勢いで近くのコンビニでお酒を買ってきてしまったけど。


事務所の会議室で飲んでしまっていいのだろうか。 

今更そんなことを考えてしまう。


まあ、譜久村さんは成人してるわけだし、問題ないか。
事情を話せばわかってくれるでしょ。



「大丈夫かなぁ」

買ってきた缶を見つめながら、
譜久村さんがつぶやく。


「大丈夫ですよ」

あたしが答える。特に根拠はないけど。


「亜佑美ちゃん、寝ちゃったりしたらごめんね」

「任せてください、すぐ起こしますから」

不安そうな譜久村さんに、あたしは胸を張って答える。



「じゃあ、開けるね…」


ぷしゅっ。

譜久村さんが缶を開ける。
そしてそのままおそるおそる注ぎ口に鼻を近づける。


「あんまりお酒の匂いしないね。柑橘系の香り」


『レモンサワー』って書いてますしね――と、心の中でつぶやく。
お酒の匂いしないのか。ちょっと意外。


「しゅわしゅわって音してる。炭酸なんだね」

そう言いながら、譜久村さんは鼻先をまた注ぎ口に近づける。
弾けた炭酸が鼻先に当たったのか、くすぐったそうに笑う。

それにしても、サワーって炭酸なんだ。知らなかった。


「……よし」

譜久村さんは、缶をじっくりと見つめてつぶやいた。


何故かあたしもそれを固唾をのんで見守る。


「飲むよ」

「……はいっ」

緊張の面持ちで缶に口をつける譜久村さん。

そしてそれを何故か緊張しながら見てるあたし。



2度、3度と譜久村さんの喉が鳴る。 


「……おいしい。レモンスカッシュみたい」

譜久村さんがほっとしたような笑顔で言う。


そっか。おいしいのか。

ビールは苦い、とか聞いてたから
他のお酒もそんな感じなのかなぁと思ってたけど、
おいしいのもあるんだ。

これなら、バスツアーで飲んでみてもよさそう。


あたしがそんなことを考えている間も
譜久村さんはレモンサワーを飲んでいる。


「亜佑美ちゃん、バスツアーでお酒、ありかもね」

「そうですね。おいしいなら、あたしも飲んでみたいですし」

「…今、ちょっと飲んでみる?」

譜久村さんがいたずらっぽく笑う。


「いやいや!さすがにダメですよ!」

あたしはぶんぶんと首を振る。


「亜佑美ちゃんは真面目だなぁ」

譜久村さんが拗ねたように口を尖らせる。


誰もいないとはいえ、ダメなものはダメ。 
……ちょっと興味あるけどね。


とにかく、バスツアーでお酒を飲むイベントはいけるかな。
他にもやりたいイベント考えなくちゃ。


「譜久村さん、イベント考えますよ」

「はぁい」

あたしが言うと、譜久村さんは元気よく手を上げて答えた。

……ちょっと声が眠たそうになってる気がしたけど、気のせいかな。




「あとは、ライブで歌う曲ですけど――譜久村さん?」

「んー……?」

譜久村さんの様子がおかしい。


顔はほんのりとピンク色になっていて、
うつらうつらとしている。

さっきから何度も頭ががくんと落ち、
机にぶつけそうになっている。


これは、完全に酔っぱらってるな?


譜久村さんは、あの後もレモンサワーをごくごくと飲み続け、
気づけば350ml缶があっという間に空になっていた。


今日は、打ち合わせはもう無理かな。


――譜久村さん、どうしようか。 
このまま一度寝かせた方がいいのかな。 


とりあえず、あたしは譜久村さんに声をかけようと
隣の席に移動した。


と――。


「あゆみちゃぁん」

「わぁっ!」

あたしが隣の席に座るやいなや、
譜久村さんがあたしに抱きついてきた。

椅子ごとひっくり返りそうになるのを必死にこらえる。


びっくりしたぁ。
絶対寝てると思ってた。


譜久村さんの両腕があたしの首に巻きついている。

あたしの目の前に、紅潮した譜久村さんの顔。
目がとろんとしていて、いつにもまして色っぽく見える。


「あゆみちゃんってぇ、ちっちゃくってぇ、かぁわいいねぇ」

んふふ、なんて笑いながら、
譜久村さんは腕をあたしの首に巻きつけたまま、
あたしの後頭部をわしゃわしゃと乱暴になでまわす。


「あ、ありがとうございます」 

あたしは、どうしていいかわからず、譜久村さんにされるがまま。
とりあえず、可愛いって言われたのでお礼はしておく。


「みじゅきねぇ、あゆみちゃんがあまりにもかわいいからぁ、
たべちゃいたいよねぇ」 


…ん?

……食べたい?


ふにゃふにゃとした笑顔で、
とんでもないことを言いだす譜久村さん。


「ちょ、ちょっと、譜久村さん?」

体勢を立て直そうとするけど、
譜久村さんの全体重があたしに寄りかかっていて
うまく動けない。


「うごいちゃ、やぁだ」

譜久村さんが、あたしの体を引き寄せる。


「へっ!?」

さっきまで、譜久村さんがあたしに寄りかかっていたのに、
一瞬で体勢が逆転。

全力で引き寄せられたあたしの体は、
譜久村さんに密着していた。 

椅子に座る譜久村さん。
その譜久村さんと向かい合わせで座るあたし。

――譜久村さんに跨ってしまっている。 


「ふ、譜久村さんっ!?」

これは、さすがに恥ずかしすぎる。
酔ってる相手がやったことにしても、これはやばい。


「あーゆーみーちゃん」

そんなあたしを意に介さず、
譜久村さんは相変わらずふにゃふにゃと笑っている。

「な、なんですか」

「すきぃ」

次の瞬間、譜久村さんはあたしに頬ずりしてくる。


……人間って、酔うとこうなるのか……。


「んふふふ」

頬ずりしながら、譜久村さんが笑う。

いつもより、笑い方がだらしなくて、ちょっと怖い。


「あゆみちゃんのほっぺ、すべすべしてるねぇ」

呂律の回らない譜久村さん。
甘ったるい言葉の響きが、なんだか妙に色っぽくて。



至近距離すぎる近さにある譜久村さんの顔。

飲んでいたレモンサワーの匂いと、 
譜久村さんの香りが鼻先で混ざりあう。 

ピンク色に染まった頬、とろんとしたままの目。

初めて見る譜久村さんがそこにいる。


あたしも、普段なら頬ずりなんて全力で拒否するのに
不思議とそれができない。

なんだか、頭がぼーっとしている。
お酒飲んでないのに、あたしも酔ったんじゃないかと錯覚する。



「――あむっ」

「ひゃあっ!!」


あたしは思わず声を上げてしまった。

譜久村さんが、あたしの首筋に噛みついたのだ。
……さすがに歯は立ててなかったけど。


「あ、あの…譜久村、さん?」

首筋がなんともむず痒くて、あたしは体をよじらせる。


「やっぱ、あゆみちゃんって、おいしいねぇ」

他人が聞いたら、誤解を招くようなことを平気で言う譜久村さん。


あたしの鼓動が速くなる。
まさか、首筋を甘噛みされるなんて思ってもみなかった。
びっくりしたぁ。


「でもぉ、いちばーんおいしいのはぁ」

譜久村さんの顔が一瞬離れた。

なに?
譜久村さん、何する気なの?


「ここっ」

譜久村さんの顔が一瞬で視界全体に広がる。

「え――」








「あゆみちゃんのくち」

……キス、 された。


譜久村さんの唇が、あたしの唇に、しっかりとくっついた。

ほのかに香るのはレモンの香り。


ファーストキスは、レモンの味――なんて、昔のマンガみたい。


「あゆみちゃんのくちびるもぉ、みじゅき、すきだよぉ」

「あ、はい…」

なんかもう、うまく言葉も出てこない。

あたしの頭はまったく働かなくなっていた。


今起こったことが夢か現実か、はっきりとしない。

あたし、譜久村さんとキス、しちゃったんだよね……? 



「ねる」

「……えっ?」


譜久村さんは突然こうつぶやくと、
そのままがくん、と首を真後ろに倒した。


「譜久村さん!?」


……寝てる。


顔が真上を向いてしまってるけど、
譜久村さんは幸せそうな笑顔で寝息を立てていた。

あたしを膝の上に乗せたまま。




譜久村さんとは、二人きりでお酒を飲んじゃいけないな。 


……あたしがもたないかもしれない。



とりあえず、あたしは譜久村さんの膝の上から降り、
もといた席に戻った。


起きるまで、気長に待つことにしよう。










【後日談】
譜久村さんは、お酒飲んだ後のこと、まったく覚えてませんでした。
あの時のドキドキ、返してくださいよっ。




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sarishin at 21:14|PermalinkComments(0)モーニング編